麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが? 作:与麻奴良 カクヤ
善は急げ。
ルフィの救援を承諾したスマラはレイリーと共に騒動が起こっているグローブに向かう。
見聞色の覇気で状況を調べると、特出すべき反応は全部で10つ。一番大きいのは麦わら、次いで2つは麦わら一味の海賊狩りと黒足、同等なのが海軍陣営にあるので将校だろう。残りの6つの内、異質な反応は二つ。この二つが一番敵を倒しているっぽい。こうしてる間にも、有象無象ではないレベルではあるが、新世界から見たら大した事ないと分かるレベルの反応が一つ消える。残りの3つは少しだけ粘っているようだが、このままでは消えてしまうだろう。
「着く頃には終わってるかもしれないわよ」
「なに、大きな奴等は相手にしなくてもルフィ君が倒すだろうさ。我々は雑兵の牽制と時間稼ぎがメインだよ」
「それでは貴方一人で十分だわ」
急いでいるのだが、ゆったりとしたスピードで歩きながら軽口を叩き合う二人。
そうこう言っている間に、異質な反応が二つ消えた。交えた反応から察するに、麦わら一味が倒したのだろう。現場は本物の麦わら一味の登場に騒がしくなっている頃合いだろう。
騒ぎに紛れて逃げてくれたら良いが……。
スマラがそう思ってると、麦わら一味と思う反応が三つ、突出してこちらに向かってくるのが分かった。
面倒だが、アレの後ろを追っている海兵の足止めがスマラの仕事。トボトボと向かうスマラ。
スマラはマングローブを回り込んでいる海軍隊の相手を行うことにした。
無法地帯、それも偽麦わら一味が大勢集合していた場所に一般人がノコノコと現れるはずがない。そう分かっていても、ぱっと見ただの軽装な女性の登場に海兵達は驚いて足を止めてしまった。
「そこの貴女!!ここは危ないので至急逃げるように!!」
「准将!!大変綺麗な方です!!」
「馬鹿野郎!!そんな事どうだっていいんだよ。しかし…何処かで」
スマラを見て雑兵は興奮を隠せない。それでいいのか海兵と言いたいところだが、この世界には見ただけで石化させる世界一の美女も存在するので、否仕方ないのかもしれない。
足を止めてしまった海兵たちであったが、ここは直ぐにでも麦わら一味が現れて戦場になる場所だ。行く手を阻む女性をやんわりと退かす海兵。
「お嬢さん?聞こえていますか?危ないですよ」
「ええ、はっきりと聞こえているわ。非常に不本意だけど此処から動かないで頂戴」
え?と困惑する海兵たちであったがその中の一人、この部隊の指揮を任されている准将が思い当たる節を見つける。
彼は2年前の頂上戦争に参加していた。だからか、交戦はしていないが目の前の女性をチラッとだけ見たことがある。そうだ、目の前の女性は一般人などではなく……
「違う!!全員構え!!奴は億越えの賞金首だ!!」
「え?」
「は、ハッ!!総員構え!!」
准将が叫ぶと、一呼吸おいて一部隊が総員マスケット銃を構えた。呆けてた割には行動が早い。それだけで偉大なる航路、それも本部に近しい場所に配属されている海兵だと伺える。
対してスマラは銃を向けられても特に行動は起こさなかった。否、起こす必要はない。
意識一つでただの銃弾など無力に出来るからだ。流石に海楼石の弾には気を付けなければならないが、海楼石の加工はワノ国の技術。そうやすやすと使用出来る弾ではない。
通常の弾ならこの通り、スマラの肌に触れる前に方向性を弄って反射する。跳ね返った銃弾に部隊は少なくない被害を受けた。
しかし、それだけで諦める程海兵たちも弱くはない。一定の階級持ちが肉弾戦を仕掛ける。
「クソッ!!これなら!!」
「数名で囲めば流石の彼女でも……ッ!!」
「悪く思うなよ!!」
セリフだけを見たらただのチンピラである。が、実際は清く正しい(かは人によるが)海兵。悪を討ち滅ぶさんと燃える海軍准将以下数名だ。
