麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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八十三頁「解読」

 城の中を歩く事数分後。

 遂に目的地にたどり着いた。

 ここもデカイ扉だ。

 扉の前には警護が立っている事から、城の中でも重要な場所なのは間違いない。

 

 

「ここだ。俺はもう行くが……何か起こせば俺が直々に殺してやる」

 

「物騒な宣言ね。もう二度と暴れないわ」

 

「……。他の弟妹達にも手を出すなよ」

 

「…………」

 

 

 しつこい。

 カタクリ兄さんはここまで口が回る方だったかしら?

 何度も何度もしつこく言われると反抗したくなる……と言うのは嘘だが、ここまで言われ続けるとやる気は削がれてします。

 元々皆無だったけれど。

 

 なんて考えながら、スマラは指示された扉をくぐる。

 扉の先には幾つもの鉄格子が見受けられる広間だった。

 

 

「宝物庫だ。こんな貴重な物が沢山置いてある部屋に入れされせるだなんて、ママも何を考えているだ」

 

「そう言うな。だからこそ、俺達兄弟が何人も交代で見張る計画だろう」

 

「対して強くなさそうだけど…ホントに必要な作業なの?」

 

「上の方の姉さんや兄さんたちは皆、警戒しているのよ。ここに収められている物を考えれば当然だわ」

 

「この人数で抑えちまえばこっちのもんよ」

 

「でも、頂上戦争では大将三人相手に大立ち回りしたそうだぞ」

 

「いざとなればホントにやっちまえばいいさ。ママだって嫌ってるんだから」

 

「プリンの奴がさっさと第三の目を開眼してたら必要なかったのにね」

 

「そんな事言わないの。可愛い妹でしょ」

 

 

 

 この人たち、本人を前に言い過ぎじゃないかしら?

 見覚えの無い者達だけど、恐らく全員弟妹たち。

 何人か手配書で見たことがある。

 流石にあの母親の血を継いでいるだけあるわ。

 

 もっとも今の今まで全くの接点が無く、ビターを自際に知っている上の兄姉達や母親からビッグマム海賊団から逃げた者だと聞かされて育ってきた者達だ。

 過激派からすれば印象は最悪で、そうでなくてもプラスに偏っている者など八十人以上いる家族の中でも数名にも満たないだろう。

 

 黙って聞いていれば好き放題言ってくれる。

 年長者を敬う気がないのなら、少し立場を分からせてあげるべきかしら?と頭を過ってしまうが、つい先ほどカタクリに釘を刺されている事を思い出して思いとどまる。

 逃げたのは事実だし、この城では一人孤立しているから私の事を好んでいる人が居ないのは仕方ない。

 一人には慣れてたつもりだけど、いつしか麦わら一味の存在がスマラによって大きくなっていた事に、今更ながら気付く。

 孤立無援状態な時にはどうするべきか。

 スマラは身をもって知っている。

 ただただ、相手の気が変わるまで耐えれば良いだけだ。

 

 能力を使い、耳に入ってくるボリュームを下げる。

 完全に聞こえなくすると、相手が呼んだ時に反応出来ないのはそれはそれで不味い。

 ママから逃げ出す前、似たような状況で呼ばれた事に気づかないで居たら殴られたからだ。

 あれは痛いを通り越して死にそうだった。

 武装色の覇気は能力を軽く貫通してダメージを受け、数日間は殴られた箇所が腫れて激痛が続いていた。

 あれ以来、ママの言葉は何があっても耳に届くようにしている。

 今回だって声を無視して逆上して襲ってきた相手が、勝手に怪我でもしたら主にその後の私が大変だ。

 

 本を取り出して文字列を追い始める。

 本の世界に没入すると音が聞こえてても聞こえなくなるので、そこまで頭を使わない本を選んだ。

 これなら己の罵倒大会を長き聞きしつつ、呼ばれた時に反応出来る。はずだ。

 

 

 

 数分間後、長い罵倒大会も終わりを見せる。

 そうだ、時間は有限なのだから必要最低限の会話だけすれば良い。

 とっと私の前から消え失せろ。

 最低限の仕事だけやって、後は読書に戻りたいのよ。

 

 素直に聞くふりをしつつ、真面目に職務を全うする気の無いスマラを知らずか一人の男が集団の中から一歩出てきた。

 白塗りの顔に真っ赤な鼻。骸骨を思わせる服装。さしずめピエロだ。

 確か……と記憶の中の手配書を探る。

 シャーロット・モンドール。

 その名前はスマラがまだリンリンの下に居た頃の記憶には一切登場していない事から、まだ生まれたばかりか胎の中に居た頃か、それとも顔が老けているだけか。

 少なくとも覚えてないなら年齢は近くないのだろう。

 懸賞金額が1億を少し超えた程度。

 問題ならない強さ……とはならない。

 懸賞金額の高さなどあくまでも政府にとっての危険度に過ぎない。

 悪事が見つからなければそもそも懸賞をかけられないし、表舞台に見せる強さをセーブすればそれだけ危険度が低いとご認識され低くなり、懸賞金額が低い事を利点にも出来る。

 そもそも、1億越えなだけで前半の海ではそれなりに名の通った海賊団の船長をはれるだけの危険度を持っている。

 さらに言えば、モンドールはどちらかと言えば戦闘員の役割よりも指揮官のポジションを担っており、ママや長男であるペロスペロー、以下上の兄姉の命令が無ければ他の兄弟姉妹、傘下の海賊団を指揮する立場だ。

