麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが? 作:与麻奴良 カクヤ
トラファルガー・ローから緊急連絡を受けて数分後。
海岸沿いに船を進め、そろそろグリーンビッドが見える頃になっていた。
島の周りには霧が発生しており、中々島を確認しずらい。
麦わら一味船番組は船の端に集まって、自分達を此処に呼びつけたトラファルガー・ローを見つけようとしていた。
「トラ男は見える?」
「うーん。霧でよく見えね。変わった森なら見えるんだけど……」
双眼鏡を持っているチョッパーが島の様子を報告するが、何も見えないと言う分かり切った報告だけ。
しかし、読書時間を堪能しているスマラは見聞色で色々と感じ取っていた。
島には強い気配が3つあること。コソコソと動き回っている小さな気配が点々と。
そして、海中から猛獣に近い気配がそこら中に。
「衝撃に気を付けなさい」
「え? 今なんて…」
スマラが離れているナミ達にギリギリ聞こえる声量で伝えた瞬間、ドスーン!! そう音を立てて船が揺れた。
柵にしがみついて振り落とされるのを耐える居残り組。スマラも壁に背中を預けて揺れに耐える。
「うぁぁ!?」
「何?? 何なのー!!?」
「海に何か居るぞ!!」
サニー号を襲撃したのはグリーンビッドの周囲を縄張りとしている闘魚と言う魚の群れだった。
赤黒い鱗に角が生えており、何と言ってもそのデカさだ。サニー号の三分の一以上もの大きさだ。
そんな危険極まりない魚が居るからこそ、シーザー引き渡し組はドレスローザ内部からわざわざ徒歩で向かったのだと、今更ながら居残り組は気が付いた。
「ナニコレ!?魚?? 角生えてるんですけど!?」
「船に穴開けられるぞ!? こんな島に船で近づけねぇよー!!」
「迎撃しようにもこの数はチョットばかし厳しいですね、ナミさん、どうしますか?」
「トラ男の奴、後で覚悟してなさいッ!! 今この船に誰が載っていると思ってんの!! さぁスマラ船を守って頂戴!!」
自分達はドレスローザから歩いて安全に向かったトラファルガー・ローに怒りを見せていたナミは不敵に笑うとスマラに頼った。
完全に他人頼りだが、それはそれでナミらしいと言うか何というか……。ナミに指示を仰いだブルックは何とも言えない。
「はぁーー…」
何となく予想はしていた。しかし、実際に言われると気が滅入ると言うものだ。
それでも船が大破して海に投げ出されるのは困る。
スマラは大量の闘魚の群れを一瞬で無力化する方法を取った。
それは即ち、
「……ッ!!」
覇王色の覇気による一掃だ。
これが一番確実で素早く済む。全く動く必要が無いのも点数が高い。
こうしてサニー号を襲っていた闘魚は全滅した。
気絶した闘魚が船の周りに大量に浮かび上がる様子は、一種の天変地異の前触れかのように思える。
しかし、殺したわけでもなく気絶させただけなので安心はできない。
気絶とは一時的なもので、一生目が覚めない可能性もあるが基本的にはいずれ目は覚める。それが数秒なのか、数分なのか、数十分なのか、数時間なのかは闘魚自身の気の強さによるところだ。
「び、ビックリした~~」
「魚人島でのルフィさんと同じで一瞬にしてあの群れを無力化しましたよ。……彼女、一体何者なんです?」
「ルフィが拾って仲間って宣言してそのままよ。ま、かな~り強くて頼りになるのは間違いないわね」
ありがたやーと拝んでくるナミをスマラは無視して読書に戻ろうとした。
しかし、スマラは固まった。
彼女は一つミスをしていたのだ。
グリーンビッドには現在トラファルガー・ローがサニー号の到着を待っている。それも単に待っているのではなく戦闘を行いながらだ。
では、戦闘を行っている相手は誰だ?
王下七武海の称号を持っていたトラファルガー・ローが本気で余裕を持てない程の相手は?
となりの島は誰の国だ?
