輝きのスター!   作:第7サーバー

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第14話・いつか見た夢は……

海軍本部“大将”青キジとの邂逅……それから逃れる代償として失われた仲間、プトレマイオス・E・T・スター。

“輝き”が失われた事により、逃げ延びた麦わらの一味の間で流れる空気は一様に暗く重い。

氷結状態から回復して、その決断を聞かされた三人もまた無言で――しかしウソップが、堪えかねたように口を開く。

 

「――それで、スターを置いて来たのか?」

「ああ、そうだ……」

 

ルフィのそれを肯定する言葉に、ウソップの感情が爆発した。

ルフィの胸ぐらを掴み上げ、怒鳴りつける。

 

「スターはッ!!! 仲間じゃねェのかッ!!! それを、勝てないかもしれないからで置いて来たのかッ!!! てめェはッ!!!」

「……そうだ」

「てめェッ!!!」

 

ルフィを殴り飛ばし、勢いによろめいたルフィをさらに殴ろうとするウソップをサンジが羽交い絞めにして止める。

 

「おい、やめろウソップ……! おれ達にそれを言う資格はねェ……!」

「~~~くそっ!!!」

 

そんな事はウソップにもわかっていた。

ウソップは青キジとの戦いではほとんど何もできず、騒いでいる間に凍らされていたのだから。

だが、ウソップにとってスターは麦わらの一味の中で最初に出会った男だ。

仲間に優劣をつける気など毛頭ないが、それでも身体の中を駆け巡る激情を抑える事などはとてもできなかった。

 

「スターだぞ!!! あのスターがいなくなったんだぞ!!! なんだよこれ……なんなんだよ……ついさっきまでは、いつも通りだったじゃねえかよ!!! ちくしょう……っ!!! ちくしょおォ~~~ッッッ!!!」

 

ウソップの慟哭に応える声はない。

誰もが口にしないだけで、同じような感情でいるのだ。

それでも船は進み、その辺りの名物である“海列車”の駅を経由して、世界最高の船大工達の溜まり場でもある――水の都“ウォーターセブン”へと辿り着いた。

 

 

~~中略~~

 

 

「とりあえず……黄金を換金して、船を修理に出さないと」

「ああ……。じゃあ、行くのはおれとナミと……ウソップはどうする?」

「――悪ぃがそういう気分じゃない。そっちは任せた。おれは武器の整備でもしてる」

「そうか。わかった。サンジとチョッパーはメシとかの調達を頼む」

「ああ」

「わかったよ」

「ゾロかロビンのどっちかは船に残ってくれ」

「ああ。おれが残る」

「頼んだ。そういうわけだから、ロビンはサンジ達について行ってくれ。人手があった方がいいだろ」

「ええ……」

「んじゃ、行ってくる」

 

ルフィとナミがゴーイングメリー号を降りて、ウォーターセブンに向かうのを見送る一同。

その視線には複雑な色が含まれており、あれから数日が経過していても、まるでふっ切れていない事が見て取れた。

 

「……ルフィもやっぱりいつもの元気がないね」

「そうだな。まぁ……仕方ねェと言っちゃ仕方ねェ。これまでいろんな事があったが、戦闘で仲間を失うなんてのは初めてだからな。乗り越えなきゃいけねェとわかっちゃいるが……どうやったって、“くい”が残る……っ!」

「ゾロ……」

 

拳を握り、奥歯を噛みしめるゾロの姿に、チョッパーもしょんぼりとメリー号の床板を見つめた。

 

「――チョッパー、おれ達もそろそろ行くぞ」

「あ、うん」

「ついでにスターの情報を集めよう」

「スターの?」

「結局、どうなったかわかんねェままに、ここまで来ちまったからこんな感じになってんだ。不幸中の幸い、スターが道連れにしたのは海軍の“大将”だ。スター本人の情報は無理でも、そっちの情報を手に入れられれば、自ずとスターの事も見えてくるはずだ」

「……スター、生きてるよな?」

「さぁな。まぁ、あいつが簡単にくたばる方がおれァ信じられねェけどな」

「うん……だよな!」

 

チョッパーはサンジの言葉に顔を上げると、空元気でも「おーし、やるぞー!」と声を上げて、街に出るためにリュックを背負った。

 

 

~~中略~~

 

 

空島の黄金は3億ベリーになった。

しかし、海列車の駅で会った“ココロばーさん”の紹介で、ウォーターセブンの市長であり、造船所“ガレーラカンパニー”の社長でもある“アイスバーグ”と交渉している間に2億ベリーが盗まれてしまう。

盗んだのはウォーターセブンの解体屋兼賞金稼ぎの“フランキー一家”。

それを知ったルフィはそのアジトに乗り込むが、2億ベリーはすでに頭の“フランキー”が買い物に持って行ってしまっていた。

ルフィは「そうか……」と脱力して頷くと、一つの決断をする。

 

「ルフィ、てめェ……スターに続いてメリーまで見捨てようって言うのか……っ!!?」

「……」

 

ルフィがした決断とはゴーイングメリー号との別れ。

そもそもが、ゴーイングメリー号はここまで持ったのが奇跡――金があっても直せないと言われていたのだ。

 

