麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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八十八頁「暗殺未遂事件」

 

 神父が倒れ、混乱する会場内。

 新郎側も、新婦側も何が起きているのか不明だった。

 

 

「神父が倒れたぞ!!?」

 

「一体何が起きているッ!」

 

「いや、神父が発砲しようとして止められたようにも見えたぞ」

 

 

 否、この状況下でも一人だけ状況を正確に把握しているどころか、この後何が起きようとしているのかすら把握している者が一人。

 

 

「どうしたカタクリ!! プリンに何が起きた~!!」

 

「それどころじゃない。不測の事態だママ。俺にも手が出せねぇ」

 

 

 この場で最も立場が上のママの問いにカタクリは険しい表情を崩さずに答えた。

 同時に、手が出せないながらも起きてしまう不測の事態に対処する為に頭を回す。

 一瞬だがこの混乱を利用して逃げたり共謀する可能性があるスマラに視線を向けるが、スマラもスマラで集中しているが為にカタクリの視線には気づかなかった。

 

 

 そして、会場中の視線が集中する中でウエディングケーキが爆ぜた。

 文字通り、内部から飛び出てくる人物たちに耐え切れず。

 残骸が飛び散るが、そんな事よりもウエディングケーキから飛び出して来た人物に誰もが視線を奪われる。

 

 

「ビッグマム~~ッ!!」

 

 

 この場の主の名を叫びながら現れたのは大量の麦わら。

 麦わら一味ではなく、同じ姿をした麦わらが何十人もに分身して現れたのだ。

 現れた人物がこの場に居るはずもない最悪の世代筆頭の麦わらのルフィなのもあり、会場は更に騒然とし始める。

 初めは余興だと感じた招待客も居たが、麦わら一味が何処かの傘下に下ったと言う噂も聞いたことが無く、更にはビッグマムを筆頭として幹部たちも同様に驚いている様子からそれはないと判断し、これはとんでもない事件の真っ只中にいるのでは?と軽いパニックは起こしつつある。

 

 スマラも他の人たち同様に驚きこそはしたが、この城に麦わらが捕まっている事は知っていた為、何らかの幸運で脱獄したのだろうと結論付けた為、直ぐに持ち直してどう動くか思考し始める。

 

 が、

 

 

「姉さん、動かないで」

 

「あら、騒動の対応は良いの?」

 

「ママとカタクリ兄さん、それの他の兄弟姉妹が居るから問題ない。この場に置いて最も不安要素として存在している貴女の行動を制限する方が吉と勝手に判断した。だから大人しくしてて貰うぞ」

 

「別に何もしないわよ」

 

「どうだか」

 

 

 突如ウエディングケーキから現れた複数人もの麦わらの対処に追われているビッグマム海賊団の中で唯一、スムージーだけは対応に向かわずにスマラの下へと駆け寄った。

 彼女の中ではスマラと麦わら一味が繋がっているとなっているのだろう。

 確かに、この混乱で行動を起こすなら絶好のチャンスであり、麦わらの対処をしている間にスマラを止められる者と言えば将星の誰かか上の兄姉だけ。

 ママとカタクリ兄さんは麦わらの対処で忙しく、スムージーが一番適任とも言えなくもない。

 

 逃げるべきか城の中へ避難と言う帰宅に移ろうか迷っていたスマラは、これではどう動いても敵対行動に間違われて自由が無くなるだけだと判断して、椅子に座ったまま事の成り行きを見守る事にした。

 

 麦わらが飛び出して何かを狙って攻撃を繰り出す。が、未来視で行動を読んでいるカタクリに阻まれて不発に終わる。

 その後、カタクリに捕まった麦わらのルフィを助けたのが海峡のジンベエ。この混乱の最中に子分盃を返上すると言う新世界に生きる者なら誰もが驚く行動を成功させた。

 

 四皇の子分を辞めて、歯向かう海賊団にその場で加入する。それだけの魅力を麦わらのルフィは持ち合わせてるのだろうが、この場でそれは悪手……いや、この場だからこそやったのだろうか?