 直接戦闘にはあまり必要ない役職に居るにも関わらずこの賞金額はビッグマム海賊団の、四皇の層の厚さを示していた。

 

 

 モンドールはスマラに言った。

 

 

「アンタにはこの宝物庫でポーネグリフの解読をしてもらう。とはいえ、監禁しろとは言われてねぇ。食事、睡眠、休憩は自由にしてくれても構わねぇが、余りにも何もしないならママに報告しなくちゃならねぇ」

 

「思ったよりも縛らないのね。私としてはありがたい事だけれど」

 

「一度逃げた奴をガチガチに縛り付けた所でまた逃げられるのがオチだ。ただの戦力としてならそれでも良かったんだが……この仕事はママが海賊王になる為に必要な事。となればある程度の自由を許してでも仕事を進ませた方が効率が良い」

 

 

 なるほど。

 確かに誰もが強制的に縛り付けられて働かされるよりも、ある程度の自由と特権を与えられた方がやる気も上がって逃げる可能性は低くなる。

 一度逃げられた事でその辺りは対策済みと言う訳ね。

 確かに良く私の性格を考えている。

 ペロスペロー兄さんやカタクリ兄さん、姉さんの入れ知恵でしょうね。

 あの暴君なママが私の都合ややる気なんか気にするはずもない。

 

 でも、

 

 

「でも、そもそもどうして私がポーネグリフの解読を出来ると思ったのか謎だわ」

 

「おっと、すぐバレる嘘をついても無駄だぜ。麦わら一味にはニコ・ロビンが所属している事は有名だ。同じ船に乗っていたなら、未知の文字を求めて読み方を習っていても不思議じゃねぇ、とママや兄貴姉貴達は言っていた。だからアンタを呼び戻したのさ。でなきゃ、近くにいただけで呼び戻す理由がねぇ」

 

「あの人たちがそんな事を……」

 

 

 意外だった。

 羽虫みたいに近くに来られると鬱陶しいだけの存在や、空気の様に無視するべき存在だと思われている、と思っていたスマラは純粋に驚いた。

 結局は都合のいい存在だと認識されているだけなのだが、それでも認識されていただけでも過去の出来事を思えば意外も意外。

 

 そもそも、あの時私を殺さずに逃がした理由が、古代文字の解読方法を探させるだったとは……。

 あの時、確かに私は逃げ出した。

 そしてビッグマム海賊団に少ない被害を出して逃げ切った。

 というのが私の素性を知る人達の認識だけれど……本当は最後の最後で捕まった。

 私が逃げられたのはただのチェス兵やママが能力で作り出した生き物達だけ。

 能力に頼って、身体を鍛える事なく好きな事だけしていた私と、ママの言いつけを守って将来の為に強くなろうとしていたカタクリ兄さんを筆頭に、ペロスペロー兄さん、姉さん、ダイフク兄さん、オーブン兄さんとは未熟だった能力の隙間を突かれる始末。

 ママや生まれた時からママの側にいるシュトロイゼンには手も足も出ない。

 兄さんたちに両手を抑えられてママの前で跪かされたあの瞬間。

 直ぐに私を折檻せず、何か考える仕草をしていた記憶がおぼろげにある。

 なにもされず、解放されて逃げ出せたのは全ては私が好奇心でポーネグリフの解読方法を見つけると踏んだから。

 保険の一つだったかもしれない。

 でも、今私はポーネグリフをある程度読める状態でママの下へ戻って来た。

 完全に私の事を理解していなければ読めない動きだったはずで、30年前のママはそれを読んでいた。

 これで私には全くの愛情が無いのだから……複雑だ。

 

 

 スマラは内心でため息を吐き、モンドールへと気になっている事を質問する。

 この瞬間の会話だけでも、モンドールは目的の為なら何だって利用する性格だと感じ、与えられた仕事をこなしている間は、言葉に嘘も理不尽な要求もして来ないだろうと推測した。

 

 

 

「解読の期限はあったりするのかしら?」

 

「読めるなら直ぐだろうよ」

 

「ニコ・ロビンと一緒にしないでちょうだい。時間をかければ読めない事も無いけど、習っていない単語や文法が出てきたら無理ね」

 

「そこをなんとするのも仕事の内だ。ま、他の海賊共が海賊王にならなければそれでいい。プリンの奴を使う線もあるしな」

 

 

 ママとの会話でも出てきたプリン。

 名前からすれば妹のはずだが、全く分からない以上戦闘員ではなさそう。

 私みたいにポーネグリフの解読を任されているのだろうか?