並みの海賊なら苦戦するか負けてしまう。億越えでも苦戦は強いられる階級持ち数名のよる猛攻だ。中には六式の一部を使用する者もいた。
億越えでも苦戦を強いられる連携。しかし、億を少し超えた程度の実力しか身に着けていない海賊相手ならば、と言う但し書きが付く。
棒立ち状態でやる気がなさそうにしているスマラに海兵が突っ込む。剃を使っているのか、消えるようなスピードだ。
スマラの頭に向かって拳を振り上げる。が、見聞色の覇気で予測していたスマラは一歩後退するだけでスルリと回避した。その先に二人目の海兵が剣を振りかぶっているが……武装色の覇気を纏わせた片腕で剣を掴むスマラ。そのまま力を込めて折る。からの、回し蹴りをして三人目の海兵を二人目と同時に処理。左右から挟み撃ちしてくるのを片腕で受け止め、筋力だけで地面に埋める。
ここまで僅か10秒程度。能力は一切使用しておらず、純粋な格闘のみで圧倒。上官が何人も手も足も出ずにやられた事で尻すぼみする海兵隊。
と、そこにようやくルフィ達が現れた。
「あー!!どこ行ってたんだよスマラ!!?」
「うぉぉ~~~!!スマラさん~~~久しぶり~~」
「んなぁ、アイツ…………」
自分から進んで迷子になって行ったというのに、スマラの方を迷子扱いしているルフィ。
目をハートにし足で不思議なステップを踏みながら再開を大袈裟に喜んでいるのがサンジ。
ゾロだけは、最後の別れが別れなだけあって、いい顔はしていない。むしろ敵対心を持っているだろう。
スマラはチラッと横目で確認すると、さっさと出港しちまえの意味を込めて残りの敵の処理にかかった。数名の将校をあしらったが、気絶させたわけではないのでその内に起き上がって来るだろう。
スラマに特攻しなかった将校もまだ残っており、彼らが部隊を鼓舞して指揮を執っているため、まだ安全とは言えない。
私が注意を引き受けている間に先に進め。そう言う意味を込めて視線を送った後、残っている海兵の方へと向いたのだが……。
にゅい~~~ん。ガシ。
ルフィの伸びた腕がスマラの肩を掴んだ。あれ?既視感がある気が……と、惚けていると、伸びた腕に引っ張られてスマラは宙を舞った。
そのまま引っ張られるスマラ。ルフィは伸びた腕を戻しても手は離さない。どころか、逃げ内容にはグルグル巻きにしてスマラを抱えて走り出す。
「よしっ!!走れ~!!」
ルフィの号令でサンジとゾロも走る。が、二人から文句が出てくる。
「オイ、ルフィ!!そいつは一度裏切ってる。また船に乗せるとか本気かよッ!?」
「大丈夫だ。スマラは戦争で俺を助けてくれたんだ。修行もしてくれたし、良い奴なのは変わりないぞ」
「そうだぞクソ剣士。スマラさんは事情があって舟を降りたんだ。分かったらテメェが降りろ」
「あ”ぁ!?」
「しかしルフィ。いつまでスマラさんを掴んでやがる!!さっさと降ろして俺に代わりやがれ!」
2年前からずっとスマラを警戒していたゾロは、ウォーターセブンで一味の前から消えて世界政府に付いて行った事からもう一度船に乗せることに難儀を示す。
サンジはルフィが綺麗な女性を雑に運んでいる事に怒る。相変わらずの紳士であり、ウォーターセブンであった事は水に流してる模様。
そんな2人にルフィの答えは……。
「嫌だ。俺はコイツを船に乗せてぇし、こうでもしねぇと逃げるんだよ」
「逃げるんなら逃がしとけば良いものの……。何考えてるのか分からねぇ奴ほど危険な奴は居ねぇぞ」
「っんな事どうだっていいんだよ!!良いから代われ!!」
言い合いをしながら逃げる三人。スマラは口を挟めないでいた。
ここで拘束を外す事は出来なくもないが、力技ではかなり難しい状況だ。ゴムゴムの実の能力を活かして、腕を伸ばしてスマラの身体にグルグル巻きにしてると、単に押しのけただけでは外れそうもない。
