麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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恐らく今年最後の更新になると思います。来年には完結させたいです。


七十八頁「ゾウへ」

 

 スマラが見聞色の覇気で四皇『ビック・マム』海賊団の接近に気づいてから早数分。

 サニー号の上ではドレスローザ各地に散った麦わらの一味が電伝虫を駆使して作戦会議。

 ビッグマム海賊団の船は快速で近づいて来ている。

 

 スマラはそんな二者を船内へ続くドアに近い壁に背中を預けて立っていた。

 もう少し近づいて来たら船内へと逃げるつもりだった。

 最初から顔が見える位置に居れば絶対に厄介な事になると判断したからだ。

 目的が麦わら一味であるならば、スマラは居ない風を装っておけばいい。

 目的でなかったとしてもスマラを見つければ必ず標的認定してくるのがビッグマム海賊団なのだから。

 

 

 

 

 

「ぎゅぁああああ!」

 

「おいあの船って…ビッグマム海賊団の船だぁ!!」

 

「何でこんな場所に―!!」

 

 

 壁越しに聞こえれる悲鳴をスマラは目をつぶって聞いていた。

 見聞色の覇気を使わなくても分かる程の覇気がサニー号の間近から感じられる事から、遂に麦わら一味とビッグマム海賊団が接敵したのだろう。

 砲撃を受けて波が荒れ、船がシケの時みたく揺れる揺れる。

 今の所直撃を受けてないのは運がいいのか、はたまた操舵が優れているからか。

 

 スマラが隠れているのは甲板から壁一枚挟んだ船内。

 外の声や爆音はほとんど遮られる事なく聞こえてきている。

 耳を傾け無くても聞こえる声を聞いていると、麦わら一味の方針が分かってきた。

 

 まず、ビッグマム海賊団の標的はシーザー・クラウン。

 麦わら一味はついでに沈めると言った所。

 魚人島でビッグマム本人に喧嘩を売った事を考えれば、シーザーの事抜きにしても出会えば即殺し合いになる事間違いない。

 初めは逃げようとしていた居残り組だったが、黒足が麦わらにある許可を求めて、キャプテンである麦わらはそれを了承。

 つまるところ、彼らは勇敢にもビッグマム海賊団の船を撃退するつもりらしい。

 

 無謀だ。無茶だ。

 死にたがりなのだろうか?

 

 今までも何度も格上の相手に立ち向かって来た麦わらの一味。

 コイン等なら勝てるんじゃないのか?そう思わせるナニカを持っている彼らでさえ、それでもなお届かない頂きに居るのが『四皇』と言う世界の頂点だ。

 実力差はシャボンディ諸島で壊滅させられた一味と大将黄猿と同等。

 四皇など本来なら海軍本部が軍艦を何十隻も揃えて最低でも大将一人を戦場に立たせてようやく勝負になる次元であり、四皇本人ともなれば三大将総出で戦ってようやく五分五分。

 頂上戦争の時は仏のセンゴクや英雄ガープ、更には何十人と言う本部中将。それでいて老いて全盛期よりも遥かに力が劣っていた白ひげだったからこそ頂上戦争はあの結果になったのだ。

 未だに力の衰えていないビッグ・マム、全盛期と言っても過言ではないカイドウ辺りなら今頃世界が変っていた可能性だって十分にあり得る。

 

 ビッグマム海賊団の船から感じる覇気からして本人は来ていない……はずだ。

 フットワークが軽い赤髪、竜となって天を駆ける事が可能なカイドウと違いビッグ・マムは国を治めている立場。本人の腰は他の四皇よりも重たいだろう。

 幾ら麦わらが電伝虫越しに喧嘩を吹っ掛けたと言えど、四皇に挑むルーキーは毎年の様に現れる。世間から大きく注目を浴びようと、四皇にとってはわざわざ出向く程の相手ではないはず。

 その証拠に接敵してくる船から強い覇気は感じられるが、四皇ほどにヤバイ気配は感じらない。

 スマラの見聞色の覇気で気配を察知していないのなら、四皇本人はこの場に居ないのだろう。

 

 四皇本人が居ない。

 確かに地獄の底に垂らされた糸だろう。

 しかし、その場が地獄である事に変わりはない。

 

