麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが? 作:与麻奴良 カクヤ
裏道でならず者達を撃退したスマラは、これ以上厄介事が起こらないようにと自分に集める認識量を下げさせ、書店に向かった。
勿論、読書を続けながら。
一件目の書店に入り在庫を物色。
面白そうなタイトルを見つけると、パラパラとめくって内容確認。この時、動体視力量を上げている為、パラパラと確認しているだけでも内容をキッチリと把握している。
内容確認後に面白いと判断すればそのまま購入決定。船で普通の読書スピードでゆっくりと堪能するのだ。
そしてまた気の惹かれそうなタイトルを探す。これを繰り返していき、全ての本棚を見終わると会計に行く。
会計を済ませると、買った戦利品をリュックサックの中に入れてまた別の書店にGO。
この街全て、までは行かないが、殆どの書店をこうして周る。
スマラが街に訪れたその日はこれが日常なのだ。
街の書店も殆ど周り尽くしてきた頃、スマラは街中が少々騒がしいことに気が付いた。
しかし、スマラの周りは特別騒がしくはない。
気になったスマラは見聞色の覇気で視てみることに。
すると街の中心部、処刑台に位置する方角に人が大勢集まっている事が判明。
ここは偉大なる航路の入り口。
どこぞの海賊がバカ騒ぎしているのだろう、と結論付けたスマラは買い物をこれまでにして船に戻ろうと決めた。
ちょうど中央部を通ることだし、ちょっぴりと見るのも良いだろう。
と、歩いていると、アイスクリームを持った少女が嬉しそうに走っているのが見えた。
少女はお父さんに買ってもらった3段アイスが余程嬉しいのか、にこやかに走り回って……少し大柄な男のズボンにぶつけてしまう。
本を読んでいる横目で眺めていたスマラは、あっ!と思ってしまう。
いくら読書以外に興味が無いと自称しているスマラでも、人の心がないわけでない。
よく見れば少女がぶつかった相手は強面の顔をしていた。
「す、スモーカー大佐!!すみません。うちの娘が!!」
「た、大佐……」
ヤクザか何か?と一瞬思ったものの、如何やら強面の男性は海軍の大佐ならしい。
少女はアイスがなくなった事に涙を浮かべるが、少女の父親はこの街頭一のお偉いさんに向かって必死に謝る。
大佐の部下も大佐にどう反応していいのやらと声をかけている。
場合によっては面倒なことになりそうね。
あの大佐がどう動くか……。
顔が強面だった事と、少女の父親が必死に謝っている様子から、スマラは能力を発動出来るように身構える。
が、そんな事は杞憂だった。
「すまんな嬢ちゃん。俺のズボンがアイスを食っちまった。次は五段を買うと良い」
そう言って、少女にアイスの料金を手渡した。二段も+して。
如何やら、強面なのに普通に良い海兵だったみたいだ。
「結構良い海兵さんね」
スマラはそう呟くと、読書を続けながら歩き去った。
「ん?今誰か言ったか」
「どうされましたか?大佐」
「いや、誰かが俺の事を噂していたような気が……」
「通行人ではなくて?大佐の先ほどの対応には我々部下一同も流石だと感じ致しまして……」
部下の言葉を聞くと、納得がいきそうな回答だが、スモーカーはどうも納得がいかなかった。
ただの通行人なら問題は無いが、先ほど聞こえた気がした声はそのような物ではない。
もっとこう、何処かスモーカーを推し量るかのような声色。
圧倒的強者からの上から目線のような……。
と考えた所で、スモーカーを呼ぶ声が聞こえてきた。
ただの部下ではない。
副官とも言える女の声だ。
「スモーカーさん!!遅くなりました!!」
「たしぎ、てめえ!!トロトロし過ぎなんだよ!!」
やっと合流したトロい副官とこれからの事件のことで、スモーカーは今までの疑問を頭の隅に追いやってしまった。
それが、良いことなのか悪い事なのかは誰にも分からない。
「あ」
「ん」
「お」
「あら」
スマラが中央広場まで歩いていると、見知った顔にで出くわした。
それも四人に。
如何やら目的の買い物が大体終わったらしく、自ずと広場に向かい合流したらしい。
ゾロは刀を三本に増やし、ナミは中身がパンパンなビニール袋を背負って、ウソップとサンジはドデカイ魚を二人掛かりで担いで。
魚図鑑も当然眺めた事があったスマラは、記憶を辿ってその魚がエレファント・ホンマグロだと知る。
偶然合流したので、話の内容は自然にここにいない船長についてとなった。
「で、あいつは?」
「処刑台見るって言ってなかった」
「処刑台の広場ってここじゃねぇか?」
この辺りにルフィが何処かにいないか?と話が進んでいる中、スマラは一人雲行きが悪くなってきたわね、と思う。
