麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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少しの間お待たせしてすみません。最近創作欲が出て来たので、更新速度アップで行きますよ!!


320 五頁「ローグタウンの裏道は……」

 スマラを乗せた一向は、ローグタウンへと船を進めていた。

 

 

 東の海の海賊が偉大なる航路に入る際、必ずと言っていいほど立ち寄る島がある。いや、島よりも街と言った方が正しい。つまりそれがローグタウンだ。別名『始まりと終わりの街』

 かの有名な海賊王、ゴールド・ロジャーが産まれた街であり、最期を迎えた街でもある。二十四年間続く、大海賊時代幕開けの街。

 海賊のみならず、一般の観光としても東の海頭一と言っても良い程有名な場所。

 

 当然、スマラも数年前に訪れた事があった。目的は勿論、物流が盛んなこの街で見知らぬ本と出合う事だったが。

 

 

 

 スマラがこの船に乗ることを妥協した次の日。空は青く澄み渡り、空気も美味しい午前中の事。

 サンジが作った朝食をミルクと一緒に飲み込むと、スマラは午前の読書タイムを始めた。

 

 実に良い朝だ。昨日までなら、服を着替えて朝食の準備をしなければならなかった。そして、読書をしながら朝食を食べつつ、今後の予定を緩やかに決めていた。

 だがしかし!!今日は今までとはひと味違う!!

 なぜなら、行き先はこの船の船長のルフィが決めることだし、朝食の準備は全てサンジが行う。スマラは、殆どの事をしなくても良くなった。

 

 つまり、それだけ読書タイムが伸びた。というわけだ。

 

 

 

 サンジが朝食の後片付けをする音と、スマラが本の頁をめくる音だけが部屋の中に響く。その他の連中は、帆を張ったり、風を読んで指示を出したり、昼寝?に走ったりと甲板に出ている。

 

 

 そんな物静かな朝食後の時間。初めは、いつも通りに皿洗いをしていたサンジだったが、不意に、トントン、トントン、トン、と不規則なリズムが耳に入ってきた。

 「誰だ?」と思ったものの、この部屋にいるのはサンジとスマラのみ。音の正体がスマラが発していると直ぐに分かる。

 サンジが手を休めずに顔を上げると、そこにはスマラが顔を綻ばせている表情が目に入り、そして目がハートマークになった。

 

 

 普段は無表情でいる事が多いスマラだが、彼女が最も表情を変える時と言ったら、読書している時と言えるだろう。え?何時も読書しているだろう、って?

 それは勿論、普通の読書タイムでは無表情で読書をしている。だが、色々と条件が重なり、スマラの気分が良くなっていると、こうして無表情から美しい笑みを浮かべるのだ。

 無論、スマラは自分の表情の変化に気づいていない。気づいていたとしても、スマラは無視する。本が読めれば他の事はどうでもいいのだから。

 

 

 自分の表情の変化に気づいていないスマラはさておき、目をハートマークにさせてスマラを凝視しているサンジはというと……。

 

 

「スマラさん、朝食後のデザートかお飲み物でもいかがでしょうか?」

 

「………………あっ、ごめんなさい。集中し過ぎてたわ。そうね、温かいミルクティーでも貰おうかしら?」

 

「喜んで!!」

 

 

 スマラに尻尾を振っていた。

 

 集中していたスマラは一拍置いてからサンジに気づき、適当な飲み物を頼んだ。それと同時に、集中し過ぎていた事に自分を叱る。

 

 

(この船での居心地が良すぎて、つい集中し過ぎたわ。駄目ね。どこに行っても、何時何処何が起きても対処出来るように集中しなくてはならないのに)

 

 

 そうだ。仲間になれと勧誘してきているとは言え、この船は海賊船。つまり、何時裏切られて殺されたり、慰め者にされるのか分からない。

 これまでの人生、何度もそう言った経験があったのに今回の失態。

 スマラは、自分を厳しく律して、二度と同じ様な事がないように気を付けよう、と再決意する。例え、この麦わらの一味が、これまでスマラが出会った普通の海賊団と違ってもだ。

 

 そう思って何時もの無表情に戻ったスマラを見て、サンジはスマラの表情が消えた事を後悔する。

 あのままスマラの美しい笑みを堪能すればよかった!!しかし、スマラの読書タイムに自分が入れた飲み物を差し入れられた!!と自らの行いに関して、懺悔と歓喜を繰り返していた。

