麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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新刊発売日でウキウキしているので投稿しました。

そんなに進んでいないけど最終章に入りました。


八十頁「万国 カカオ島」

 以上がスマラに関する事の顛末である。

 その後、ナミとチョッパーが捕まって人質となり、スマラとの交渉を勤めた男がサンジの耳元である情報を囁くと、サンジはあっさりとベッジの要求を受け入れた。

 

 今頃、二人共遠く離れた海の上だろう。

 向かう先はほぼ確実にビッグ・マムが本拠地にしている島。

 今から追いかけても間に合うかどうか。

 それでもサンジを連れ戻そうとしても、立ち塞がるのは四皇だ。

 実際に百獣のカイドウを目標にトラファルガー・ローの計画の元行動をしているが、何の策略も無く突っ込んで行って帰れる程甘い相手ではない。

 今直ぐに行こうと言うルフィをゾロが窘め、ブルックがサンジの覚悟を伝える。

 

 そして数時間後。

 様々な意見を聞き、ゾウで短い時を過ごしたルフィは当然の結論を出した。

 

 

「やっぱりオレ、サンジのとこ行くよ。戻ってこないかもしれねぇって言われて納得いくか」

 

「ハァー。ルフィがそう言うなら仕方ないわね。私としても相談もせずに決めたサンジ君に一言言ってやらなきゃ」

 

「オレもオレも!!」

 

「では、僭越ながら私も同行させて頂きます。あの場に居ながらも何も出来なか私にも少しばかり思うところがありますので」

 

 

 ゾウへ先行していた組はサンジが一人で決めてビッグマム海賊団に着いて行った事が許せないのか、ルフィの決断を受けて同行する事にした。

 ナミが居る以上、無事にビッグマム海賊団のナワバリにたどり着く事は出来るだろう。

 問題はカイドウやワノ国の事だが、何もワノ国について直ぐカイドウに喧嘩を売るつもりは無かったらしく、ドレスローザに居たメンバーとハートの海賊団が先んじて潜入して情報を集めて作戦を立てる事になった。

 ルフィ達は安心してビッグマムのナワバリに侵入してサンジを連れ戻す事が出来る。

 

 

「よ~し!! 待ってろよビッグマム!!」

 

「言っとくけど、サンジ君を説得して連れ戻したら直ぐにナワバリを出るのよ!? ビッグマムとは戦わないし、カイドウの方優先でしょ」

 

「そうだぞルフィ。四皇を二人も同時に相手取るなんて無謀もいい所だぞ。穏便に、穏便にな!?」

 

「ヨホホホッ!! 四皇の島に直接忍び込むのですから、この位の勢いがなくては」

 

「ホントに、大丈夫なのだろうか……」

 

 

 ルフィが勢いに任せて発言し、ナミとチョッパーがルフィに本来の目的と取るべき行動を叩き込み、そんな様子をブルックが微笑ましく眺める。

 いつも通りの光景であるが、今回の旅にミンク族を代表して同行を申し出たペドロが小声で嘆く。

 そんなペドロがルフィに尋ねる。

 今回も目的であるサンジの奪還。それと同じで違うもう一つの裏ミッションを。

 

 

「で、もう一人の方はどうするのだ? 話を聞くに一筋縄では行かぬ人だそういだが……。話を聞くに、サンジ殿とは違い脅しをかけられた訳でも無く着いて行ったのだろう?」

 

 ミンク族のペドロにとってスマラは微妙な立ち位置の存在だった。

 同じ船に乗って来たのだから恩人である麦わら一味のメンバー、と思いきや態度は仲間とは思えないほど遠く、同行する上で聞いた詳細ではナミとチョッパーが人質として囚われるのを黙認したという。

 情に熱く、800年もの昔の光月家との契りを守り国が亡ぼうと雷蔵を敵に売らなかったミンク族の一員としては、スマラの行動は到底考えられない所業だった。

 故に、幾ら仲間ではないとは言え今まで船を共にしていた者を見過ごす行動を取ったスマラの事を良い風に思えないペドロは、サンジを助け出すのには賛成だったがスマラなどに時間を使う意味が理解出来なかった。

 

 

「何か理由があったのかもしれんが、簡単に仲間と言ってくれるゆが等らを見捨てた奴など放っておくのが賢い選択だぞ」

 

「ダメだ! 俺はアイツを気に入ってるんだよ。あと、これまでも何度も助けて貰った。サンジと同じ様に簡単に嫌な場所に行くような奴じゃねぇよ」

 

「しかし……いや止そう。ルフィ殿が決めたらなら従うのみ。ただし、サンジ殿が最優先なのを履き違えないで欲しい」

 

「……あぁ、分かってる。今度こそ本心を問い詰めてやるぞ~~!!」

 

