麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが? 作:与麻奴良 カクヤ
こちらの作品は安心安全のコミック基準で執筆しております。
ホーディのクーデター宣言の放送があったものの、スマラはそんなモノ無視して本屋巡りを再開した。
街中では若干パニックが起こっている模様。道に人が多く、スマラのイライラが募る。先ほどまではそうでもなかった道も、先ほどの放送で人が大勢溢れかえっている。放送を聞くためと、その放送の内容が内容だからだろう。
魚風情が私の観光を邪魔して……。
ホーディに対する怒りが湧き上がるが、ここで動くのは得策ではないとグッと堪える。
感情に流されて行動する様な人間ではない。理性的にだ。ほんの少しの感情で動いた結果、非常にめんどくさい厄介事を招き入れる事を身をもって知っている。
些細な行動が、後の自分の首を締めていくのだ。
こんな時は読書に限る。
放送の件で人が大勢溢れかえっているが、読書でもしてリラックスしなければこのイライラは収まる事は無いだろう。
目立つ上に、見聞色の覇気を多用し、座って読むよりも気が散って内容に没頭出来ないが、それでも視線を前に向けるよりはマシだろう。
それに、早速新しく買ったばかりの本を読みたい気持ちもある。
スマラは新品の本を取り出して歩き読書を始めた。人混みは見聞色の覇気を使って避ける。世界一位下らない事で見聞色を使うスマラであった。
こうして数十分の時が経った。広い島でもないので、数十分も歩けば街から街へと移動が出来る。
子供の足や、目的も無くふらふらと歩くなら難しいかもしれないがスマラは大の大人であり、一般的な女性にしては高身長にはいる背丈を誇っている。更に血筋故に体力だって一般的な男性を遥かに凌駕し、世界トップクラスの身体能力すら持っている。
そんなスマラにかかれば、歩きながら読書している不安定な状態でもかなりの速度で歩く事が可能だ。
隣街に移動するまでそう時間はかからなかった。
街を移動しても人混みは消えない。むしろ人数は増えて行っているようにも思える。
チラッと顔を上げて周囲の状況を見ると、不規則に見えた人も規則に則って並んでいるようにも思えた。
まるで検問……とは違う。何かを確認しているのは確かだろう。
疑問に思ったスマラは自然な歩きを装って集団の側を通り過ぎる。
見えたのは何かを耐え忍びながら『ある写真』を踏んでいる魚人や人魚だった。
スマラには見覚えが無く誰だか分からないが、魚人島の住民なら子供以外誰もが知っている存在。10年前に銃殺で亡くなったオトヒメ王妃だ。
新魚人海賊団が目指すのは魚人(人魚)主義の世界。2年前に東の海で帝国を築き上げようとしていたアーロン一味も魚人主義だが、彼らと違う所は人間に友好的な者にも容赦しない所だろう。
人間との友好を結ぼうとする一派の第一者こそがオトヒメ王妃。既に亡くなったが、王族というだけでなく魚人島の者に慕われているからこそ、彼女が亡くなった後もこうして人間と手を結ぼうと動いていた。
そんな者を許さないのが新魚人海賊団。こうしてオトヒメ王妃の写真を踏む事で人間に友好的な感情を向けていない、と判別させているのだ。
つまり、街中の人が外で出て集まっている。混乱はすでに国中で発生しており、全ての事が通常営業には程遠い。
本屋は営業していないだろうと言う事だ。
どうするか?営業していないのなら、この島に用意は無い。
営業開始を待とうにも、このクーデターが何時治まるかも予想できない。治まらず、このまま魚人島のが新魚人海賊団の統治下に置かれる可能性は考えない。麦わら一味に喧嘩を売った時点で彼らのクーデターは失敗に終わるのは確定している。
問題はやはり、どのくらいの時間で通常営業に戻るかどうかだ。
よし、サウザンド・サニー号に戻ろう。
これがスマラが出した答えだった。
いつ終わるかも分からないクーデターの終わりを待つより、サッサと船に戻って読書の続きを堪能した方が有意義な時間の使い方と言うものだ。
決まればスマラの行動は早い。
くるっと来た道を振り返り、サニー号が座礁している海の森の方面へと足を向ける。
「え……」
と、振り返ってタイミングで見えたある海賊旗に、スマラは言葉が漏れた。
思考停止。
たっぷりと数分の時を使ってスマラは復帰した。
そこからは思考の海に潜り込む。
何故?どうしてあのマークが魚人島に?