 どの道、戻ってきて衣食住を与えられている以上、仕事はするべきだろう。

 それが、解読が難しく困難であり時間がどれだけかかろうと、ちょーっと精神安定剤の役割を担っている読書の時間が長くなろうと、仕事をしているポーズをとって入ればどれだけ時間がかかってもだ。

 数か月に一度、適当に翻訳した文章を見せればママ達も納得するだろう。

 今まで何十年も解読が進んでない事を考えれば、少しでも前進するだけで感謝してもらいたい。

 

 スマラが頭の中で今後の計画をなんとなく考えている間も話は進む。

 広い宝物庫には数か所の牢屋が設置されており、その中に入っているのはポーネグリフそのものだった。

 ビッグマム海賊団の広い情報網と人員を駆使して集めたそれは、厳重に守られている。

 解読を任されたスマラは信用が足りないのか、それともママや上部の幹部以外は例え家族であろうと禁止されているのかスマラには分からなかったが、牢屋の中には入れさせていた貰えないみたいだ。

 モンドールの話によれば、最優先で解読するのは赤い石。

 スマラは興味ない上に初めて見たタイプのポーネグリフだったが、海賊王になるための条件みたいな最後の島に辿り着く為には赤いポーネグリフが最重要らしい。

 

 地図のような役割を担っているらしいがスマラからすれば、ポーネグリフに記されている=最低でも800年前から存在している島であり、政府が存在を隠したがっている島でもあるということ。

 そこに何があるのか、文献は?書物は難しいとしても、遺跡などに記録が記されているのではないか?

 過去政府が非道な事をしたが故に隠しがっているとかどうでもよく、単純に歴史として知りたい。

 

 そんな気持ちが湧いてきた。

 しかし、それはポーネグリフを解読せねばならず、また最後の島に辿り着くと言う事は世間的にママを海賊王に成し上げるという事だ。

 好奇心もあるが、それ以上にビッグマム海賊団が、ママにとって理想となる未来を作るのは非常に嫌だった。

 

(よし、当初の予定通りなぁなぁで進めて行きましょう)

 

 

「それで、仕事内容は分かったわ。では、図書館と私室は何処?」

 

「……チッ、部屋も図書室も勝手に誰かに聞きやがれ。思った以上に時間を喰っちまったから俺達はもう行く。見張り以外は元の仕事に戻れ。じゃあな、精々ママに見限られない様に働けよ」

 

 

 そう言ってモンドール以下ここに集まっていた弟妹たちは散っていく。

 残ったのは数名の見張りだろう。

 弱くは無いがそれ程強い訳ではない程度の実力だと感覚で感じ取る。

 スマラに有無を言わせずに見張っていられる弟妹達など、大幹部に近い将星のクラッカーとスムージーにまだ見ぬスナックくらいならものだろう。

 そのような大幹部、常時スマラの見張りなどに時間を割く暇など無いに決まっている。

 精々、弟妹達で足止めをしている間に付近に残っている者を呼び出すか、最悪ママ本人がやってくれば一発で方が付く。

 そもそも、スマラは積極的にビッグマム海賊団に不利益な行動を取るつもりは無いので、暴れたり宝物庫にしまい込んでいるポーネグリフを盗み出したりなどする気も無い。

 全て無駄な徒労なのに……とも思うが、向こう側からすればスマラの思考など解らないはずで、故に万が一に備えているだけに過ぎない。

 

 

 

 

 

 とりあえず、初日くらい真面目に働いているふりでもしようかしら?

 そんな安直な考えでスマラは一先ず目の前のポーネグリフへと向き合った。

 

 

「机と椅子。それから紙とペンを持ってきてくれる?」

 

 

 誰にでも聞こえる声で要求すると、一人の男が「おい、持って来い」と言い、指示された者が部屋を退出。

 その間も、

 

「言う事なんか聞く必要あるの?」

「ママやペロスペローの兄貴も大抵の要求は呑む様に言われてるだろ」

「それ程重要なのかね。カイドウや赤髪だって今の今まで最後の島に行く素振りさえ見せなかったじゃないか」

「それでも目指してる以上必要な事だと説明を受けただろ」

「ママや兄貴たちの命令なんだから黙って従えば良いんだよ」

 

 と、言いたい放題。

 一々相手をしている暇も労力もなく、どうせ真面目に戦えば負けることの無い程度の実力しか持ち合わせていない烏合の衆。

 カタクリ兄さんの忠告がある以上手を出す気も無いし、今日初対面な異父弟妹達に何と言われようが何も思わない。

 直接言う事もせずに陰口ばかりの有象無象などどうでもいい。

 

 

 一瞥しただけで興味を失ったスマラは、今後の身の振り方について少しだけ煮詰めると、その後はバッグから本を取り出して時間を潰した。

 そして、スマラが要求した物が届くと名残惜しそうに栞を挟み、牢の外から薄暗いポーネグリフを睨み付けながら解読の体を取って時間潰しだ。

 時折ペンを動かしながら適当な文字をメモして、資料と思わせて適当な歴史書でも眺める。

 

 そうやってスマラが三十年以上に渡る長い長い家出から戻って来た初日は過ぎていった。

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