麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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23日にTwitterでチラッと見た情報なのですが、嵐とコラボするらしいですね。
原作ファンからすれば、正直言ってやめてほしい。する意味が分からない。あのリアル風の絵が受けつけられない。
普通に人気なのだから、無理やりコラボしなくてもいいのに……。とても残念です。

という愚痴から入りました。ほんへはウォーターセブン編からエニエスロビー編へと向かいます!!すぐ終わらせるつもりだけどね!!

今回何時もの倍はあります。理由としてはキリの良いところまで行きたかったからです。


566 四十九頁「利害」

「交渉成立ね」

 

 政府とスマラの交渉はあっけなく終わった。スマラにとっても悪い条件ではないし、世界政府もたったそれだけの事で世界レベルの厄介者を囲えるとなると、頬を緩ませるしかない。もっとも、使者であるCP9は仮面越しで表情が分からなかったが……。

 

「では、時間まで此処に……」

「いいえ。自由にさせてもらうわ。私が嫌うのは、自由を縛られる事。あなた達世界政府の命令に従う気は全くないわ」

「……。良かろう。せいぜい最後の時間を楽しむ事だ」

「……………そんなんじゃないわよ」

 

 引き留めるCP9を軽く威圧して自由を得ると、悪魔の実の能力者によって作られたドアをくぐり抜けて店を出る。

 とりあえず、船に帰りたかった。船を降りることにしたと伝えるためだ。

 一応乗せてもらっていた関係だし、島を出るタイミングでいなければ置いて行っても構わない、と言ってあるが、あのお人好し集団が素直に出港するわけがない。

 多分、島中を探し回るだろう。そうなると非常にめんどくさい。なので、自分から別れを告げるのだ。

 菓子折りでも持って行った方が良いのかしら?とスマラはズレた事を考えながら、船を泊めた場所を目指す。

 夜も更けてきているので、開いている店も少ないだろう。用意する気はゼロのスマラだった。

 

 

 

 船を泊めている裏町の岬。メリー号が見えてきた。見聞色の反応にも、ロビン以外の全員が集まっているのが分かる。

 ただ、中から感じられる感情はいつもと違う。激しい感情のぶつかり合いだ。

 何が起こっているのかは不明だが、そんな面倒ごとの場面の中に入って行かなければならないのか……。

 

 船に登り、ドアの前に立つ。ここまで来ると、部屋の中の声も聞こえてくる。

 激しい叫び声。つかみ合いになっているのであろう音。喧嘩だ。

 

「じゃあいいさ!!……そんなにおれたちのやり方が気に入らねぇのなら、今すぐこの船から…」

「馬鹿野郎が!!!」

 

 サンジがルフィを蹴飛ばしたのであろう。中から何かが壊れる音が聞こえてくる。

 サンジとルフィの喧嘩か?と思うものの、中から聞こえてくる声を拾えばそうではない事が分かる。

 さて、この状況をどうしたものか……とスマラは悩む。いつも通りなら、状況など気にも留めず甲板で読書を始めるのだが、現状スマラがしたいと思っていることは読書ではない。

 なので、時間が惜しい、扉の奥で起こっている事など関係無いとばかりに部屋の中に突入した。

 

 瞬間、

 

「……」

「あでッ……」

 

 ドアを勢い良く開けて外に飛び出そうとしたウソップにぶつかった。

 …………。

 ウソップだけでなく、部屋の中に居たロビンを除く麦わら一味の全員がスマラに注目する。

 とんだシリアスブレイカーだろう。流石である。

 

 一番早くに反応したのはサンジとチョッパーであった。

 彼らはウソップの事を気にしつつスマラの帰還を喜んだ。

 

「あぁ良かった!!おかえりなさいスマラさん!!」

「何処に行ってったんだよっ!!おれいっぱい探したんだぞ!!」

「良かった…ロビンもだけど、スマラまで居なくなちゃったのかと思ったわ」

「………スマラ」

 

 続いてナミも笑顔で対応する。が、一番元気そうなルフィが元気ではない。先程のやり取りを一番気にしている様子だ。

 スマラは何も答えない。代わりに、ウソップがスマラに言った。

 

「……どいてくれ」

「……………」

 

 素直に場所を譲るスマラの横を通り過ぎて、ウソップは船を降りる。

 スマラの登場で場の空気が冷え切り、お互いの感情が収まったかのように思えたが、ウソップはそうでは無かったらしい。

 慌てたチョッパーがウソップを追いかけた。

 

