麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが? 作:与麻奴良 カクヤ
本来はもっと長くなる予定でしたが、投稿期間が空き過ぎるので分割しました。
話はルフィ達、ドレスローザ滞在組がゾウに追いついて先行組と合流出来た日から2日程遡る。
スマラは何時もの様に読書をしていた。
密林の部屋の一室。
何処からか集めた本や独自の物語伝承を机の上や床にズドドーンとタワーを幾つも作っている。
一人用の個室ではないので、周囲には若干迷惑そうなミンク族の姿がチラホラ。
殆ど外とは交流を断っている国であり、ゾウの上と言う防衛が作り出した公国には非情に貴重な文献がいくつもあった。
国が混乱しているのもあり、スマラはそれをどこからともなく集めて読んでいると言う訳だ。
無論、一言くらいは断りを入れているし、泥棒や後で話が拗れない様にこうやってわざわざ目の届く範囲で読んでいる。
スマラはなんとなく、読書をしながらこのゾウにたどり着いた時の事を思い出す。
あの時はビッグマム海賊団に追いかけられていたと言う事でピリピリしていた。
ビッグマム海賊団とは顔も合わせたくなかったスマラは船内で待機。
船が横につけられ、彼らでもどうしょうもない幹部が乗り込んで来た時は諦めよう、そう気を張り詰めていたが、見事な連携と操舵技術で撒いてしまった。
それでもスマラの機嫌は直らなかった。
それほどまでにビッグマム海賊団との因縁は深く、未だに嫌悪している関係でもあった。
相手は世界一の情報網を持つと言われている大海賊。
たった一度海上で撒いただけでは安心など出来るはずもなかった。
しかし、 スマラの不安も虚しくサニー号はあっけなくゾウへと辿り着いた。
世界中を放浪して来たスマラと言えど、足を運んだ事も無い島や国など幾つも存在している。その上、ゾウと言うのは本物の巨像だ。
その背の上に生物が生活していると言うのだから驚きはある。
ゾウが巨大な生物の事であり、船に残っていても仕方がないのでナミ達と共に足を登ってモコモ公国へと入国したスマラは
毒がまき散らされており公国は壊滅していたが、スマラはそんな事など眼中にない。
シーザーとチョッパーが国の毒を中和し、毒や怪我で傷ついたミンク族の治療を開始すると同時に、動けるミンクの中でもリーダー格なのであろうワンダと言う犬のミンク族の女性に一言だけ「本を勝手に集めて読んでも良いか?」と伝えるだけ伝えて本漁りに入った。
キョトンとするワンダはナミに「危害は無いから一先ず放っておきましょう」と言われて頷き、仲間たちの治療の手伝いを始める。
国の崩壊の危機を乗り込えたミンク族やその手助けで忙しい麦わら一味を尻目に、スマラはルンルンな様子で本を集めた。
遠くへ行かない様に注意しつつ崩れた家を物色して本を探し出して持ち出していく。
家主や持主が……と、平時なら犯罪行為だが今は緊急事態。
ミンク族からすればスマラは麦わら一味に見える。
つまり強く言えないのであった。
コイツ狙ってやっている。
というのがつい先日。
勝手に持ち出したとは言え他人の私物。
故に借りてきた本を何度もループして内容を頭に刷り込む。基本的に一度読めば大まかな内容は頭に入るが、細かい部分まで刻み込もうとすれば何度も読み込むのがベストだ。
ゾウと言う特殊な環境下にある本なら希少性も高く、現在では発行されてない年代物も書物。独自に製本された作品や歴史書などを中心的に記憶する。
文字が書いてあるなら雑食性を見せて手当たり次第に読むスマラと言えど、二度と読めない希少性の高い本なら優先的になるのも居な仕方なし。
そろそろ飽きて来たなぁ~。何時もの物語に戻ろうかな~。でも、持ってきた本の冊数はそこまで多くないし~、此処にあと何日滞在するかも不明で~。いっそ象を降りて船に戻るのも手かしら~。でもでも、船にある本も殆ど読みつくして~、数日程度なら断食できなくもないけれど~、数週間も船に乗っているのは流石の私でも厳しいわ~。
いっそ、この機に麦わら一味を離れるのも考えものよね~。麦わら一味はバカ船長のせいでビッグマム本人からの喧嘩を買っていて~。
私としても捕まらないに越したことはないけど~、でも、ゾウが生き物で移動している以上現在地が不明なのがネックなのよね~。隣の島の方向させ分かれば小舟で航海する事は不可能ではないのだけれど~。
と言う感じにスマラは物凄くダラけていた。
何度も何度も同じ本を数十間に渡りループし続ければ、スマラでなくともそうなるだろう。元々、(物理的以上に読める本の種類を)拘束されるのが苦手なスマラにとっては非常に効果的なダメージを受けているようだった。
ダラ~~と机にうつ伏せになり、ここまで来ると惰性で文字列を目で追い続けている。更に内心ではグデ~と若干の幼児退行が行なわれていた。
見た目は二十歳越えの実年齢三十路を遥かに超えた女性……場合によってはおばさんの幼児退行……。誰得なのだろうか?
