麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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遅くなって申し訳ありません。実は深夜には出来ていたのですが、寝ないと不味い時間になったのでこの時間まで伸びました。


479 四十二頁「デービーバックファイト」

 

 祭り会場の様に賑やかなロングリングロングランドの一角。もう直ぐデービーバックファイトの一回戦「ドーナツレース」が開始されるとあって、益々盛り上がっている。

 

 そんな祭り会場で似合わず静かな場所があった。

 

「…………」

「……………」

 

 めんどくさいからか、この場で見聞色の覇気や映像電伝虫、実況の音声で読書をしながら観戦予定のスマラ。

 もう片方は唯一残った麦わら一味のメンバー、ゾロだった。

 

 ゾロから質問があると言われ、耳をすませながら聞く体制に入っているスマラ。(耳をすませていると言え、読書を辞めず目も合わせない状態が聞く体制かと問われれば全力で否定されるが、スマラにとっては聞く姿勢だ)

 ゾロはスマラを観察の目を向けながら喋らない。

 故に、重々しい空気が流れる。

 

「ほら、早く言いなさい」

「辞めねぇのかよ!!?」

 

 なので、早速催促してみた。が、どうやら読書体制を辞めてくれるのを待っていたらしい。

 まぁ良い、と少しばかり苛立ちを隠せないままスマラに向き合ったゾロ。

 

 再び沈黙が訪れる。

 

 しかし、時間はみな平等に流れていくもの。このまま時間を浪費したら、第一回戦の開始に遅れてしまう。ゾロとて仲間の応援くらいしたいだろう。

 更に付け加えれば、怪しんだサンジがやって来てしまう。主にゾロに喧嘩を売りながら……。だが、まだいい。ルフィという名のカオスがやってこない限りは………。

 

 それでも早く用事を済ませたいのは同じ気持ち。

 ゾロは早速口を開いた。

 

「てめえ………何を考えてやがる」

「何とは?あぁ、こちらの思考ではなく、どうしてその考えに至ったのか?という質問返しよ」

「珍しく船から出て観戦するって意味だ。いつもだったら船に籠りっぱなしだろ?こんな場所に本屋がねぇ事は分かり切ったことだぜ」

「…………」

 

 

 なるほど、そう来たか。

 確かにスマラが船から出て実際に映像や実況を聞きながら観察するのは珍しい。スマラの事を認めていない宣言をしているゾロが怪しむのも当然のことだろう。

 実際には海を放浪していたと聞いているが、経歴は謎だらけだ。

 何年放浪して来た?偉大なる航路出身だとは聞いたが、この余裕さはなんだ?

 実力も底を知れない。今のルフィですら、いとも簡単に倒す事ができるだろう。かかっている賞金は一億だ。ねじ伏せて海軍に突き渡すだけで、一生遊んで暮らせる額のお金が手に入る。それをしない理由はなんだ?

 チラッと聞いた話では、いずれも偉大なる航路に帰る予定だったという。放浪を辞める理由は?そもそも本当に本だけの為に危険な海を航海するのか?

 

 謎だらけだ。はっきり言って、闇を見てるはずのロビン以上にだ。

 ルフィが仲間にしたいと言っているから目立った批判はしていないが、このまま船に乗せておくのは危険な気がする。

 言葉にできないが、強大な組織を相手取るかのように………。

 

 

 ゾロは船内では見せない様な鋭い視線でスマラを睨み付ける。

 一方でスマラはというと、全く気に留めても居ない様子。流石に視線には気づいているらしいが、本からを全く目を逸らさない。

 

「………さぁね。ただの気まぐれ」

「…………………」

「あぁ怖いわ。本当に気まぐれよ。そういえば、手合わせしたいって言ってたわよね?」

「……そりゃあ、強い奴がいるなら、戦いたくもなるだろう。刀使っても勝てるっていうんだからな」

 

 話をすり替えることに成功したスマラ。

 ゾロは好戦的な目でスマラを睨みつけた。戦闘狂だから仕方ない。

 

「そうね。刀の戦闘以前の問題と言ったでしょう?まだまだ足りないわ」

「あ”あ”?あの時よりも良くなった。鉄だって斬れるぜ」

「じゃあ、鉄よりも固い私は斬れないわね」

「………試してみるか?」

 

 刀に手を添えるゾロにスマラはため息を吐いて答えた。

 

「試してみてもいいけど、今はそんな呑気な状況なの?船の存続がかかっているゲームといっても言いはずよ?」

「ちっ。このゲームが終わったら仕切り直しだ」

「そう。勝手にしなさい」

 

 「忘れんなよ」とゾロはスマラの元を去った。

 本の活字を追うのを辞め、スマラは「面倒なことになったなぁ」と思い始める。

 無意識のうちにゾロを煽っていたスマラにも援護はできないよ?

