輝きのスター!   作:第7サーバー

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第13話・こおるせかい

スカイピア400年の戦いが終わり……国をあげた喜びの宴は連日続いた。

その中で麦わらの一味は、ルフィが“うわばみ”の中で見つけた黄金を、海賊らしく奪って逃げる事にした。

まぁ、そんな事をしなくても、空島の者達はもっと巨大な黄金の柱を感謝の気持ちとして贈ろうとしていたのだが……楽しげに逃げる麦わらの一味に、そんな事は知る由もない。

 

空島は変わる。

国の名前は“スカイピア”、都市の名前は“シャンドラ”。

そして神の座には再びの就任、ガン・フォール。

彼らは空の大地で共に生きる事を誓う。

 

そんな彼らから見事に逃げ切った麦わらの一味は、“雲の果て(クラウド・エンド)”から、再び下の海――青海へ。

黄金を奪ったにも拘らず鳴り響く鐘の音に“また会おう”と約束を交わし、背中を押され、船は“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を目指して、今日も行く。

 

「さて、お待ちかねっ!!! 海賊のお宝は山分けと決まっているわ!!! これだけの黄金だもの、スゴイ額よ!!!」

「イよォっ!!!」

「待ってたぞーっ!!! 銅像買うんだ、おれは!!!」

「確かにおれさまの銅像だというなら悪くない……だがしかし、ここはファンに還元できる物の方がいいか……」

「本買っていいか!!?」

「新しい鍋とフライパンと……食器に巨大ねずみ取り……」

「飲み放題だな、コリャ」

 

「まず――私のへそくりが8割」

 

「「「「「「いや、ちょっと……」」」」」」

 

「冗談よ……」

「当たりめェだ!!! んなおおっぴらなへそくりがあってたまるか!!!」

 

ナミの目が、それこそ8割マジだったのは置いておいて、ナミの提案により、空島で手に入れた黄金は、まずゴーイングメリー号の大修繕に充てられる事になった。

何せシロップ村を出てからこっち、偉大なる航路(グランドライン)の無茶苦茶な航海に耐え、今回の冒険では空まで飛んだのだ。

あちらこちらにガタがきているのは間違いがない。

 

「そうだな。ウソップのツギハギ修理も、さすがに限界だし」

「言っとくがな、おれは! “狙撃手”だ!」

「ん? キャプテンは“プロデューサー”だろ? プロデューサーのキャプテン・ウソップ」

「おっ、おお……そ、狙撃主兼プロデューサーな。狙撃手兼……」

 

スターの言葉に若干視線を逸らすウソップ。

それはともかく――と誤魔化し続けた言葉にルフィが提案する。

 

「だったらよ。“船大工”仲間に入れよう!!!」

「!」

「旅はまだまだ続くんだ。どうせ必要な能力だし、メリーはおれ達の“家”で! “命”だぞ! この船を守ってくれる“船大工”を探そう!!!」

 

ルフィの言葉に一味はすっかりその気になり賛成する。

 

「そりゃそれが一番だ! そうしよう!」

「じゃあ、その線で!」

「あと“音楽家”――は、スターがいるけど、たくさんいるに越した事ないよな!!? 海賊はみんなで歌うんだ!」

「なるほど。おれさまのバックという事なら許可しよう!」

「な! いいよな!」

 

一味はこうして次の目的を定めて、船を進ませる。

そんな一味の前には新たな島。

見渡す限りの大草原に、のびのび育った生き物達が暮らす島。

それは生き物だけでなく植物も同じで、のびのび育ったために、どれも見上げなければならないほどに長い。

その中に動く二本の不思議な竹。

てっぺんが見えないほど育ったその竹に、なぜかルフィが襲われて、割ってみたら中から精霊――もとい、空から落ちてきたこの島の住人“トンジット”。

世界一長い竹馬に挑戦してみたら、怖くて降りられなくなったというそのおっさんは、なんと10年間もその上で生活をしていたらしい。

 

「大バカか!!!」

 