内心で考えている事が声に出ていたら完全にアウトだ。一部の特殊性癖の方には刺さるかもしれない(見た目だけは完全に良いので)が、普通は引く。
それほどまでに精神的に病んでいた。
本気でゾウから飛び降りて麦わら一味とおさらばしようかしら?そう真面目に検討し始めた頃、スマラの見聞色の覇気に二つの反応が引っかかる。
確実にゾウの外からやって来た反応だ。
麦わら一味なら特色を覚えている為彼らではないのは確実だ。
なら誰か?
強さは麦わらより少し低い程度。
それこそ、黒足やモコモ公国国王や噂に聞く旦那レベルの実力はある。
ダメね。ゾウが巨大過ぎる故に常時発動している範囲の外か……。
となれば、直接出向くしかないわね。
「スマラちょっと来て!!」
「サンジとブルックがビッグマム海賊団の奴等と一緒に森の方へ行っちまったんだー!!」
「えぇ、良いわよ。私もちょうど気になっていたのよ」
「ホント!? やったー!」
「スマラが居ればもしもの時は安全だな」
後練る事の多いスマラだったがこの提案はスマラにとっても悪くは無かった。
無論、一人で動いた方が守る対象が居ない為動きやすいが、この国でスマラが一人で出歩くのもこれまでの行動から可笑しいと思われかねない。
町の外から麦わら一味と敵対する者が現れ、今まで読書しかしてこなかった奴の姿が急に見えなくなる。
これまで麦わら一味に非常に友好的な態度をみせているミンク族であろうと、誰かしらは疑問を抱いてしまうかもしれない。
実際に見ていないが、この国の者達は非常に戦闘能力が高いのだろう。
四皇の幹部が毒と言った絡めてを使わなければならない程に。
そんな相手と勘違いで戦いたくなどない。
サンジとブルックがビッグマム海賊団の遣いであるミンク族のサングラスをかけた者と、確か新聞で見たことがある顔を先頭にして森の中に入って行く。
ナミとチョッパーもスマラを先頭(盾)にして少し離れた距離から追う。
どんどん奥に入っていく三人を前に、スマラは森に入って直ぐ止まった。
「ん? どうしたんだ。置いてかれるぞ?」
盾役のスマラが進まないなら自分たちも進めない。
チョッパーがスマラに尋ねるが、スマラは問いには答えずに後方に向けて声を放つ。
「隠れて無いで出てきたらどうかしら?」
穏やかな口調ではあるものの、指示に従えざる得ない強制力を感じる言葉だった。
急な声に驚くナミとチョッパーであったが、スマラは無視して周囲に警戒の目を向けて動かない。
そんなスマラに観念したのか人が現れた。一人二人ではなく、数十名もの武装した集団だ。ミンク族ではない。
指揮官と思われる二人を除き、装備は一律で整っている。
確実に先行した二人の部下ね。格好からしてマフィアっぽい方か?
マフィア……確か最悪の世代の一人がギャング上がりだったわね。
となれば、麦わら一味に接触するまで二人だけだった反応が急に増えたのも納得がいくわ。
悪魔の実の能力は常識に囚われてはならない……だったわね。
「ねぇどうするの?」
「囲まれちゃったぞ。戦うのか?」
スマラの側に寄って、側と言うには近すぎる距離。ピッタリとくっ付いてスマラに囁く二人。
チョッパーは柔力強化に変形し、ナミは魔法の天候棒を取り出して戦闘態勢。
2年間の修行を経てその辺の雑兵には負けない程度の地力を付けた二人だが、億越え海賊が相手となれば少々厳しい。
戦いにはなるだろうが、勝つとなればギルギリの戦いになるだろうし、何よりも戦闘音で先行している四人に気づかれてしまう。
戦闘になるならサンジやブルックに戻って来てもらえた方が確実に勝てるだろうが、それだと二人との会話が分からなくなってしまうかもしれない。
ここで私たちを捕まえるように囲んでいる点を見るに、何かしらの要求を通す為の人質と言った所かしらね?