 しかし、そう考えるも一瞬。直ぐに思考を停止して、今まさに始まったデービーバックファイトに集中する。

 

 ゾロとの手合わせなど、既に頭の中に残ってなどいなかった。

 

 

 

 

 

 こうして不穏な空気を纏いつつ始まった。第一回戦「ドーナツレース」

 読書をしながら、主に実況の音声だけで観戦したスマラ。果たしてそれが観戦と呼べるものなのかは置いておこう。

 島一周といえど、そこまで大きな島ではないので、一時間もすればレースは終了した。

 結果から述べよう。麦わら一味は負けた。フォクシーの情報を持っていなかったが故に。

 

 スタートと同時にフォクシー海賊団から妨害が入り、出遅れてしまう麦わら一味。しかしそのような妨害をサンジを筆頭に認めるわけもなく、妨害を妨害してレースに出ている仲間を守る。

 出遅れた麦わら一味は、ウソップが衝撃貝やロビンの悪魔の実の能力を使って接戦状態。

 その後も、サメと魚人の力で麦わら一味を抜かすフォクシー海賊団であったが、ナミやウソップの機転で次々に障害を回避。

 まるで初めからレースの妨害として発生していたかのようなサンゴ礁と巨大な渦を、ナミの航海術で呆気なくクリア。

 渦巻の勢いとウソップの衝撃貝を使って細長い岬もショートカット。船長であるフォクシー直々の妨害も避け続け、ついにはゴール目前。

 このまま、麦わら一味が第一回戦を制してしまうのか?誰もがそう思ったその時、フォクシーが最後の手段を使ったのだ。

 結果敗北。ゲームに負け、チョッパーを取られてしまったのだ。

 

 

 

 ゲームに負けた直後、フォクシーの能力「ノロノロビーム」のデモンストレーションや、敵船に獲られて泣くチョッパーに活を入れるゾロ。チョッパーをとられたことで選手が一人いなくなり、サンジゾロの凸凹コンビで二回戦に挑むことになったり。

 ゲーム終了後も色々あったが、スマラは全て無視。

 

 したかったのだが………

 

「………」

「………」

 

 目の前には納得のいっていない様子のナミがいる。もう少しで勝ち、と言うよりも勝ちが確定していた場面から気が付いたら負けていた。これで納得のいくわけがない。それが、悪魔の実の能力により妨害だったとしてもだ。

 

 そしてもう一つ。ナミにはスマラから聞き出さねばならない事があった。

 

「ねえ」

「……目が怖いのだけれど?」

「そりゃあ怖くなるわよ。あんなのを喰らって負けたんだもの」

「そう。残念ね」

 

 ジト目を送るナミ。スマラは気づいていながらも無視することに決めた。だって絶対に面倒な事になるのだもの!!

 

「………目を逸らさないで」

「………はぁ~。言いたいことがあるならさっさと言いなさい。いくら貴女であろうと、鬱陶しければ反撃するわよ」

 

 じーっと見てくるナミに警告を出すスマラ。

 それでようやくナミは、己が言いたかった事をぶつけた。

 

「あんた、フォクシーの能力の事も知ってたんじゃないの?」

「そうね。当然知ってたわよ」

「やっぱり………。少しくらい教えてくれてもいいじゃない!!」

 

 フォクシーの能力を知っていて話さなかったスマラに、ナミはお怒りならしい。

 耳がキーンとなってしまう。

 思わず能力で音量を抑える事を忘れ、耳に指を突っ込んでしまった。

 

 ナミのお怒りを受けたスマラだが、このまま言い返さない訳がない。

 何故ならば、キチンとした理由があったからだ。

 

「……聞かれなかったから、要らないのかと思って……」

「聞かれてないから答えないなんて……」

 

 スマラにとってはキチンとした理由だった。

 当然、ナミが納得するわけがない。こちらは、フォクシーが能力者だったことすら知らなかったのだ。質問のしようがない。

 

「あんた。ソレ辞めた方が良いわよ」

「どうしてかしら?」

「聞かれたことだけに答えて、質問されないなら何も言わない。それじゃあまるで、機械じゃない」

「機械…………えぇ、機械みたいね」

 

 機械。それは、本の活字を追う、世界に溢れる物語をただ読みたい。それ以外の事はどうでもいいと思っているスマラに響いた。

 機械。人との関わりを最低限に留め、自分のしたいことだけを行う。ある意味人間らしく、ひたすらに同じ事を繰り返す機械。

 ナミの何でもない一言は、スマラに刺さった。

 

 深く差し込まれ、二度と消えない傷を負わせるみたいに………。

 

 

 

「あ、いや。別に非難したわけじゃ……」

 

 流石のナミも様子がおかしいと思ったのか、すぐさま謝って来る。

 だが、そんなことどうした?とでも言いたそうにスマラの事を表情は変わらない。

 

「気にしてないわ。……それよりも、そろそろ二回戦の始まりじゃないの?」

「そうよ!!……と、今回は来るの?」

「流石に今回は実況しないみたいだし。見えないこともないけど、実際の目で見てみたいわ…………この先やっていける実力なのかを」

 

 珍しく行動を共にするスマラ。実況や見聞色の覇気でも観戦可能であるが、やはり自分の裸眼で視るとは全く違う。

 出場選手もゾロとサンジと、地味に興味が湧くコンビ。麦わら一味の実質ナンバー2の実力がどのくらいなのか、推し量ってみても良いだろう。

 ゾロなどは特にだろう。あれほどの啖呵を切ったのだから。

 

