麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが? 作:与麻奴良 カクヤ
エニエスロビー編もクライマックスです。
FGO
閻魔亭完全クリアしました。
歩く。歩く。歩く。
ただ歩くだけ。
それでも静まり返った街の中を歩くのは不吉なものを感じてしまう。
この島には一般人は一人も存在しない。
在住しているのは、世界政府の役人、または海軍本部の海兵隊のみ。
それ以外でこの島に足を踏み入れる者など、捕らえられた罪人が連行される時だけだ。
それを破られそうになっているのだが、スマラには関係の無いこと。
島を進み最後の建物にたどり着く。
世界政府の三大機関『エニエスロビー』が誇る司法の塔だ。
今まで通って来た街が海兵、役人の居住区域ならば、この塔は職場。ここで役人たちが日々諜報活動の記録や下調べ、報告を行っている場所。
建物に着くや否や、スマラ、ロビン、フランキーはある部屋の前で待たされる。
中に入っていったのはCP9の四名のみ。中で指揮官に帰還報告でもしているのだろうと予想を立てたスマラは、早速不機嫌になる。
「ねぇ私がここで待つ必要はあるの?早く資料室に向かいたいのだけれど?」
「申し訳ありません。こればかりは私の一存で行動出来かねます。それと、流石に資料室は機密情報が多すぎますので観覧の方は少し……」
早く部屋に帰って本を読みたい。どうせならこんな場所でしか読めないような物も……と我儘を垂れ流したスマラだったが、シルズにやんわりと窘められる。
思わず舌打ちが出てしまった。淑女にあるまじき行為だが、スマラには関係無い。やりたいようにやる。それがスマラだ。
何者にも止められる筋合いは無い。
と、待つこと数分後。
耐え兼ねてリュックサックから取り出した本を立ち読みしていると、ドアが開いて中に入る様に促される。
面倒なので視線は本に置いたままだ。
中には、先ほど入室した四名に加えてもう四名。合計八名の人物がいた。
大将程ではないが、油断ならない相手が一人。間違いなく勝てるが、それなりに戦えそうな者が二名。その辺の海賊に比べたら強いがスマラ相手となると同時でも相手にならないのが四名。話にならないのが一名。
この島で最も高い戦力を保有してる者たちの集まりだ。CP9全員がこの場に集まっていた。
その中で長官と呼ばれる話にならない戦力の男が、ロビンとフランキーをいたぶりながら話を進める。
少しばかり興味深い内容が飛び交うので、耳を傾けているが、目線はしっかりと本の活字へと向いていた。
「(あれは凄い美人チャパね)」
「だが、内包する力は本物だ。油断するなよ」
「チャパパパ。俺たちが負けるわけないチャパ。しかし、この面子の前であの余裕は凄い。長官の注意が向いたらどうなるチャパか」
「怒る…だろうな。巻き込まれたくないぞ」
フクロウのような丸い巨体を持った男……フクロウが、隣には座っているブルーノに対して小声で話しかける。内容はスマラのことだ。
噂話が大好きなフクロウは、急に下った指令の女に、当然の様に興味を示す。小声なのは、長官が気持ち良くフランキーとロビンと会話しているのを妨げないためだ。
ブルーノは軽くフクロウの相手をしてやる。二人の仲はそれなりに良好だが、現在は待機中。勝手な会話は控えるべきだと考える。それに、ブルーノはスマラに少なからず接している。それだけで、彼女には関わりたくないと、そう思わせる雰囲気を纏っていた。
近くして、少しいたぶって気が済んだのか、長官は衛兵に指示を出してロビンとフランキーを鎖に繋いでおくように命令を下す。
そして、存在を思い出したかのようにスマラを見た。ニヤニヤ顔で詰め寄る。
「これがあのスマラとか言う女かよ。思ったよりも若いじゃねぁか」
「…………」
「おい!!何とか言いやがれ!」
「スパンダム長官、それ以上はお控えください。スマラ様は機嫌が悪いのです」
スマラを見てニヤ付き、声をかけるもだんまり……本から目を逸らさずに反応しないスマラに怒る長官スパンダム。
ロビンやフランキーの時のように折檻を行いそうになる。そんなスパンダムを止めたのはシルズだった。
「それと、特に用がございませんでしたら、こちらも退出させて頂きます」
「はぁ?貴様が何時俺よりも偉くなったんだ。言ってみろ!!俺は天下のサイファポールナンバーナインの長官様だぞ!!口は慎め!!」
スマラの内心を読み取ってスパンダムにやめるように促すが、スパンダムにとってそれは下位の者による命令に聞こえてしまう。