冷静になって思考停止しないでちゃんと頭を使いながら行動していれば簡単に分かる事だった。
覇気使い、悪魔の実の能力者すら殆ど居ない四つの海で過ごした数十年が考えながら行動する事を忘れさせた。
頂上戦争、麦わらへの2年間修業と最近は強者との戦いが増えてきていたが、それでも人生の中で最も過酷だった時期に比べるとまだ温い。
スマラのやる気のない見聞色の覇気に敵の気配が引っかかる。
戦闘モードで広範囲に展開していたらグリーンビッドに近づく前には気が付いていて、覇王色の覇気を垂れ流すなんて己の居場所を知らしめる馬鹿な行為などしなかっただろう。
もっとも、グリーンビッドにここまで近づいた時点で覇王色もクソも無く見つかる可能性だってあったのだが……。
「あれ? ……あぁぁ!!?」
「今度は何!?」
「ドフラミンゴが飛んで来る!!?」
そう、今この瞬間。グリーンビッドにはドフラミンゴが居た。
隣の島のドレスローザはドフラミンゴのテリトリーであり、シーザー・クラウンの身柄を受け取る交渉の為にグリーンビッドまで足を伸ばしていたのだから当然だ。
作戦を知らなかったスマラが全面的に悪い。
他のメンバーが悲鳴を上げているのは、ドフラミンゴの標的がこちらに向いたからだ。
「何この悪夢…私たち死んじゃうの!!?」
「ギャ―――助けてくれーー!!」
チョッパー、ナミ、モモの助が抱き合って悲鳴をあげる。
戦闘能力が低い方である二人には少々ショッキング過ぎる光景だ。
呼ばれたスマラはため息を一つ吐くと立ち上がる。
やる気など微塵も出てこないが、ドフラミンゴが船を沈めようと動くならスマラにはそれを止める約束がある。
ドフラミンゴレベルの相手ならスマラとて手を抜いて勝てる相手ではない。
本気でやって五分五分……よりも低い。
むしろ4割程度の勝率が見えるだけスマラの能力と素の身体能力が高い事が分かる。
戦闘能力を鍛えていたのならば8割の勝率を得ていたであろう実力。
たらればの話は辞めよう。
実際のところ、今のスマラはそこそこ動ける程度にはなっている。
理由は単純。
麦わらへの2年間の修行でかなり動いた。
それこそ、頂上戦争にも匹敵する戦闘を半年以上も。
ルフィの戦闘能力はスマラとて読書をしながら軽く受け流せる枠を遥かに超えていた。
世界的に比較するならば、海軍本部の上澄みの中将、四皇の最高幹部にも十分戦っていける程に強くなっている。
そんな相手をしていたのだ。
戦闘の勘を取り戻し、能力に頼らず動いても筋肉痛を患わず、覇気だって平和な海でほのぼのと過ごしていた時よりも洗礼されている。
「フッフッフ、俺の大切な家族によくもまぁ手出してくれたな。スマラ!!」
「そっちが私の足を沈めようとするからでしょう。正当防衛よ」
宙に浮かぶドフラミンゴと甲板に立つスマラが向かい合う。
両者とも相手が動けば即座に対応出来る姿勢だ。
見聞色の覇気で読み合いを互いに行い、それがまた牽制となって両者とも動けないでいる。
もっとも、本気を出せば数秒先の未来を視る事も可能なスマラの方が読み合いにかけては軍配が上がるが、ドフラミンゴが動くのを待っているのでスマラは動かない。
「正当防衛も行き過ぎは過剰防衛と捉えられても可笑しくねぇ。どうだ、今からでも遅くはねぇぞ」
「冗談。私を勢力争いの道具にしないで頂戴。私の血、知らないはずがないでしょう?」
「フッフッフ。確かにそうだが、にしては麦わらに惚れてるみてぇじゃねえか。え?」
「惚れ込んでいる訳では無いわ。成り行きよ成り行き。それでも約束は守るべきじゃない? だから私は貴方の前に立つのよ」
非常に不本意ながらね。とスマラは若干眉をひそめる。
ドフラミンゴはソコを突く。
「だったら裏切っちまえばいいじゃないねぇか。海賊に裏切りを付き物だぜ」
「私を社会の底辺と一緒にしないでくれるかしら? うっかり貴方を殺してしまいそうになるわ」
「やれるもんなならやって見せろよ!!」
ついにドフラミンゴが攻撃に移る。
挑発に乗った形に見えるが実際はそうではない。
これでスマラが己に手を出して落とされるのなら、新世界の均衡が崩れるかもしれない。
ドフラミンゴも、ドフラミンゴの商売相手も、世界の均衡が崩れて世界中で戦争が起こる事を望んでいる。
もっともスマラともう縁を切ったかもしれない。もう何十年も接触したと言う情報を、噂ですら聞いたことがない。
闇の仲介人として新世界の裏稼業を仕切っているドフラミンゴが知らないのだ。実際に接触は皆無なのだろう。
それでも何十年も接触しなかったからと言って完全に見限ったとは思えない。
ドフラミンゴ自身も海軍本部に信頼のおける部下を十数年も潜伏させてきた。
故にその可能性にかけた。外れても問題ない。何も起こらないだけだ。
能力で生み出した糸をスマラに向けて放つ。
