麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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毎度誤字報告ありがとうございます。


621 五十四頁「待ち受ける受難」

 次の日。つまるところスマラが海軍本部に来てから三日目の朝だった。

 

 いつも通り夜遅くまで読書を行い、お外では海兵さん達が鍛錬や仕事に勤めている時間帯にやっとこさ起きたスマラ。生活リズムが麦わら一味にいた時よりも悪化している……。しかし、スマラは身分的にいつまで起きていようと、いつまで寝ていようと怒られない。基本的に自由な生活リズムを持っていたスマラだが、ここに来て更に堕落したようだ。

 

 夜更かしは肌に悪い?スマラに美容の事なんか全く頭の中にない。それでいてあの美貌なのだから、スマラの存在を確認している女海兵からの嫉妬が多い!!でも、スマラには全くもってダメージはゼロ。スマラに精神的なダメージを与えたければ、それでこそ世界の動きに関わって尚且つスマラにも関係のある情報や事件を引き起こしましょう。報復で殺されるでしょうが、そこまでの覚悟がお有りなら是非ともお勧めです。スマラの平凡な怠惰な暮らしは一瞬にして崩れ去る事が可能ですぞ。

 

 

 

 と、冗談はここまでにしておきましょう。ナレーションは真面目に戻る。あまりふざけたナレーションはいらない。そんな事を述べたいのなら、一人称系にすればいいだけの話である。

 

 三日目の朝、惰眠を貪っていたスマラがようやくベッドから起き上がると、ずっと待機していたシルズがスマラに新聞を手渡した。今朝発行されたばかりの朝刊だ。

 

 

「あら…ようやく新聞になったのね」

 

「麦わら一味の司法島事件でしょうか」

 

「そうよ。……一般人の巻き込みから島が燃え堕ちたことまで全部麦わら一味のせい。情報操作が過ぎるわね。でも、世間的にはこれくらいがちょうど良いのでしょうね」

 

「それは仕方ありません。それがこの世界ですから」

 

 

 情報操作。それが一般人にとって良いのか悪いのか……。少なくとも一般人ではない自称一般人のスマラには到底分からない。己の立場故に新聞を深く読んで情報収集を行う。たった少しの変化、疑問点を野放しににしていただけで今の暮らしが無くなる可能性がある。そんな人間、決して一般人とは言えないだろう。

 

 新聞記事を隅から隅までチェックしている最中にシルズが朝食の準備を整える。焼きたてのクロアッサンにバター、ヨーグルトとハーブティーと簡単な物だがスマラ、普通に食事が食パンだけだった日もあったので、これだけで豪華だ。税金で用意されるご飯は美味しいですね!!

 

 用意された食事を食べながら新聞も読み進めていく。すると、折込チラシのように挟ませてあった紙が数枚落ちる。

 

 

「手配書……更新されたのね。3億か。まぁ手頃な金額ではないかしら?」

 

「…普通は3億レベルになると手頃とは言えないのですが……スマラ様からしたら手頃な金額なのでしょうね」

 

「覇気も習得してないのによくやるわ。でも、新世界では通用しないでしょうけど」

 

「流石、新世界でも活躍できる賞金稼ぎの言うことは違いますね」

 

「お膳立てしているつもりなら止めて頂戴。全部必要だから行った結果よ。好き好んで危ない橋を渡る訳ないじゃない」

 

 

 どの口が言うか。現在スマラは危ない橋を渡っている最中なのだ。これがバレたら絶対に居場所が無くなる。それだけは絶対に避けたいのだが……生活費ゼロ、娯楽用品費ゼロの生活が美味し過ぎた。基本的に自制を行えるスマラだが、本の事になると我を失ってしまう我儘な性格なのだ。というか、誰だってこの条件は飲むだろう。世界政府と言うまさに世界を仕切っている機関が後ろ盾になってくれるなんて、王族でも有り得ない。

 

 パラパラと眺めながら懸賞金額について意見を述べるスマラに、シルズがよいしょ多めの受け答えを返す。それがまた気持ち悪くてスマラは止めるように促すが、シルズはまた辞めないだろう。だってそれが侍女なのだから!!

 

 朝食を食べ終える頃にはスマラも新聞を読み終えた。シルズが食器を片付けている間に、その辺に積み上げてある本のタワーの中から今日読む本を選んで傍に引き寄せる。題名だけで選んだシリーズ物の長編小説だ。耐性の無い者が目にしたら、ものの30分も経たないうちに根を上げてしまうような頁数。速読するにしろ普通に読むにしろ、スマラにとってはなんてことのないレベルの本だ。

 

 シルズが戻ってくると次に欲しい本を彼女に伝えておく。すると、余程入手困難な本でない限り一週間以内に届いてスマラは読みたい本が読める。

 

 

 

 

 

