麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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7章ナウイ・ミクトラン攻略及びオルト・シバルバーの攻略、怒涛の情報追加にてんやわんやしていたので遅れました。来週からのバレンタインが楽しみです。


七十一頁「だから、嫌いだ」

 麦わら一味が島から帰って来るまで数時間を有した。

 

 ただ、帰ってきただけならどうでも良かった。

 この燃え盛る島でどんな冒険をしようが、どんな戦いを繰り広げようが、どんな友情を育もうとスマラには関係ない。

 物語としては興味は湧かない事は無いが、それでも作り物の方が良い。

 人の人生や旅など、そう運よく物語のようにとんとん拍子で進む訳がないと知っているからだ。

 

 

 船が動き出したのを感じ取ったのは、夜が明けてから数時間後。

 外の喧騒が五月蠅かったから消した音の様子から、またしても宴会でも開いているのだろう。

 毎度毎度騒がしい事だ。

 途中でサンジがホルモンスープを持って来てくれたのだが、スマラは一瞥しただけで終わった。

 

 

 

 

 

 船が動き出して少し経った頃。

 少しというのはスマラの体感なので、実際には数時間経っていたのかもしれない。

 

 頁に栞を挟んで本を閉じる。

 いつもの行動。これが空想の世界から現実へ戻るルーティンワーク。

 物語で実感していた感情を押し殺す。

 現実は厳しく冷酷なのだから、浮かれた頭ではいられない。

 

 首を傾げてポキッと音を立てる。背伸びをして骨がさらに音を立てる。

 数時間ぶりに身体を動かす障害。しかし気持ちいい。

 一通り身体を解し終えると部屋を出て甲板へ向かう。と同時に無意識に使っていた見聞色の覇気に意識を向ける。

 

 船にある気配は全部で13人。

 おかしい。麦わら一味の人数は9人のはずだ。

 4人増えている。

 覇気の強さは1人が麦わらに匹敵するほど強く感じられる。

 さて、誰を船に乗せているのか。

 こんな緩い麦わら一味でも海賊だ。海軍や政府関係者は幾らなんでもあり得ないだろう。

 海賊なら覇気の強さも納得できる。新世界を単独で航海しようと思えば、最低でも億越えの実力は必要になる。

 肝心なのは麦わら一味の船に乗る度胸ある輩は一体誰だ? と言うところ。

 

 今度こそ心地良い風を求めるついでに甲板へと足を運んだ。

 

 

 

 キィと出来るだけ存在感を消しつつ甲板へ出たスマラ。

 しかし誤魔化す事は出来なかった。甲板の芝生の上に座って集まっているメンバー全員の視線が集まった。

 

「…………」

 

 多少驚きつつも、視線を無視して際の柵まで歩いて座り込む。

 そのまま閉じたばかりの本を取り出して読書を再開する。

 しかし、本の世界に飛び込むのは止めておく。

 頁に綴られている文字列を追い、頭の中で処理してはその時の会話にも耳を傾ける。

 

 

「おい麦わら屋。奴が居るとは聞いてねぇぞ」

「ん? そうだったか? 悪ぃ」

「はぁ……。計画の見直しが必要か? いや、既に研究所は破壊してシーザーは攫っちまってるだ、今更か」

「待って!? 何か嫌な声が聞えて来たんだけど!? 何!? スマラってそんなにヤバいの!?」

「ナミ、スマラは物凄げ~~強ぇぞ。それは俺が保証する」

「そんな事知ってるわよッ! 私が言いたいのは、彼女が居るとどうして不味いのかって話」

「そういや、戦争の記事で何か書いてあったな。あれ?何だったっけ?」

「アレだろ? あの嬢ちゃんが海賊だって奴ぁだ」

「バカ野郎、スマラさんの親が海賊だって書いてあったんだよ」

「そう! 本人の口からは一切出てこないのに、新聞や周りの人達は何時も騒ぎ立てている。クロコダイルに青雉の反応はどう考えても可笑しいわ。トラ男、アンタなら何か知ってるんじゃない?」

