麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが? 作:与麻奴良 カクヤ
「えぇ~~!!?レイリーのおっさん!!?」
ジャングルの中で一通り暴れ回り、ジンベエに打ちのめされて心を立て直したルフィが戻って来る。
満身創痍な上で暴れ回ったものだからか、ジンベエに背負われている。
ルフィは元の場所に戻ってきたらハートの海賊団は消え、代わりにシャボンディ諸島諸島で船のコーティングを頼んだ冥王が居た。
すっかり立ち直ったルフィはこの場所に冥王が居る事に驚きの表情を隠せないでいた。シャボンディ諸島にこれから向かおうと思っていた事も一緒に伝えると、麦わら一味のメンバーはまだ誰も集まっていない事を知る。
やがてルフィが目覚めたと知らせを受けたハンコックが姉妹共に大量の食事を持って現れる。荷車を引いているのはこの島に住む猿だ。
ハートの海賊が出港して人数が減ったのに対して、一気に騒がしくなる。その様な周囲にスマラは自然と意識を覚醒せざるを得ない。
ぼんやりと会話を聞くに、ハンコック達姉妹は冥王と面識があるらしい。「恩人」と言っているからに昔何かあったのだろうと当たりをつける。
そして話し合いは本題へと移る。目覚めたルフィはシャボンディ諸島へ向かうつもりだったらしい。話を黙って聞いていると、シャボンディ諸島での出来事へとシフトしていった。スマラも概要は知っている。当時の新聞の一面記事になったほどだ。
『麦わら一味の壊滅』
有名な超新星だっただけに話題は大きく、つい先日まで足にしていたスマラにも目に入った。その時は「遂に終わったのね…」などと期待外れの感想を抱いたのだが、「そういえば壊滅したとは書いてあったが、捕まったや死亡したとは書かれていなかたわね」と見落としに気付く。その証拠に、ルフィはシャボンディ諸島で仲間たちとの合流の意思をみせている。
ならば、シャボンディ諸島まで一緒に行けば役目は果たされた事になる。
「(待って……。この場には既に冥王が居る。ならば何があっても麦わらの無事はほぼ確定されている者……。これはお役御免でいいのでは?)」
とスマラは冥王の登場により「自分の存在は必要ないのでは?」と思い始める。もっともその通りなのだが……。
「さて、狸寝入りはそのくらいにしたらどうかね?」
「え?スマラがいるのか!!?」
レイリーがスマラを呼んだ。ルフィはレイリーの近くに見知った女性が寝っ転がっている事に今更ながら気付く。どれだけ食べ物に夢中だったのだろうか……。
ルフィが驚きながらもスマラも元へ近づき、嬉しそうにダイブを決めて……スッと立ち上がったスマラに避けられた。そのままルフィは地面にキスをすることとなる。死に掛けの怪我人に酷い仕打ちであるが、スマラにとって抱きつかれた方が鬱陶しい。そもそも、女性に抱きつくとは一体どういう神経をしているのか…。本人は単純に再会の嬉しさを表しただけけなのだろうが……。
そんなスマラの行動に納得がいかない人物が一人。
「ルフィに何をしておるのじゃ!!」
「……普通は避けるわよ」
急に殺気を感じ取ってスマラは一歩横へズレる。スマラが立っていた場所へハンコックの鋭い蹴りが通った。
ルフィから抱きつかれそうになった嫉妬と、それを避けて重傷者のルフィを受け止めなかった怒りからの犯行である。
ハンコックもそれ以上は追撃はしなかった。一度避けられたのなら二度目も同じ事だろうし、怒りと嫉妬に任せた行動だった。つい手を出してしまったとかこのことだ。出したのは脚であったが……。
地面にキスをキメたルフィであったが当の本人はあっけらかんと立ち直る。ついでにハンコックの持ってきた肉に手を伸ばしながら、今更な疑問を口にする。
「そういやスマラって何でここにいるんだ?」
「そうじゃのぉ……」
「彼女本人の口から聞くのが一番でだろう」
ルフィの疑問にジンベエが答えようとするも、何が彼女の沸点に触れるか分からずに答えにくそうに視線を向け、代わりにレイリーが面白そうに口を出す。
戦争の放送やシャッキーの女の勘を聞いているレイリーはルフィの疑問に対する答えを予想しているはずだが、その予想を本人から聞き出すように仕向ける。レイリーが口角を上げて面白そうに笑っているのが、スマラにとって非常に腹立たしい。
ルフィはレイリーの言葉を聞き、興味深々と言った表情でスマラを見つめる。無言で肉を食べながら見つめて来る様子は、一種の脅迫に感じる者もいるだろう。
ルフィの視線を受け止めたスマラは、めんどくさそうに視線を逸らしながら答えた。
「…………色々あったのよ」
「ふーん。そっか」
「あの時の私はどうかしてた…」と過去の自分を客観的に振り返って、遠い目をしながら答えるスマラ。わざわざ詳しくは伝える様子はないらしい。
ルフィは一言で興味を失う。スマラに対しては珍しいが、気分屋のルフィにとってはこの程度よくあることだ。
聞いてきたのは貴方なのに……と思わずにはいられないが、深く踏み込まれなかったのはスマラにとって都合のいい事なので黙っておく。
その後、スマラは殆ど彼らに関わっていない。一先ず女ヶ島にある本を探して読む事を始めた。
時間は無限とは言わないがそれなりにある。というのも、ルフィはレイリーの提案で二年間の修行を開始。