 そうやって、一日で何十冊の本を読み続ける生活が数週間続いた。一か月か二ヶ月、そのあたりだろう。正確な日数は覚えていない。そもそも、適当に海を放浪していたスマラだ。その生活や移動基盤に規則性などなく、思いだった日に即決で移動したりする日が何十年も続いた。そりゃあカレンダーの必要性を感じなくレベルに。だからスマラにとってのこの海軍での生活でもカレンダーは意味をなさない。

 

 本の発売日は?と思うかもしれないが、スマラはそこまでこだわっている訳ではない。見つけたら買う、その程度の認識だ。兎に角読めたら何でもいい。気に入っている本なら何度でも読む。最近はシリーズ物の新刊だと、政府側が勝手に買って来てくれるので、スマラは一言伝える手間が省けてラッキーだった。

 

 

 この数週間、スマラは読書だけをして過ごしていた………訳ではない。

 

 基本的には読書は止めないが、疲れたらボケーっと窓の外を見ていたり、部屋を出て街を散策したもする。何事にも気分転換は必要だ。それが己にとって好きな事でも、何時間何日も続けていれば流石に疲れて来て集中力が落ちてくる。スマラにとっての気分転換は適当に景色を見て回ることだった。そもそも、読書自体がそれほど体力や集中力を使うわけでもなく、むしろ日常に近いスマラは気分転換と言ってもする事は何もない。だから景色を眺めるのだ。

 

 勿論、景色を眺めるだけでは終わらない。いや、実際には終わるんだが…………スマラ以外にとっては、スマラが読書をしてない時間帯はとても貴重なチャンス時間だった。

 

 スマラが街を歩いていると、時折話しかけて来る人が数名存在している。それはただの子供だったり海兵の家族だったり、噂が広まっているのか普通の海兵だったり中には海軍将校レベルの大物もいた。スマラは彼らを相手したり、しなかったりと気分によって変えているが、皆興味深く接してくる。

 

 何が珍しいのだろうか?私の容姿のせい?それとも滅多に部屋から出ないから?政府の護衛対象だから?あの事件の事を知っているから……。いや、もしかしたらこれが普通なの?

 

 分からない。分からなくて疑問に思うからスマラは時折街を散策する。少なくとも、自分に敵意を持っている分けではないことは分かった。

 

 

 

 それだけではない。スマラが部屋で読書している間にも訪問して来る者は二名いた。書類仕事をサボっているガープと青雉だ。仮にも中将と大将、殆ど頂点に位置する二人なので捌かなければならない書類の数もかなりの数。サボり癖のある二人は、スマラの部屋を憩いの場として一時的に利用する打算なのだろう。

 

 今日も今日とてやって来る青雉にスマラは苛立ちを隠せない。集中して本が読めないではないか!!

 

 

「ねぇ、何故私の部屋に居るのかしら?サボりなら別の場所に向かってくれる?」

 

「つれねぇこと言わないでよさ~。ほら、今晩とかさ……」

 

 

 次の瞬間、青雉に向かって熱エネルギーが襲う。快適なはずの室内温度は急上昇し35度を超えた。余波だけでこれなのだから、青雉自身が感じている温度は軽く50度を超えているだろう。ヒエヒエの実の能力者で熱に弱い青雉にはこれ以上ない嫌がらせ行為だ。全く学ばない青雉である。

 

 

「次セクハラしたら部屋に入った途端に叩き出すわよ」

 

「分かった!分かったから室温を下げてくれ!!」

 

「自分の能力で調整したらどう?」

 

「それ、部屋事態を凍らす羽目になるんだが……」

 

「あなた、それでも大将なの?」

 

「面倒だからあんたに頼んでるんだよ!!そもそも室温上げたのはそちらじゃないの」

 

「その原因を作ったのはそもそも貴方でしょう」

 

 

 青雉、この部屋から出るか、面倒承知で能力を使って部屋の温度を調整する羽目になる。……すべて自業自得だ。分かっていながらもスマラにちょっかいを出すからこうなるのだ。

 

 なお、暑いと思っているのは青雉だけだ。スマラとシルズは、スマラの能力で二人の周りだけ普通の温度に調節しているからだ。確かに面倒な調整だが、何日も能力を使わないでいると感覚を思い出せなくなる。能力の使い方を忘れると困るのはスマラ自身だ。この平穏な生活が一生続くとはスマラも思っておらず、その時が来ても能力を普通に使えるようにしておくのがスマラのやるべきこと。

 

 この男のちょっかいは実に良い口実だった。間違っても死ぬことはない相手であり、過程が過程であるが故に逆上されることは絶対にない。実に都合のいい存在だった。

 

 

 

 こうなると青雉はスマラの部屋を出るしかなくなる。でないと、溶けてしまうか体力を無駄に消耗し続けるだけなのだから……。しかし、この日は違った。いつもなら少し脅せば直ぐに根を上げて出ていくんだが、この日は何故か居座る。

 

 