「おいウソップ!!どこ行くんだ!!」

「……どこへ行こうが俺の勝手だ」

 

 制止させようとするチョッパーの声を振り切ってウソップは進む。ウソップの行動が気になる皆も部屋から出てくる。

 そこからは急展開だった。ウソップが麦わら一味を辞めると言い張り、挙句の果てにはルフィに決闘を申し込む。

 何が何だか分からず、この状況に全くついていけない様子のスマラだったが、聞こえた会話から状況整理。そして理解する。

 

 なるほどね。意見の互い違い。ただの喧嘩ではないのね。

 原因は……メリー号。恐らく船の査定の結果に対する決断の対立だろう。

 ………海賊にはよくあることね。よくある事だからこそ、乗り越えなければならない。

 ……………私にはもう関係ない事だけれども。

 

 

 

 ウソップは今夜10時に決闘だと言って街に向かって消えて行った。

 ルフィは何を思っているのか、男部屋でハンモックに寝そべり何かを考えている様子。ナミはそんなルフィに向かって「仲直りしなさい」と言うも、ルフィにキッパリと無理だと言われる。

 ゾロとサンジもこんなことになった原因を、意味なく押し付け合いの喧嘩になり、ナミに止められる始末。

 ウソップを追いかけて行ったチョッパーも泣きながら帰ってきた。

 一味がバラバラになっていく。ナミが不安そうに呟いたが、誰も答えなかった。

 

 

 

 しんみりとした船内。麦わら一味の現状を示すかのそうに、外の天気は曇っていく。

 そんな中、男部屋には二人の人間が居た。ハンモックに寝そべっているルフィと、その真横に立っているスマラだ。

 

「………」

「……はぁ」

「…言いたいことがあるなら早く言え。俺は今気分が悪ぃ」

 

 何時もの元気が無く、気が立っていて不機嫌そうなルフィにスマラはめんどそうにため息をつく。

 こんな状況で告げなければならないのか……。だがしかし、今がチャンス。

 

「なら、遠慮なく言わせてもらうわ。私も今日限りで船を下ろさせてもらうわ」

「………スマラも俺達のやり方が気に入らねぇのか?」

「いいえ、別に何とも。ただ、この船に乗る理由が無くなったからその報告よ」

「諦めきれねぇと言ったら?」

「貴方の意見なんか聞いていないわ。利害が一致していたから乗っていただけ。利害がないのなら去るそれだけよ」

「……………」

「じゃあ、さようなら」

 

 

 仲間一人と喧嘩したばかりだからだろうか?ルフィはスマラが思っている以上にしつこくなかった。

 だが、これでいい。現状さえ乗り越えたらなら、彼らはスマラを追ってこない。追って来れない。

 

 男部屋を出て何時もの部屋を通り過ぎる。そのまま部屋を出て行こうとして……。

 

「何処に行くんですか?スマラさん」

 

 サンジに引き留められた。内心で舌打ちを行うスマラ。よくよく考えたら現状ルフィよりも面倒なのは彼らだ。

 それにこんな状況だ。船を出ていくスマラを気にしない人たちではない。

 

「……どこへ行こうと私の勝手でしょう?」

「もう夜よ。さっき帰って来たばかりだし……まさかっ!?」

 

 頭の回転が早いナミだ。決定的な証拠が集まっていないのに、スマラの考えを読み取った。本人はそうであって欲しくないと思いつつも……

 

「そのまさかね。船を降りる事にしたわ」

「……どうしてっ!!?」

「勘違いしないでほしい点は二つだけ。私自身が決めた事。他のメンバー離脱の要因とは全く関係ない事よ」

「……ルフィはどう言ってやがる」

「さぁ?まだ諦めてないように感じているけど、現状では強く引き止められなかったわ」

 

 ゾロが肝心のルフィについて質問するが、スマラはさっきの会話で掴んだ事を掻い摘んで教える。ゾロは納得したらしく、それ以上は何も言ってこない。

 しかし、ナミとサンジは納得してない。声を上げてその理由を聞こうとする。

 

「今になってどうして……」

「そうだぜ。何か悩み事があるなら俺たちに任せろって」

「……そんなじゃないわ。単にこの船に乗る理由が無くなっただけ。悩みがあるとすれば、引き留めるあなた達をどうやって黙らせようか?と悩んでいることくらいよ」

「………」

「でも…」

「分かった」

「ナミさん?」

「あんたがそういうのなら、そういうことにしといてあげる。戻りたくなったらいつもで帰って来なさい」

「………そうね。目的が出来たら……」

 