スパンダムはプライドが高く、権力に媚びる小物であるが、父親は世界政府の中ではかなりの高い地位に居る役人だ。そんな親を持っているスパンダムは、己が偉いと勘違いしている。
だから、世界政府にとっても重要な人物であるスマラに危害を加えてはならない、と知りながらも自分を無視するスマラに怒鳴る。そのお付きであるシルズの制止も耳を貸さない。
スパンダムがシルズに怒鳴った所で事態は急変する。
だんまりだったスマラが動いたのだ。パタンと態と音を立てて本を閉じたスマラはたった一言、
「……煩い」
「ヒィッ!!!?」
軽く殺気を載せた一言に、本格的な命のやり取りという物を知らないスパンダムは恐怖で飛び上がる。
後ろに跳び下がり、あちらこちらにぶつかりながら転げまわり、やっと止まった時には部屋の隅。物凄く離れたものだ。
スマラは単にスパンダムの興味本位で呼ばれただけだと分かると、颯爽と部屋を退室する。
シルズは一応スパンダムを気にしつつ、スマラの後ろに寄り添って退室。スマラにスパンダムが怯えたことが、若干気持ち良かったりする。
スマラが退室して行った部屋では、スパンダムが悔しそうにイラついていた。
「クソッ。どいつもこいつも俺を見下してやがって……」
その呟きに誰も返さない。否、返せないのだった。
休憩したいのに、エニエスロビーと言う普段は入れない場所に入れたのに、特別な本が読めない。
それを知ったスマラの機嫌は悪いに決まっている。それに加えて、ただの興味本位で意味のない空間に呼ばれたりしたのだ、殺意くらい覚えるだろう。
それも、対象を一人に絞らず駄々洩れにしてしまった。
スパンダム程怯えはしないが、それでも緊張して動けなくなるレベルの寒気を覚えてしますCP9。
『あれ』には我々であろうと勝てる見込みが見当たらない。全員でかかっても取り押さえることができるかどうか……。
そんな中で唯一、CP9歴代最強の称号を持つルッチだけが、冷たい目で見えなくなったスマラを追いかけていた。
コツコツと足音が廊下に響き合わる。
建物が石造りなのが余計に反響し合い、音をより一層大きくしている。
歩いているのはスマラとシルズだ。
長官の部屋を出た二人は、一時の待ち時間を過ごすために用意された部屋に向かって歩いていた。先導するのは勿論シルズだ。
少し歩き、部屋にたどり着く。迷いない手でドアを開けてスマラを中に招き入れシルズ。
部屋の中はなんてことの無い一室。ただ、客人を持て成す為に用意された部屋なのか、広く、調度品も高価そうな物が飾ってある。
スマラをソファーに座らせたシルズは、備え付けの棚からティーセットを取り出して準備を始めた。
その後ろ姿を見て、スマラは思った事を質問する。
「それで、私はこんな場所で過ごさなくちゃいけないの?」
「いいえ。ここは法の島。罪人でないスマラ様が過ごすには少々場所が悪すぎます」
スマラの言葉は否定された。
シルズは「そう言えば説明がまだでした」と零すと、スマラにこれからの予定を説明し始めた。
「まず、ここエニエスロビーは中継地点でございます。護衛兼使者であるCP9の活動拠点が此処だからでございます」
「じゃあ、私は何処に向かっているのかしら?まさかインペルダウンじゃないでしょうね?」
「まさか!!あそこは監獄です。スマラ様は監獄に入れられる理由はないはずです。スマラ様は海軍本部にて不自由ない暮らしを得るのです」
ここで明かされるは最終地点、海軍本部。
それは世界政府三大機関の一つ。
何故海軍本部なのか?政府がスマラの身を確保しておきたいのなら、エニエスロビーでも良かったはずだ。しかし、エニエスロビーには戦力が少々少なすぎる。CP9と言う強力なカードが存在しているが、スマラ相手では少々小さすぎる。
もう一つ政府が管理する場所と言えば、聖地マリージョア。雲を貫く遥か上空――――――赤い土の大陸の頂上に位置する聖地。
世界政府を作ったとされる20名の王の末裔『天竜人』が暮らしている場所であり、世界政府の総本山『パンゲア城』が存在する場所でもある。
そこならば、スマラが不自由ない暮らしをするには十分すぎる設備が整っているはずだ。
しかし、そこは選ばれなかった。それはスマラと言う非常に厄介な経歴を持つ人間には、秘匿するべき情報が多い場所でもある。
故に、それなりに環境が整っており、万が一スマラが暴れても取り押さえられる戦力が集結している場所。そこが海軍本部であり。選ばれた原因だろう。
とスマラは軽く考察してみた。
当たりか外れかはスマラには知る由もないが、遠からず間違ってはいないだろう。
もしも、があればスマラは相当な戦力になるのだから……。
