麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが? 作:与麻奴良 カクヤ
スマラさんは本から目を上げない。
人が乗れる雲の合間を縫って移動しても、天国の門と呼ばれる入国所からエビに掴まれてダイナミックな入国をしようとも、やっとこさ人が住んでそうな島に上陸しても、麦わら一味が全員船から降りたとしても顔を上げなかった。
体を揺さぶれば気がつくだろう。しかし、機嫌が悪くなるのが明白なので誰も気にかけない。
唯一冒険に誘いそうなルフィも、今回ばかりは目の前の楽しさに目を奪われて誘わなかった。
時間がどのくらい経ったのだろうか?
楽しい事に集中していると、時間とは直ぐに経ってしまうもの。逆に早く経ってほしい時程ゆっくりになる。
「あら?誰も居ないのかしら?」
今回はそれ程経って居なかったらしい。ラッキーだ。
貴重なお時間を浪費せずに済んだ。
「さてと、人が住む町には着いたみたいだし……私も買い物に行きますか」
スマラは何時も通りの単独行動を開始する。モックタウンではロビン、アラバスタ王国ではビビの護衛と、最近一人で行動することが無かったが、本来の姿はこうだ。
島に着いたら勝手に行動する。麦わら一味が島を出る時には勝手に戻っている。それが元々の関係。
スマラは、まだ見ぬ本を求めて歩き出した。
視線が集まる。
ここは神の国『スカイピア』エンジェル島―ラブリー通り。
スマラはこの島唯一の大通りを歩いていた。地面は島雲で出てきており、高い場所へも橋をかけて移動が可能になっている。
そんな地上では有り得ないような街中をスマラは、ルンルン気分で歩いていた。
空に本があるのか不安だったが、それも気鬱に終わったからだ。
見た感じ、空にも植物は植えてあった。ならば本は作れる。
探せば何処かに書店はあるだろう!
視線を集める。
空島の住人は普通とはちょっと違った姿をしてる。
空島の人固有のものなのか、皆背中に羽を生やしていて、髪の毛も独特なヘアスタイルだ。そんな普通とは少しだけ違う空島の住人に、スマラはなにも驚かない。だって人間以外の種族が居るこの世界では、その程度の姿は驚くに値しない。
そんな中、青海人であるスマラが堂々と歩いていると目立つに決まってる。スマラは全く気にしないでいたが……。
見たこともない食べ物や観葉植物が並ぶ大通り。スマラは「そんなもの興味ない」と何時も通り無視して歩く。
看板から目的の店を割り出すと、スマラは迷わずに直行。ドアを開けて店内に入った。
「いらっしゃい…………青海人か?」
「青海人?あぁ地上から来た人の総称ね。そうですけど、なにか?」
店内に入ると、店主が顔を見せる。
店主はスマラが空島の住民ではないと分かると、あからさまに態度を変えた。
普段は無視するスマラでも、本屋の店主となれば別だ。態度が変わった事に疑問を抱く。
「すまないが青海人には――「青海人には本を売らない……なんて事は無いでしょうね?」――うっ!!」
スマラが先に言った言葉に、喉を詰まらせる店主。どうやら図星のようだ。
と、ここでスマラは自分に向けられていた視線の意味に気付く。普段は無視に決め込むが、本が絡むと思考は良くなる。
少しの間思考を巡らしていたスマラは、推理を披露する探偵のように言った。
「………まさかこの島、青海人には優しくないのかしら?気にして居なかったけど、あそこまで視線を向けられていたら、嫌でも気づくわ」
店主は何も言わない。
ま、私には関係無いけど。とスマラは店主を無視して本棚に近づいて物色し始めた。
が、店主はスマラにやめてくれ!!と悲願する。
「た、頼むからやめてくれ!!この島では青海人に……」
何かに怯えているようにも見える。まるで、青海人が罪人のような……。
それでもまぁ、スマラは止まらないんですがね!