何せスマラは見聞色の覇気でここが騒ぎの中心だということに気づいている。それも処刑台の上が中心どころか発端だとも分かる。
スマラが処刑台をチラリと見上げると、そこには首枷をはめられて身動きが取れない状態のルフィが居た。
同時に他のメンバーもルフィの存在に気がつき声を上げる。
「「「「な、何であいつが処刑台に!!!?」」」」
(ば、馬鹿だわ。いったいどうして東の海最高額の海賊が簡単に捕まっているのかしら………)
スマラはルフィに呆れながら周囲の状況を見聞色の覇気で探る。すると、処刑台付近に海賊と思われる反応にその周りを一般人の反応が、最後に広場を覆うように配置しているのが分かった。そして、この島に居てはいけないレベルの反応も感じ取った。
さて、これからどうするか?スマラの意見としてはルフィの命などはどうでもいい存在だ。しかし、このまま散らしてしまうのも惜しいとも思う。
ルフィの勧誘に折れてしまったスマラの気持ちは既に、偉大なる航路に入り自分が訪れなかった島で新しい本と出合う気満々だ。要は行ったことのない島での新しい本との出会いを楽しみにしている訳。
なので、こんな場所で機会が無くなってしまうのは、スマラとしてはやぶさかでない。
かと言って、堂々と助けだしてルフィに仲間入りを承諾したと勘違いされるわけにもいかないし、何よりも海軍と敵対するのはスマラ的にNGだ。
さてどうしようかしら?とスマラは悩む。
が、ここはほかのメンバーの意見を聞くべきだ。と直ぐに思考を停止、読書に戻った。
無論、見聞色の覇気での警戒は怠らない。
「サンジ君とゾロはルフィの奪還をよろしく!私とウソップは船に戻って出港準備を整えておくから!!」
「え?あっちょ!!待てよナミ!!」
「分かったぜナミさん。おいウソップ!こいつ任せたぞ」
ナミはこの場を戦闘力のあるゾロとサンジに任せ、自分は処刑台と反対方向に向かって走り始めた。
ウソップはナミの指示にすぐさま反応出来ないでいたが、サンジからエレファント・ホンマグロを渡されると、尾筒を担ぎ引きずるようにしてナミを追っかける。エレファント・ホンマグロの胴体には布が巻かれている為、引きずっても本体の鮮度は大丈夫だ。
こちら側が動いている間も、状況は刻一刻と進んでいる。読書を続けながらスマラは、メインの状況を把握する。
ルフィを捕まえて処刑しようとしているのは、東の海でも悪名の高い『道化のバギー』如何やらルフィは彼を怒らせてしまったらしい。
バギーが「ハデ死刑!!」と宣言すると、彼の部下達もピストルを空に撃ち込みながら騒ぐ。と同時に民間人に行動を止めさせるのも忘れない。一々縄で縛らないのは数が多過ぎるからであろう。
その後、ルフィとバギーが言い合っていたスマラには聞こえなかった。それよりも判断しないといけないことがあるからだ。
スマラは残っているルフィ救出部隊のお二人に、私はどうするべきか?又はどうして欲しいのか?と問うこととする。
「それで、私はこれからどうすればいいかしら?」
「助けてくれって頼んでも簡単に助けてくれる訳ねぇんだろ?」
「ま、そうね。助ける義理はあるけれども、理由は存在しないわ。現状を全て打破出来る力があることは否定しないけれども……」
スマラならこの状況を一瞬で打破出来る。足が生むエネルギー量を変換させ、通常では有り得ない移動を可能とし、処刑台に居るルフィを難無く助け出す。
言っている事は簡単だが、ルフィを助け出したスマラは海軍に目を付けられる事だろう。幾ら自分が受ける認識量を減らしたとしても、この広場全てにその効果を発揮させることは無理がある。無理があるだけで、無理をすれば可能だが、凄く疲れる。
それにそうやって助け出すだけの『理由』が無い。この先の海の航海に乗せてくれる人だが、所詮はそれだけのこと。自分の労力とはまるで掛け合っていない。
故にスマラの答えは、
「最低限の援護はしてあげるわ。麦わらの彼の首が飛ぶ事態だけは回避してあげる。後は何とかしなさい」
「ありがとうございます!!スマラさん!!!」
「……助かる」
ゾロとサンジはスマラが最悪の事態だけは回避すると言うと、それぞれお礼の述べて広場の中央、処刑台を目指して走り出した。
と同時に、ルフィの大声が耳に入る。
「俺は!!!海賊王になる男だぁ!!!!!」
よりによって海賊王が処刑された位置での宣言。この場に存在する誰もがその宣言を耳にして、ある者は啞然とし、ある者は呆れ、またある者は失笑し、スマラは……。
(なれるはずがないわ。あんなひ弱な男が。でも、麦わら帽子を受け継いでいるのならッ!!)