その間に島を出発して適当に海を放浪する生活に戻ろうと考えもたのだが、予想以上に女ヶ島にあった本の数が多く、一冊一冊丁寧に読んでいると時間が掛かってしまっていた。他にも理由は存在している。
ハンコックが思いの外構ってくるのだ。麦わら一味の船に乗っていた、戦争で三大将からルフィを守った(周囲からはそう見えている)ただそれだけでルフィの味方判定。ルフィの味方ならハンコックにとってスマラは敵では無い。むしろ、自身が知らないルフィの話(情報)を教えてくれるいい奴。
レイリーに禁止されたのか、ハンコックがルフィの島に訪れる事が出来るのは数週間に一度のみ。近くにいるのに会えない鬱憤を晴らすかのように、ハンコックはスマラに付きまとった。
心底鬱陶しいことこの上ない。
そして、半年ほどの月日が過ぎ去った。
女ヶ島の居住区域から少し離れた、自然の外壁に当たる岩山に近しい場所。
ポツンと即席の小屋があった。雨風さえ凌げればよいと言わんばかりな、こじんまりとした小さな小屋だ。
中には部屋が一つだけ。そのただ一つの部屋には少ない数の本が置かれていた。幾つもの本のタワーが出来ている。
本当に雨風さえ凌げれば良い、ここを利用する人はそう考えているのだろう。それ以外の機能が欠落している小屋だ。
そんな小屋にスマラは居た。雨風しか凌げない上、たった一つしかない部屋に本のタワーを作っている人物など、女ヶ島……世界中を探しても彼女しかいないだろう。
どんな人間にも生活必需品や生理現象が発生する。しかし、彼女なら能力でそれすらも引き伸ばす事が可能だ。
だから、この平穏な日常を満喫したく、わざわざ人里離れた場所に活動拠点を用意したのだ。
しかし、そんな理想と言えなくもない状況下でも不満が幾ばくか存在していた。
一つ目。新しい本を入手し難い。
女ヶ島は凪の帯にポツンと存在する島である。海王類の巣である凪の帯自体が天然の要塞なっており、外敵から島を守るのに大いに役に立つ。しかし、逆に考えると凪の帯は移動を制限する邪魔な物でしかない。
女ヶ島の物資の入手手段と言えば、島の動物を狩りして得る、食材を育てる、九蛇海賊団が他の海賊から物資を奪う、仕入れる。一般人が国外品を入手する手段は無いに等しい。
本だって基本的に海賊から奪うくらいしかない。貿易で多少は取引として扱うが、女ヶ島では入手できない食材や香辛料、衣服や娯楽品にリソースを回す。書物だって基本的には新聞や歴史書などの勉学に必要なものが多い。
海賊から奪うのも、偶々あった場合だけだ。そもそも、海賊になる様な荒くれ者が本など読むはずがない。読書を嗜む海賊もゼロではないが、圧倒的に少数派なのは確かだろう。
と言った点から、スマラがこの島で本を入手する事が難しい理由であった。
二つ目。女ヶ島から比較的近くに存在してる無人島へ度々派遣されるのだ。その島の名前は……
「迎えに来てやったぞスマラ」
「……はぁ」
温かく天気の良い読書日和のお昼前。何時も通りの読書をしていたスマラの耳に雑音が入る。否、一般人が聞けば天にも昇る心地が良く、声を聞けた事に感謝し、その姿を視界に入れた瞬間、あまりの美しさに石化してしまうであろう美貌の持ち主。
「ハンコック…」
「あぁそうじゃ。約束の時間になっても現れないものじゃからな。全く、何時になれば素直になるのやら」
「別に本心で協力している訳でもないのだけれどね」
スマラを迎えに来た……引っ張りに来たのはこの女ヶ島のトップ。王下七武賊の紅一点。ボア・ハンコック。同性ですら目が離せなくなるその美も、スマラの前には無力だ。
スマラはため息を吐きながら、部屋の入口に立つ彼女をジト目で見た。
全部あの老骨のせいだ。あのジジイさえいなければ私は快適…とは言えないが、それなりに良い環境で読書漬けの日々を送れたはず。なのにだ。丁度いいからと好き勝手決めて…引き籠れば女帝を使って引きずり出してくる。
昔から頭の回る奴だったが、こうもやり込められるとイライラするのだ。昔からそれなりの立場と実力があったが故に、スマラは縛られる事は多くは無かった。が、それでも世界の頂点には届かない。
能力で無意識下でも下せる雑魚ならともかく、本気でやり合っても勝てるかどうか微妙な相手な上、負けないが勝つのも難しい同格であるハンコックもスマラに立ちふさがる。
ハンコックだけでも簡単には逃げきれないというのに、本命もあるとなると絶対に逃げきれない。
能力を最大限酷使すれば勝てない事もないかも知れないが、能力を酷使しし過ぎるのは身体にかかる負担が大きすぎる。そこまでして逃げる必要があるか?と自問自答をすれば、答えはノーだ。逃げる方が余計な労力を割くだけ。癪だはあるが、大人しく従っている方が、無暗に抵抗するよりも何十倍も早く簡単に終わる。
そういうわけで、スマラは偶に発生する強制イベントへと向かう。読書をしながらハンコックの後ろをついて歩く。
残り数時間の読書タイム。その後の面倒で退屈な時間がやって来る。その前にこの時間を堪能しなくては……。
8割は去年の10月頃に完成。今年の4月頃に9割方。昨日と今日で仕上げと見直しの構成で出来ております。
以下21/10/10追記
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