 スマラにはジンベエの心情が分からない。理解できない。

 いくらママの能力が効かないからといって、ママの攻撃が無力化されたわけではない。

 ママの、四皇の恐ろしさは能力だよりではなく素の戦闘能力もそこらの海賊とレベルが違う程に鍛えられている。

 それは、ママと戦う上で最低限の覚悟。それをクリアしたところで勝てる保証はどこにもない。

 

 その筋力と覇気を生かしてビッグマムがジンベエとルフィを攻撃する。

 流石に直撃は不味いと判断したのか、防ぐ事もしないで回避に徹した二人だったが、ビッグマムや他の兄弟姉妹だちがジンベエの盃返上騒動に気を取られているうちに襲撃者の目標物を破壊した存在が居た。

 顔に簡単な細工を施し偽麦わらのルフィに変装していた麦わら一味の音楽家ブルックだ。

 会場内の視線が麦わらのルフィとジンベエに向いている隙に目標物まで辿り着き、誰の邪魔を受けることも無く破壊した。

 

 

「マザー・カルメルの写真が!?」

 

「誰の写真?」

 

 

 当然ながら三十年をも家出していたスマラには誰だか全く見当も付かない。

 少なくとも、スマラに自我が芽生えてからママの下から逃げ出すまでの数年間の記憶には無い。

 丁度よく後ろに最高幹部な妹がいるので聞いてみる。

 

 

「私も名前しか知らん。ママの恩人だとも聞くが……」

 

「つまりよく知らないママの知り合い。あの写真が破壊されたら何かあるの?」

 

「……聞いてどうする?」

 

「別に。ママやあなた達の慌てようから、どんな悲劇が起こるのか気になっただけよ。それよりも、麦わら一味がまだ何か企んでいるようだけれど、助けなくてもいいのかしら?」

 

「…問題ない。幸いママも混乱しているだけ。カタクリ兄さんが居る以上、麦わらの対処は任せておけばいい。むしろ私は、イレギュラー要素が強い姉を視ていた方がカタクリ兄さんもこちらを気にせずに動ける」

 

「ふーん。その判断、後で後悔しなければ良いけれど」

 

 

 疑問も僅かながら解消され、軽い皮肉交じりな会話を交わすと後は他のゲストと同じく見物するだけ。

 戦闘の余波がこちらに飛んで来ないかとそれなりに気張っているが、騒動の中心である会場の中央付近やママの近くからは離れている為、余程の範囲攻撃でも無い限り問題ないだろう。

 

 戦闘行為には興味が湧かない。

 これが実力の向上に熱心な者なら観て勉強すると言う行為を行うチャンスなのだろうが、生憎とスマラには無縁の言葉でもある。

 どう頑張ったって敵わない相手は存在するのをスマラは知っているからこそ、無駄な努力と言う物は時間の無駄だと切り捨てて来た。

 

 かと言って、周囲の招待客のように麦わら一味がビッグマム海賊団に喧嘩を売っているのを娯楽として眺める気も起きない。

 何が楽しくて野蛮人共の喧嘩を見て楽しめるのか。

 それくらいなら読書でもしていた方が何倍もマシだ。

 否。スマラにとって読書よりも優先順位の高いものなど存在しないのだから、こんな状況こそ読書で気分を入れ替えると言うもの。

 後でママに怒られる隙を作りたくなくて、式の進行中くらいは我慢しようと仕舞っていた読みかけの本を手提げバッグから取り出し、この騒動が片付くまでの時間を潰そうとして……。

 

 スマラを、否。会場全体を襲ったのはビッグマムの絶叫。

 覇王色の覇気を制限なしに解放したその咆哮は、同じ覇王色持ちと言えども耳を塞ぎ臥せって覇気の波動から身を守るしか無かった。

 