「俺だって真相を知ってる訳じゃねぇ。当時を知ってる人から概要を聞いたことがある程度だ」

「海賊って有名な奴なのかな~?」

「能天気っ!? もし大海賊なら俺達やべーんじゃないのか? 目ェを付けられたら終わった。あ、既に四皇を目的にしてる上に怒らせてるッ! 2人もッ!」

「ギャ――オレ達やべーー」

「五月蠅い! それじゃあ、私達よりも知ってそうな人に聞いてみましょう」

 

 

 本人が直ぐ側……と言うには遠いが、声がギリギリ届く距離にいながら本人の話を本人自体を会話に入れずにする辺り、本当に肝が備わっている。

 いや、スマラがその程度で癇癪を起こさないと分かっているからこその行動だろう。

 計算高い航海士さんだ。もちろん、トラ男事トラファルガー・ローを除く野郎どもはそんな考えは頭にない。

 

 

 ナミが視線を向けると、その他全員も視線を向けた。会話に加わっていなかった数名も視線だけを向けていた。

 そうだ。この船で一番の異質な存在が居た。

 海楼石手錠で能力を封じられ、ボロボロになった顔面を応急処置で軽く治療されている。

 色白、細身で背丈は大きい。裾の長いローブは研究職の白衣を思わせる。いや、実際に研究者なのだろう。

 麦わら一味ではもっとも接点の無かった男だ。トラファルガー・ローは頂上戦争で少なからず接点が発生しているが、この男は全くもってない。

 

『シーザー・クラウン』

 

 新聞を読んでいれば名前くらいは聞いたことがある者がいるだろう。手配書でも3億ベリーと大金が積まれている事から、起こした事件と危険度を伺える。

 問題は、何故あの島に居たのか? どうして麦わら一味に捕らえられているのか?

 

 あの燃え盛る島に居た理由は分からないが、後者ならスマラでも簡単に想像が付く。

 何かしらの敵対行為をシーザーが行い、麦わらが激怒してぶっ飛ばしたのだろう。倒した敵を自らの船に乗せているのは何かしらの理由があるのだろう。

 トラファルガー・ローが意味もなく敵船に乗るはずもない点から、彼が関係しているのだろう。

 

 スマラはとりあえずは納得した。

 疑問点は幾らか残るが、その解決は今でなくて十分だ。

 それよりも、今の関心はシーザーがどんな事を口に出すかが重要だとスマラは考える。

 年齢的にも彼は私の事を知っているかもしれない。否、海軍の化学部隊に所属している経歴から考えるに、確実に私の事を知っているだろう。

 スマラはそう結論付けると、目線を紙に印刷されている文字列に向けながら聴覚だけを周囲に向けた。

 

 

「はんッ。俺様の知識が必要みてぇだなぁ。教えてやっても良いが、それ相応の扱いってもんを「良いからさっさと吐く事吐きなさいよッ!」ぶらヴぇ」

 

 己の知識を求めていると分かったシーザーは高位的に対応の改善を要求するが、全てを言い切る前にナミに殴られてしまう。

 時にはルフィ、ゾロ、サンジすらもボコボコに出来てしまう航海士の拳だ。さぞかし痛かっただろう。

 

 腫れあがった顔面に慣れ、シーザーが再びまともに喋れる様になるまで少しの間が空いた。

 その間、スマラはここぞとばかりに本のページを読み進めた。

 

「チクショウーッ! 喋りゃあいいんだろう。喋りゃあ!」

「初めからそうしないさいよね。余計な手間暇と時間をかけさせて」

 

 全くもうッ、とナミは吐息を吐いた。

 『元凶はお前だろ…』と数名の心の声が重なったが、ナミはどこ吹く風でシーザーを睨みつけている。

 ともあれ、これでスマラの謎が解ける。誰もが気になるらしく、輪から少し離れた位置で何かを作っていたウソップ。一応、聞いていたみたいだが今にも寝そうなゾロまでもが手を止めて視線を向けていた。