 

 やる気に燃えるルフィ。

 ルフィにはやはり、スマラが心の底から納得して着いて行ったとは考えていないみたいだ。

 麦わら一味の中で、スマラと最も長い期間過ごしていたからこそ、スマラの些細な気持ちに気づいていたのかもしれない。

 

 

 こうして麦わら一味は二手に分かれて進む事になった。

 サンジを取り戻しにビッグマム海賊団の本拠地へ潜入する組、ワノ国に先行して情報収集を行う組。

 後者は前者の無事を祈って分かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『新世界』とある海上

 

 世にも奇妙な船が海を行く。

 まるでお菓子で船を作り、命を吹き込んだかのように思えるその船は、帆に描かれた髑髏マークをはためかせて海を進んでいた。

 その海賊旗は新世界に生きる者なら誰だって知っている、知らなければならない海賊旗だ。

 現在活動中の星の数ほどもいる海賊。その中でも一際古くから存在し、世界でも有数な数と影響力を持った海賊。

 世界三大勢力の一角『四皇』の一席を何十年も居座り続けている大海賊。

 四皇『ビッグマム海賊団』の一船だ。

 

 水平線を見渡しても近づく船は一隻もありゃしない。

 四皇の船は例え本人が、大幹部が乗っていなくても近づく馬鹿は誰もいない。

 世界で最も過酷な海である新世界であっても、四皇の力は絶大だ。

 本人は言わずもがな、大幹部一人がナワバリ外の島に上陸するだけで、その島は抵抗すら出来ずに終わる。幹部一人でも新世界を航海する海賊団の船長と互角以上の実力を有し、幹部が乗っていない船でさえ一般的な海賊は接触を普通は避ける。

 そう言った側面があるが、この船はもう一つの理由で周囲に船が見当たらない。

 

 

 

 スマラは天気が良いので本日は甲板に出て読書をしていた。

 ビーチチェアーを用意させ、パラソルで日陰を作ってゆったりと寝そべっている。

 横にはこれまた用意させたであろうテーブルにドリンクが一杯。

 連行されていると言った雰囲気を全く出していない。むしろVIP待遇だ。

 

「暇だわ…」

 

 ポツリと呟いた声は波音に消えるだけ。

 側にはスマラの側付きか、監視か、チェス兵と呼ばれる者が立っているが、先の独り言は独り言と捉えたらしい。

 

 暇と言ったが、無論読書をすれば時間は直ぐに過ぎ去れるだろう。

 しかし、そんな日常も1週間近く続けば飽きてしまうもの。

 船に乗ってから真っ先に用意させた、船中からかき集めた本(それこそ個人的な私物まで)は全て読み切った。

 というのも戦いの為に移動する、今回に限ればサンジとスマラの迎えとシーザーの捕縛の為に出撃した船だ。

 チェス兵に私物などありはしないし、この船に個室を与えられている幹部級の存在はベッジとその部下数名のみ。

 かき集めた本の冊数は5冊にも満たなかった。

 船の大きさに反して全くもって書物の数がなってないわね。とスマラは既に悪かった機嫌が更に悪くなった。

 

 仕方がないので、かき集めた本と常に持ち歩いている本を繰り返し読み込んでいるのが現状。

 唯一の楽しみは毎朝ニュースクーが配達してくる世界経済新聞くらいだ。

 世界政府の圧を受け、中身は事実とは違った内容に編纂されているかもしれないが、それでも読み物としては悪くはない。

 読者もバカではなく、誰もが知っている様な内容だけを載せていては購読者は離れていく。

 噓の中に真実があったり、他の新聞会社では載せられないような記事まで載せていたり、時には世界政府の指示に逆らって事実をそのまま載せる時もある。

 物語性としては皆無だが、辞書や専門書を意味もなく目を通すよりかは楽しめる。

 毎日発行されて内容も全く違う点もいい所だ。

 あと、購読料金はビッグマム海賊団に払わせているので無料で読めるのもポイントが高い。

 

 

 何十回目かの文字列を目で追いながら暇を持て余していると、殆ど言葉を発さないチェス兵がスマラに声をかけてきた。

 

 

「スマラ様、後1時間もしない内にカカオ島に到着いたします。そこで小一時間の小休憩と物資補給を行い、本日の夕方頃に本島ホールケーキアイランドに到着となります」

 

「出歩いて言いわけ?」

 

「勿論でございますとも。しかし、一名お付を連れて貰います。最も何かご入用であればこちらで用意いたしますが…」

 

 

 なるほど。

 自由行動は阻まないが出港時間までには船に戻るように、そしてスマラがここに来て逃げ出さないように監視役を付けると言う事か。

 あの人のナワバリまで来ておいて今更逃げ出す訳がないのに。

 