「なんとか言えよおいッ!!! そんなのおれは絶対に認めねェぞッ!!!」

 

だが――シロップ村でカヤにお礼として貰ったゴーイングメリー号。

その修理にも苦心してきて人一倍愛着のあるウソップは、ルフィの決断に異議を唱える。

 

「~~~おれが船長(キャプテン)だッ!!! おれの決定に従えッ!!!」

「フザけんなっ!!! 仲間を蔑ろにする奴の命令なんて聞けるかッ!!!」

「なんだとォ!!!」

 

熱くなる二人をナミやサンジが間に入って宥めるが、もうそれで止まるような激情ではない。

仲間がいなくなる苦しみ、それを知ってしまったウソップは、これ以上失う事に耐えられなかった。

だから言う。

声を張り上げて想いを伝える。

たとえそれで、この一味にはいられなくなろうとも。

ウソップの望みはルフィのように“海賊王”になる事ではなく、“勇敢な海の戦士”になって、気の合う仲間達といろいろな冒険をする事だからだ。

()()して“海賊王”になっても、それはウソップにとってはなんの価値もないものであった。

 

「――決闘だッ!!! てめェの目を覚ましてやるッ!!! おれと決闘しろ、ルフィ!!!」

 

ウソップの言葉に、一瞬場が静まる。

そして、ゆっくりとルフィが口を開いた。

 

「……ウソップ。海賊の決闘の意味はわかってるんだろうな?」

「当然だ。ルフィ、おれは最初の頃に言ったはずだぞ!!! お前がふがいないようだったら、キャプテンは交代してもらうって!!! そして、仲間を蔑ろにしたお前は――ふがいない!!! おれは今のお前をキャプテンとは認めない!!!」

「ウソップ……!!!」

 

麦わらの一味の“船長”モンキー・D・ルフィと、“狙撃手兼プロデューサー”ウソップの決闘は夜を待ってから行われた。

街で万全の準備を整えてきたウソップが再びメリー号を停泊させた岬へと戻ってくる。

ルフィは一味をメリー号に残し、一人岬でウソップと向かい合う。

 

「怖気づかずに来たな……どんな目に合っても後悔するな!!! お前が望んだ決闘だ!!!」

「当たり前だ。殺す気で来いよ。返り討ちにしてやる!!! もうお前を倒す算段はつけてきた!!!」

 

ウソップは言う。

ルフィとは長い付き合いだから、その手の内は知っていると。

そして――。

 

「聞いて驚くなよルフィ。おれには!!! 八千万人の部下と、あの悪魔の実を食べた仲間が一人いる!!! 命が惜しけりゃ、今すぐ降参しろォ!!!」

「……! お前に……そんな部下はいねェ事くらい知ってる!!!」

 

ルフィはそれからも続く“ウソップ呪文(スペル)”を無視してウソップへと迫る。

 

「“ゴムゴムの”――」

「えっ……スター……!!?」

「!!?」

 

ウソップの驚愕した表情にルフィは反射的に振り向いた。

しかし、当然だがそこには誰もいない。

 

「スターは!!! お前が見捨てたんだろうが!!! そんな都合の良い事があるか!!! “閃光貝(フラッシュダイアル)”!!!」

「!!!」

 

ウソップの言葉に再び視線を戻したルフィに強烈な閃光。

ウソップは空島で“輪ゴム”などを交渉材料として、いくつもの“(ダイアル)”を手に入れており、それを今回の決闘に投入してきたのだった。

 

「必殺“卵星”!!! “星”!!!」

「うわっ!!? くせェっ!!! 腐ってる。くそっ!!! この野郎、マジメにやれっ!!!」

「バカバカしいか!!? 大マジだぞルフィ……!!! これがおれの戦闘だ!!! あのスターもイカした技だと言ってくれたおれの!!! 初めに会った時もこうだっただろうが!!! ――“タバスコ星”!!!」

 

大口を開けたルフィの口にタバスコの詰まった弾丸がウソップの狙い通りに決まる。

 

「辛ェ~~~っ!!!」

「のたうち回るのも気をつけろよ。足下はすでに――“まきびし地獄”だ!!!」

 

決闘はウソップのペースで進む。

続けて放たれた“手裏剣流星群”をルフィが避けた先には“風貝(ブレスダイアル)”に溜め込まれていたガス溜まり――それも予定通りの誘導だ。

ウソップは容赦なく“火炎星”を撃ち込み、ルフィを巻き込んだ大爆発を起こす。

 

「…………」

 

大の字に倒れたルフィの脳裏にはこれまでの冒険の記憶が蘇る。

そして、初めて会った時の記憶も。

ルフィがゾロとナミを連れて上陸した島で、その前に立ち塞がった二人の男。

ウソップとスター。

二人のコンビネーションは抜群で、“スターシップ”からの射撃には苦労させられた。

その時はルフィの腕が伸びて“スターシップ”に乗り込んで来た事に驚いた二人と、なんか話している間に意気投合してしまったが、今はこうしてその内の一人が本気で自分に挑んできている。