 そうやってスマラは麦わら一味の食客の立場を捨てた。

 サンジがまだ何か言いたそうだったが、去るスマラの後ろ姿を見て止めた。何となく、噓ではないと。本人が決めているならと、引き留められなかったからだ。

 ただ最後に、もう一度だけ晩御飯を作ってあげたかった……。

 

 

 

 

 

 麦わら一味とのお別れを済ませたスマラは街を歩く。既に日は完全に落ち、出歩いている者はほとんどいない。活気ある街並みは静かで落ち着く。

 別に別れに悲しい感情は抱かない。ただ、数か月間で慣れしんだ騒がしい日常が、それ以前の一人旅をしていた頃に戻っただけだ。読書が捗るいい機会ではないか。

 なのに、長編小説を読み終えた後のような感情が湧き出るのは何故だろう……。

 自分のことながら、スマラはこの感情を支配できないでいた。

 

 しかし、悩んでいても読書は出来る。風が強いが、能力を使えば無効化、または弱体化可能だ。

 行儀が悪く、本の活字も読みにくいが、何処かの屋根の上で読書に浸りたい気分だった。

 明日の何時に出発か知らないが、朝方には戻れば問題ないだろう。スマラはそう結論を出すと、跳び上がって屋根の上に赴く。このまま、月明かりが消えるまで此処に居よう。

 

 

 

 朝、というかまだ早朝にも満たない時間帯のことだ。

 月明かりはほとんど消え朝日が顔を出し始めた頃、街中が妙にざわつき始めたのだ。

 見聞色の覇気で常に周りの安全を確保を行っているスマラにも、そのざわつきは感じ取れた。読書の手を一旦止める程に。

 

「…怒り?……戸惑い?…心配?……よく分からないけど、面倒な事件が起こったのね」

 

 見聞色の覇気で感情を読み取った結果、この街にとって無視出来ない様な事件が起こったようだ。

 ……CP9が出発を明日(実質今日)に指定している事といい、何かしらの関係があるとしか思えない。

 

 スマラは欠伸を抑えながら屋根を降りてCP9が根城にしているバーに向かう。

 歩いているとすれ違う人皆が騒ぎ立てている。まだ新聞も出回っていないだろうに……それ程その事件がこの街にとって重要であると言う事だろう。

 一部取り寄せて読まなければ……。

 

 

 

 

 

 バーの目の前だ。

 スマラは今、困っていた。

 

 スマラがいるのはCP9が根城にしている思われるバー。如何に根城と言っても、表向きはバー。平日の朝である現状、当然営業している。現に客と思わしき人物が数名入っていった。朝っぱらから飲んだくれかよ……。

 どうしようかと迷ったスマラは、結局バーに入ることにした。バーというのだから、簡単な食事位できるだろう。夜ご飯を食べていないからペコペコだ。

 

 店に入ると、カウンター席に着く。店主に注文しようとして……。

 

「っっと、こんにちは」

「へへ、いらっしゃい。早いお帰りで」

「……えぇ。とりあえず、適当に朝食を頼めるかしら?」

「おう。ちょっと待ってな」

 

 

 驚いた。店主の男とCP9の気配が全く同じだったのだ。

 驚いたスマラだったが、声を上げる様な失態はしない。諜報活動に酒場の店主として情報集めとは、これまたよくある状況だからだ。

 向こうもスマラの事を気づいているらしく、普通の接客に混ぜて対応してくる。

 さっさと静かな場所に移動したいのだが、向こうも予定がある。ここでご飯を食べながら読書をして待つとしよう。

 リュックサックの中から本を取り出して読み始めると、外の喧騒など気にならなくなる。

 

 少し経つと店主が運んできた料理を口に運びながら読書。食べ終わってもアルコール度数の低いカクテルを頼んで読書。酒の勢いに酔ってナンパしてくる酔っぱらいを無視して読書。怪物の置物みたいな婆とその孫娘、猫だけどホントはウサギを連れた海列車のシフト駅の駅長がやって来ても読書。フランキーと呼ばれるウォーターセブン裏の纏め役がやって来て、百万ベリーという大金をばらまいても読書。

 とにかく読書を堪能して時間を潰した。いや、これなら待つことよりも読書がメインになっているまである。

 

 時間がかなり経ち、ウォーターセブン特有の災害『アクアラグナ』の避難勧告が放送されると、皆家に帰って災害に備え始める。

 バーにはスマラと店主、数名の客しかしなくなる。

 