糸と言えば攻撃性がないと思うかもしれないが、ドフラミンゴが操る糸はピアノ線にも劣らない硬度を持ち、それが凄まじい速度で襲いかかってくるのだ。
その凶悪さは鉄の盾ですらすっぱりと切ってしまうと言えば伝わるだろう。
そんな攻撃を人体に向けて放つ。
結果は肉体に斬撃よりも鋭い切り傷を残すこととなる。
しかし、それはあくまでも一般的な戦闘能力を持つ者を相手にした場合に限る。
スマラは能力で自身に当たる前に方向を操作して弾く。
雑兵の攻撃の様に無意識化では無理だが、同じ程度の実力者の雑な攻撃なら集中してしまえば完全に無力化可能だ。
「雑な攻撃ね。ご自慢の操り人形も私には聞かないわよ。覇気を纏えば能力は防げるわ」
「だったらお荷物を狙うしかねぇよな?」
「させると思う?」
今度はスマラが船から飛び出してドフラミンゴを狙う。
スマラ自身が船に居る限り、二次被害でサニー号が沈みかねないと判断したようだ。
交差して行くスマラとドフラミンゴ。
空中で繰り広げられる攻防にナミたちは安心と同時に心配を覚える。
「スマラ、負けないわよね?」
「分かりませんね。両者とも凄まじい実力です。ドフラミンゴもですが、スマラさんもとてもお強い」
「ルフィの修行相手を務めただけはあるみたいだな」
「一体何者だったのかしら?」
ナミの言葉に答える者は居ない。
大海賊時代幕開け以降に生まれた二人、海の上だった独り、未だに子供。
情報通であるロビンなら知っているかもしれないが、今はグリーンビッドでドフラミンゴと戦っている、はずだ。
もっとも、疑問に思っているだけで無理矢理聞き出したい訳ではない。
本人が語らない以上、そっとしておくのがこの船に乗っている者たちの総意だった。(一部全く興味を持たない者も存在する)
彼女たちがスマラの秘密を知るまであと少し……。
ドフラミンゴは糸を雲に飛ばし、スマラは月歩を使って、空中で行われている攻防は過激さを増していた。
ドフラミンゴの攻撃はスマラの能力の前に通じず、スマラの攻撃もまたドフラミンゴの覇気の前に思うように通じない。
「チッ、厄介な能力だな」
何の実かは不明。
頂上戦争と現在の攻防で見た限り動きに関すると推測できるが、決定的な情報に欠けるから断定は出来ない。
更に能力を食べたばかりの輩とは違い、多少は洗練されている使い方だ。
そして、最も厄介だと思うのは彼女の動き。
政府の人間御用達の六式の一部を当然のように使いこなし、そこに覇気まで加わるものなので並大抵の海賊では相手にならない。
最も恐ろしい事に彼女は自らを鍛えたことはほぼ無く、持てるものの半分以上が天性の性能故。
ドフラミンゴですら決定打に欠ける。
「もう諦めたらどう? 私と貴方の実力は拮抗している。ここで力を使い果たすのは貴方も望んでは無いのでしょう? 船を諦めてくれたら私は何もしないわよ」
「そうかもな。 テメェが動く事で世界がどう変わるか見て見てぇが、少なくとも今じゃなさそうだ」
「そう、ありがとう。 あぁ、船を沈めないなら何をしたって私は関与しないわ。それじゃあ後ろに気を付けてね」
このままでは拮抗したまま何時間だって戦いが続く。
スマラもドフラミンゴも同じ事を思っていた為、あっけなく戦いは終わった。
これ以上続けるのは時間と労力の無駄だ。
スマラならともなく、ローや麦わらと敵はまだまだいるドフラミンゴにとってはそろそろ撤退したかった頃合いだった。
麦わら一味の船を壊したかったが、スマラがどれ程動けてどう考えているのかが分かっているだけ得はあったと捉えるべきだろう。
本気で彼女を排除するのも一興ではあるが、それをするには予想以上に覚悟を決めなければならないとドフラミンゴは考える。
スマラは意味深な言葉を残して船へと降り戻る。
後ろに気を付ける。意味としては大まかに二つ。
言葉通り、純粋な後方からの攻撃に対する忠告。もう一つは後ろと言う意味の解釈を広げて気にしていない方向、つまり油断して舐め腐っている相手からの逆襲に気を付けろ、と言う意味。
当然後者だとドフラミンゴは考えた。今の状況からすればそう解釈するのが一番合っていたからだ。
しかし、戦闘中でスマラに集中していた見聞色の覇気を浅く広く展開する事でようやく気が付いた。
後数秒、一秒でも遅れていたら危なかったであろうソレは、宙を駆けて脚を燃やしてやって来た。
「テメェこのトリ野郎!! ウチのクルーとスマラさんに何してくれやがるッ!!」
宙を駆けてやって来たのは麦わら一味のコック。
一味ナンバー3『黒脚のサンジ』だった。
何でドフラミンゴと戦ってんだコイツ。あと数話でドレスローザ編終了させます。
更新速度アンケート
-
最速投稿(1,000文字超)
-
倍速投稿(2,500文字程度)
-
等速投稿(5,000文字超)