ロジャーの処刑以降、此処は白ひげのナワバリだったはずで……。
いえ、白ひげは死んだ。白ひげの名は効力を失い、黒髭に四皇の座からも引きずり降ろされたはず。
となれば、魚人島が新たな庇護者を求めたのも頷ける。
「ねえ、一つ尋ねてもいいかしら?」
「は、はいッ」
スマラは確認を行うべく、通りかった男性の魚人に声を掛ける。
見知らぬ他人に物を尋ねられて、不快になる者は少なくともめんどくさいと思う人が多いだろう。が、スマラが持ち合わせている美貌がそれを許さない。
スベスベの実を食べたアルビダや世界一位の美女と名高いメロメロの実を食べた海賊女帝ハンコックのように、異性どころか同性すら引き付けてしまうような過剰な魅力は無い。しかし、過剰な美貌はないにしても、一般人では届き得ない美の持ち主である事は確かだ。街一番の美女と比べても見劣りしない。
自らお洒落に気遣ったりはしないが、自分の身体特徴は自分が一番分かっている。皮肉にも血筋が作用している点だけが頂けないが、使えるものは何でも使う。
目が肥えてる王侯貴族でもない限り、スマラ程の美女に声をかけられて嬉しくない人は多くない。故に、多少の煩いには目を瞑って質問に答えるのだ。可能性は低くても、お近づきになるために。それが男だ。種族は関係ない。
「あの海賊旗は?此処は白ひげの島でしょう?」
「あぁ、2年前の戦争は知ってるよな?その戦争で白ひげの名は効力を失った。だから島を守る為に新しくビッグ・マムの旗を借りたのさ」
「……どうしてビッグ・マムに?」
「ビジネスの話しさ。ビッグ・マムは魚人島のお菓子を大層気にいったらしくてさ。毎月それを納品する代わりに海賊旗を借りるんだ」
白ひげとは違った関係性を築いている魚人島。しかし、たったそれだけの関係性でも効果は絶大だ。魚人島を襲撃し、島を……厳密に言うならお菓子工房とその納期を遅らせることがあれば、ビッグ・マム海賊団は必ず襲撃者に報いを受けさせるだろう。
しかし、となればこの状況は非常に不味い。
「そう、ありがとう。……それと一つ忠告だけど、ビッグ・マムとは縁を切った方が良いわよ」
「はぁ?おいおい、新世界では四皇の庇護下に入るのが得策だ。それくらいお嬢さんでも理解できるよなぁ?」
「海峡のジンベエはどうしたの?」
「ジンベエの親分さんは戦争の一件で王下七武海を追われて島に入ることが出来なくなったんだ。代わりにビッグマムと盃を交わして島を守ってくれてる訳だが……」
「なるほど。ありがとう」
それじゃあ、と言い残してスマラは立ち去った。男の方は「この後お茶でも…」と言いかけていたが、それを無視する。分かってはいたが撃沈に合唱。
歩きながらスマラは情報を整理する事にした。
2年前の戦争により魚人島は白ひげの庇護を失った。故にジンベエが盃を交わす事で新たな庇護者としてビッグ・マムの旗を掲げる事が出来た。
海賊が新世界へ向かう航路には魚人島は必ずしも避けられない島だ。故に庇護が無くなれば、海賊王の処刑から白ひげがナワバリにするまでの期間、絶えず海賊や人攫いが現れては人魚を攫っていたと聞く。
白ひげな亡くなった2年前に同じ状況に陥り、四皇に接触する事になったのだろう。四皇にすがるなら、赤髪にすれば良いものを……とスマラは歯ぎしりした。
黒髭は白ひげの後釜として四皇の位置付けにいるが、戦争が終わった直後は最悪の世代の一人だった。時期的に不可能だ。
百獣のカイドウはナワバリにした島を武器工場などにして支配していると情報がある。魚人島の島民を守りたい立場からすれば有り得ない。
赤髪のシャンクスなら、他の四皇と違いナワバリにした島に過度な負担を強いる事は無いだろう。白ひげに一番近い感性を持った四皇とも言える。
ビッグ・マムはナワバリの広さ、兵の質に量共に平均的で、ナワバリに対する評価は四皇……海賊として普通だろう。赤髪の様に寛容であるわけでもなく、カイドウの様に島民を奴隷にする訳でもない。ビジネスとして最低限の取引条件さえ守ればなにもされない。
がしかし、この最低限の取引が問題なのだ。取引内容は殆どが島で生産されているお菓子、又はお菓子の原材料の献上。それだけなら何の問題もない取引だが、膨大な量とむりゃぶりな納期。島のトラブルなんちゃ知ったこっちゃない。
この調子なら確実に納期に遅れる。奉納したばかりなら問題は最小限に抑えられるかもしれないが、納期寸前なら終わる。
文字通り終わりだ。
麦わら一味が勝ってもお菓子の納期が間に合わなければ島は滅ぶ。数パーセントにも満たない可能性だが、新魚人海賊団とやらが勝っても魚人島にお菓子を作る生産性などなく、それどころかビッグ・マムには反抗して滅ぶだろう。
