麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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322 七頁「仲間ではないので、進水式は行いませんよ?」

 スマラが屋根の上を歩いていると、後ろから海兵に追われているルフィ、ゾロ、サンジを見つけた。合流しようと思えばできるのだが、辞めておく。

 あの大佐が追って来た時に対処出来るようにだ。

 

 

 一目見ただけだが、あのスモーカー大佐は強い。東の海ではどんな海賊でも相手にならないだろう。

 私なら問題なく対処出来るだろうが、最後までは手を出さないでいるつもり。手を出すなら相手から見えない位置から一瞬でやらなければ…。

 

 

 三人を追っていると、前に女海兵が現れた。ゾロと因縁があるらしく、ゾロが一騎討ちで足止めをする。

 一般海兵では相手にならないレベルで切り合っている二人。ゾロの方は余裕に見えたのでスマラは放っておく。

 

 少し進むと進路に一人の男が道を塞いでいた。当然の様にいる男はスモーカー大佐。広場でバギー一味を一網打尽にした彼は、麦わらの一味の逃走経路を予測して待ち伏せていた。

 まず、スモーカー大佐がルフィを囲むようにして腕を煙化させ、初めて見た自然系能力に抵抗する暇もなく捕まってしまう。

 サンジが即座に飛び出してルフィを助け出そうとスモーカー大佐に渾身の蹴りを叩き込む。が、相手は自然系能力者。覇気を使えないサンジの蹴りは、あっけなく煙化したスモーカー大佐に回避されてしまう。

 顔が煙化した事に驚いたサンジは、スモーカー大佐の腕を煙化して叩き込むパンチ(ルフィのゴムゴムの銃同じようなもの)ホワイト・ブローを受け、壁に激突。すぐには動けないだろう。

 

 

 流石に自然系能力だと無理みたいね。煙の弱点になりそうな物も近くにあるわけでもない。存在を知らない状態で覇気が開花するはずもなし。

 ここで終わるのかしら?さっきの落雷の運は何処へ?

 

 

 やはり運だよりではここまでのようだ。スモーカー大佐がルフィの上にのしかかり、顔を地面に叩き抑える。

 

 スマラは能力を使って助けることとした。使うものは空気。

 デコピンの容量で空気を弾け飛ばすと、普通の人間でも少なからず空気の移動が生じる。移動にかかるエネルギー量を能力で増加させれば、空気の弾丸となってスモーカー大佐を打ち抜くだろう。

 厄介な自然系能力も武装色を纏わせば何の問題もない。

 

 スマラは能力の執行と指に力を入れて………。

 

「そうでもなさそうだが…?」

 

「てめぇは!?」

 

 ルフィに止めを刺そうとしていたスモーカー大佐の腕を止める男がいた。その男の登場にスモーカー大佐もスマラも驚きを隠せないでいる。

 

 一瞬だった。彼は一瞬であの大佐の後ろにやってきて、止めた。

 あぁ、この街にいるはずのないレベルの覇気の持ち主は彼だったのね。

 何故、ここにいるのか分からないけれども、一先ず安心そうね。

 

 突風が起きてルフィがスモーカー大佐から解放された。後方に居た海兵部隊も吹き飛ばされており、ゾロも突風の力を借りるようにして走っている。

 一先ず、この街から逃げ切る事が出来そうだ。

 三人が海兵から完全に逃走できたのを確認すると、スマラは下の様子をちらりと伺ってから自分も船に戻ろうとした。

 

 スマラの素の運動能力でも追いつけはするが、肉体の疲労が伴う為にあまり好みはしない。一歩軽く前に跳ぶ、それだけで一歩が生む運動量を変換させ莫大な跳躍を得る。

 スマラが戦闘を行う場合、殆どは運動量を変換させて行動する。今回もそのようにして離脱しようとして………。

 

「そこの娘。君ほどの手練れが仲間なら申し分ないだろう。この先も助けてやってくれ」

 

 スモーカー大佐を止めている男、革命軍のリーダーであるドラゴンに声をかけられた。

 スマラの居る場所はドラゴンの位置からは完全に死角だったはず。ならなぜ?ドラゴンもまた覇気使いなだけ。見聞色の覇気で探ればスマラの位置など丸裸だろう。

 

 スマラは「娘って歳ではないのだけれども!!?」と怒り任せに怒鳴るのを抑えて言葉を返す。

 

「仲間なんかじゃないわ。今回は初回サービスよ。彼が何時終わろうが私には関係ないの。利害が一致しているから助けるだけよ」

 

「………そうか、それは済まなかったな」

 

 スマラの答えにドラゴンは軽く謝ると、その場を去っていった。スマラもまた、中断させていた能力を再試行させ跳ぶ様にしてこの場を去る。

 残されたのは、スモーカー大佐と、

 

「俺から麦わらを助け出そうとしていた仲間が、もう一人居ただと!?」

 

 スマラを確認出来なかったスモーカー大佐が呟いた言葉だけだった。

 

 

 

 

 