「皆すまねぇ、今日はもう店じまいだ」

「ん?そうかい」

「んだよ~。これからって時に」

 

 店主が店じまいをすると言うと、客たちは愚痴を言いながらも帰っていく。案外と聞き分けの良い市民たちだ。

 最後の客が店を出て、店主が入り口に鍵を掛けると……壁にドアを作って奥の部屋への入り口を作った。

 

「お前はこのままブルー駅を目指せ。俺達は仕事を行ってから向かう」

「ブルー駅?」

「貴様は一度エニエスロビーに向かってもらう。そこからまた指示が降りる。質問は?」

「ないわ。せいぜい気を付けることね」

「……ふん。我々に勝てる人間などこの島には貴様くらいしかおらんわ」

 

 店主から仕事の服に着替える為だろう。店主はスマラに指示を出すと自身はドアをくぐって消えて行った。

 そうすると、この場所にはもう用事がない。スマラは、店を出て目的地であるブルー駅に歩いて向かう。

 

 

 

 外はアクアラグナの影響か、台風やスコール並みの突風が吹き荒れている。

 街は誰一人として歩いていない。居るとすれば、ただの一般市民では無い者だろう。かく言うスマラもその一人。

 

 突風は時間が経つにつれて酷くなっていく。それは、ただの一般市民なら簡単に飛ばされてしまうようなレベルだ。鍛え抜かれた者でないと簡単に歩けない。

 そんな突風の中をスマラはいつも通り歩いていた。突風などものともしない足取りで本を片手に、視線と思考を本に向けて。ホントにいつも通りだ。

 

 

 

 

 

 ブルー駅の駅前広場では、場所を覆いつくす程の海兵と政府の役人が周囲の警戒をしていた。

 これより、長期間に渡る任務にけりを付けたCP9がやって来る。重要な任務であるがゆえに場は緊迫した状況が続いていた。

 失敗は有り得ない。この場には海軍本部大佐に加えてもう直ぐCP9もやって来る。襲撃は有り得ない戦力であるが、万が一を考えない程政府もバカではない。

 作戦開始数分後、一つの山場が訪れた。

 

「おい、人が歩いて来てるぞ」

「は?そんなわけ……ホントだ」

「警戒!!報告にあったターゲットかもしれんが、油断はするなよ」

「「「「はっ!!」」」

 

 一人の海兵が見つけたその人物。この場に現れる一般人は皆無に等しい、そんな余裕ある気持ちが状況判断を鈍らせる。慌てた上司が号令をかけて警戒態勢にはいった。

 

「……こんな天候の中なんなんだよ…」

「弱そうに見えるが、軽い足取りに加えて読書だと……!!?」

「中佐、彼女は一体……」

 

 歩いているだけで場の空気を一変させた女。

 彼女は進行方向上に、海兵、政府の役人が隊列を組んで己を警戒していても気にしない。

 クリーム色の髪の毛を伸ばし、綺麗な顔立ちに焼ける事を知らない肌。どこぞのお嬢様を思わせる高価そうな服装でいて、動きやすそうでもある。

 極めつけは軽い足取り。突風などものとせずに読書をしながら向かってくる女は、見るからに異常だ。

 

 そう、彼女こそが昨日急に作戦に組み込まれた確保対象、スマラである。

 だがしかし、スマラは海賊でない故に顔が広まってない。此処にスマラとされる女性がやって来る事は知らせれているが、本人確認が完了するまで警戒を解く訳にはいかない。

 

 部隊のリーダーだろう、直剣を持っている長身の海兵がスマラの前に一歩出る。骨の様な肌をしている割には熱血な心意気を持ったTボーン大佐だ。彼が今作戦の海軍側の責任者である。

 

「失礼、貴女が「スマラ」で宜しいでしょうか?」

「………」

 

 スマラに話しかけるTボーン大佐であるが、それに対する反応は無し。

 「あの……」と再び呼びかけるTボーン大佐。少し哀れだった。

 

「貴様ッ!!大佐の前だぞ!!」

「……」

「大佐ッ!!明らかに怪しい奴です!!」

「捕らえましょう!!」

 

 返事をしないスマラに痺れを切らした部下たちがTボーン大佐に囃し立て始める。

 Tボーン大佐も部下たちの声を無下にできない。しかし、一般市民を守ることに熱意を注いでいる彼が「もし彼女が耳の悪い一般市民だったら?」と言う思いが行動を起こす事を拒否していた。