 勿論、スマラは全く気付かなかったが。

 

 

 サンジはスマラにミルクティーを入れた後、食器の片付けを終えて外に向かう。手にはコップとティーポット。もう一人の女性であるナミに持って行ったのだろう。

 そして、そのまま戻ってこなくなり、船内はスマラだけの空間となった。

 

 

 

 スマラが一人になって何時間が経ったであろうか?もしかしたらたった数十分かもしれない。

 が、しかし。読書中のスマラが体感時間で数時間であっても、数分であっても、スマラには関係ないことだ。周囲の警戒を疎かにしていない状態でも、人並みの集中力を維持できる。

 なので、読書中のスマラにとって『時間』とは無意味な概念なのだ。いや、無意味とも思っていない無関心ぶり。

 

 そんなスマラにとってどうでもいい『時間』が小一時間程流れた時、外から声が聞こえてくる。

 

 

「よっしゃー!ローグタウン行くぞ!!」

 

「「おーう!!」」

 

 

 如何やら、東の海における偉大なる航路の入り口とも言われている島が見えてきたようだ。

 スマラは読書を続けながら、島に着いたらどうしようか?と思考を巡らせた。

 

 一度は訪れたことのある島だ。ならば、颯爽と本屋に向かい、そこで物色して船に戻ればいいかしら。

 死刑台?一度だけ見たことがあるが、特に惹かれなかったからパスで。

 

 と、これから手に入る新しい本を想像して、スマラは少しだけ気分を向上させた。

 

 

 

 三十分も経たない内に船はローグタウンへと到着し、港に船を止めようとしていた。

 読書も一旦切り上げ、甲板へ出たスマラは、これは不味いと思い少し助言をする。

 

 

「こんな所に海賊船を堂々と停泊出来る訳ないでしょう?海軍に確保されるのがオチだわ」

 

「そうね。もう少し離れた場所に泊めましょう。教えてくれてありがとね」

 

「折角手に入れ足ですもの、早々にリタイヤされても興醒めだわ」

 

「心配してくれたのか?ありがとな」

 

 

 ナミはスマラにお礼を述べると、船を別の場所に泊めるべく指示をとばす。すると、サンジを筆頭に男三人が船を動かした。

 他の三人がナミの指示に従って船を動かしている中、ルフィがスマラの隣にやって来る。緊急でもない今は、三人でも人手は足りるらしい。

 ルフィはスマラが読書をしていないことを目に付け、ここぞとばかりに話しかける。

 

 

「本読んでねぇな。街に出掛けるのか?」

 

「それはそうよ。島に着いても船にこもりっぱなしではなくてよ。この先も勝手に居なくなるかもしれないけど、出航までには戻ってくるわ。だから、変な勘違いはしないでね」

 

「分かった!ところでさぁ、街に行くんだったら一緒に行こうぜ!!処刑台見るんだ」

 

 

 島に着いたら自分は勝手に行動するから。そう伝えたつもりだったが、流石考えることを停止しているルフィ。彼には全く通用しない。

 スマラはため息を吐くと、ルフィの誘いをキッパリと断った。

 

 

「私は書店に行きたいの。目的地が別のだから、一緒に行動する必要はないわ」

 

「えぇ~……。ま、いいや」

 

 

 言葉外で、船に乗っているだけでも感謝しなさい!!とも言っているスマラ。伝わるはずが無いのに……。

 ルフィはスマラの断りに一瞬不貞腐れたが、直ぐに気持ちを切り替えた。昨日スマラを妥協させたしつこさはどこに行ったのだろうか?と驚く程の清々しさで。

 

 

 

 

 

 ドタバタと定着準備も終わり、一同は船を降りる。そして、海岸沿いを歩いて街の正面入り口へと向かった。

 

 正面入り口は観光客で溢れかえり、これが東の海最大の都市なのか、と一行を驚かせる。

 四、五階の建物が並びに並び、入口付近から果物や食材を売っているマーケットが賑わい、観光客がガヤガヤ、ワイワイと楽しそうに歩いていた。

 建物と建物の間掛かる装飾を彩った柱には「Loguetown」こここそが、街の入り口だ。

 