その実力的にも、外交的にも…………。
「海軍本部ね……」
「ご不満ですか?」
「いいえ。条件さえ呑んでくれるのなら、私は何処だって構わないわ」
実を言うとスマラ、世界政府の重要な場所に案内されるとは思っていたものの、最終的には適当な田舎でゆったりとした場所に押し込まれるものだと思っていた。
要求した物がすぐに届くことはないだろうが、それ程時間を有さずに用意してくれる適切な距離。
周りには何もなく、ただひっそりと暮らす。
ある意味、スマラの理想の最終形態だ。
ただ、海軍法部というのは少々厄介だ。
スマラは犯罪者ではなく、ただの一般人を自称しているが、スマラの実態を知る者からすれば、一般人など有り得ない話だ。
一部の世界政府関係者、海軍でもある程度従軍歴の長い者、大海賊時代以前の海を知る海賊達にとっては、有り得ない話。
その己を一般人扱いしないであろう者が多数在籍している海軍本部はスマラにとって面倒ごとの塊。
出来れば行きたくない。しかし、わざわざ意見述べて変えてもらう程の脅威ではない。
何とかなるだろう……スマラはそうやって楽観的な未来を思う。
一度己の中で意見を決定してしまうと、スマラは一切の思考を頭の中から叩き出す。
叩き出すことによって、スマラの思考の殆どが読書に割かれる。残っているのは、無意識下で制御している反射と見聞色の覇気だけであった。
外の出来事にスマラは気づかない。
否、反応しない。
見聞色の覇気では、麦わら一味が直ぐ近くまでロビンを追いかけて来ていることを無意識のうちに知っている。
スパンダムがCP9を集結させ、奈落の崖を挟んで対峙していることも、ロビンが麦わら一味に向かって本音で向き合っている事も、この島で闘志を燃やしている者たちの声も………全部スマラには届いている。
しかし、それでなおスマラ反応を示さない。全部無視して読書に集中していた。
待っているのは出発の一言のみ。
そして……
「読書中失礼します。時間は来てませんが、想定外の事態につきまして予定を早めさせて頂きます。よって、移動をお願いします」
その時がやって来た。
スマラは直ぐに本に栞を挟んでリュックサックに詰め込む。歩き読みと言う芸当を持ち合わせているスマラだが、ここはエニエスロビー。一般人が立ち入れない場所だ。
この司法の塔から正義の門までの道のりも気になると言うところ。
何時でも出来る読書よりも興味が湧くに決まっている。
シルズに案内されて司法の塔を歩く。階段を下り、如何やら地下に向かっているらしい。
海中に道を作ってあり、そこに入るためには鋼鉄の扉を開けなければならない。無論、システム的にロックされている。
流石エニエスロビー。厳重な作りになっている。
「現在麦わら一味の主力がこの塔の中でCP9と交戦中。抹殺命令が下っています」
「……」
「万が一に備え、スパンダム長官とロブ・ルッチ氏がニコ・ロビンを正義の門に連行中。スマラ様も同じ護送船に乗っていただき、海軍本部に向かいます」
「ふ~ん………」
「何か質問は?」
「無いわ。…………ただ、勝てるかしら?」
スマラは歩きながらシルズから説明を受ける。ほぼ一方的な説明だが、スマラは遮ったりせずに静かに清聴していた。
見聞色の覇気である程度の状況を把握しているスマラだが、一方的に気配だけで把握するのも限界がある。人の口から聞くことにより、より正確な情報となるのだ。
誤報ダメ絶対。誰も自分の意見を聞こうとせずに勝手に決めるのは、スマラは大嫌いであった。
スマラ面白そうに呟く。口元には若干の笑みが浮かんでいる。
シルズは困惑珍しくする。スマラの言葉の意味が理解出来なかったからだ。
勝てる?誰が誰に?
「あの、それは麦わら一味がCP9に…と言う意味でしょうか?」
「……逆もね」
「逆?」
これまでの力を見れば、麦わら一味はCP9に勝てない。だがしかし、麦わら一味は三度奇跡と呼べる逆転劇を見せてきた。
クロコダイル撃破、エネル撃破、青雉撃退……どれも格上相手に生き延びている。
彼らは戦いの中で確実に成長して行っているのだ。
そんな物語を見てきたスマラは、今度も何か起こしてくれるのではないか?と思っていたりする。
恐らくだが、覇気無しでなら世界最高戦力だ。麦わら一味は果たして勝てるのか?
逆に、そうして幾度も勝って来たであろう麦わら一味に、CP9は見事勝利を収める事ができるのか?
相手は今前半の海で最も快進撃をみせている海賊の一つと言って良い。将来は大物になるだろう海賊団だ。
それを今ここで止める事が出来るのか?それとも破られて功績にされてしまうのか?