だけれど。私が着いていると知らないはずもないだろうし……。
私の実力を低く見積もられた?確かに態々鍛える様な時間の無駄な行為は行なうわけも無いでしょうが、傘下の海賊の幹部程度なら身構える必要もない。
やはり何かあると見た方が良いわね。
そう考え、目の前にいる代表らしき人物が喋るのを待った。
確か手配書で顔を見た事があったはずだが…。ダメだ。パッとは思い出せない。
周囲を囲む部下達は銃を構えたまま。
そんな中、身体もデカいが両手が通常よりの大きな男が笑いながら言った。
「レロレロ! 流石に気配はバレバレレロね」
「あんた達こんな事しても大丈夫だと思ってるの? こっちにはスマラが付いてるのよ!!」
「そ、そうだぞ。オレだってやる時はやるんだ。か、かかって来い!!」
スマラの背後に隠れたまま挑発を行うナミとチョッパー。
怖いものは怖いらしい。
それなら言わなければ良いのでは?と思いつつ、スマラは目線だけ男に向ける。
「そんなバカな真似したらこの海では生きていないレロよ。何も我々は戦いに来たわけじゃないレロ」
「戦いに来た訳じゃない? 噓ね。だったらこの包囲を解いてゾウから出て行きなさいよ!」
「包囲したのは悪かったレロ。おい、銃を下レロ」
男が指示を出すと周囲を囲っている者達は銃を降ろす。
しかし、降ろしただけで何かあれば直ぐに撃てる様に手に持って、引き金には指を置いたままだ。
「悪かったレロね。本来の作戦ではお前達を人質にする予定だったレロが、そこのスマラ嬢が居るとなれば話は別になレロ」
「スマラ…嬢?」
「えー!? スマラってお嬢様だったのか!?」
レロレロ五月蠅い男の、スマラに対する呼び方にナミとチョッパーは驚いて問い詰める。
「確かに容姿端麗だし、本の事が絡まなければ作法だって丁寧よね」
「違うわ。私が言い所の令嬢な訳ないじゃない。と言うか、話が進まないから一旦黙ってて貰えるかしら?」
ニヤニヤしてこちらを眺める男を「原因は貴方でしょうに」と冷ややかな目で睨みつつスマラは言った。
スマラの目と声がいつも以上に冷ややかだった為か、今は真面目に目の前の敵に集中するべきだと思い出したのか、コクコクと頷いて戦闘の構えに戻る二人。
会話の主導権は目の前の男が握ったままだが、最悪無かった事にすればいい。
何十年も昔はそうしてきた。
「それで、要件は一体何かしら? 人質にはならないわよ」
「本来なら頭目が直接渡すのが礼儀レロが……。この手紙を貴方に渡すように上から指令が下っているレロよ」
「手紙……」
男の大きな手からスマラの手へと手紙が渡った。そして、受け取ると同時に破り捨てた。
これに何度目かの驚きを示すナミとチョッパー。普段なら問い詰めている所だが、先ほど既に注意されている身。ナミとチョッパーはひそひそ話をするだけに留める。
「読まなくて良かったのかしら? 明らかに普通の手紙っぽく無かったわよね?」
「文通って柄でもなさそうだしな。どういった関係なんだろう?」
「でも見て、あの男、全く動揺していないわ」
「ホントだ! 普通はもっと慌てるぞ」
ナミとチョッパーがひそひそと話す様に、通常はもっと慌ててもいいはずだ。
上司の上司、会社に例えるなら会長レベルから渡された書類を確認もせずに破り捨てられた暴挙。
しかし、相手はあのスマラである。
手紙の主は読まずに捨てられる事も折込済みなのだろう。
渡した手紙が破り捨てられるのを見た男は再び懐から全く同じ手紙を取り出す。
「だと思ったわ。一体何通預かっているの?」
「何十通もだレロ。部下も含めて全員が同じ数だけ、頭目はもっと持っているレロ。どうだ? 全員倒して奪って破るレロか?」
懐から沢山の手紙を出しつつスマラに見せつける男。
チラッと確認すると、囲んでいる部下達も引き金に手を掛けつつもう片手で手紙を手にしていた。器用な人達だ。
スマラは男の提案を拒否する。
「いいえ、手紙を読むわ。誰が全員倒すなんて野蛮でめんどくさい事やるものですか」
この場に居る者達を無力感化するのは非常に簡単だろう。
強めの覇王色の覇気を浴びせれば周囲を取り囲んでいる部下達は意識を失うだろうし、恐らく耐えるであろう交渉役の男とガトリング砲を腕に装着している男も、億も超えてない賞金なら制圧はそこまで時間はかからない。
長引いても5分未満、既に同じ位足止めを喰らっていると考えれば、今更追いついたところで話が聞けるとも限らない。
となればここで素直に相手の要望に応えた方が楽で良い。
スマラは嫌そうな顔をしながら手紙を受け取る。
何の変哲もない手紙だ。
高価な紙を使っているのかもしれないが、スマラには知識はあっても見分ける技術は持ち合わせてない。
直接手渡しする為か、証拠を残さない為か、宛名は書かれてない。
ご丁寧に蝋で封をされている。
私に当てる手紙としては少々丁寧すぎやしないかしら?