 

 ナミについて行くこと数秒後、観戦場所に着いた。コートの広さはバスケットボールコートよりも少し広いくらいで、サッカーコートよりは狭いだろう。

 そんなコートの中にポツンとゾロとサンジが戦っていた。

 

「あんた達やめんか!!」

 

 早速ナミが止めに入った。

 

 凸凹コンビだが、実力は十分。やる時はやる奴らなので、試合に負ける事はないだろう。ここで負けると麦わら一味は実質一人失う事が確定してしまうのだから。

 

「あ!!スマラも応援に来たのか!!」

「応援じゃないわよ。観戦よ。どっちが勝っても私には関係無いわ」

「ゾロとサンジは絶対に勝つぞ~!見とけよな!!」

 

 ナミと共に現れたスマラを嬉しそうに出迎えたのはルフィだった。

 彼はゾロとサンジが勝つことを信じている様子だ。船長としての信頼があるのか、それとも別の考えがあるのか……。とりあえず、前者なのは間違いない。

 

 準備が整ったのか、フォクシー海賊団の選手も入場してくる。音楽が流れ船首像からの登場とは、かなりの演出だろう。実際に登場したのはそれだけの存在感を持った奴らだった。

 ゾロとサンジの三倍の身体を持つハンバーグとピクルス。魚人と巨人のクォータービックパン。ふざけた名前だが、実際にゲームになるのか?と思う程のデカさだ。

 

 登場した三人とゾロとサンジをスマラは比べてみたい。

 身体は比べるのまでもなく負けている。だがしかし、その他の部分はどうだろう?

 

「………純粋な強さなら負けてないわね……」

「だろ~!!あいつらなら絶対に勝ってくれる!!」

「そうだぞ~~!!あんなバケモノでも、ゾロとサンジならやってくれるさ!!」

 

 スマラの呟きに、ルフィとウソップが反応した。二人とも、勝つことを疑っていない。

 肝心なゾロとサンジは又もや喧嘩を始めていたが………。

 

 そして始まった第二回戦。負けるのは論外。どれ程楽に勝利をするかが肝だ。

 スマラは、自分と手合わせをしたいと言ったゾロの力量を図るべく、試合の観察を始めた。

 

 

 

 

 

「どうだスマラ!!!ゾロとサンジは強かっただろ!!こいつらが負けるか!!」

「おめーら!!ハラハラさせやがって!!」

 

 ルフィとウソップがサンジとゾロの勝利を喜ぶ。

 ルフィは信頼に応えてくれたことと、自分達のチームが勝った事で満足げに笑い、ウソップが試合内容に泣きながらゾロを叩いて勝利を喜ぶ。

 

 

 結果から言うとゾロとサンジは勝った。楽勝とは言わず、ゲームであるが故のルールと、審判のジャッジ妨害などがさく裂し、手間取ったものの勝利を掴む事が出来た麦わら一味。

 やはり普通の海賊相手では、負けることは無いのだろう。ただ、これがゲームだということが足を引っている。

 これがフォクシー海賊団のやり方………。

 

 果たして、このゲームを見たスマラの感想は!!?

 

「最低限はクリアだけど、全然ダメね……」

 

 ダメだったらしい。危ない場面が幾度もあったのがいけないらしい。

 純粋な力比べではゾロとサンジは圧倒していた。ただ、これがゲームだということや、あからさまな不公平ジャッジが実力を発揮できないでいた。

 それが評価の主な原因だ。

 最も冷静に対処していればスマラも評価を改めただろう。しかし、格下の相手に制限があれど苦戦した。

 スマラに認めてもらいたければ、この先の海を渡って行くのならば、これくらい簡単に勝利してもらわないとダメだ。

 

 

 スマラの言葉は、勝利に酔いしれている麦わら一味には届かない。

 

 

 

 スマラは人知れずこの場を去った。

 

 まだ船長であるルフィの最終戦が残っているが、もはや興味など失せた。

 敵は船長のフォクシー。ルフィが勝つ可能性が高いが、フォクシーのノロノロの実の能力も厄介な能力である。圧倒的勝利とは行かないだろう。ならば、そちらもスマラ的には見る価値はない。完成された物語を読んだ方が有意義な時間になる。

 

 故に船に戻った。気配を出来るだけ消し、麦わら一味に気づかれないように。

 誰もスマラの事を気に留めない。ただ、わたあめだけ買って船に戻った。

 背後から聞こえるスピーカーから、チョッパーが麦わら一味に戻ったことだけが聞こえて来た……。

 




ぜ、前回青雉出るっていったよな?ふふ、秘儀「告知ブレイク!!」
次回は絶対に出します。

次回「青雉襲来」

次回作品に向けてのアンケート。詳しくは活動報告にて

  • 原作SAO
  • 原作ありふれた職業で世界最強
  • 原作ハリー・ポッター
  • カルデア職員
  • 原作ワンピース

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