麦わらの一味?利害が一致しているから乗っているだけですが?   作:与麻奴良 カクヤ

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325 九頁「何もしていないのだけれど?」

 偉大なる航路初の島ということで緊張していた一同だったが、あっけなく島に上陸出来てしまった。

 町中総出で海賊船を歓迎してくれている。

 ナミは怪しいと思いつつも、市長を名乗る人物に押され歓迎を受けることに。

 と、船を出るに当たって船内に引き籠っているスマラにお迎えが来る。

 

「おーいスマラ!歓迎会してくれるって!!行こうぜ!!」

 

 スマラをこの船に乗せた張本人ルフィだ。

 ルフィが船内を覗くと、スマラは外の喧騒など気にしていない様子で読書をしていた。ルフィが呼びに来ても気にしていない。

 スマラは本の文字から目を逸らさずに言った。

 

「私はいいわ。適当に楽しんでくれば?」

 

「えぇ~行こうぜ!!楽しいからさ~」

 

 が、ここで諦めないのがルフィクオリティー。スマラに近づくと駄々を捏ねてくる。

 このままではスマラが動くまでいそうだ。とのことで、スマラは渋々と約束を取り付けた。

 

「はぁ、後から顔を出してあげるわ。丁度聞きたいこともあったしね」

 

「ホントか!?絶対だぞ!!絶対後で来いよ!!」

 

 ルフィは喜んで船を出ていった。

 船に残っているのはスマラただ一人。外から聞こえる歓迎の音が程よいBGMになっている。

 本を読みながらスマラはこの街の在り方を考えていた。

 

 異常ね。全くもって異常な町だわ。

 誰もこの状況を疑問に思わないのかしら?

 町中総出で海賊の歓迎会をする。利害が全く分からない。

 まるで油断を誘っているかのように。

 実際に殺気が駄々洩れだった。恐らく狙いは金品、もしくは賞金。

 はぁ、面倒な島に誘われてしまったものね。

 

 取りあえずの結論を出したスマラは、気にしていないで読書の続きに戻る。

 この程度の障害でスマラは動くはずもなかった。

 

 

 

 

 

 時間が経と日も完全に落ちた頃。

 ようやくスマラは船から降りた。

 

 行き先は知らない。だが見聞色の覇気で人の多い場所に向かえば問題はなかった。

 気配に従って進むとそこは酒場だ。入り口を潜ると、そこは飲めや歌えや大騒ぎ。

 スマラの苦手な雰囲気があった。

 

 ウソップが自慢と英雄譚を語り、ゾロとナミが飲み比べ、ルフィが食べ放題に挑戦し、サンジが複数人の女性を口説いている。

 アルコールのキツイ匂いが辺りを充満し、能力で防げるはずのスマラは手で鼻を覆う程。

 

 早くこの場を離れたい一心で、スマラは愉快そうに笑っている責任者の元に行く。

 髪をクルクルに巻き上げているのが特徴的な男だ。彼はスマラを見つけると、不思議そうに言った。

 

「おや?まだお仲間がいらっしゃったのか?ささ、こちらにどうぞ」

 

「いいえ、結構です。それよりも、本を売っている店は何処?」

 

「本……ですか?一軒ありますが、今は歓迎会の途中ですし。もう夜も遅い。明日にでも……」

 

「そう、夜だから空いてないって言いたいのね。でも教えなさい」

 

「っ!この先の道を………」

 

 失念していた。夜になれば店が開いていないのは当然のこと。

 普通の町人ならスマラも脅迫まがいに問いださなかっただろうが、目の前の市長から殺気が駄々洩れなのを感じているスマラは気にしない。

 有無を言わせない態度で問いただすと、顔を引きつりながら教えてくれる市長に「お金は勝手に置いておくわ」と言い酒場の出口に向かった。

 さっさと出ないと面倒な者に見つかってしまう。もっとも、皆それぞれの事に夢中でスマラが来ていた事など気づきもしなかったのだが。

 