 突風に背中を押される様にし走るルフィ、ゾロ、サンジ。長く感じた道のりもようやく終わり。

 街を出て海岸に出ると、ウソップがロープを懸命に引き寄せ船を岸にとどまらせようとしているのが視界に入った。

 

「ルフィ、急げ!!!もうロープが持たねぇ!!!」

 

「スゲー雨だな」

 

「ナミさんただいまー!!」

 

「早く乗って!!急いで船を出すわよ!!」

 

 こんな状況だと言うのにルフィは、吞気に降っている雨の事に気が散っている。ナミが「急げ」と言うと、三人は急いで船に乗り込んだ。サンジのラブコール?そんなものに反応している時間はない。

 三人が乗り込んでウソップがロープを陸から離す。船は波に攫われて、あっという間に海岸から離れていった。

 

 船が無事に出航すると、ルフィが何かを探すかのようにキョロキョロと甲板を見渡した。

 誰かを探しているみたいだ。ここにはルフィの仲間は四人揃っていて、残り一人と言えば、

 

「あれ?スマラが居ねえぞ?」

 

「まさか街に置き去りにしちゃったんじゃ!!」

 

「戻るぞ!!!」

 

 兎に角早く出航する事に夢中で気づかなかったのだろう。ルフィとサンジはスマラが居ない事を確認すると、大慌てで船を海岸に戻そうとする。

 が、ナミとウソップがそうはさせない。

 

「今更戻るなんて無理よ!」

 

「そうだぞ!!海軍が追ってきているかもしれないんだ。あの女なら空でも飛んで「私ならここにいるわ」ぎゃあぁぁ!!!でた~!!」

 

 ウソップの声に反応して、船内の入り口から顔を出したスマラだ。ウソップはビビッて転んでしまう。が、誰も心配しない。

 

 ルフィたちが走るよりも遥かに早いスピードで移動する事が可能なスマラ。ウソップとナミがルフィ達の帰りを待っている間に密かに戻り、中で読書タイムを楽しんでいたのだ。

 

「スマラさ~ん!!無事でしたか!!」

 

「良かった、ちゃんと戻ってきてたのか」

 

「いつの間に…って戻ってたのなら報告くらいしてよね」

 

 未だに警戒は解いていないゾロと、スマラに苦手意識を持っているウソップ以外の三人が、スマラが帰還していたことに喜びを表す。

 スマラは「次回からは報告するわ」と返すと、船内に戻っていった。雨が降っている中、わざわざ外にいる意味はない。

 

 

 

 

 

 荒波で大きく揺れる船内では、スマラが読書に勤しんでいた。揺れて鬱陶しいと感じるが、文字に集中し本の世界に飛び込めば無視できる。

 

 そうやって読書タイムを満喫している時だった。

 

「おーいスマラ!!」

 

 スマラを呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 普通なら無視をするのが妥当な反応だが、今の自分はこの船に乗せてもらっている身。好き勝手我儘状態にも程がある。かと言って積極的に仕事をする気にはなれないが。

 

 スマラが本から視線を上げると、入り口にルフィがいた。

 また厄介?と思うが、先ずは要件を聞こう。

 

「何の用かしら?」

 

「偉大なる航路に入る前に進水式をすることにしたんだ!スマラも来いよ!」

 

 

 進水式とは、完成した船を初めて水の上に浮かべる儀式の事。この船は既に海に浮いているが、偉大なる海に浮かべると言う意味で行うのだろう。

 

「仲間じゃないからやらないわ」

 

「え~?折角なんだしさぁ」

 

 スマラはルフィの誘いを断る。仲間でないからやらないと。

 さらに言えば、外は雨風が吹いている。そんな中に行きたくない、というのが本音かもしれないが。

 

 一言だけルフィに返すと、スマラは無視して読書に戻る。スマラが要件を聞いた後に無視すれば、これ以上話を聞いてくれないことを何となく理解し始めていたルフィは少し不機嫌な顔をした後、外に出ていった。

 多分、スマラを仲間にすることをまだ諦めていない顔だ。

 

 

 

 

 

 また時間が少し経った。三十分も満たない短時間だ。

 

 一同はいつもの部屋に集まっていた。ナミから、偉大なる航路に入るための舵の切り方で言わないといけない事があるから、と。

 

「偉大なる航路の入り口は山よ」

 

「「「「山!?」」」」

 

 ナミから驚愕の事実を聞いて、男四人が驚きの声を上げる。

 ナミが地図をテーブルの上に広げて説明を開始。スマラは読書をしながらぼんやりと話を聞く。

 話を聞いていると、ナミから声が掛かった。

 

「ねぇ、スマラなら何か知ってる?」

 

「……まぁ、知っていると聞かれれば知っていると答えるわ。でも、それを答える訳にはいかないわ」

 

「知ってるなら話してくれても良いだろう?」

 