これが二人だったらどうだろうか――と、一瞬考えたルフィは拳を握りしめて、立ち上がった。

 

「お前はこれくらいじゃくたばらねェ……知ってるぞ、ルフィ……!」

 

ルフィの視線の先では、ウソップが“銀河パチンコ”を油断なく構えているが、ルフィはそれでも直進した。

 

「“必殺”……」

「“ゴムゴムの”!!!」

「“炸裂サボテン星”!!!」

「“銃乱打(ガトリング)”!!!」

 

ルフィの拳がウソップの放った弾丸とぶつかると、それが弾け、中からトゲが飛び出し、ルフィを傷つける。

 

「“三連火薬星”!!!」

「うあ!!! ――“ゴムゴムの(ピストル)”!!!」

 

ウソップの追撃を回避しながらのその一撃が初めてウソップをマトモに捉えた。

そこを好機と攻め込むが、続いて放った“ゴムゴムのバズーカ”の衝撃はウソップに奪われる。

 

「“(ダイアル)”だ……もらったぞ……お前の()()

「!」

「“衝撃(インパクト)”!!!」

「!!!」

 

自分自身の攻撃の衝撃でルフィが吹き飛ぶ。

ウソップは確かにルフィの手の内を知っており、これまでの強敵とはまた別の苦戦をルフィは強いられていた。

 

「甘く見るなよルフィ!!! おれはこの一味の中で、一番最初にスターに会った……スターの強さを一番長く、一番間近で見てきた男だぞ!!! 本気で来いッ!!!」

「……“ギア(セカンド)”!!!」

 

だが――ウソップの攻勢もここまでだった。

本当に本気になったルフィの前には、“スターシップ”に乗ってたおかげか、目は追いついても身体が追いつかない。

技ですらないただの打撃の前にウソップの身体が崩れ落ちる。

 

「ハァ……ハァ……」

 

息を荒げて、倒れ伏すウソップを見下ろすルフィ。

 

「……勝負あったな」

 

ルフィだけじゃない……メリー号で決闘の行く末を見守っていた一味の誰もがこれで終わりだと思った。

 

「!」

 

しかし、それを裏切ってウソップは気力だけで立ち上がる。

 

「まだ……だぞォ……おれはまだ戦える……まだ、生きてる゛……!!! おれ゛は!!! 勇敢なる海の戦士、キャプテン・ウソップ!!! たとえ目の前に立つ“敵”がどれほど強大でも……勝てないかもしれないからで、仲間を見捨てて逃げはしねェ!!!」

「ウソップ……!!!」

 

ルフィは殴った。

連続してウソップを殴る。

握る自分の拳にズキズキとした痛みを感じるほどに殴り続けているというのに。

 

「……まだ……まだ、だ……おれはまだ……たたか、える゛……!!!」

 

それでもウソップは立ち上がってくる。

もはや完全に精神が肉体を凌駕していた。

 

「ハァ……いい加減に、倒れろよ!!! ――お前がおれに!!! 勝てるわけねェだろうがッ!!!」

 

“ゴムゴムのJET(ピストル)”。

ついにルフィが“ギア”状態の技を使い、ウソップの身体が何十mと吹っ飛ぶ。

そして――ウソップは起き上がって来なかった。

問答無用で意識が刈り取られ、身体もとっくに限界で、ウソップはボロ屑のような姿で一人転がる。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……痛ェ……」

 

握りしめていた拳を解き、ルフィは倒れ伏すウソップへとゆっくりと歩み寄る。

 

「ウソップ……メリー号はお前にやる。後は好きにしろ」

 

意識がないのはわかっていた。

それでも、ルフィはその言葉だけ残すと、決闘の衝撃で落ちていた麦わら帽子を拾いに行く。

帽子を手にルフィは一度だけ倒れるウソップに視線をやった。

 

「新しい船を手に入れて……この先の海へおれ達は進む!!! ……じゃあな……ウソップ……今まで、楽しかった」

 

ルフィは視線を戻して麦わら帽子を被る。

それを被るともう完全にウソップを顧みる事なく歩き出す。

瞳から溢れる涙は、周囲の暗さと麦わら帽子が隠してくれていた。

 

 

 

 

 

「……なんか、どんどんバラバラになっていくね。あんなに毎日楽しかったのに、ねえ、今はなんだか遠い夢の中の出来事だったみたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~中略~~

 

 

「ん……?」

「あららら、ようやく目を覚ましたか……目覚めの気分はどうだ?」

「――最悪だ。イヤな夢を見た」

 

そして“輝き”は目を覚ます。

目の前には“大将”。

腕には“海楼石”。

絶望しかないその場所で、けれど心には麦わらの一味が失いかけているものを存分に宿し――最悪だと言ったばかりのその口で、にやりと不敵に笑ってみせた。

 

「この状況で何を笑う事があるのかねえ?」

「生きてる事をだ。これでおれさまはまたみんなと冒険できる」

 

何も知らないからこそ、当たり前のように発せられたその言葉は今は遠く。

しかしそれは確かな希望として、この世界に産声を上げた。

掴み取れるかどうかは、全てこれからの麦わらの一味次第である……。

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