なんてツッコミの言葉もそこそこに、トンジットから島の話を聞くルフィ、ウソップ、スター、チョッパーの先行部隊。

それによればこの島の名前は“ロングリングロングランド”といい、もともと長いリング状の島であるが、普段は海によって10の島に区切られているようだ。

そして年に一度だけ大きく潮が引く日があって、その数時間のチャンスを待って、三年に一度の周期で移動する遊牧民が暮らす島だという事であった。

竹馬に乗っていたためにその村の移動に取り残されたトンジット。

気長に20年ここで待つさと笑うトンジットに、おれさまの出番かと、やはりこの男が動く。

 

「出でよ――“スターシップ”!!!」

 

空飛ぶ船であっという間に運んでやるぜ――というスターは、言葉通りにあっという間にトンジットを、その愛馬である“シェリー”と共に、その村へと送り届ける。

ありがとうありがとうと大感謝され、ファンが一人と一頭は確実に増えたなと満足して一味の下に戻るスターの前では、何やらお祭り騒ぎが始まっていた。

 

その祭りの名は――“デービーバックファイト”。

 

それは海賊世界で生まれた伝統のゲーム。

海賊が海賊を奪う“人取り合戦”。

それぞれの競技の勝者が敗者の海賊団から好きな船員(クルー)を奪える。

欲しい船員(クルー)がいない場合は、船の命であり海賊としての誇り、“海賊旗(ジョリーロジャー)”を奪ってしまう事もできるというエゲつないゲームだ。

麦わらの一味の船長であるルフィは、ウソップなどの反対も押し切って、挑まれた決闘からは逃げられねェとゲームを受けてしまっていた。

 

「きっとあいつらが欲しいのは、このキャプテン・ウソップだ……」

「いいえ、きっと私よ。かわいいから……」

「何言ってるんだ。スターであるおれさまが真っ先に狙われるに決まってるだろ!!!」

 

麦わらの一味に決闘を挑んで来たのは“フォクシー海賊団”。

“デービーバックファイト”を得意とする海賊団で、これまでも連戦連勝、泣かした海賊団は数知れず……“デービーバックファイト”に慣れた強敵だ。

そして始まった“デービーバックファイト”の第一ゲーム“ドーナツレース”は、手作りボートでの周回レース対決。

麦わらの一味からの出場者は、ボートを作ったウソップに“航海士”のナミ――それと祭りの熱気で、いつもよりも目立ちたがり屋度が+されているスターの三人だ。

それに対して相手チームはメンバーに“ホシザメ”というサメを入れて、ボートを引っ張らせる作戦を取った。

 

「ホシザメ? ここにもやはりおれさまのファンが……!」

 

などとスターは感慨深げに頷き、大丈夫かコイツとウソップに心配されたりしていたが――。

いざレースが始まればスターの独壇場。

スターは能力でボートに星を付け、空飛ぶボートにすると、ビームを推進力にしたその超加速で、フォクシー海賊団が驚いている間にあっさりと勝利した。

 

「じゃあ、海賊旗で」

 

ルフィのその一言で“誇り”を奪われたフォクシー海賊団は即時解散かと思われたが、いきなりそれはちょっと待てと文句を言うフォクシー海賊団に、その結果は保留にして、一応残りのゲームもする事になったのだが――二戦二勝。

要は三戦全勝で麦わらの一味は“デービーバックファイト”に完全勝利した。

フォクシー海賊団は海賊旗を奪われ、けれどそれで航海ができなくなるのは可哀想だからと、ルフィが自作の帆をプレゼントする。

そんなルフィに絵心はなく、ある意味恐怖を象徴する新生フォクシー海賊団は、捨て台詞を残して去って行った。

本当に寄り道のような時間だったが、まぁ何もないよりは楽しかったなと――麦わらの一味も島を出る前に、もう一度見逃しなどがないかと島を巡り……その男を見つけた。

トンジットが――10年前は――住んでいた家の前で、アイマスクをして立ったまま眠っているヘンな奴。

天然パーマで白スーツ。

その上着はポケットに突っ込んだ腕に掛け、青シャツに白ベストを着込み、身長3mは軽くあるかなり長身の男。

 

「んん!!? なんだお前ら」

「おめェがなんだ!!!」

 

その男は麦わらの一味の気配に気づき、アイマスクを額へと上げた。

 

「ハァ……ハァ……え!!?」

「ロビン!!?」

 