 スマラはピクリとも表情を変えずに答えた。

 

 

「街へは行くわ。着いたら起こしなさい」

 

 

 答えると同時に背もたれに体重を預けて目を瞑った。

 時間まで暇で仕方が無いので仮眠を取ることにしたらしい。

 チェス兵はそれを聞き届けると、見てもいないのに深く頭を下げて了承の意を取った。

 

 

 

 

 

 チェス兵が言った通り、1時間でカカオ島に到着した。

 後ろに待機していたチェス兵に起こされて、背伸びを一つして起き上がる。

 船から下を見下ろすと、確かに島に着いていた。

 名前の通り、チョコレートがふんだんに使われている島だ。

 甘ったるい匂いがここにも届いてきて、空腹感を刺激してくる。

 

 

 時間が余ればカフェテリアにでも寄ってみようかしら?

 

 

 そんな考えを抱きながら船を降りて街へと繰り出した。

 適当に歩いて書店に入り込み、本を物色している間側付きに頼んで別の書店をピックアップして貰う。

 こうすることで次回以降書店を探す手間が省ける。

 監視役も兼ねている為は初めは渋っていたチェス兵だったが、少し睨むとスマラの願いを了承して書店を探しに行った。

 チェス兵は直ぐに戻ってきて、スマラが同じ棚の前で本を選んでいるのを視界に入れると、ホッとして大きなため息を吐いた。

 スマラは知る由もないが、このチェス兵が時間をかけずに戻ってこれたのは、別のチェス兵を使ったからに他ならない。

 別に一人で仕事を全部しなければないわけではない。

 ここはカカオ島でビッグマム海賊団が保有する島の一つだ。

 チェス兵を一人二人召喚する事など造作もない。

 

 

 四皇に支配されている島でもビッグマムの万国は経済が発展している島と言える。

 政府の力が届かず、海賊と言う無法者に支配されている何十もの島から出来上がった国、それが万国。

 ビッグマム本人がお菓子を食べやすくする為に島が形成されており、税が苦しくて島民が生活出来ない程貧窮しているわけでもなく、かと言って世界政府加盟国のような一般的な法がまかり通っているわでもない。

 法を決めているのは海賊だが、島で暮らしているのはただの一般人だ。

 支配者が違うだけで外面は何も変わらない。

 

 故に、島をふらふらと歩いているスマラが思った感想は「思った以上に秩序が守られているのね」だった。

 世界で一番嫌いな海賊が支配する国。

 それはもう、法が機能しておらず殺し合い奪い合いは日常茶飯事。島民は海賊の横暴に日々震えてるクラス日々…なんて、平和に暮らしている者共がイメージする海賊支配の島そのものを予想していた。

 

 しかし、そんなイメージに反して普通の島だ。

 むしろ四皇のナワバリで他の海賊が攻めて来る心配が無い分、何の後ろ盾も得ていない島に比べて活気がある。

 自分達の事だけでなく、そこに住む者の事も考えている証拠だ。

 自分達の生活や天上金の事しか考えていない世界政府加盟国よりもよっぽど良い暮らしが出来ているのかもしれない。

 まだ一つの支配島。その内の一つの都市を軽く見ただけだが、思ったよりも住みやすい国なのかもしれない。

 もっとも、ビッグマム海賊団が支配している国、と言うだけで嫌悪感が消えないのは確かだが……。

 

 

 

 

 

 時間は平等に過ぎ去っていく。

 一時間と言う時間は長いようで短い。

 書店を巡っているとその時間は更に短く感じるだろう。

 

 書店巡りは成功と言えただろう。

 ビッグマム海賊団が支配している国の経済状況も見ることが出来たし、書店に並べられている書籍も悪くない。

 少なくとも、スマラが世界を渡り歩いてなお見たことのないタイトルの品が数多く並べられていたを知れたのは大収穫だった。

 一般市民でこれなのだ。

 支配階級たるビッグマム海賊団の本拠地には更なる本が待っている事だろう。

 

 自由は減ってしまうかもしれないが、そのデメリットを塗り潰すメリットはちゃんとあるのを確認出来たのは大きかった。

 少なくとも、コイツ等が本気でスマラを縛り付けたいと考えているなら、その間は生きるのに必要な全てが提供され続けるだろう。

 もっとも何の見返りもなく与え続けてくるわけがないのを想像に付く。

 対価は情報か、私が今戻ってくる意味、何十年も放置していたのに今更な理由は……。

 

 

 そこまで考えたところで船に戻っていた。

 これ以上考えるには少し落ち着かない場所。

 階段を登って船の甲板へ。

 そのまま約1時間前に居た場所へと戻ろうとしたスマラの前にある男が現れた。

 

 

「スマラさん、少しだけ話がしたい」

 

 

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