 

 真面目な雰囲気も作れるじゃない。

 そう思ったスマラだが、その内容が自分の事。さらに言えば地雷に当たる部分に近しい内容なのが眉をひそめる。

 興味ない様な。私は気にしてませんよ。的な雰囲気を醸し出しながらも、スマラは何時でもシーザーを始末出来る様に身体に力を入れる。

 

 如何にシーザーが自然系の能力者であり懸賞金額3億ベリーの大物と言えど、所詮は能力に頼り過ぎている研究者。

 スマラ自身も定期的に身体を動かしている身では無いとはいえ、生まれ持った身体能力と能力を組み合わせれば研究者を消す程度造作もない。

 真面目に身体を鍛える事に取り組んでいたら、その力を正しい方向へ、親の言う通りに育んでいたら、結果は変わっていたかもしれない。

 もっとも、それは有り得たかもしれない平行世界の話。今現在、このスマラにとっては関係の無いもしもの話だ。

 

 

 

 シーザーは一瞬だけスマラに視線を向けてから話始めた。

 

 

「奴が初めて世間に知れ渡ったのはある事件がきかっけだった。いや、事件って言うよりもその海賊が出した被害から知れ渡った名前だったな」

「被害? 海賊の被害と言っても限度があるでしょう」

「はんッ、テメェ等は知らねぇのさ。現在の海賊は比較的大人しいんだよ。まぁ、小さな海賊の被害は世界中各地で多々起こっているが、新聞の一面記事になるような事件はそうそう発生しねぇ」

「新聞ならオレ達だって載ったことあるぞ。嘘言うなよ」

「規模がちげぇって言ってんだよ。最近だと……そうなだ。麦わらが暴れた四皇『白ひげ海賊団』と世界政府の王下七武賊と海軍が全面戦争を起こした頂上戦争レベルの事件だな」

「世界規模の事件って事ね。でも、その規模なら私たちが知っていてもおかしくないと思うけど?」

「今から何十年も前の話だぞ。海賊王の処刑よりも昔だ。生まれてねぇ頃の話なんて誰が気にする?」

「海賊王よりも昔って……。ロビンは何か知ってる?」

「詳しくは知らないわ。私が子供の頃の話だと思うわ。ただ、裏社会で生きていると噂を耳にするの」

「噂? それってスマラの?」

「『奴に手を出すな』確か初めて耳にした時はこうだったわ。初めて聞いた時は誰を指しているのか分からなかったけど、裏社会で過ごす内に可憐なる賞金稼ぎと言う名は自然と定着していた。手を出すなと言うのはその事件が関係しているのね」

「奴はだな、今から三十数年前に親元の海賊船から逃げたのさ」

「逃げた?」

「あぁ、逃亡だな。詳しい状況や奴の心情は本人に聞け。まぁ、答えてくれるとは思えねぇがな」

「逃げたってたったそれだけで一大事件になるほどの事とは思えないけど…………」

「……普通の海賊だったら、逃げられたらそれを追いかけて捕まるか、逃げ切られて終わりだな。普通の海賊ならな」

「そう。奴が逃げ出した海賊は普通じゃなかった。逃げても逃げても圧倒的な情報量と物量で追っかけて行った。それこそ世界政府の加盟国、無人島、海軍の艦隊が間近にあってもだ」

「それは……確かに被害は尋常じゃなさそうね。世界政府は抑えきれなかったから大事件にまで膨れ上がった」

「そうだ。最終的にはパタリと終わっちまった。奴と海賊との話し合いがあったのか、海賊が諦めたのかは誰にも当事者同士しか分からねぇ。まぁ、この場で聞かせてくれるってなら、俺も聞きてぇんだが……」

「……………………」

「まぁ、そう簡単に口を割る訳ねぇよな」

「で? 肝心なスマラの親ってどんな海賊なわけ? 幾ら情報規制が行われようと、それだけ暴れ回ったら相手の名前くらいはわかるでしょう?」

「そうだそうだーッ! もったいぶらずに吐けーッ!」

「……」

 

