麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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遂に判明
後書きに色々と設定と言う本編に出せなかった情報書いてます。


八十二頁「ビター」

 

 次の日。

 遂に四皇『ビッグマム』の本島までたどり着いた。

 船から降りると用意された馬車に乗って島の中央に聳え立つホールケーキシャトーへと向かう。

 馬車の中はサンジと同席だったが、会話は無かった。

 昨日の話で終わりだ。それ以外は必要無い。

 

 ホールケーキシャトーに着くと正門が開門され、サンジとは別行動となった。

 サンジが別の者に案内されて城の中へと消えて行くのをぼんやりと眺めていると、スマラに声が掛かる。

 

 

「まさか本当だったとはな。良く逃げずにここまで来たものだ。可憐なる賞金稼ぎ……いや、今は違うんだった」

 

 

 声の方を向くと、長身と呼ぶには高身長過ぎる女性が居た。

 平均的な女性として高身長なスマラよりも遥かに大きく、脚が身体の比率の大半を占めているので、足長族の血を引いているとスマラは辺りをつける。

 淡い水色のロングヘアー。褐色の肌。大きなバストとヒップのとても魅力的な体付き。特にすらりと覗かせる美脚が特徴的な女性だ。

 

 

「スムージーね。わざわざ最高幹部が出迎えなくても良かったのでなくて?」

 

 

 スマラは当然の様にその女性の正体を知っていた。

 ビッグマム海賊団が誇る最高幹部の一人。第十四女でもある。

 スマラは彼女との面識は一切無かったが、最高幹部なだけあって新聞に目を通していれば嫌でも情報は手に入る。

 そんな一人でも世界政府加盟国に現れれば直ちに海軍本部に連絡が行き、場合によっては中将数名と軍艦数隻が大将に率いられてやって来る。

 尤も、幾ら加盟国とは言え政府にとっての価値が高くなければそこまでして四皇と戦う許可は降りないだろうが……。

 

 

「万が一貴様が暴れ出すと止められる可能性があるのは私かカタクリ兄さん、クラッカー兄さん、スナックくらいだろう、とママの命令だ」

 

「そう。随分な対応で悪いけれど、今更何もしないわよ」

 

 

 無駄足ご苦労様。そう伝えるが、スムージーはスマラの言葉を信用しない。

 

 

「何を考えているのか分からん奴の言う事など信用出来るものか。ママは何故この様な奴を呼び戻したりしたものか……。まぁいい、こっちだついて来い」

 

 

 スムージーはそれ以上会話を続けるつもりは無いらしく、黙って案内役に務める。

 その巨体から生み出させる歩幅は常人よりも遥かに広い。

 故に通常通りに歩くスムージーだが、スマラとの距離は少しずつ広がっていく。

 

 そんなスムージーの背中を眺めながら、案内役なら少しは相手に配慮したっていいじゃない、と少しだけ歩みを早めた。

 そんなスマラの気もしれずにスムージーはどんどん先に進んでいく。

 スマラの速度を意識する気は全く無いらしい。

 先程の態度を見れば当たり前も当たり前か……。

 

 

 

 

 

「ここだ。中にママが居る。何度も言うが、変な気を起こせばすぐ様に兄姉達がお前を取り押さえるだろう」

 

「だから何もしないわよ……」

 

 

 再度警告を発するスムージーにスマラは飽き飽きと答える。

 スムージーはスマラがどんな反応をしようが同じ様に付けに威圧していたろう。

 現にスマラから一瞬も目を逸らさない。

 そこらの海賊なら冷や汗ダラダラで目の前が真っ白になって何も考えられなくなるであろうプレッシャーを常に浴びせられているが、スマラは全く意に帰さずに我を貫く。

 四皇最高幹部だろうが、覇王色の覇気を扱えないレベルでは話にならない。

 言葉外にそう言われているみたいで、スムージーは少しだけ気を悪くするがこれ以上の問答は無意味だ。

 

 

 スマラはスムージーに示された扉の向こうへ入っていく。

 巨大な扉だ。

 そもそも、ビッグマムの身長が巨人族と見間違うほどに巨大である為、城全体が通常よりも大きな作りになっているのだ。

 扉一つ開けるだけでも重労働だろう。

 