 市長イガラッポイに本を売っている店を聞き出したスマラは早速その場所に向かう。

 酒場から離れると辺りはおかしいほどシーンと静まり返っていた。人一人おらず、家の中に明かりも付いていない。明らかに異常な光景。

 しかしスマラはまるで気にしない。

 

 イガラッポイに教えられた場所に着くとドアを押してみる。

 すると、開いた。

 まるで用心がない。この町に泥棒などは出ないのだろうか?それとも、泥棒など居るはずもない理由があるのだろうか?

 

 どちらでも気にしないスマラは簡単に入れた事に、一手間省けたと思いながら店の中を見渡す。

 個人経営のこじんまりとした店だ。書店などとは違い、日用品や雑貨品も扱っている店なのか、壁の一角に本棚が置いてあるだけ。

 スマラは取りあえず、一通り表紙を見ていった。

 

 

 

 月も大分登り、時刻は深夜に差し掛かっている時間帯。

 スマラはまだ店に居た。

 店員さんや他のお客様、辺りが時刻に合った静けさ、窓から差し込む月光。色々なことが重なったのか、スマラは店員のいない店で本を読んでいた。

 流石偉大なる航路と言うべきか、東の海に居た頃とは流通が違う。スマラが読んだことの無い本が幾つも見つかったのだ。

 そうなれば当然、全部読みたいと思うのがスマラ。しかし全部買えるお金がないので、こうやって立ち読みをしているのだった。

 

 新しい本が読めて気分が良いスマラ。だが、その気分もそこまでだった。

 読書に夢中だったはずのスマラは不意に頭を下げる。

 

 パァン!!

 

 刹那、発砲音が鳴り響きスマラの頭があった場所に弾丸が通りすぎる。見聞色の予知能力だ。

 パタン、と本を閉じる音が店の中を木霊し、スマラは静かに告げる。

 

「近くに待機しているのでしょう。出てこなくていいわ」

 

 出て来なくていい。その意味は出てくる間も無く終わらせる。ではなく、面倒だから相手をさせるな。

 スマラは本棚に陳列されている本を根こそぎリュックサックの中にしまうと、何の警戒も無く店の外に出ていく。

 

「あら?出てこなくても良いと言ったはずだけれども?」

 

「捕らえろ!!女だからって油断していると痛い目に合うぞ!!Mr.8が気を付けろと言ってた!!」

 

「十人全員でかかれぇ!!」

 

 店の周囲を十人で囲んでいた町人。スマラが店から出てくると、一斉に攻撃態勢に入りスマラを無力化しようとしてくる。

 ある者は剣で、ある者はピストルで、またある者は槍で、三百六十度からスマラに向かって己の獲物を振るう。

 

 対してスマラは深く溜息を吐くと、ただ目を瞑って棒立ち状態になった。

 

 

 

 

 

「ば、バケモノ……!!」

 

「もう終わりなのかしら?」

 

 十人もの攻撃を棒立ちで受けたスマラ。避けたり防御態勢すら取ろうとしないスマラに、町人改め犯罪者集団は殺ったと思った。

 だがしかし結果は見ての通り、スマラの周囲には腕が折れ曲がり、攻撃をしたはずなのに自身に攻撃が跳ね返って来て血を流している者ばかり。

 スマラの能力『反射』だ。

 

 覇気も扱えない偉大なる航路の入り口にいる者がスマラに傷など追わせることは不可能。ただ棒立ちで攻撃を反射しているだけで殆どの敵を葬ることが出来る。

 向かって来る運動エネルギー量を変換させ、反対方向に打ち返すなどスマラには簡単な事。ただの剣や銃弾となれば尚更。

 

 攻撃をしてこなかった者が、スマラの姿を見てバケモノと表現する。

 バケモノ呼ばわりされたスマラは狙い通りだと、心の中で微笑んだ。

 