やっとこさ未知の島での本漁りだ。これまでの島とは勝手が違う。
流通など有りもせず、書き手も空島出身者。その感性の違いからして、地上では滅多に手に入る事が出来ない一品。
その一品が、ここには沢山売っている。見たこともない本を求めて世界中を放浪しているスマラからすれば、絶対に見逃せない。
止まるはずもなかった。
殆どが見たことのない本。
スマラは激選した本をカウンターに乗せる。その数十数冊。これでも我慢している方なのだ。
欲を言えば全部読みたい。ここに居座ってでも、店中の本すべてを読破したいと思うのは、スマラに取って耐え難い思いである。
「はい、これ全部買うわ。会計をしてくれる?」
「まっ!俺は売るなんて一言も………」
「青海人だから?それはちょっと差別的ではないかしら?私が何をしたっていうの?」
まだ売らないと言っている店主に、スマラは少しだけイラついてきた。
目の前に見たこともない本があるのに、それが買えない。金銭的問題や保存的問題なら自分も諦め切れる。
が、どうだ?実際は地上の人間だから売れないと言う、スマラに全く非の無い差別的な意味でだ。
「もしかして、どこに行っても同じなのかしら?」
「そうだよ。俺だって見知らぬあんたに売りたくないわけじゃねぇんだ。でも……」
何かに怖がっているように見える。スマラはピンとくる。
「……絶対的な支配者による恐怖政治、と言った所かしら?あぁ、別に答えなくてもいいわよ。私は独り言を呟いているだけ」
「……ッ!!?」
「ただの恐怖政治なら裏でコッソリすればいい。普通は店の中までは見えないのだからね。でも、そこですら憚れる何か………」
スマラが言いたいのは、情報力が恐ろしいということだ。
人を雇って国中を調べるのはどんな国でも出来る。だが、それでも絶対ではない。
しかし、見聞色の覇気を使えば国中の声を聴くことだって可能である。スマラだって出来ない事は無いが、それは能力の補助があっての芸当だ。そう考えると、支配者も悪魔の実の能力者だと辻褄は合う。
「大方、青海人は全て犯罪者、だからそれに協力する貴方も犯罪者になる。ってところかしら?」
目を大きく見開く店主。如何やら当たりのようだ。
どうして分かったのか?古今東西ありとあらゆる本を読んでいると、簡単な政治のやり方くらい覚えるものだ。その中で、恐怖政治の支配者側がよくやりそうなテンプレートを、現状に当て嵌めるとどの様な政策をしているかなど、簡単に予想がつく。
店主に声を出さなくていいと言ったのは、見聞色の覇気に引っかからないようにするため。
声に出さなければ、そう簡単に気づかれない。と同時に、見聞色で聞いているだろう相手に脅すためだ。
「それじゃあ、貴方に会計は求めないわ。このまま本を持って出て行く。犯罪者だろうが、この島は閉鎖的みたいだし、別に構わないわ」
「………おいっ!!待て!!」
スマラはカウンターに置いた本をリュックサックにしまい込むと、そのまま店を出た。
青海人に店主は物を売ったのではない。青海人に物を強奪されたのだ。
全て分かった上での行動である。
店主はスマラを追いかけようとして、気づく。カウンターの上に札束がポンと置かれている事に。
「さてと、これからどうしましょうか?」
店を出たスマラは大通りから離れた場所に居た。
橋を使わないと行くことのできない宙に浮いている島雲だ。
端に座って足をプラプラとさせながら、めんどくさそうに呟く。
本代と迷惑料を払ったスマラだが、他の本屋でも同じような真似をするつもりは毛頭ない。店に入る度に同じ様な事が起こると、流石に未知の本が目の前と言えどもめんどくさい。
それ故に、住民から見つかりにくい場所に潜伏している。
気持ちいい日差しを受け、このまま眠ってもいいかもしれない。とぼんやりしていると、大通りの方で動きがあった。
「全員、敬礼!! へそ!!!」
兵隊の様に同じ服装を着た男達が、大通りの中央に止まった。
敬礼と言っているが、小指と人差し指を立てて頭の上に載せている。とても敬礼とは思えない。
が、周りの住民も驚きながらも、対象は敬礼にではなく現れた者に対している所を見ると、敬礼は普通の事だと分かる。
スマラは兵隊のような存在の登場に、「もう追手かしら?」と耳を傾けた。
幸い、知らせるように大声で喋っているので、少し集中すれば問題なく聞こえる。
「みなさんお気を付け下さいまし!!本日エンジェルビーチより不法入国者が侵入致しました!!目下、我らホワイトベレー、犯人を全力で探索中であります!!」
そういうと、彼らは小走りで去っていく。
一先ず、情報を整理してみることにした。
一つ、スマラの強奪はバレていないこと。
二つ、この国に不法入国者が現れた。←時間的には麦わら一味の可能性大。
三つ、ホワイトベレーと言う組織が麦わら一味の探索に当たっている。
以上の情報を入手した。
情報を手に入れたスマラは、この先どうするか考える。
目を閉じて情報を頭の中で整理。そこから考えられる敵の行動と自分の行動をシュミレート。
結果、導き出した答えは、
「船に戻っても仕方が無いわね。………適当に時間潰しでもしていましょう。不法入国の件は、あっちで解決してくれるでしょう」