 四皇本人がいなくても幹部は必ず乗っているだろう。

 最高幹部かは判別できないが、今の麦わら一味にとってただの幹部でさえ格上の相手だ。

 全員揃っているのならまだしも、主力が黒足のサンジだけの状況下。

 逃げ切るのですら困難を極める状況下ですら、麦わら一味は絶望に染まらずに抗おうとする。

 立派な精神だ。称賛に値する。

 

 

 しかし、現実は非道だ。

 ビッグマム海賊団の強みは層の厚さ。

 スマラには今現在何人もの幹部がいるのか知らないし興味もないが、最低でも20人は下らない事を知っている。

 その一人一人が新世界で船長をやって行けるだけの実力者。

 数の暴力とはこのこと。

 主力が黒足一人きりでは捌くことは不可能だ。

 船医や骸骨が新世界の船長並みに強かろうと、四皇の幹部は当たり前のようにそれを超えて来る。

 

 さて、目的がシーザーなら私がこっそりと逃げてもビッグマム海賊団が追って来る可能性は低いだろう。

 本命はシーザーの確保。序に麦わら一味の殲滅。

 私は第三の目的とされて易々捕まる程甘くは無いが……いい加減疲れてきた。

 ココは待ちでいきましょうか?

 

 スマラは己の今後の人生を天運に任せる事にした。

 逃げるのにも気力が足りず、かと言って抗うのも体力の無駄遣い。

 奴らがシーザーを捕縛して船を沈めるなら下船。

 船の上で戦闘が起こり、巻き込まれれそうなら雑に対処するだけ。

 後は――なら投降で良いだろう。

 

 

 方針を固めたスマラはドアを離れて船内を移動し始めた。

 目的地は勿論、図書室もとい測量室だ。

 

 

 

 次の日、ビッグマム海賊団の猛攻を凌いだ麦わら一味の居残り組は無事にゾウへと到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たった一日で世界の均衡にヒビが入った。

 そう理解しているのは少なくとも裏社会に精通している者、新世界を航海する有力な海賊団、海軍及び世界政府上層部だけだった。

 一般人は新聞の額面通りに事を受け取った。

 つまり、

 

 王下七武賊ドフラミンゴが不当に国を乗っ取っており、それを解放したのが海軍ではなく海賊と言う事。

 

 それだけでも十分過ぎる大事件。

 海賊や裏稼業の勢力争いや力関係を知らない一般層がドフラミンゴ失墜の意味を理解しろと言われても無理のある話なのだが……。

 

 

 

 ドフラミンゴの悪政から人々を解放したのは話題に事欠かない最悪の世代の一角『麦わらの一味』である。

 彼らはドフラミンゴ撃破後、ドレスローザ国民の力を借り海軍本部大将『藤虎』の攻撃を退けて出航。

 出航と同時にドレスローザにて共闘した十数名の海賊などを傘下に加え、麦わら大船団を結成。

 一通り宴会を楽しんだ後、麦わらの一味のメンバーはバルトロメオの船で『ゾウ』を目指して数日掛けて到着。

 雲よりも高いゾウの足を登った先にはミンク族の国があり、無事に先駆けてゾウへと先行していたメンバーと合流する事が出来た、通ったのが……。

 

 

「で、どうすんの!? サンジ君の件!!」

 

「どうするって言われても、手紙には心配するなって書いてあるんだろ? じゃあほっとけばいいじゃねぇか」

 

「うーん、攫われた訳でもねぇし」

 

「そう言う雰囲気じゃなかったから言ってるのよ!! それに、あのスマラまでもが黙って従っちゃったのよ!?」

 

「あの女には前科があるだろう。忘れたとは言わせねぇぞ」

 

「ウォーターセブンの時の話でしょう。あの時は海軍と世界政府。今回は海賊。それも四皇ね」

 

「共通点と言えば世界三大勢力と言う事だけね。語りたがらないから仕方ないとは言っても、彼女は明らかに隠したがっている事情がある。もしかして彼女、ビッグマム海賊団と何かしらの因縁があるでは?」

 

「オイオイ。アイツが!? 船では基本的に本を読んでばかりで、偶に俺達を助けてくれたと思いきやスゲー実力だしよ。……益々分かんねぇよ」

 

「ねぇルフィ。あんた、スマラに修行付けて貰ってたんでしょう? 実際のところどうなのよ」

 

「スマラはスゲー強ぇぞ。ギア4使っても半分も勝てねぇもん」

 