「珍しい、今日は根を上げないのね」

 

「普通なら逃げたいよ?でも、今回ばかりは仕事で来てんのよ」

 

「仕事?貴方が?」

 

 

 いつもはサボる為の口実としてスマラの部屋に入り浸っているが、今日ばかりは仕事で立ち寄っていると言い張る青雉。スマラは奇妙な物を見る目で青雉に視線を移す。海軍本部の大将を見るような眼では無かったが、それまでの言動がこの結果を招いているので青雉はスマラに言い返せない。

 

 

「俺だって若い頃には海賊退治に燃えていたぜ?それはあんただって知ってるはずだ」

 

「そうね。勘違いで付きまとわれて、一回その業績からくる自信をへし折ってあげたわね」

 

「うぐっ…手厳しいなぁ!!…………しかし、燃え上がる正義からだらけきった正義に変えた今でも、俺にもやらなければならないことくらいある」

 

 

  いや、言い返す。仮にも大将。威厳とかプライドとか上からの命令とか色々あるのだ。そこのところを配慮したうえで部屋の温度を……。あ、ダメですか。

 

 青雉、言外の交渉失敗。スマラとて青雉が言いたいことくらい簡単に理解可能だが……………今までのセクハラ行為を思い出した結果、嫌がらせ兼能力の低下を防ぐ練習を止めない。部屋の室温は40度近くまで上がってきている。青雉は更にヒエヒエの実の力を強めた。すると、スマラの口元は笑みを浮辺る。……こいつ、完全に遊んでやがるっ!!

 

 既に環境は限界、それに加えて目の前の女は楽しんでいる。青雉は久しぶりにキレそうだったが、それをグッとこらえる。ここでキレてスマラに危害でも加えたら、彼女は何をしでかすか分からない。最悪ここを出て行くまである。そこから自分に降りかかる上からの言葉を予想できないわけもない青雉は、余計にスマラに対して唸るしかない。

 

 

 一つ申し上げておこう。この間の会話の最中でもスマラはずっと手に持った本の活字から目を逸らしていなかった。実にフリーダムなスマラだ。

 

 

「で、早く要件を言ったらどう?」

 

「その姿勢は止めないんだな…」

 

「当り前よ。あなたたちの要件なんか、読書の片手間に聞くくらいで十分よ」

 

「…これでも十分重要な内容だけど……」

 

「知らないわよ。私にとってはそれくらいの価値よ。まぁ、内容次第ではキチンと真正面から向かいますけど?そうかどうかは貴方が概要を話してから私が決めるわ」

 

「………自分勝手奴だな」

 

「えぇ、私は自分勝手な人間なの。だからあそこからも逃げ出すことが出来たし、今まで適当に生きていた。今更誰かに従って生きるなんてまっぴらごめんだわ」

 

「………………」

 

 

 淡々とした声でありながらも力強い意志が伝わって来る言葉だった。青雉はその言葉に顔を伏せる。何かを考えている、思いだしているようだった。

 しかし、数秒もしない内に顔をあげた。そこには先ほどまでのだらけきった表情をした青雉の顔はない。海軍本部大将青雉としての顔があった。スマラも一瞬ながら、滑らかに動かしていた視線を止めた。

 

 ここからが本題だ。何時もみたいな何気ない会話ではなく、緊迫のある会話にすり替わるのだ。

 

 

「なぁ最近の新聞は読んでいるか?」

 

「当然でしょう。そこに文字があるのなら、私は読むわ」

 

「じゃあ話は簡単だ。今海軍が置かれている状況を知らないはずはない」

 

 

 新聞を読んでいたら分かる世界の――海軍の動き。頭の悪いものでも青雉が言わんとしようとしていることを理解できる。世界でも上からの数えた方が早いスマラが気づかないはずがない。

 

 今朝の新聞から事態が動いた日にちまでの新聞記事を頭に思い浮辺る。必要な記事だけを引き抜いて整理する。すると見えてくるのは、青雉が言いたいこととその先の言葉。

 

 

「火拳の処刑。……白ひげ海賊団。…全面戦争。……………さて、一体何が言いたいのかしら?」

 

 

 しかしスマラはとぼける。なぜなら、そのほうが都合がいいからだ。

 

 

 

 

 スマラの受難はまだまだ続く。呪いであるかのように。

 

 




あ、察し。と言う方も多いのではないでしょうか?


次回はちょっとばかり遅くなります。
10~14と旅行に行きますので、執筆作業が出来るか分からない状態ですので…。なので、いつもの倍遅いと思ってください。
その代わり今回更新しましたので許してください。せっかくの旅行なので執筆をしない可能性もあります。詳しくは活動報告に。

次回作品に向けてのアンケート。詳しくは活動報告にて

  • 原作SAO
  • 原作ありふれた職業で世界最強
  • 原作ハリー・ポッター
  • カルデア職員
  • 原作ワンピース
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