力で押しのけようにも、2年間の修行でルフィは素のスマラにも負けない筋力を手に入れていた為、簡単な力押しでは外すのは時間がかかる上に、ルフィに気づかれて更にきつく締められてしまうだろう。
生憎だが、この様な状況下ではスマラの能力はあまり発揮出来ない。摩擦力を弄って抜け出すことも出来なくはないが、かなり集中力が必要だ。
つまり、要するにだ。何が言いたいかと言うと「単純にめんどくさいからこのままで良いや」と言う問題の先送りであった。こう言った事が後々余計に厄介事を引き起こすと、未だに学習しないスマラだった。本人の能力故、どうとでもなると過信がそれを起こす。
ボケーと成り行きを見守るスマラ。
再び海兵が追い付き征く手を阻むが、ネガティブを操る女性、巨大昆虫を引き連れた植物学者、人口空島の天候化学者、見るに堪えないオカマが麦わら一味の逃走を援護する。
終いには、チョッパーが仲良くなった巨大鳥に乗って迎えに来た。空路でサニー号に辿り着き、麦わら一味が2年ぶりに全員集合する。
そして……
「よし、野郎ども。ずっと話したかった事が山ほどあるんだけど、とりあえず2年間おれのワガママに付き合ってくれてありがとう!! 出港だぁ!!」
ルフィの号令で船は海面下へと沈んで行く。船底に取り付けられた浮袋を外した結果、コーティングされた船は自らの重りに耐え兼ねて沈むのだ。
海の中で帆を張り、風の代わりに海流を受けて方向転換をしながら魚人のある海底1万メートルを目指す旅は始まった。
「で、あんたいつまでソイツを抱えてんの?」
「げぇーー何でソイツまで連れて着ちまったんだよ~~」
「ん?どっかで見た姉ちゃんだが……」
「今すぐ地上に戻ってくれ~~。ここじゃあ逃げ場がねぇぞ~!?」
「わぁー物凄い美人さん。パンツ見せて貰ってもよろしいでしょうか?」
「アホかぁ!!貴様何ぞには見させるか。俺が見る」
「アホコック。…いい加減捨てて来いよルフィ」
「船がバラバラにならなければ良いけど……」
麦わら一味の視線を集め、言いたい放題に言われたスマラは呆れながら能力でルフィの拘束から抜け出した。
「酷い言われようだわ……」
「あッ……」
気持ちは針の筵。となるのが普通の人だが、図太……否、他人からの評価や視線を基本的には気にしない、気にならないスマラは甲板の手すりにもたれ掛かった。
「で、船まで勝手に許可なく連れて来てどういうつもり?」
「どういうつもりも何も、お前は俺の仲間じゃねぇか」
「私はこの船の食客扱いで、好きな時に降りていい話だったはずだけれど?」
「そんなもん、俺は認めてねぇぞ!!」
「一方的感情……いえ、それを言うなら私の行動も一歩的な感情の末だったわね。でも、貴方がまたよろしくしたいと思っていても、お仲間さん達の意見は無視?私を拒否してるのが殆どでしょうが?」
幾ら船長とは言え、船員の意見を無視して押し通すのは難しい。余程船長のワンマン海賊か、船長に絶大な信頼が無ければなおさらだ。
スマラが一人我儘を言っているルフィに周囲を見渡す様に言う。麦わら一味の意見は反対が多いが、少なからず反対してない者もいる。主にスマラが麦わら一味の船を下船した後、一味に入ったサイボーグの船大工フランキーと骸骨音楽家ブルックの二名だ。
ウソップとチョッパーは甲板の逆方向に行くまで怯え、サンジとゾロは何時も通りの喧嘩に発展し。ナミとロビンは言葉で普通の態度を取っているが内心では警戒していた。
「お前ら……スマラはいい奴だから心配すんなって。2年前は手も足も出なかったけど、修行で鍛えたから大丈夫だ」
「「「そういう話か!!?」」」
「でも降ろすにしてもどうするの?船は海底に向けて航海中よ?今更地上に戻れる?」
「いや、一度浮き袋を外した船は戻れねェ。レイリーのおっさんがそう言ってったはずだ」