「ギア4? とにかく、ドフラミンゴを倒したルフィよりも強いって認識で良いのね」

 

「そんなスーパーな姉ちゃんが大人しくついて行くって、四皇はどんだけやべーんだよ」

 

「でもスマラの様子はなんて言うか……諦め?みたいな表情だったぞ。戦いたくないだけで大人しくなったのは、そうする事が一番早く開放されると考えた、とか?」

 

「いえ、だとしても少し疑問が残るわ。彼女なら四皇だろうと逃げる事は出来たはずよ」

 

「そういや、白ひげのオッサンにも喧嘩売ってたな」

 

「元世界最強にか~~!? もう放っておこうぜ。あいつ、元々この船に乗り続けるのに不満げだったしよ~~」

 

「ルフィ、いい加減諦めたらどうだ? 今まではなぁなぁで乗せていたが、オレは元々反対だったんだ。本人も船を降りる事を望んでた見てぇだし、ちょうど良い時期じゃねぇのか」

 

「……ひとまず彼女の件はおいておきましょう。今重要なのはサンジでしょう?」

 

「そうそう、ゾウに辿り着いた途端に象の背中の上に国はあるわ動物は喋るわ、都市は滅んでるしミンク族は敵かと思えば味方だし、挙句の果てに歓迎されて恩人扱い。何が何だか分かんねぇよ」

 

「ナミ、もう一度一から全て話してもらえる? ドレスローザの近海から今まで何が起きたのかを」

 

「そうね。色々起こって気が動転してたかも。順を追って話すわ」

 

 

 ロビンに落ち着かされて順を追って話す事にしたナミは、最後に一同が揃った場面から振り返り始めた。

 

 

「私達が出くわしたのはビッグマム海賊団の巨大な歌う船」

 

「「「歌う~!!?」」」

 

 

 ビッグマム海賊団の船に遭遇したのは一応頭の中にあったものの、歌う船と言う想像以上の現象に一同は驚きの声を上げる。

 ナミ、チョッパー、ブルックの三人も今でこそ驚かないが、所見では大ビビりしたものだ。

 偉大なる航路、新世界は常識外の現象が当たり前の様に起こる海であるが、まさかまさかの無機物が生き物の様に振る舞うとは思わなかっただろう。

 

 続けてナミは船から見えた戦力を報告する。

 

「確認できた戦力は魚人島でルフィ達が出会った卵とライオンの二人組、そして同じ最悪の世代であるカポネ・ギャング・ベッジ」

 

「ベッジ!?」

 

「彼らは傘下に下ったみたい。後は……大柄の女性が数名」

 

「甲板でチラッと私達の方を見たと思えば、ベッジに指示を出して船内に引っ込んで行きましたよ。戦闘中で余裕がありませんでしたから少しですが」

 

「アレ、何だったんだろうな? 億越えで強いはずのベッジがヘコヘコしてたんだ」

 

「傘下の船長が下手に出るって言やぁ十中八九ビッグマム海賊団本船の幹部だろよ。にしても、よく無事でゾウまで辿り着いたよなぁ」

 

 

 フランキーの疑問に促されてナミ達は続きを話した。

 敵の砲弾をブルックが黄泉の冷気で凍らせ、怪物化したチョッパーがシーザーを網代わりにして纏めて投擲、それをサンジが蹴りつけてビッグマム海賊団の歌う船に着弾。

 更にナミは雨雲を生み出し雨や霧でビッグマム海賊団歌う船から視界を遮って逃げ切った。

 

「おぉ~~!!」

 

「スゲーぞお前ら!!」

 

「いや~それほどでも」

 

「照れるじゃねぇか、コノヤロウ~!」

 

 

 実に見事な連携だ。一味全員が揃っていなくても十分新世界を航海していけるだけのスキルを身に付けている。

 そこからゾウには翌日到着。モコモ公国は既に崩壊していたが、チョッパーとシーザーのお陰でギリギリ国民達を助けることが出来た。

 だからこその歓迎の嵐。命の恩人なのだから納得だ。

 

 話しの途中で知らせが届き、今ままで目覚めなかった公爵様が目覚めたと聞いたチョッパーが急いで診察に向かう。

 それにより、一味は場を移しながら続きの話を聞く事となった。

 

 