 チェス兵が開けた扉を潜ると、一つの部屋に繋がっていた。

 部屋全体が大きく広く、装飾品はどれもそこらの物とは違うと一目で分かる。

 部屋の中央にはこれまた巨大な椅子に座った巨体を持つ女性。

 ピック色の髪、お菓子の食べ過ぎで肥えた身体。

 しかしそれでいて動けない雰囲気を全く感じさせない。

 ギロリと鋭い眼光がスマラを睨みつけており、口元は絶対的な強者が浮かべるニタニタとした口角。

 

 あぁ、嫌気しか感じられない顔。

 

 スマラの目の前に居る女性こそが世界で最も強く大きな海賊の一角。

 『四皇』ビッグマム シャーロット・リンリン。

 スマラがこの世界で最も嫌いな人物だ。

 

 

 部屋の中にはビッグマム一人では無かった。

 見覚えの無い者が殆どであるが、全てがビッグマムの子供たち。

 全員が億を軽く超えた賞金首だ。

 この部屋だけで軽く50億を超える魔境。

 ただの海賊なら命を諦めるだろう。

 

 その中でも一際目立っているのは赤黒い小豆のような色をしており、ジャケットから見える筋肉は見る者を魅了し、口元はファーで隠しており表情が若干分かりにくい人物だ。

 鋭い眼光は常にスマラに向けており、他のビッグマムの家族の中では最もスマラを見る目が厳しい。

 

 

 部屋の様子を確認し終え、スマラはゆっくりと部屋の中央に向かって歩く。

 前を向き、足に力を入れてコツコツと。

 静寂な部屋の中に足音が異様に響く。

 そして、ビッグマムの下にたどり着いた。

 口は開かない。跪かず態度も変えない。

 昔よりも余裕はある。

 心の内は見せない。

 

 数秒間視線が交差した。

 先に根を上げた(と言ってもいいのか分からないが)のはビッグマムの方だった。

 

 

「相変わらず嫌な目だね。ビター……」

 

「その名は捨てたわ。貴女が付けた名前なんてね」

 

「口の聞き方も治っちゃいない。確か……今はスマラと名乗ってるそうだねぇ。ま、名前なんかどうでも良いよ。お前がアタシの娘だという事実は消えやしない」

 

 

 スマラ。

 本名「シャーロット・ビター」

 シャーロット家の次女だ。

 

 

 その事実は部屋に居たシャーロット家の面々を驚かせた。

 平然としているのは次男であり、この場に居る者の中で唯一ビターよりも歳が上で事情を知っていたカタクリのみ。

 それ以外の者は、母であるリンリン以下事情を知る者から何も知らせれていなかった。

 そのことに不満を思う者、これまでの対応に納得する者、などの思いが各々の頭の中に生まれるが、誰一人と口に出す者は居ない。

 ママとビターの会話は終わっておらず、この二人の会話に口を挟めるとしたらこの場で唯一ビターよりも歳と実力が上だと信じているカタクリだけであり、カタクリは腕を組んで二人の様子を伺っている。

 そうなると、他の息子娘達は二人の会話が終わるまで気を緩めないで見守るほかない。

 

 

 

「確かにその事実は幾ら何十年も縁を切っていても消えない事実。だから私はこうしてあなた達の要望に応えてあげたのよ」

 

「ハッ、違うね。あんたが私の下を離れる事許したのは、その貪欲な本への求心故だと言う事を忘れた訳じゃないだろうね」

 

「そう言う割には長い間放置してたじゃない。今更呼び戻した理由は一体何かしら?」

 

「惚け無くても検討は着いているはずだよ」

 

 

 リンリンの言葉にスマラは頭を回す。

 今と昔の違いは何だ?