深海1万m、海中戦?そんなの四皇にとっては不利でも何でもない。新世界に居る海賊である以上、深海1万メートルの航路は乗り越えた海賊達である。ビッグ・マム海賊団に言えば、家族の中に何人も魚人は存在している。それら数名を派遣するだけで魚人島、新魚人海賊団はあっけなく崩壊するであろう。
スマラが最も関わりたくない人物。それが四皇『ビッグ・マム シャーロット・リンリン』である。
島が滅ぶとかもうどうでもいい。新しい本の探索もこれで終わり。
もう少し見繕っていたかったが、新しい本を見つけるメリットと世界で一番嫌いな人に会うかもしれないデメリットを天秤にかけた結果、圧倒的にデメリットが大きかった。そのくらい会いたくも、一切の関わりも持ちたくない海賊が、四皇『ビッグ・マム』だった。
早足で来た道を戻る。放浪の身であった時期が長いからか、一度通った道は覚えている。歩き読書をしていてもだ。
人目がある場所では早歩きで、人目から外れた場所では、生まれながらの脚力を活かして、跳ぶようにして来た道を戻った。
が道中、人里から離れて後は海の森目指して一直線……と言う距離になると、スマラはふと足を止めた。
辺りが暗くなったのだ。
陽樹イヴは地上と同じ様に光を形成している。地上が朝なら朝日と同じだけの光量を、夜なら月明かり程度の光量を魚人島にもたらす。
その光が弱まったと言う事で考えられる原因は3つ。
一つ夜になった。有り得ない。時間が早くなるなんて現象は通常では起こり得ない。悪魔の実の能力者であれば不可能ではない能力もあるかもしれないが、そんな話聞いたことも無い。空想上の妄想だ。
二つ陽樹イヴが死滅して特性を発揮出来なくなった。何百年も生きた巨木がいきなり死ぬとは思えない。可能性はゼロではないが、即座に切り捨てる程に低い可能性だ。
となれば、三つ目モノが光を遮ってしまう。地上でも同じように、分厚い雲などが光を遮ってしまう事がある。それと同じ現象だ。
光が遮られたのは数秒程度。風物体の大きさはそこまでではない。
スマラは上を見上げ、光を妨げた物の正体を掴もうと視線を向けると……。
「麦わら一味の船……何故?」
そう、スマラが目指している麦わら一味の船『サウザンド・サニー号』が宙にあった。巨大なシャボンをマストに括り付け、まるで風船にぶら下がって宙を舞うかのように進んでいた。
隣には巨大なクジラも並走している。
何故サニー号が宙を飛んでいるのか?答えは直ぐに見つかる。
先の放送で新魚人海賊団は麦わら一味に喧嘩を売ったのだ。売られた喧嘩は買うもの……とは一概に言えないが、麦わら一味の性格上必ず買うだろう。
囚われた仲間を助けに行くのか、それともネプチューン王の処刑を止めに行くのかは分からないが、何かしらの行動を起こしているのは間違いない。
スマラはそう推測した。同時に深いため息。
今までの労力と時間が無駄になった瞬間だからだ。
このまま海の森に言ってもスマラが求める楽園(と書いて図書室兼見張り台)には辿り着けない。生まれ持った脚力を使い宙を行くサニー号に乗り移る事は可能だが、空を跳んで目立ってしまえば元も子もない。
「さて、どうしたものか……。戻るか、待つか」
待っても良いが、もう一度海の森に戻って来るとは限らない。待って出港までに合流出来なければ、どちらにせよ宙を跳ぶ事に変わりは無くなる。
となると、地面を歩いて地道に追いつくしかない。最終手段があると思えば、最悪間に合わなくて追い付くことには問題ない。
そう考えたスマラは回れ右して歩いて来た道を戻り始めた。その歩みはゆったりとしている。
何なら、手にしている本を読みながら。
無限ではなく有限な時間であるが、それでも麦わら一味が戦闘を終わらせるまでには軽く見ても2.3時間はあるだろう。それだけの時間があれば、スマラの脚力と体力なら島の端から端まで行っても問題ない時間だ。
最終的な麦わら一味の船の場所は、見聞色の覇気で気配を捕まえておけば問題ない。
唯一の懸念点は、今この瞬間にでも現れるかもしれない四皇の船だ。
深海一万メートル。決して奴らを侮ってはならない。ロジャー海賊団が世界一周を成し遂げる前から海賊をやっていた連中だ。そこらの海賊、ルーキーなど比べものにならない。
航海が困難だからといって、連絡船の一つも送れないようでは何十年間も海を支配などできやしない。
油断するな。ここは新世界の入り口。
海の皇帝たちは超新星を今か今かと待ち構えているぞ。
1話使って船に戻るだけ(戻れていない)っていう、超絶亀の速度で進行中。
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