 ワンダの口から聞かされるモコモ公国で起きた事件の真相。

 ワノ国の忍者を探しにやって来た百獣海賊団の大幹部が暴れ、しまいには毒で国民を皆殺しにした。

 麦わら一味が現れ窮地に一生を得た事。

 

 一通り話し終わった頃にはちょうど公爵が療養している場所へと近づいていた。

 目前にまで迫った時になってようやくロビンがずっと気になっていた事を質問した。

 

 

「一つ気になったのだけれど、ビッグマム海賊団と交戦した時にスマラは何処に居たの? 彼女も船が壊されて移動手段を失うのは痛いはずよ」

 

「それが船の中に入ったっきり出てこなかったのよ」

 

 

 ロビンの問いに答えたナミは今でも疑問に思っている首をかしげていた。

 スマラの対応に真っ先に反応したのはウソップで、その次にゾロだ。率先して追い出したい訳ではないが、やなりまだ完全に仲間だとは思っていない様子。その厳しさは仲間を思ってからこその行動なのだが、果たして何人がそれに気づいていることやら。……鈍い奴等以外は気づていそうだ。

 

「出てこなかった? 船が壊れたり負けて捕まっても良かったわけなのか?」

 

「あの女に限って船は絶対じゃないだろう。何せ跳べる。むしろ今まで海軍だろうが海賊だろうが船の危機となれば敵をあしらう事くらいしてた女が、ビッグマム海賊団とは事を構えなかった。この意味を考えるべきだ」

 

「気が変わったとか?」

 

「それは無いわ。直前ではドフラミンゴと普通に戦ってたもの」

 

 

 ナミ達居残り組兼ゾウ先行組の脳裏にはドフラミンゴと戦うスマラの姿が浮かび上がる。

 短時間しか戦っていなかったが、少なくともサンジよりは戦えており、戦いに関する態度も姿勢も以前のスマラのままだったと思う。

 となれば、やはりビッグマム海賊団には何か因縁があるのではないか?とナミが考えている間も会話は進んで行く。

 

 

「サンジが駆けつけてくれるまでの短い間だったけど、あのドフラミンゴ相手に一歩も引かなったんだぞ。それでも今までみたいに淡々とした感じじゃなかったけどな」

 

「へー、流石にルフィを鍛えただけはあるな。こっちとしちゃあそのままドフラミンゴを戦闘不能にしてくれてた方が助かったんだがな」

 

「それはダメだッ! アイツは俺がぶっ飛ばしたかったんだぞ」

 

「分かった! と言うか既にぶっ飛ばした後だろうが」

 

「それもそうか」

 

 

 ウソップに突っかかていたルフィはシュンと止まる。

 過去は過去、もしもはもしも。

 今だけを見据えて生きているからこその急変。

 

 

 と、ナミが頭の中で考えていた可能性を示す。

 

 

「ねぇやっぱりスマラとビッグマム海賊団の中には何かしらの因縁があると思うの」

 

「根拠は?」

 

「直前までドフラミンゴと戦っていた癖してビッグマム海賊団の前には出てこなかった点よ」

 

「自分よりも強い相手には戦わない、とかどうだ?」

 

「確かに考えられるけど、頂上戦争では白ひげにも喧嘩売ったみたいじゃない? だったら同じ四皇であるビッグマムと戦わない理屈が分からないのよ」

 

「だから因縁があるはずだと考えたのね」

 

「しかしよぉ。どっちにしろ本人に聞いてみなきゃ分かんねぇ事だろう?」

 

「一旦この話は終わりにしましょう。ゾウに滞在している間にサンジ君に何があったのか、先にそっちを聞きましょう」

 

「えぇ、確かにそうね。本筋を見失っていたわ」

 

 

 スマラの事は分からない事が多すぎる。

 断片的な情報から、彼女はビッグマム海賊団に因縁があってそれが関係しているのでは?と結論に至ったが、それ以上は考えても何も新しい予想は生まれなかった。

 ルフィが勧誘を繰り返しているとは言え、本人が全く了承しないでいて、一度は船を出て行って政府に従った身である。

 幾らルフィを2年間修行を付け、時偶に船や仲間を守ってくれる存在であろうと、手放しに仲間だと言えるほど信頼関係が築けてるはずもなかった。

 今後どうするであれ、一先ずはわきに置いておいてサンジの件が最優先なのは間違いない。

 

 ルフィらドレスローザ一行は、ナミ達先行組の話を続けて聞いたのだった。

 

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