その男の姿を見たロビンは腰を抜かして、恐怖からか息を荒げる。

 

「……あらららら……こりゃ、いい女になったな……ニコ・ロビン」

「ロビン!!! どうしたんだ!!! 知ってんのか!!? こいつの事!!!」

 

いつも冷静なロビンの取り乱しように、反射的に麦わらの一味は構えるが、その男の正体がわからない。

 

「……あららら、まーまー。そう殺気立つなよ兄ちゃん達……べつに指令を受けてきたんじゃねェんだ。天気がいいんで、ちょっと散歩がてら……」

「指令だと!!? なんの組織だ!!!」

「――海兵よ。海軍本部“大将・青キジ”」

 

「「「「「「「“大将”!!?」」」」」」」

 

「た……“大将”っておめェ……!!! ど……どんだけ偉い奴だよ!!!」

「海軍の中でも“大将”の肩書きを持つのはわずか三人……!!! “赤犬”、“青雉”、“黄猿”。その上には海軍トップ“センゴク元帥”が存在するだけ。世界政府の“最高戦力”と呼ばれる三人の内の……一人がその男よ!!!」

「なんでそんな奴がここにいるんだよ!!! ……もっと、何億とかいう大海賊を相手にすりゃいいだろ!!! ど、どっかいけー……!!!」

 

確かに、本来ならまだまだルーキーの麦わらの一味を討伐するためだけに“大将”が出てくる事なんてあり得ないはずであった。

しかし麦わらの一味……少数ながら、いろいろクセのある人間が集まっている。

賞金総額(トータルバウンティ)にしても3億1677万ベリーと、本当の大海賊には及ばないが、なかなかのものだ。

その中で特に危険視されているのは、8歳で7900万ベリーという額の賞金首になった“悪魔の子”ニコ・ロビン。

“だらけきった正義”がモットーだなんてのたまう青キジは、そのとおり海賊である麦わらの一味を前にしてもダラけていたが、不意にルフィの祖父の存在を口にすると、前言を撤回したように宣言した。

 

「――やっぱお前ら……今、死んどくか」

 

 

~~中略~~

 

 

「おっとっと~、ただのルーキーかと思いきや、すでに“覇気”が使えるとはねェ……」

「“スターオーラ”だ!!!」

「はあ……?」

「スターだけじゃねェぞ!!! “ゴムゴムのJET(ピストル)”!!!」

 

青キジの威圧感にノせられたロビンが仕掛けた事で、まさかの海軍本部“大将”との戦いが始まった。

青キジは“ヒエヒエの実”の“氷結人間”。

最近の実力者にはありがちな自然系(ロギア)の能力者だ。

だがダラけても“大将”……多くの海賊と戦ってきたであろうその経験値や“格”は、同じく自然系(ロギア)だったクロコダイルや、エネルよりも上なのは間違いないだろう。

その証拠に――。

 

「意外と手こずらせてくれるねェ……お前ら」

 

麦わらの一味が全員で掛かってなお余裕を崩さない青キジ……それに対して麦わらの一味は満身創痍と言っていい状態だった。

すでに最初に仕掛けたロビンは全身を凍らされ――他の者達も、攻撃がそのまま氷結のカウンターとして返ってくる状況に苦戦している。

ルフィは“ギア”で蒸気を噴き出して対抗し、スターは“スターオーラ”を発動するが、それでも青キジには届かない。

 

「チョッパー……お前は下がってろ。お前が凍らされたら治す奴がいなくなる」

「で、でも……っ!」

「いいから従っとけ。――おい、あいつは氷だけあって、お前のその炎の技が有効らしい。おれが斬り込むからどうにか一撃ぶち込め」

「ああ。とっておきをぶち込んでやる。せいぜい死ぬなよ」

「そいつは――どうだろうなっ!」

 

ルフィやスターが強くなっているように、サンジもまたこれまでの戦いの中で強くなっている。

そんなサンジは、左足を軸に高速回転させる事で右足に高熱を帯びさせ戦う事ができるようになっていた。

それが相性的には青キジと悪くなかった。

実際にその足で仕掛けると、ダメージを与えられている感じはまだないものの、氷結のカウンターを相殺できていた。

 