バギーが剣を振り上げ、笑う。そして、ゾロとサンジが現れ民間人は我先にと逃げ出す。
バギーと同盟を組んでいるアルビダの指示でバギーとアルビダの部下がゾロとサンジを迎え撃つ。一人一人ではゾロとサンジに太刀打ちできないが、数とは卑怯でまたそれも力である。次々と襲ってくる下っ端の対応で二人は中々思う様に進めないでいる。
そして、バギーがまた一層と笑みを浮かべる。と同時に海軍も突撃準備を整えスモーカー大佐の号令を待つ。
バギーが振り上げていた剣が下に向かって振り落とされる。
そこで、スマラは見聞色の覇気を強めた。
見聞色の覇気とは大まかに言えば、相手の次の行動が分かると言う簡易的な未来予測の事だ。簡易的と枕詞が付けば、見聞色の覇気を鍛えれば簡易的でななく本当の未来予知が可能になる。
スマラはその未来予知を発動させた。すると、数秒後の未来にはどうやってか生き残ったルフィの姿が映し出された。処刑台が焼け焦げている。恐らく処刑台を焼き壊す程の何かが起きて、彼は助かったのだろう。
物凄い幸運である。
現実に引き戻されるスマラの視界。振り落とされるバギーの剣は、まだ止まらない。
ルフィは暴れるのを辞め、仲間の名を呼んだ。
「ゾロ!! サンジ!! ウソップ!! ナミ!!」
見聞色の覇気を発動しつつ、全体の流れを視ていたスマラと目が合った気がした。
「スマラ。 わりぃ、おれ死んだ」
(何てこと言ってんのよ!!)
これから己が死ぬとは思えないほど普通に、ルフィは笑った。スマラが二十二年前に見た海賊王と同じように。
バギーの振り下ろした剣がルフィの首を切り落とす寸前、スマラの見聞色の覇気に雷の予兆を察知した。と同時に振り下ろされた剣が生んだ摩擦により火花が走り、そこ目掛けて空の雷雲より雷が落雷する。
雷鳴を轟かせ落ちた雷は死刑台を(と同じく上に居たバギーを)焼き壊し、崩れ落ちる。スマラが見聞色の覇気で未来予測した場面と全く同じ光景だ。
落雷により広場はしーんと静まり返り、動く者はひらひらと舞い降りた麦わら帽子を拾う一人の青年のみ。
麦わら帽子を拾ったルフィは頭に被ると、
「やっぱ生きてた。もうけ」
と、偶々良いことが合ったかのように言った。その言葉に、この場にいる全ての人が唖然として動かない。
スマラも、雨に濡れている事など一向に気にせずに思考を巡らせる。
な、なんて幸運なの。彼は最後、本当に自分が死ぬつもりでいた。
なのに助かった。助かっても、なんてことのないように拾った命を喜んだ。
何なの、彼は。こんな人、私は見たことがない。
麦わらのルフィ………、もしかしたら私は、とんでもない人について行っているのかも知れないわ。
けど、これはいいチャンスなのかもしれない。死に際で海賊王になると威勢を張れる人なんてそうそういないわ。
利害が一致している間は、せいぜい上手く利用しましょうか。普通なら観覧することができない場所に保管されている本を読む為に!
スマラは思考の海から抜け出すと、雨が降っている事を思い出し、能力を使って自分に触れる雨粒を無効化させた。そして、先に走り出したルフィを追いかけるように屋根の上を歩き出す。
伝説が始まろうしていた。
後半走り気味でしたが、今作はこんな感じで進めて行きたいと思います。
次回、ローグタウン出航。遂にグランドラインに入ります。