 

 

 騒ぎ立てる麦わら一味のお調子者共。

 はーけー、はーけー、コールがサニー号に響き渡る。

 シーザーは限界まで口を閉ざしていたが、コールに負けてしまった。

 決して、決して、ナミが握りしめた拳に屈したわけではない。

 『手錠さえなけきゃ唯のパンチなんか…』スマラの耳には、確かにそう聞こえた。

 

「はぁ…良いか一回しか言わねぇから耳をかっぽじって聞きな。奴の親はな……」

 

 もったいぶる様にシーザーは溜めを作った。

 ゴクリと誰かが喉を鳴らす音が聞こえてきた気がする。

 

 

「四『それ以上はいけないわ』」

 

 

 初めの音に被せる様にスマラが声を出してシーザーの言葉をかき消した。ついでに、覇王色の覇気を放出。対象を絞らず手加減無しの覇王色だ。

 海がシケよりも荒ぶれ、空は覆っていた雲が飛ばされて快晴を見せる。本気の手加減無し故に空間に重力が発生し、バチバチと黒い電流が発生する。

 麦わら一味、トラファルガー・ロー、シーザー・クラウン。この場に覇王色の覇気で気絶するような雑魚は存在しないが、それでもナミ、ウソップ、チョッパーと言った弱小トリオ組が数秒意識を持って行かれ、その他も気を抜けば直ぐにでも飛びそうだ。

 

 そんな中、覇王色の覇気をまともに受けてもケロッとしているのが4名。

 船長であり自身も覇王色の覇気使いであるルフィ、世界一の大剣豪を狙うゾロ、海のコックとして夢を探すサンジ、戦争後に王下七武海となったローの4名だ。

 ケロッとしているのは比喩だ。ゾロとローは己の剣の柄に手を掛け、サンジは相手が女性なので眉を潜めながらも戦闘態勢に入る。

 殆ど本能的な行動だったのだろう。構えはするも攻撃には出ない。それはスマラがシーザーを睨んでいるだけだったからだろう。

 覇王色の覇気と共に軽い殺気も当てられたシーザーは、後ろにズッコケていた。気絶しないだけ、本人の実力が伺えるが、本気でやりあったのなら己の負けは必然的。悪の科学者VS放浪者。対外的な肩書だとショボいものの、両者とも一般人を遥かに超える戦闘力を持っているのは無視出来ない……。悪魔の実の能力者を、一般人と同じ扱いにしてはならない。

 もっとも、新世界クラスになると、悪魔の実を使いこなせてようやく土台に上がる事が出来る程度。素の身体能力、場数の経験、武装色の覇気と見聞色の覇気はデフォルト装備、その場の運といった要素を持ち合わせている者が強者として海を航海できるのだ。

 

 シーザーではスマラには敵わない。これは戦う前から分かり切った事。

 一部の挑戦者からすれば、戦う前に結果を決めつけてしまうのは逃げだと思うかもしれないが、生憎とシーザーは常に自身の命を保身にかけている為、絶対に勝てない相手には挑まない。

 それだけ、スマラとの実力差を弁えて居た。麦わら一味や若い世代の知らない真実を知っていると言う評価対象も加えれば、シーザーにとってスマラは麦わら一味よりも厄介な相手だった。

 己の投資者や研究作品の売り捌き先も考えれば怒らせてはいけない相手なのだ。

 それほどスマラを取り巻く環境は複雑だった。当の本人はそれから逃げていると言うのに、世間は、世界の闇は逃がしてくれない。

 

 

 

 それを理解しているからこそ、スマラはイライラを募らせる。

 麦わら一味に乗せらせて口を滑らせる気でいると思いきや、ちょっと脅しただけでだんまりを決め込む。ハッキリとしないその振る舞いが嫌いだ。

 

 

 まるで自分を見ているかのようだったから。

 

 




当初の予定になった話。次回こそ話を進めます。

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