 

「……五月蠅い」

 

 と、その時、誰もが寒気を覚える様な感覚が場を支配した。そう、超極悪人に睨まれた時の様な感覚だ。

 発生源はもちろんスマラ。彼女は少々いらだっていたのだ。

 なぜなら、キリの良い場所までもう少しだというのに、邪魔な雑音が耳に入って来るからだ。

 

 

 

 ……実にスマラらしい単純な理由だ。

 しかし、それでもスマラの声は海兵や政府の役人の動きを止めるに至る迫力を持っていた。それが小さな声であったとしても。

 唯一動けるのはこの場で一番実戦経験が高いTボーン大佐のみ。そんな彼でも立ち直るに数秒の時を要した。それだけあれば、スマラはキリの良い場所まで読み進めて栞まで挟む事が可能だった。

 

「で、私がスマラだけど、あなた達は私をどうしたいのかしら?」

「……っ!!?」

 

 どうしたいのか?

 それが、捕縛なのか確保なのか、連行なのか同行なのか。向こう側のとらえ方によっては、スマラはこの場から消える。

 それが分からないTボーン大佐ではない。「彼女とは敵対するな。彼女から同行してもらえ」そう命令は下っている。

 故にTボーン大佐は、

 

「すみません。部下の失態は私の失態。深くお詫び申し上げます」

「……どうだっていいわ。それで?ここで時間まで待てと言うわけでないわよね?」

「勿論のことです。誰か彼女を海列車に案内するのだ」

 

 頭を下げてスマラに許しを請う。スマラは気にしない様に許すと、早速暖かい場所に案内するように命令した。

 別に能力を使っていて寒さを感じなくても、突風の影響を受けていなくても、快適な環境に移りたいスマラだった。だって能力の使用は疲れるのだもの!!

 

 Tボーン大佐も、世界政府もスマラには同行を願っている立場だ。こんな悪天候の中、時間まで待たすつもりは毛頭ない。直ぐに計画通りスマラを海列車に案内する。

 

 

 

 

 

「こちらになります。そう時間はかからないと思いますが、出発までの余暇はご了承ください」

 

 政府の役人に案内された場所は海列車の第一車両。貴賓室なのだろうか?物凄く豪華だ。

 

「………」

「では、私はこれにて失礼させていただきます。何かご要望がございましたらそちらの専属の者に申し付けください。出来る限りのことを対応させていただきます」

 

 政府の役人はそう言うと列車に数名の護衛兼見張りを置いて出て行った。それなりの地位に就いているだろう彼もまた、多忙なのだ。

 

 

 さて、政府の役人が出ていくと、車両内はシーンと静かになる。ここはスマラとロビンのためだけに用意された車両だ。現在は役人が数名待機しているが、海列車が出発すると第五車両に引き込む。

 スマラと数名の世界政府の役人。それとは別にもう一人だけ乗っていた。侍女服を着た少女。先ほど紹介された専属の者なのだろう。

 

「先ほどご紹介に預かりましたシルズです。これより貴女様の身の回りのお世話を務めさせていただきます。どうかお見知り置きを…」

「……そう」

 

 見事なお辞儀を披露してスマラに首を垂れるシルズと名乗った少女を、スマラは無言で見つめる。

 顔を上げたシルズはスマラの視線に一切反応せずに立ち尽くす。

 

 

 何かを探るようにシルズを覗き込むスマラと、全く反応せずに立ち尽くすシルズ。

 緊迫した時間が経つ。それは、ほんの数秒だったのかも、それとも何十分もそうしていたのかは分からない。

 やがてスマラは視線を外した。満足したかのような目線だ。何があったのかは本人しか知り得ない事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は少しだけ移動して、ブルー駅の一角。影に紛れるように姿を隠して辺りの様子を伺っている人物がいた。

 

「しかしまぁ……海軍に政府の役人共、よくも俺たちに矛先が向かねぇもんだなこりゃ」

 

 金髪をなびかせ、口元には煙草を吹かしている。

 麦わら一味のコック。サンジだった。

 

 彼は日中ロビンを探し周り、ようやく再会出来たと思いきや意味不明な言葉を残して目の前から消えた。

 一緒にロビンを探していたチョッパーをルフィの下に返して、一人別行動をとっていたのだ。

 