 人が他の生物をバケモノ呼ばわりする時は、圧倒的な強さだけでなく恐怖も感じている相手に使うものだ。

 スマラの戦い方は、悪魔の実の能力を知らない人間にとって理解不能なもの。攻撃したはずなのにいつの間にか攻撃が自身に跳ね返っている。更に相手は何の動作も行っていないと来たら、何をやればいいのか分からなくなるだろう。

 

 中には攻撃をし続けると何時かは通るだろうと高を括る者もいる。現に、暗殺者がスマラの周りに増え始めていた。

 スマラはそんな者など気に留めないで歩き始める。すると、暗殺者達はスマラに向かって無造作に攻撃し続けた。

 

 スマラが歩く。銃弾がスマラに向かって発砲される。銃弾はスマラに当たると運動エネルギーの方向を逆算し、撃った本人へと跳ね返っていく。

 スマラが歩く。剣がスマラを叩き切ろうと迫る。剣はスマラに当たると運動エネルギーを逆算し、剣を持っていた本人の腕の可動範囲を無視して跳ね返っていく。

 四方八方どの方向から攻撃を加えても、どんなに遠くから狙撃しようと、一度に多数の攻撃で仕留めようとしても、スマラの運動エネルギー量を変換させる力には敵わない。

 

「いい加減に実力を認めて帰ってくれないかしら?」

 

 いい加減に無造作に行われる攻撃を反射をするのも疲れてきたところ。スマラの能力としての使用は体力と集中力を使う。簡単に見えてかなりのものを使っているのだ。

 スマラも敵の攻撃に飽き飽きして来た所。頭を使って絡め手を繰り出すわけでもなく、ただひたすらに物量と質量の単純攻撃。

 スマラとしては飽きてきていたし、正直言って無視しても問題ないレベルの雑魚敵だ。だが、どうしても無視できない理由があった。

 それは、

 

「この状況で船に戻るなんて、できっこないわね。さて、どうしましょ?」

 

 この状況を無視してメリー号に戻った所で襲撃は無くならないはず。一応乗せてもらっている手前、自分が船に戻っているせいで船が壊れるのはスマラとて気が引ける。

 なので、スマラはこれ以上進めないでいた。

 

 スマラの質問に対して敵が答える訳もなく、スマラを取り囲んでいる暗殺者集団。攻撃しなければ返り討ちには合わないと分かったのか、スマラを取り囲むだけで何もしてこない。

 その何もしてこない間を使ってスマラはこの状況を打破出来る案を検討する。

 

 そして一秒後、スマラから発生した『何か』が辺りを震えさせる。決して物理的な干渉はないはずなのだが、地面が小刻みに震え、建物がミシミシと嫌な音を出す。

 人間も無事ではない。活動に問題なく動ける状態だったはずが、スマラから発生した『何か』を感じると皆、泡を吹いて気を失って倒れていく。

 スマラを狙っていた全員が気を失って倒れたのを確認すると、スマラは額を抑えてうずくまった。

 

「……はぁ。だから使いたくなかったのよ。取りあえず、船に戻って横になりましょう」

 

 スマラが使ったのは悪魔の実の能力ではない。数百万人に一人しか扱えないと言われている覇気『覇王色の覇気』だ。王の器を持つ者にのみ扱えるとさせる覇気だが、スマラはその器があるかは別として覇王色の覇気を扱う事が可能だった。

 だが、どういう訳かスマラは覇王色の覇気を使うと体調が悪くなる。原因はスマラの体力面にあるのか、精神面にあるのかは分からないが、とにかく体調が悪くなってしまう。一度、医者に診てもらいもしたが、原因不明。

 それからなるべく覇王色の覇気は使わないようにしていたのだが、幾ら経っても自分を包囲したまま動かない敵にイライラして、手っ取り早い方法で解決してしまったのだ。

 

 スマラは這うようにして船に戻ると、椅子に座りテーブルに身を投げ出すと意識を失った。

 

 

 

 

 

 外が騒がしい。暗殺者集団が他のメンバーを襲っているのだろうか?