 キィーンと耳が悲鳴をあげる。

 直ぐに手とカットしたももの、四皇の覇気を伴った絶叫は手で塞ぐなど全く意味を持たない。

 動けるのは初めから耳栓をしていた者のみ。

 絶え間なく続く絶叫。

 急に耳を潰されて脳が揺れるが、すぐさま聴力を能力でカットして事無き得るが、一時的にも受けた騒音は耳と脳に少なくない被害を出した。

 

 

「最悪ッ」

 

 

 思わず悪態を吐く。

 だが、それで現状が変わるはずもなく、動けないビッグマム海賊団を後目に計画を立てていた者たちは行動に移す。

 シロシロの能力で、首謀者ベッジの中から二人の巨漢が飛び出してくる。見覚えがある。ベッジの部下だろう。

 彼らは手に持っていたロケットランチャーでママに砲撃。

 普段のママなら常に纏っている武装色の覇気と強靭な肉体があり、ただのロケットランチャー如きにダメージを受けるはずもないが、今のママはスマラが初めて目にする異常状態。

 普段は回避する必要もない攻撃にどうなるのかと、思わず痛い耳を抑えつつ視線を送る。

 

 幾ら異常状態で覇気が切れているとは言え、ママの肉体は人間の範疇を超えている。

 傘下だったカポネ・ベッジがそれを把握していないはずもないわ。

 となれば……殺すのが目的ではなくダメージを受けさせるのが本命?

 でも、顔とは言えママが爆弾如きで今後に関わる様な怪我は受けないはず。

 ……なら毒でも仕込んである?

 普通の毒でもケロッとしてそうなのがママだけれど……。

 

 ビッグマムがベッジの攻撃を喰らうまでの間、確かにその結果が気になってスマラは視線を向けていた。

 結婚式場内全員の視線がママに向かうロケットランチャーの弾へ注がれる。

 ベッジの攻撃に気が付いていないビッグマムは未だに覇気を待ち切らしながら叫び続けていた。

 

 このまま何十年と海に君臨し続けていたビッグマムが陥落するのか?

 

 なんて普通なら考えもしない未来が頭をよぎるが、ロケットランチャーの弾があと少しで被弾するという距離になってビッグマムの絶叫が一際大きくなった。

 そして、ロケットランチャーの弾はビッグマムの咆哮を食らって誘爆し、本人に命中する前に消え去った。

 

 2度目は無い。

 誰もがビッグマムの咆哮で数秒の時間動けなくなっていたからこその暗殺。

 その機会を逃せば、後はビッグマムが動けなくとも兄弟姉妹達が対策して襲撃者を捕えに行く。

 現に、能力でモチを作り出して耳を塞いだカタクリが対策物を作り出して他の兄弟姉妹等へ配って動ける様になっていく。

 当然、スマラはモチを貰えなかった。

 

 

 

 

 この混乱した状況。

 このまま混乱した会場内を治めるにしても短くもっても1時間はかかるだろう。

 暗殺を企んだギャングベッジと麦わらのルフィが徹底抗戦をし、予想以上に粘ったのなら1時間では片付かないかもしれない。

 そんな時間を無意味にこの場で待つ程スマラは大人しくない。

 

 

「ここで大人しくしていろ。私はあの裏切り者を始末してくる」

 

「お城の中へ戻っていてはダメ?」

 

「ダメだ。 オイ!!誰かこの愚姉を見張っていろ!!」

 

「残念」

 

 

 隣に陣取っている妹がようやく動くと言うので、もう部屋に帰っても良いか?と問いかければ、返って来たのは無情な返答。

 自身も裏切り者の征伐に参加する上で、代わりの見張りを呼んでからベッジが変身した大き目の城へと向って行く。

 そんな妹の背中を見つめていると、数秒もしない内に代わりの弟妹達がやって来る。

 見たことがあるような無いような、恐らく初対面だろう。

 スマラがママの前から逃げだす前、つまり物心がつく前に会っていたとしても、双方覚えてないのだから初対面で良いはずだ。

 彼らはスマラの周囲を囲む様に立つと、そのまま黙ってスマラの行動を一切見逃してやるものかと睨みつけ始める。

 仲良くする気は一切ないらしい。

 