 一行は船に集合する時間を決めると、それぞれ思い思いに行動を開始する。

 ルフィは処刑台を見てくると宣言し、サンジが食材集めに、ウソップは装備品集め、ゾロが折れている刀の補充にナミからお金を借り、各々街中に入っていった。

 スマラも時間は有限だ、サッサと予定を終わらせよう。とばかりに足を動かして街中に入ろうとすると、ナミがスマラを呼んだ。

 

 

「ねぇ。良かったら一緒に服でも見に行かない?」

 

「……何故かしら?」

 

「だってこんな大きな街よ。いい服も沢山あるに決まってるわ」

 

「いえ、貴方が服を買いに行く理由を聞いたのではなく、私を誘った理由を尋ねているのだけど……」

 

 

 一緒に買い物をしようと誘ってくるナミに、スマラは全く意味が分からなかった。

 スマラが意味が分からなくても当然の事だろう。なぜなら、スマラはこれまでの人生、殆ど一人で生きてきたからだ。

 友達、どころか知り合いも殆どいないスマラに、買い物のお誘いは通用しない。そんな誘いなど今まで一度も受けた事がないからだ。

 

 だから、スマラはナミが自分を誘う理由が全く理解できなかった。

 そして、分からない事は即座に質問するスマラに、ナミは答える。

 

 

「だって、スマラって持ってる服少ないんでしょ?だったら見に行かないかなぁ?って思ったのよ」

 

「確かに持っている服は少ないけど、破れないから問題ないわ。……というか、何処で見たのかしら?」

 

「破れないって……あぁ、スマラには便利な能力があったものね。見たのは、貴方がリュックサックの中を点検している時。ってそうじゃなくて!!」

 

 

 如何やらスマラがリュックサックの中を点検している時に見た、スマラの着る服が圧倒的に少ない事がナミの気に触ったらしい。

 

 

「スマラは綺麗なんだから、少し服に気を使えば最も良くなるんじゃないかな?」

 

「……綺麗?そうなのかしら?でも、興味ないわ。一人で巡ってちょうだい」

 

 

 しかし、スマラは服が少なくても全く気にしない。女の子だから着飾るということに興味を持つこともなく。そんな金あったら本に充ててるよ!!精神だ。

 スマラはナミの誘いを一蹴すると、人混みに紛れて歩き始めた。

 

 

「あ、ちょっと待って!!ってもう見えなくなっちゃった……」

 

 

 ナミはポツンと一人取り残された。しかし、こうしても居られないのは確かだ。

 ナミは、スマラと言う初めての女性仲間と一緒にショッピングしたかった気持ちを抑えて、自分の買い物に出かける為、人混みの中に消えていく。

 

 

 

 

 

「何だったのかしら?」

 

 

 スマラは一人で呟くが、返ってくる返事は何もない。

 人混みの中に紛れたスマラだったが、既に人通りの少ない裏道に入ったからだ。

 表通りとは異なり、裏道は薄暗く小汚い。

 

 偉大なる航路の入り口とも言って良い程の街なのに、表通りには海賊が殆ど見られないのは可笑しいと思うだろう。

 どんな海賊船でも、物資の補給は必要不可欠である。ならばその物質は何処で手に入れるのか?

 答えは幾つかある。他の海賊船から奪い取る。街から強奪する。と如何にも海賊らしい補給方法だが、広い海原で、他の海賊船や地図も意味をなさない偉大なる航路では街に早々辿り着く訳がない。

 では、どうやって補給物資を調達しているのか?一番の正解は、他の海賊船や街から強奪もするが、大きな街の裏地で海賊にも商売をしている商人から取引をする。が一番多い物資補給方法だ。

 

 ということは、今スマラが居る裏道は海賊や表に出れない様な者達にとって住処であり、一見上品そうに見えるスマラは格好の的なのだ。

 ほら「良い餌が迷い込んで来た」とばかりに、スマラの身柄を狙う者達が集まって来た。

 

 

「おうおう姉ちゃんよぉ~」

 

「こんな所で何してるのかなぁ」

 

 

 スマラを獲物と見定めたならず者等が這いよって出て来る。一体何処からスマラが裏道に入ったことを知ったのか?と疑問に思うほどだ。

 スマラはならず者達をチラっと確認を取ると、溜息を吐き少し威圧を掛けて返答を返す。

 

 