ロビンがスマラを船から降ろす為に戻る提案をするが、レイリーからシャボンコーティングの説明を受けたフランキーが無理だと断言する。
頭を捻っていたナミはこれ以上の方法が無いと判断すると、スマラとルフィに指差しで航海士として、一船員としての判断を提示した。
「流石のあんたでも、海中に出たら生きていけないでしょ?」
「……そうなるわね」
能力を使えば何とかなる可能性がある、と言う言葉を押し込んでスマラは頷いた。ナミの言う通り、海中に放り出されると生きるのは難しい。
「私としては急に消えたあんたに言いたいことが無いわけじゃないわ。でも、元々船に乗っていたのはルフィが無理矢理留めていたからであって、いつでも自由に降りる時は降りると宣言していた。だから割りきることにする」
「えぇ。確かにそうだわ。物分かりが良くて助かるわ」
「ここからは現在の話よ。未来じゃなくてね。一先ず、私たちが魚人島を出港して新世界に辿り着くまでは船に乗せていても良いんじゃないかと思うけど……」
自分の意見を述べて、ナミは麦わら一味の顔ぶれを見渡した。接点の無いフランキーとブルックは「それで良いじゃないか?」と元々通り肯定。ルフィとサンジはナミからの提案に嬉しそうに頷く。
これで過半数の賛成を得た。残るは超絶ビビりまくっているウソップとチョッパー。警戒を崩さないゾロとロビン。
一向に埒が明かないと悟ったゾロは、切り詰めていた息を吐き出す様に深く吐き捨てると刀を一本、鞘から抜いてスマラに突きつける。
「納得はしてねぇが、船長が言うなら仕方ねぇ。変な真似しやがったら即斬ってやる」
「そう言えば黙って船を降りた以外、特に害は無かったわね彼女。戦争ではルフィもお世話になったみたいだから、良いんじゃないかしら?」
ゾロに引き続きロビンも考えを緩めて承諾する。こうなるとウソップとチョッパーも怖がりながらも承諾し、満場一致でスマラの乗船が認められた。
まさかこうなるとは思わず、スマラは呆れて何も言えない。個人的にはこのまま水中に流される事を想定していた。
ちょっとこの一味甘すぎではないかしら?一度政府側に着いた人間をこうも簡単に船に乗せるとは……。
もうそれぞれが各々の行動を取っている。ルフィとゾロは魚を捕ろうとしてウソップとチョッパーに殴り倒され、サンジは大量の鼻血で水中へと飛び出した。
問題児たちが再び暴れ出す前にナミはコーティング戦の注意事項を説明し、フランキーが船を守った男について語る。
人数は増えようと、スマラがメリー号に乗っていた時の日常があった。1分前まではあんなにもピリピリしていたのにだ。
(2年前とまるで変わっていない。……いや、2年間で成長したと言う自信の現れ?確かに、修行で進化した一味が総力で襲いかかったら私でも…………)
そこで考えるのを辞めた。これ以上は考えても意味のないことだ。余程の事が起きない限り、麦わら一味全員を相手取る事は無いだろうと言う予想でもあった。
スマラは2年前と同じように船内に入って行く。初めて入る船故に目的地は決まっていないが、何処か静かな場所を探したい。勿論、そこで読書に更ける為だ。
魚人島への到達率3割。これまでの航海でも屈指の難易度だが、麦わら一味なら無事に航海出来ると思っていた。なんなら、失敗しても自分が生き残るだけならどうとでもなる。自分の安全を心配していないからこそ、こんな超新星の海賊団と同行出来るのだった。
サウザンド・サニー号は潜っていく。目指すは深海1万メートル。楽園と新世界を繋ぐ航路だ。偉大なる航路の本番レースまでもう目前。
その先に何が待っているかは、世界中の誰にも知らない。
次回も同じくらい期間が空きます。……予定が詰まって書けない日が何日も続かなければですが…。
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