そう言って、スマラは移動を始めたのであった。
島の端っこまで移動したスマラ。
彼女は今、雲で出来ている大きな運河のようなものの前まで来ていた。
「確か、確認した地図ではこの先に大きな島があるのよね。人の気配はあまりなさそうだし、そちらに渡って適当に時間を潰しましょうか」
そう決めると、スマラは跳んだ。
運動エネルギーを変化し、跳躍力を伸ばす。通常の何倍もの距離を跳んだスマラ。しかし、まだ足りない。
このまま落ちると下は海雲。能力者であるスマラは溺れて真っ逆さまに地上行き。
なので、宙を蹴った。人間離れした脚力が生み出す技『月歩』だ。
月歩で宙を蹴り再び加速、落下が開始されると再び月歩で………繰り返すこと数回。
スマラは向こう岸にたどり着いた。
辺りは不穏な空気を纏っている。
雲で出来ている運河の脇には壊れた船の残骸が散らばっており、見える範囲全てが巨大な木々で生い茂っている。
さらに、全てが雲で出来ていると思われた空島にも、大地はあった。
この人の少ない場所こそが空島で唯一、土で出来ている場所である。
成程ね。殆どが雲で出来ている空島では、土――大地は神聖な物と認識されるのもおかしくはない。
だから、この場所には人の気配が少ないのね。
さてと、何処か過ごしやすい場所でもないかしら?
スマラは適当にぶらつき始めた。
本を取り出して歩く。
整備されていない自然な森の中を歩くのは、かなり体力のいる事だ。
凸凹で、何故か巨大に成長している樹の根っこや蔦が行く手を阻む。
普通なら両手両足を酷使して、根っこを登ったり下りたりしながら移動しなければならない場所。
そこをスマラは足だけで移動する。何せ両手は本で埋まっているから!
足腰だけの力で突き進むスマラ。やはりバケモノ。
目的地は存在していない。ただただ適当に歩く。
大地の端では人に見つかるかもしれないから、ひたすらに奥に進むだけ。
視線は本の活字を追いかけているので、ふらふら~ふらふら~と適当に進む。
真っ直ぐ歩く必要はない。人に見つからない場所を探して奥地に進むだけだ。
帰り道は見聞色の覇気を使用すれば問題ない。
どの位時間が経ったのだろうか。
スマラとしては一瞬。実際に過ぎた時間は半刻よりも短い。
ふと、スマラが足を止めた。そろそろ疲れてきたので、移動を止めて腰を下ろせる場所を本格的に探そうと思ったから。
頁に栞を挟んで本を閉じた。本を丁寧にリュックサックにしまうと、スマラは足に力を入れて跳び上がる。
スタッと地上十数メートルの位置に存在する枝に飛び乗った。枝と言っても木自体が巨大なので、人間一人が乗ったくらいでは折れることもない。寧ろ、ゴーイングメリー号が乗っても折れる事がないかもしれない。
跳び乗ったスマラはそのまま辺りを見渡すと、枝と枝を飛び回る。
枝の形状を確認しながら、過ごしやすそうな枝を探す。
過ごしやすそうな場所を探すと言っても、そこまで重視している訳ではない。
枝を数か所回ったスマラは「ここでいっか」と決めると、リュックサックを降ろして抱きかかえる。
腰も降ろし、幹を背もたれ替りにしてリラックス。そのまま目を瞑り休憩し始めた。
日も落ちて時刻は夜に差し掛かった頃。
目を瞑り寝ていたスマラがピクッと反応した。
そのまま横に数センチずれる。と同時に、スマラが数秒前に居た場所に槍が突き刺さる。
「ふん。避けたか」
「随分と物騒な目覚めの挨拶のご様子ね。一体だれ?」
抱えていたリュックサックを慎重に降ろすと、スマラは目の前の男に質問した。
獲物は槍。スカイライダーが被るような帽子を被っており、鼻髭が横にピンッと立っている。
敵意を持っているのは先程の一瞬で疑いのない事だ。
スマラを一撃で仕留め損ねた男は舌打ちをし、そんな男にスマラは質問を繰り出す。
男は枝から飛び降りると、どこからともなく現れた巨大な鳥の上に乗った。
「俺はスカイライダー、シュラ。ルールを破った生贄を狩りに行った帰りに、まさか行方不明だった不法入国者の一人に出会うとはな!」
「………不法入国者。貴方はこの国を治める側の人間ね」
「そうだとも!!!俺に見つかったのが最後、既に辺りには試練の準備を整えている」
「試練?」
「あぁそうだとも。生存率僅か3%の我が試練を乗り超えてみせろ!!」
ルールを破った不法入国者って私以外のメンバーの事よね。
その誰かを倒しに行った帰りと言う事ね。
口ぶりからすれば、目の前の男は統治者側の人間でも高位者。
逃げてもいいけど、ここは……
「一先ず、敵なら倒すまでよ」
「ははっ!!その口が何処まで続くか見ものだぜ!!」
「じゃあ、そうさせてもらうわ」
スマラは動いた。
その瞬間、身体がピタリと止まる。
「あっけないな。これぞ紐の試練!!貴様は既に俺が撒いた紐雲によって拘束された!!」
シュラはニヤリと笑った。
これで動けずに自分の槍の餌食になるだけだ。
そんなシュラの思惑と反対に、スマラは無表情でシュラを見返す。
「このまま永遠ち動けないのも辛かろう!!俺が止めを刺してやる!」
シュラは巨大な鳥に乗ったままスマラに突っ込んでくる。
手に持っている槍の先は、しっかりとスマラの心臓を狙い定めている。
スマラさん大ピ~ンチ!!!