「表の通りは人が多すぎて鬱陶しいからこっちに来たのよ。それで、道を譲って下さる?」

 

「おうおう、譲ってあげるともよ」

 

「その前にちょっとこっちに来てからだがな!」

 

 

 スマラの威圧を感じたのに突っかかってくるのか、それともただ威圧も感じ取れないバカだからか。スマラを明らかに邪な感情を込めて見てくるならず者。

 そして、スマラの手を引っ張ろうとして……。

 

 

「早くこっちに……ぎゃああぁぁぁ!!!手が!!俺の手が!!!」

 

「なっ!!何をしやがったこのアマ!!」

 

「の、能力者だったのか!!?」

 

「あら、ごめんなさい。気安く触れるものだから、温度を変えてしまったわ」

 

 

 全く悪びれることもなく、己に触れようとした男に言い放つスマラ。何をしたのかは一目瞭然。

 ならず者がスマラの手に触れた瞬間、触れた相手が感じている温度量を氷点下まで下げたのだ。もっとも、感覚だけを下げたつもりが、誤って周りの温度量自体を下げてしまい、触れたならず者の手がカチコチに凍ってしまった。

 スマラはそれだけ、書店を楽しみにしていた。というわけだ。

 

 スマラが能力者だと分かると、ならず者達の態度は一変する。これからスマラに行う行為を想像してだらけ切っていた表情から、まるで化け物を見たと言わんばかりの表情に変化した。

 東の海で悪魔の実の能力者とは、化け物と同じ扱い。東の海が他の海に比べて能力者の数が圧倒的に少ないのが原因としてあげられるが、何の特別な力を持たない者からすれば能力者が化け物なのは何処の海でも同じ事。

 スマラは、これで厄介ごとが逃げてくれると安堵の表情を浮かべる。

 

 そして、案の定一目散に逃げようとしるならず者達。しかし彼らは、裏道の奥から歩いてきた者を見て歓喜する。

 

 

「あっ!!ボス!!」

 

「何だお前ら。こんな小娘にやられちまったのか?ん??」

 

「バーカ。能力者ってのは海の秘宝だぞ。そう簡単にいてたまるか。何かトリックでも使ったにちげぇねぇ」

 

「そ、そうっすね!!ボスやっちまってくだせえ!!」

 

 

 バカが増えた。

 自分に向かってくる巨漢の男を見てスマラはそう思った。しかし、実際にスマラの容姿を見て歯向かってくる連中は数多く見てきた。

 だから簡単な対処法も既に開発済み。

 なのでスマラはリュックサックの中から船で読んでいた本を取り出すと、おもむろに読み始めた。

 

 スマラが考えた結果、こういった連中は無視する。それが一番効果的な『やり方』だった。

 

 

「な!!?このローグタウンの裏社会を仕切る俺様を無視だと!!」

 

「ぼ、ボス!!落ち着いてくだせえ」

 

「ちょっと痛み付けるだけですよ!!じゃねぇと売りもんにならなくなる!!」

 

「はっ!!どうせ調教する時に同じ様な事をするんだ!!後か今かどうかの話だろ!!」

 

 

 スマラの態度に怒り狂ったボス。部下たちはボスを冷静にさせようとするが、腕っぷしもボスと言われるだけの実力が有るらしい男を止められるはずがない。

 ボスは遅いとも素早いとも言えない速度でスマラに詰め寄ると……。

 

 

「はんっ!!俺様をナメてるからこうなるんだ!!裏道に入った自分の判断を後っぶげ!!」

 

「「「「ボス!!!?」」」」

 

 

 スマラの自動反射発動!!!

 ボスは戦闘不能になってしまった。

 部下たちはどうしますか?

 

 スマラが何も防御を取らないまま読書に入るはずもなく、自動反射に吹き飛ばされて意識を失うボス。

 部下たちは腕が立つボスが全く敵わないと知ると、二人掛かりでボスに肩を貸しながら逃げて行った。

 

 

 残されたのはただ読書を楽しんでいるスマラだけだった。

 そして、これ以上厄介ごとに巻き込まれてたまるものですか!?と言わんばかりに、サッサと裏道を歩いて行く。

 

 




 はい、ローグタウンに着きました。ホントは一話で終わらせようとしたのに……。なんか、いるわけでもないシーンを挟んでしました。次話か次々話にはローグタウン出航予定。
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