読むかも分からない手紙を何十枚と用意して……。
誠意を見せてると言うのも考えようだけれど、あの人達にとって私なんて塵同然でしょうに。
もしかして指示を出したのは本人や大幹部だけど、実際に制作に携わったのは事情を知らない下っ端なのかしら?
などと思いながら封を剥がすスマラ。
これまた丁寧に折り畳まれた中の手紙を開くと、達筆な文字でスマラ宛の要件が書き記されていた。
長々とこねくり回して書かれている文字を二、三秒で目を通して閉じる。
知っている者は知っているが、わざわざ知らない者に知らせる様なキモチのイイ内容ではない。
一番の要因は後ろからそーっと覗き込もうとしていた二人への対応だ。
「…………」
手紙の文章を頭に入れたスマラは深く息を吸って吐き出した。
瞳を閉じて長考。周囲の人たちも黙って見守っている。
何が書かれていたのか。
態度を見るにイイ内容では無かったのは確かだ。
「分かったわ。その誘いに乗ってあげましょう」
たっぷり1分近く閉じていた目を開くと、スマラはそう呟く。
手紙の内容を見てないはずの者にも分かるように、スマラは端的に伝えた。
「私はここで船を降りるわ。今までお世話になったわね」
「えッ? ちょっと急に何よ」
「…………えぇ!!?」
突然の離別宣言。
ナミとチョッパーの脳裏には2年前のウォーターセブンでの出来事が思い浮かぶが、
「あぁ、2年前のあの時と似ているけど違うわ。私は絶対に麦わら一味の船には戻れない。分かったらもういいでしょう」
スマラは否定する。
似ていると言う事には、ビッグマム海賊団に身を委ねると言う事なのだろうが、政府に着いて行った時と違うのはどういった意味なのだろうか?
そう言った疑問が湧き上がるが、ナミとチョッパーには悠長に考えている余裕もなくなっていた。
「迅速なご対応感謝するレロ。おい、捕まレロ」
「えっ!? ちょっと待って今更私たちを捕まえてどうする気よ!?」
「言ったレロ。人質にすると」
男が指示を飛ばすとナミとチョッパーに銃口を向けて来る部下達。
スマラはそれを無心に見つめていた。
殺されるような事はないだろう。
何の交渉をしているのか分からないが、奥で話しているサンジとベッジの話し合いを有利に進める為だけの様だろうし、何か危害でも加えればサンジが黙っていないはずで、最悪麦わら一味を敵に回す。
最悪の世代の中でも麦わら一味は特にイカれた一味だと有名であり、2年前のシャボンディ諸島では一緒に行動を共にしていた人魚と魚人を攫われたからと言う理由で天竜人を殴り飛ばすと言う常識外れっぷり。
さらに悪い事に、数日前新聞の一面大見出し記事になった様に、トラファルガー・ローとも同盟を結んでいる。
四皇の傘下だから大丈夫と慢心出来る程の相手ではない。
故に、ナミとチョッパーは捉えられこそするものの、身体的なダメージを負わすわけにもいかないのが、ファイアタンク海賊団の現状だ。
抵抗虚しく捕まって連れて行かれるナミとチョッパーをみつつ、スマラは交渉役だった男に声をかける。
「じゃ、私は船で待っているわ。足元に停めてあるのでしょう? あの無駄に大きな船」
「えぇ。船番をしている奴等には伝えてあるレロ。俺達も用事を済ませたら直ぐに向かうレロ」
「そう。反撃を喰らわない様に気を付けることね」
スマラはそう伝えてこの場を去る。
ナミとチョッパーは何度も呼び掛けたが、スマラは一度も振り返ることはなかった。
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