スマラは他人事だからこそ、その結果を楽しむようにして見ていられるのだった。
スマラはそれから何を言うでもなく、黙ってシルズの後を付いて歩く。
途中でスパンダム、ルッチ、ロビンと合流し、スパンダムに嫌味を言われたが、スマラはどこ吹く風。
途中、通路に轟音が鳴り響き、誰かが追いかけて来ている事を知ったロビンが何度も立ち止まるアクシデントが発生したが、無事に海底通路を通り抜ける。
しかし、海底から海上に上げる階段の途中で事件は起きた。
それは、スパンダムが電伝虫と間違って『バスターコール』専用のゴールデン電伝虫を押していたのだ。
「よりによって!!バスターコールをかけちまった!!!」
「バカなことを!!今直ぐ取り消しなさい!!!」
うろたえるスパンダムにロビンは焦りながらも、電伝虫通信で逃げるように警告を示す。
しかし、スパンダムは冷静を通り越してとんでもない思考に至ってしまう。それは、自分が狙われる事は無い。出世のために全員死ね!!!と言った内容。
クズだ。金、女、出世、この世の男の欲望を見事に纏めたかのような男である。
そんな光景を隣で面倒そうな目で見ていたスマラは、シルズにちょっとした質問を行っていた。
「ねぇ」
「はい。どうされました?」
「そのバスターコールの標的に私も入るのかしら?」
スマラの質問。それは攻撃の目標にされないかどうかだった。
バスターコールはスマラには効かない。幾ら砲弾を撃ち込まれようが、五名の中将から狙われるようが、スマラにはその程度どうにでもなる。
ただ、それをやり過ごす為の能力行使による疲労は途轍もなく面倒だ。疲れる。
なので、出来れば狙われたくない。
そんな思いから出た言葉だった。
「いいえ。スマラ様には攻撃しないように命令が下っているはずです」
「まぁそうでしょうね。念のための確認よ。答えてくれてありがとう」
「スマラ様のお心も理解出来きます。どうかご安心をなさってください」
「待て!!ニコ・ロビン!!」
階段にスパンダムの声が響く。
ロビンが隙を突いて逃げ出したらしい。少し経って、物が破砕される音が聞こえて来る。
海楼石の手錠に縛られているロビンにそんなことできないので、恐らくスパンダムがやったのだろう。
だが、スマラには関係の無い話だ。
「良かったので?」
淡々と先を進むスマラに声をかけたのは、後ろを気にしつつもスマラに付いて歩くシルズだ。
彼女はスマラと麦わら一味の関係を深く知っている訳ではない。
故に、良かったのですか?と、元の仲間を心配しないのか?と問う。
「良かったも何も、私には関係無い話だわ。あなたは偶々一緒に船に乗ていたからと言って、会ってからたった数分の人間の為に命を投げ出せるかしら?」
「……他人ならともかく、それが主人ならば」
「そう。………何処までも従者に徹するのね」
「はい。………………もう少しで護送船に到着です。アクシデントがあったと言え、少々早く着き過ぎたみたいですので、橋が上がり終えるまでお待ちください」
そうやって会話をしている間に、ためらい橋の上に到着するスマラとシルズ。
ためらい橋。エニエスロビーにある正義の門が開き、真ん中の橋を作動する事で完成する石橋。
正義の門をくぐった先に見える小さな門が一つ。それこそ本当の正義の門。罪人にとっての天国と地獄の境界線。
その門を潜った者は誰一人として平穏な海には戻れない。
そして、誰もがそのことを実際に感じ取り、ためらうように足を止め、逃げ出そうとすることから、この橋の名前が「ためらい橋」と呼ばれるようになった。
ほら、スマラとシルズから少し遅れてやって来たロビンが逃げ出そうとしている。
髪を引きちぎられようと、石橋に頭から押し付けられようと、ロビンは噛みついて抵抗する。
そんな姿をチラッと目にしたスマラは、ほっといて前に進む。
シルズはもう何も言わない。
ロビンから「助けて」と込められた目が合ったのは、気のせいにする気だ。
そして、
「政府の要請を受けてご同行感謝します!!」
「敬礼!!」
スマラは本当の正義の門をくぐり抜け、海兵隊が整列して敬礼する中を通った。
出航まで残り僅か。
ロビンもスパンダムに捕まり、引きずられてこちらに向かっている。
スマラはそんな中、司法の塔の屋上からこちらを狙っている一人の男の気配を感じ取っていた……。
次回でエニエスロビー編は終了予定。
そして、前半の終了です。
果たしてスマラはどうなるんでしょうね~。麦わら一味に戻るのか?それともこのまま海軍本部に行くのか。
まぁ読者様なら簡単に予想付きそうですけどね。
一月中には更新します。お待ちくださいな。
次回作品に向けてのアンケート。詳しくは活動報告にて
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