 一人で放浪していたのと、麦わら一味の船に乗せて貰っている点だ。

 なるほど……麦わら一味の船の載っている事で私に、ビッグマムにも利益がある事と言えば……。

 スマラは答えにたどり着いた。

 故に、内心で「私を無理やりにでも呼び戻したいわけだわ」と煩わしくも納得する。

 

 しかし、そのまま答えてやる程スマラは折れていない。

 

 

「全くもって分からないわ。今の今まで何も関わり合いが無かったのだから、今のあなた達が私の何を欲しているなんか見当も付かない。戦闘力? それとも悪魔の実の力かしら?」

 

「馬鹿言っちゃいけないよ。確かに、そこらの海兵海賊なんか相手にならないみたいだけど、カタクリやスムージーには勝てないだろうさ。覇王色は扱えるみたいだけど、それ止まりならその程度だよ。それとも、何もしてこなかったビター如きがあたしに勝てるとでも思い上がっているのかい?」

 

 

 ビッグマムの言い分は正しい。

 グランドライン前半は生まれ持った身体能力と悪魔の実の力でゴリ押しが効く世界だったが、新世界ともなればレベルが一段も二段も上がってくる。

 それこそ、四皇の戦力となればケタ違いだ。

 現に、ビッグマムの息子娘達でも怪我覚悟で数人がかりならスマラを止めることは容易だろう。

 しかし、カタクリを筆頭として三将星ならばスマラを止める事など独りで十分だろう。

 もっとも、スマラの能力を攻略するのに多少の時間は必要だろうが……。

 

 しかし、それこそ勘違いにもほどがある。

 スマラは産まれた時からリンリンの海賊行為を目にしてきた。

 高位の覇気使いで無くてはダメージが通らない鋼の肉体。

 敵だけでなく時には味方にまで振るわれる理不尽的な能力。

 自身の能力にある程度の自信を持っているスマラだが、世界最強格を相手に過信などしない。

 麦わらのルフィに修行をつける目的で、最近は多少運動していたスマラだったが、元々何十年も平和な世界で格下相手を適当に相手取っていただけで、意欲を持って実力を伸ばそうとした事など一度もない。

 故に、己の能力がリンリン及び四皇最高幹部には通用しないと悟っている。

 

 

「そんな訳ないでしょ? だからこうして大人しくしている。私に望む事があるのなら、ハッキリと口に出したらどうなの?」

 

「相変わらず口の利き方がなっちゃいない娘だね……。まぁいいさ。お前が与えられた役割を全うするなら38年前の事はチャラにしてあげるよ」

 

 

 チャラと言っても、私が貴女に悪いことをした訳じゃないじゃない。

 ただ、あの場所から逃げ出しただけ。

 確かに反撃は行ったけど、一生残る様な傷は与えられなかった。

 私と言う戦力を今後の予定に組み込んでいたのなら、それは子の事を一つも考えていない傲慢な母が悪い。

 子供だって人間で、親に絶対服従な存在ではない。

 だから私は独りで生きていく為に逃げ出した。

 そこに一方的な負債を背追わせて来ないで欲しい。

 

 もっとも、全部分かった上で戻ってきたスマラ自身にこれ以上とやかく言う筋合いは無い。

 

 

「これ以上話をする意味が見いだせないわ。で、私は何をすればいいわけ?」

 

 

 麦わら一味の弱点を話す?

 それともこれから襲ってくる敵の迎撃?

 それとも特攻かしら?

 

 読書ばかりしていた己に出来る事と言えばその程度だ。

 ただ、親と能力のお陰で少々動ける程度の読書好きの女。

 それが自分への評価。

 そう思っていたスマラだったが、与えられた仕事は少しばかり予想外のものだった。

 

 

「ポーネグリフの解読。それがお前の仕事だ」

 

 

 ポーネグリフ。

 世界政府に消された歴史を記している巨大な石の事だ。

 それを解読とは……。

 

 

「政府が禁止している事よ……。と言っても百も承知よね。理由は?」

 

「おや、知らなかったのかい?ま、良いさ。これ以上お前と会話するのは少々疲れる。詳しい話はペロスペローから聞きな」

 

 

 これ以上話す事は無い、とばかりに口を閉ざすリンリンにスマラは眉を潜める。

 そっちから呼んで置いてこれだ。

 昔から用件だけ一方的に伝えて、スマラの要望には殆ど答えない。

 

 しかし、スマラとてこれ以上この部屋に、リンリンと顔を合わせるのも嫌になってきた頃合いだ。

 退出を促されてもぐだぐだ捏ねて留まる理由などない。

 本当にこれ以上何も無いと判断すると、スマラは颯爽とこの場を立ち去る。

 部屋を出ても歩みは止まらない。

 この城の間取りは全く知らないが、とりあえず呼び止められるまで歩く腹積もりだった。

 

 

 スマスタと足音を鳴らしながら歩くスマラを見て、すれ違うチェス兵達は驚きスマラの邪魔にならない様に横にズレるだけだった。

 いつまで歩けば良いのだろか?