 どうにもこうにも、随分と嫌われているみたい。

 年齢差から考えるに、私が出て行った後に産まれたから会った事もないだろうけど……。

 ママや兄さん姉さんがどんな事を吹き込んだのやら。

 私はただ、自由に読書できる時間と空間が欲しかっただけなのに。

 

 

 

 怒り狂ったママが城に変形したベッジ殴りつけるのを眺めながら、スマラは家族からの嫌われように溜息を吐く。

 当然と言えば当然の結果。予想していなかった訳ではないが、こうも敵意しか向けられないなら嫌でも空気が悪くなる。

 気分転換を行おう。

 そう決めたスマラは目の前の食事を食べ始めた。

 

 この場にさえ居れば今の所文句は言われないだずだから、この場でスマラが食事を行おうが問題はないはずだ。

 結婚式の作法は完全に無視しているが、暗殺未遂でこうもかき乱されては今更だろう。

 騒動が収まる頃には折角の料理も冷めているだろうから、食べられるなら今の内に食べておこう。

 この状況だと結婚式が再開するかも妖しく、だとすれば食べられる内に食べておくのが作った料理人と食材への礼儀というもの。

 などと綺麗事を並べてみたが、結局のところスマラがお腹が空いていて、部屋に戻る事も出来ずに暇だからである。

 

 この状況下で食事に入り、更にマナーが悪い事に読書までし始めたスマラに周囲の見張り役の弟妹達はどよめき、鼻で笑い、怒りを見せ、直接抗議を行う者まで出る。

 が、スマラは一睨みでそれらを抑えた。

 ただでさえ出席もしたくない結婚式に出さされ、麦わら一味とカポネ・ギャングベッジによる暗殺騒動。

 平穏な毎日を送りたいだけなのに、これでは麦わら一味と行動を共にしていた時と何も変わっていないじゃない。

 帰って来てしまった以上、もう此処から逃げられないと分かっていても逃げ出したくなる。

 膨大な著書を見ていなければ、麦わら一味に加担する事も薮坂ではないと思える程。

 

 しかし、スマラが古代文字を少なからず解読出来ると踏んでいるビッグマム海賊団は何があろうとスマラを二度と逃がしはしないだろう。

 ニコ・ロビンを捉えて解読させる方がより確実だろうが、ニコ・ロビンは忌々しくも麦わら一味だ。

 それを奪い取ろうとすれば労力はそれなりに必要である。

 ならば元々ママの子であり、本で釣れば嫌々ながらも解読をする意志を見せるスマラを買い殺した方が楽であり、別のプランとしてプリンの第三の目を開眼させる可能性を待っている手もあるにはある。

 それでも、カイドウや赤髪に黒ひげ、その他海賊王を目指している有象無象の海賊共を出し抜くには、幾らでも道を作っていて損は無い。

 それ故に、三十年前の何も知らない小娘だった頃のスマラがママから逃げられたのも半分計画的に見逃されていてだけであって、古代文字をニコロビンから学んだと半分確信めいているママからすれば今のスマラはどう足掻いたって逃げられない存在。

 

 こうなる事は分かっていた。

 でも、実際に戻って行動に制限をかけられる日々はやはり性に合わない。

 読書さえ出来れば後はどうだって良いと考えていたスマラだが、知らぬ間に気の向くままの放浪する生活の事も、案外気に入っていたのかもしれない。

 と、今更になってから気づいたスマラだったがもう遅い。

 籠に戻った小鳥は二度と逃げられない様に監視されるように。

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