 ナミからの質問は予想通り、偉大なる航路の入り口が山なのは確かなのか?というものだった。

 実際に目に見たことは無かったスマラだが、秘匿でもない情報を集めるとは簡単な事。だが、その情報をここで提供する気はサラサラ無かった。

 ウソップがスマラに情報提供をねだるが、スマラの態度は変わらない。それに、情報を提供しないのにも理由があった。

 

「私は、一応これから先の色んな事を知っているわ。でもその情報を一々話してたら、あなたたちが自分で乗り越えられないじゃない。情報収集も大事な冒険の一部よ」

 

「…そうね。なんでもかんでも聞いたりしてごめんなさい」

 

「………何だ、やっぱり俺たちの事心配してくれてんのか!」

 

「っ!!し、心配なんかして…っ!!凪の帯に入っているわよ?」

 

 ルフィに図星を付かれたのか、しどろもどろになる寸前なスマラ。とここで見聞色の覇気に巨大な反応が幾つも返ってきた。

 情報提供はしないが、現状を伝えるのはいいか、とスマラはこの船がある海域に入っている事を知らせる。もしも凪の帯を知らなかったなら、身をもって体験させればいい。

 

「おい、嵐が止んでるぞ!」

 

「ホントだ静かだ」

 

 窓の外を見て気が付いたウソップが報告し、続いてサンジも外の景色を見る。

 善意で伝えたスマラの報告に、誰もが理解不能。この一味で一番の知識人であるナミを除いて。

 

「しまった!!凪の帯に入っちゃったのよ!!あんた達、急いで船を方向転換させて!!」

 

 ナミが急いで男たちに指示を飛ばす。が、状況理解できていない四人はナミに説明を求めて動かない。

 その素早く動かなかった代償は大きかった。

 

 来るわね。見聞色の覇気で巨大な生物の反応を読んでいたスマラは、心の中でそう呟いた。同時に大きな揺れが船を襲う。

 

 大きな揺れと共に船が何かに持ち上げられる。そう、スマラが察知していた巨大な生物達によって。

 船内から外に出ていた皆はその生物に声を失う。何故なら、辺り一面海王類で埋め尽くされていたからだ。

 

 

 凪の帯とは世界を一周する海、偉大なる航路を挟むようにして存在する海域の事だ。文字通りその海域にはどういうわけか風が全く吹いておらず、凪状態である事からその名が付けられた。

 ただそれだけなら、パドルシップやオールで漕いで偉大なる航路の最終地点付近に入ってしまえばいい。誰もがそう考えるが、世界はそう甘くない。

 現在の状況を見ても分かる通り、凪の帯は海の王とも言える種、海王類の巣なのだから。

 

 

 あぁ、手遅れか。でも、海王類は別に凶暴な生体ではないはず。危害を加えなければ無事に戻る事は可能でしょう。

 手伝ってと言われたなら………海王類は仕方ないかしら。ちょっとは何かしないと、私の気持ち的には楽になるわ。

 だって、こういった時こそ恩を着させるべきでしょう?

 

 スマラは外の状況など知ったことではないとばかりに読書を続けた。

 

 

 

 

 

 小一時間程、ようやく外が元の大嵐に戻った。

 凪の帯から普通の海に戻る間、船が転覆するかと思う程の揺れに襲われたが、スマラにとって些細な事でしかない。本の世界に入っている限り、スマラにとって外の世界はどうでもいい存在になる。その集中力は並外れたものだった。

 

 スマラの手を煩わせる事無く元の海に戻った船は偉大なる航路の入り口に舵を切る。入り口付近に差し掛かったのをスマラが知ったのは、船内にウソップとサンジが走り込んで来たからだ。

 

「あら、切羽詰まってどうしたの?」

 

「偉大なる航路の入り口が見えて来たんですよ、スマラさん。しっかし、ホントに運河が山を登ってるとは驚きだ」

 

「それくらいで驚いてちゃ、偉大なる航路は航海できないわよ」

 

「へぇー、ってそんなにヤバいところなのかよ!」

 

 スマラが山が海を登るくらいは偉大なる航路ではマシな方だと言うと、ウソップが顔を青ざめ始めた。が、直ぐにそんな余裕は無くなる。外からルフィの指示が聞こえて来たからだ。

 スマラは読書を続けながら視野を広げ、サンジとウソップを見守る。それと、外の音にも集中する。

 船が赤い土の大陸に激突して海の藻屑にならないかと、船の状況を外からの声と音で理解するためだ。

 もし船が赤い土の大陸に激突して大破してしまっても、スマラなら溺れる事無く助かるだろう。しかし、いきなりよりは数秒でも時間が有れば対応の心構えが出来るから。

 

 と、そうこうしているうちに、スマラの耳に歓声が響いた。赤い土の大陸に船をぶつける事無く、偉大なる航路の入り口に這入れたのだろう。一瞬、船が大きく揺れたが、外の様子から問題はなさそうだ。

 スマラは外の警戒を弱め、本の世界に戻ることにする。もし緊急事態が発生すれば、外から何らかの接触があるだろうと踏んで。

 

 

 

 




次回、クジラの体内
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