 宛は無く、目的もない。

 そろそろ誰か止めてくれないだろうか……。

 そう思いかけた頃だった。

 

 

「『久しぶり、カタクリ兄さん』とお前は言うが、お前にそう言われる筋合いは無い」

 

「久しぶり、カタクリ兄さん。……見聞色の覇気をここまでの練度まで習得しているのは流石だわ。……そんなつもりはないわ」

 

「ママや弟妹達を守る為には当たり前の事だ。あの部屋から出て行ったきり何処へ向かおうと……。逃げないならそれで良いが「それで、私は何処へ向かえば良いのかしら?」宛も無く歩いていたとは呆れるな」

 

「しょうがないじゃない。誰も案内してくれないのだもの」

 

「相変わらず無計画な奴だ。……着いてこい。お前の仕事場はこっちだ」

 

 

 

 そう言ってカタクリは背を向けて歩き始める。

 スマラが進んでいた方向とは真逆だったらしい。

 

 二人で並んで歩く。

 なんて仲の良い兄妹みたいな事は起こり得ない。

 カタクリが無言で前を歩き、スマラが3、4メートル離れて着いていくと言う構図が構成される。

 そこに会話は無い。

 用件があれば会話を行う事はあるが、基本的に互いに無干渉。

 二人共口数が少ない方であるのと、四十年近くも離れて距離感を測りかねている……のは両者とも違うかもしれないが、先程のリンリンとスマラの間ほどピリピリした空気は感じられない。

 もっとも、何が起きてもカタクリは己ならスマラなど容易に制圧出来るとの自身があり、スマラは逆にカタクリには何をやっても勝てないと諦めがあるからこそ、他者の考え以上に落ち着いている様に見えているのだ。

 海賊家業で常に戦闘に身を置いて鍛えてきた者と、自身より弱い相手を才能と能力だけで蹴散らしていた者。

 産まれ覇気能力が揃っているなら、どちらが強いかなんて誰が見ても明らかだろう。

 

 警戒はしているが、それでも無謀な事は滅多にしないスマラの事を知っているカタクリはスマラの事を他の弟妹ほど嫌ってはいなかった。

 嫌ってはないが好んでもいない。

 どんな心境の変化があったのかは計り知れないが、ママの命令を受けて帰ってきた身。

 何も思う所は無い訳ではないが、常に殺気だって警戒心を強めて過ごすほどではないと判断した。

 以上のことから二人は多少距離の遠い兄妹として成り立っている。

 

 もっとも、カタクリはママの命令やハッキリとした家族への不利益があればスマラを躊躇なく殺しに行く事は出来るが。

 




シャーロット・ビター
 本来はもっと伏線張って複雑な意味合いの名前にしてたつもりでしたが、連載期間が思ってた10倍も伸びて、書いていたメモ書きを何処か無くしたので中途半端になってしまったのが心苦しい。
 苦いと言う安直な意味ですが、生まれた時から名付けまでのタイムラグがあったと設定。そして、その間にリンリンを睨むなどの反抗的な態度を取っていた事から、苦いと言う名前に。
 次女なのは、連載開始直前にリアルタイムで読んでいた単行本に次女だけ出てこなかった→次男のカタクリが最高にかっこよくて強いから出てこない次女も強いだろ=そうして生まれた。アニメでしれっと登場した時はビックリと同時に思ったよりも普通で落ち込んだ。
 原作との相違点:次女は三女のアマンダ等と同じ齢ですが、1話に書いてた容姿と離れていたので、苦肉の策として別で産まれた事に。リンリンの子供は沢山居て、間も詰まっているので、カタクリ、オーブン、大福、ビターの四人で生まれたとしています。

更新速度アンケート

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