 彼の評価を行うのなら、麦わら一味のNo.3だろう。コックでありながら、戦闘員としても多彩な足技を披露して実力を示す。

 しかし、麦わら一味の主力の中では彼は特出するべき点がある。それは頭脳だ。

 考える頭を持たないルフィはもちろん、ゾロですら基本的に力技で物事を解決しようとする。そんな中、サンジだけは一味の中も上位に匹敵する頭脳を用いて戦闘に挑む。

 

 その頭脳を用いた結果、導き出した答え合わせを行うためにそこにいた。

 ロビンちゃんは何故急に麦わら一味を辞めると言い出した?チョッパーとはぐれた後からだ。その間に何者かがロビンちゃんと接触、説得か脅して一味を抜けるように言った。それが青雉が言っていた暗い闇だとしたら?「あの女は必ずお前たちの手に余る」

 だからロビンちゃんは俺たちから逃げる。なぜ逃げる?会いたくないからだ。何故会いたくない?もしも、会ってしまったら決心が鈍るとしたら?ならば早く逃げたいと思う。

 

 だから、そのチャンスが唯一ありそうな海列車の駅で待ち構えていたのだが……。同じくして一味を抜けたスマラを発見した。

 初めに思ったのが何故ここに?だった。ここにいるのは海兵や世界政府の役人たちだけだ。

 サンジが隠れてロビンを待ち構えていると、周囲を気にしない足取りでスマラ現れた。初めは単に迷い込んだのだろうか?と思ったものの、海兵たち空気が一変して緊迫した雰囲気になる。サンジは慌てて飛び出そうとするのをこらえ、そのまま成り行きを見守った。

 結果、スマラは駅内に案内される形で消えていった。これから導き出される答えは、

 

「スマラさんは元々世界政府の手駒だったか……。それとも別の因果が働いているのか……」

 

 どちらにしても決定打が撃てる情報ではない。彼女は言っていた。情報を仕入れるのはとても大切な事だと。己の知ってる情報だけで決めつけてはいけない。

 サンジは船に乗った当初のスマラの言葉を思い出すつつ、状況が動き出すのを待った。

 

 

 

 

 

 

 そして時は流れる。麦わら一味とスマラの舞台はウォーターセブンから場所を移動していく。

 それが因果なのかは誰にも分からない。それでもスマラは一つの事を確信していた。それが信頼なのか、経験法則なのか、本を読み続けた事で養った予測なのか、はたまた見聞色の覇気で視た未来なのか……スマラ自身にしか分からない。

 

 

 

 彼らは――――――麦わら一味は仲間を絶対に見捨てないだろう。というめんどくさい未来を見据えてスマラはため息をつく。

 

「何にかご不満でもありましたか?」

 

 ため息を不満と解釈したシルズがいそいそとスマラの要望を聞く態勢に入る。が、スマラはやんわりと否定した。

 

「いいえ。ただこれからの事を思ってため息が出ただけよ。不満があるわけではないわ」

「そうですか。分かりました」

 

 表情筋が死んでいるわけではないが、心の中を見せない厄介な者を付けられたものだ。とスマラを毒吐きながらため息をつく。今度は誰にも悟らせないように心の中でだ。

 流石世界政府が用意した侍女だ。表情を変える事はあれど、心の中で思っている心情を全く外側に出さない。それは物語に登場する本物の侍女のようであり、スマラを探るスパイでもあるかのようだ。

 そのことをスマラは理解している。ということを向こう側も理解しているのだろう。そしてスマラもそれを理解しているからこそ面倒だ。

 

 しかし、暫くはこの主従関係を演じてみるのも悪くないかもしれない。

 麦わら一味の船に乗っていた時のような新鮮味を味わえるかも知れない。物語のような関係に憧れがないわけでもないし……。

 

 

 

 スマラは全て理解しながらも生きている。なぜなら、それが最も利害が一致しているからだ。

 麦わら一味然り、世界政府然り。誰もがスマラを甘くみている。考え方と実力を。

 だから、分からせてあげなくてはいけない。だってそれが……

 

 

 スマラと言う人間(バケモノ)なのだから。




疲れた……。こんなにも長々としてしまい、申し訳ないです。でも、どうしても大晦日なのだからここまで行きたかった!!!

今年最後の更新でした。次回からはエニエスロビー編をサクッと進めていきたいと思います。
更新日時は少なくても6日以降ですね。お正月でも休み無しで頑張っていきたいと思いますよ~!!

次回作品に向けてのアンケート。詳しくは活動報告にて

  • 原作SAO
  • 原作ありふれた職業で世界最強
  • 原作ハリー・ポッター
  • カルデア職員
  • 原作ワンピース
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