「鬼気……!!! “九刀流・阿修羅”!!!」

「!」

「――“悪魔風脚(ディアブルジャンブ)”!!!」

 

それは……分厚い紙一重だった。

ゾロはそれでもギリギリ意識が残ったが、サンジは“格”の違いを見せつけるかのように、足の熱も冷え消され、ロビンと同じく全身を凍らされてしまう。

そうまでしても得られたものはわずか氷の一欠けだけだ。

 

「ゾロ!!! サンジ!!!」

「おれさまの仲間に何やってくれてんだ!!!」

 

これで脱落者は三人……わずか八人の海賊団である麦わらの一味的には、これだけで半壊状態と言っていいだろう。

しかし悪い事は繋がるもので――。

 

「ん!!? ――お、おいっ!!! ヤベェぞ!!! 海軍の軍艦だ!!!」

「あらら、おれ一人で来たはずだったのに、いろいろと派手にやりすぎたみたいだなあ、麦わら」

 

“デービーバックファイト”のバカ騒ぎに始まり、相手になっているとは言い難いものの、それなりの時間、それなりの規模で、戦えてしまっていた現状。

海軍がもともと、散歩だとか言って一人抜け出した青キジを探していたというのもあるだろう。

それらが合わさった結果、この島に海軍の軍艦までも現れるに至ってしまった。

“大将”だけでもこの様なのだから、それはもう麦わらの一味にとっては完全に死刑宣告――詰みだった。

 

「くそ……っ!」

「ど、どうするのっ!!?」

「どど、どうするも何も……ゾロとサンジもやられちまったって言うのに――」

「この状況で、余所見はよくないねェ」

「えっ、」

「ウソップ!!! この野郎ォオオオオオッッッ!!!」

 

海軍の軍艦に動揺した一瞬の隙を突かれ、ロビンとサンジに続きウソップも凍らされてしまう。

ゾロも先の通り、完全な氷漬けではないとはいえ、戦闘ができるような状態ではない。

青キジが相手ではナミにどうにかできるわけもないので、この場を切り抜けるにはルフィとスターの二人がなんとかしなくてはいけないのだが……これまでも押されていたのに人数が減って有利になるという事はない。

加えて、海軍の軍艦、敵の増援という時間制限までできてしまった。

 

「――どけっ!!! ルフィ!!!」

「スター!!?」

 

スターはその状況に決断をすると、今にも凍らされそうなルフィに叫び“スピードスター”を全開にした突撃を仕掛ける。

 

「おれさまは――プトレマイオス・E・T・スターだぁあああああああああッッッ!!!!!」

「こいつ、このままおれごと海に……っ!!?」

 

スターは“スターオーラ”による中和もかなぐり捨て、その身体を凍らせながらも、決して青キジを離さず、ルフィ達から遠く離れた海で高く水柱を上げた。

 

「す……スタァ~~~ッッッ!!!」

 

ルフィが咄嗟に伸ばした腕はスターには届かなかった。

ルフィはすぐにスターを助けるための行動を起こそうとするが、制限時間はもうそこまで迫っている。

 

「――か、海軍の軍艦が、逃げないと……!」

「バカ野郎ォッ!!! スターを置いて行けるかッ!!!」

「それは……」

 

ナミが言い澱む。

当然の事だが、ナミだってスターを見捨てたいわけじゃなかった。

でも、誰かがそれを言わなくてはならない。

だから、その男が動いた。

 

「ル゛フィ……ッ!」

「ゾロ!!?」

「何やってんだ、ゾロ! そんな状態で動いちゃダメだ! 砕けたら元に戻らねェんだぞ!」

「スターは生きでるかもしれね゛え……」

「そうだ! だからおれは――」

「――でもっ! おれ゛達はこごにいたら全滅する゛……っ!」

「!」

「決断しろ゛っ!!! お前は――この船の゛船長だろうがっ!!!」

 

「~~~!!! ――船を出せェッ!!! 出航する!!!」

 

「えっ! スターを置いて行くのかっ!!?」

「スターは死なねェ!!! おれは……信じるっ!!!」

 

こうして――麦わらの一味は海軍本部“大将”青キジの手から逃れる事に成功した。

仲間であるプトレマイオス・E・T・スターを代償として……。

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