 

 完全回復まではいかないが、幾らかマシになったスマラは見聞色の覇気で辺りを探る。すると、敵反応は一人だけ。しかも船の上に反応が出ている。敵反応は出ているが、直ぐに動くわけではない様子。

 スマラは立ち上がると、ドアを開けて目の前に後ろ向きに居る女性に手を当てる。

 

「これは一体どんな状況なのかしら?」

 

「「「スマラ!!!」」」

 

 何やらピンチっぽかったらしく、この船の圧倒的強者であるスマラが女の後ろをとっている事に歓喜の表情を浮かべる一同。

 スマラがよく見れば、ウソップとサンジが転んでおり、ナミとゾロの獲物が転がっている。攻撃態勢に入ったものの、形成は悪かったみたいだ。

 スマラが手を当てている女性は特に慌てた様子もなく、両手を上にあげて何もしないポーズを取った。

 

「あら、お仲間がもう一人居たのね」

 

「仲間ではないわ。それと、悪魔の実の能力でしょうが、貴女が何をしようと私の方が早いわ。身体を壊されたくなかったら攻撃はしないことが賢明ね。悪魔の子」

 

「……っ!?そう言う貴女こそ、偉大なる航路に戻ってきたのね。可憐なる賞金稼ぎさん」

 

 軽く軽口をたたき合うスマラと謎の女性。スマラは謎の女性の正体を看破していた。悪魔の子と言われた女性も、スマラの事を知っているらしい。

 双方初対面だが、知識としてはお互いの事を知っている。だから女性の方はスマラに手出し出来ないでいた。偉大なる航路の億越え賞金首でも軽く捻るような相手に、動けるはずもなかった。

 

 相手が動かない事を確認したスマラは、下に転がっている他の方に状況を聞き出す。

 

「それで?これは一体どういう状況なのかしら?この街の連中が暗殺者集団だってことは知っているわ」

 

「えっと、それが成り行きでこの子をアラバスタって国に送り届けることになちゃったの」

 

「アラバスタ王国?」

 

 この子と言う女の子を見てみると、スマラの記憶ではミスウェンズデーと名乗っていた水髪の女の子が、スマラを驚いた表情で見て居た。ウイスキーピークへの航海中全く役にたたなかったスマラが、自分よりも圧倒的に強い副社長を脅迫する程の力の持ち主だったことへの驚きだ。

 スマラは自分を見続けている女の子を、先程までの情報を整理して正体を推測する。

 

 アラバスタ王国、あそこはクーデターが起こっていると新聞に書いてあった。

 そして王女様が行方不明とも聞いたことがあるわ。

 その王女様の特徴は……。

 

「貴女がビビ王女ね。………何で暗殺者集団に居たのかはしらないけど、厄介者のようね。言っておくけど、私に援軍を期待したって無駄よ。………それなりの対価がもらえれば話は別だけれども」

 

「え?麦わらの一味なんじゃ……」

 

「勘違いしているようね。私はこの一味と利害が一致しているから船に乗っているだけ、この船の厄介ごとは私には関係ないわ。それと、悪魔の子は私に何かするのかしら?」

 

「いいえ。賞金稼ぎさんには手を出さない方が良いと判断するわ。ボスにも報告ね」

 

 スマラには手を出さない。この言葉を聞いたスマラは、後は用はないとばかりに船内に戻って行く。ただ自分に向かって来る雑魚を無くしたスマラには、この場は無意味なのだから。

 スマラに悪魔の子と呼ばれた女性は、高額賞金首の自分に興味を失ったスマラを冷や汗をかきながら、次の計画を実行する為、悪魔の実の能力を再度解き放った。

 

 

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