「はぁ~。こんな紐で動きを封じたと思われるなんて、全くもって心外だわ」
「なっ!!大の男でも拘束する強靭な俺の紐だぞ!!!どうしてこんな小娘が……!!!しかし、もう遅い!!!」
自分に絡まった紐雲とやらを、規格外の力で引き千切ったスマラさん。
驚くシュラであったが、狙いは既に定めている。回避は間に合わないだろう。そう思って嗤う。
そして、シュラの持っている槍がスマラに突き刺さる。
事は無い。
回避が間に合わなくてとも、スマラには反射がある。思考さえ追いつけば…追いついていなくとも、ほぼ無意識のうちに行う能力執行。それが反射だ。
シュラの槍はスマラに触れた瞬間、運動エネルギーの方向を反転させられる。無理矢理運動エネルギーを別方向に動かされた槍は当然、シュラの腕の稼動範囲を無視して動く。
結果、槍の持ち手を破壊した。骨が有り得ない方向に折れ曲がり、数ヶ月間はまともに機能しないだろう。
「うぐッ!!何をしやがった!!」
痛む腕を庇いながらシュラはスマラに問う。持っていた槍は既に遥か下方の地面に落ちていた。
「何って敵に教える程、馬鹿ではないわ」
面倒くさそうにスマラは答えた。
答えにはなっていないが。
シュラは「くッ!」と悪態を吐くと、鳥を操って地面に急降下。地面に転がっている槍を動く腕で拾った。
そのままクルりと向きを変えスマラに背を向けた。己ではスマラに勝てないことを悟り、戦略的撤退を行うらしい。
だが、一度敵意を向けてきた相手をみすみすと逃がす程、スマラも甘くは無い。簡単に勝てなかったり、自分の立場的に戦うべきでない相手――一部の海賊や世界政府、海軍――なら引き際を見て逃げるのだが………。
シュラは簡単に勝てる相手と認識されたようだ。不幸だが仕方ない。本能で手を出してはダメな相手を見分けられなかったのが、シュラの敗因だ。
鳥にまたがって猛スピードで逃げるシュラに、スマラは軽く地面を蹴るだけで追いついた。
「なっ!?……だがしかし!!!マントラを使える我々には攻撃など………」
スマラがいとも簡単に追いついた事に驚く。が、そこは幹部なだけあって直ぐに持ち直す。
マントラと呼ばれる空島版見聞色の覇気を使える自分に、攻撃など当たる訳もないと思っているシュラ。
そんなシュラに向かってスマラは蹴りを放った。
「攻撃など…ゴハッ!!!」
「あのね、攻撃を読めるのはあなただけとは思わないで。それに、攻撃を読めたって避けられなければ意味が無いわ」
本から目を上げるとそこは………。
そこには誰も居ませんよ?
シュラの襲撃
原作でもワイパーに呆気なくやられたので、スマラさんに返り討ちにされても問題無いだろう!!
今後どんな風に進めていくべきかアンケート!!読者様の意見が聞きたいです。が、アンケート結果が絶対に反映するかは分かりません。結果を意識しながら書いて行けたらなぁ。と思ったアンケートです。
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出来るだけ簡潔に!!
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もっとストーリーに関わって欲しい
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そんなことよりも更新速度早よ!!
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知るか!勝手にやってろ!!