輝きのスター!   作:第7サーバー

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第15話・歴史的大事件

スターが脱落し、ウソップとメリー号が抜けた麦わらの一味。

けれど彼らの苦難はそれだけでは終わらない。

ルフィとウソップの決闘前に、街に出たロビンも行方不明になっていたのだ。

すぐに帰ってくると思っていたものの、夜が明けても帰らずじまい。

これ以上仲間を失うのは絶対にごめんだと、麦わらの一味はロビンの捜索を始めた。

そんな中で、ウォーターセブンにも大事件が発生する。

ウォーターセブンの市長であり、ガレーラカンパニーの社長でもあるアイスバーグが自宅で何者かに撃たれたのである。

幸いにも命を取り留めたアイスバーグだが、意識が戻ったその口から語られた犯人の名前は、ニコ・ロビン。

その証言により、麦わらの一味はウォーターセブンの全てを敵に回す事になった。

 

「おれは信じねェ!!!」

 

そうやってルフィがどれだけ叫ぼうとも、ロビンの周囲に蠢く“闇”は、麦わらの一味をも追い詰めていく。

天候は大荒れ――それは比喩的な意味でも、実際の天気でもそうだ。

“アクア・ラグナ”というウォーターセブンに毎年やってくる“高潮”がちょうどくるタイミングで、街はいろんな意味でバタバタしていた。

 

「……おい、聞いたかチョッパー」

「うん、聞いた」

 

「「海軍本部の“大将”が賞金首を捕まえて、“エニエス・ロビー”に向かった!!!」」

 

「スターの事だよ!」

「ああ、間違いねェさ! やっぱり、あの野郎生きてやがったんだ!」

 

手配書から顔バレしていないサンジとチョッパーが、政府の人間だと思える者達のそんな話を耳にしたのは、そうして本格的に嵐がやって来る少し前の事だった。

スター生存の可能性に沸く二人の前に――ロビンもまた姿を現す。

 

「ロビンちゃん!!!」

「ロビン~~~っ!!!」

 

ロビンはウォーターセブンを形成する水路を挟んだ反対側でサンジ達と向かい合った。

 

「どこにいたんだよ!!! 探したんだぞ!!! みんな心配してる!!! そうだ!!! スターの情報が手に入ったんだ!!! エニエス・ロビーとかいう場所に連れて行かれたって!!!」

「! ……そう」

「いやァ、こっちはこっちでいろいろあってよ!!! でも、スターとロビンちゃんが戻って来ればもう大丈夫さ!!! ウソップの奴だってあんな意地を張る必要がなくなる!!! ホントはあいつだってわかってるはずなんだ!!! とにかく今そっちに――」

「……いいえ、いいのよ、そこにいて……私はもう、あなた達のところには戻らないわ」

 

ロビンはスターの情報に一瞬だけ反応を見せたが、すぐに顔から感情を消すと、冷めた口調で別れの言葉を口にした。

 

「――何、言い出すんだよロビンちゃん……。あァ、そうか新聞の事だろ! あんなの気にする事ねェよ! おれ達ァ、誰一人信じちゃいねェし、事件の濡れ衣なんて海賊にゃよくある話だ!」

「そうね……あなた達には謂れのない罪を被せて悪かったわ。だけど……私にとっては偽りのない記事よ。昨夜市長の屋敷に侵入したのは確かに私」

「え……」

「私にはあなた達の知らない“闇”がある。“闇”はいつかあなた達を滅ぼすわ」

 

それはロビンの言う通りだった。

確かに一味は何も知らない。

なぜロビンが“オハラの悪魔”などと呼ばれ、わずか8歳で賞金首になったのかも、そしてなぜ今こんな事を言い出すのかも。

だから、サンジとチョッパーの二人にもそれに応える言葉がなく、ただ動揺するばっかりだ。

 

「短い付き合いだったけど……今日限りでもう……二度とあなた達に会う事はないわ。みんなにもよろしく伝えてね。こんな私に今まで、良くしてくれてありがとう。――さようなら」

 

 

~~中略~~

 

 

「本当に言ったのか!!? ロビンがそんな事!!?」

 

別行動を取ると言ったサンジの指示で、ルフィ達にロビンの事を話すチョッパー。

その話を聞いてルフィが声を荒げる。

 

「あの、さ。それなんだけど……実はスターだと思う人間が“大将”の手でエニエス・ロビーとかいう場所に運ばれたって話を聞いたんだ」

 

「「「スターが!!?」」」

 

「うん。この街の市長の事はよくわからねェけど……ロビンは青キジの事とか、責任を感じてるみたいだったから、ひょっとしたら一人でスターを助けに行こうとしてるんじゃ……」

「おれ達も行くぞ!!!」

「待ってよ! 絶対の情報じゃないのよ! もう少し調べてから……」

「そんな事関係あるか! スターもロビンも必ず連れ戻す!」

「……落ち着けよ。仮にその情報が正しかったとしても、船もないのにどうやってその場所に行く気だ」

「あっ……そ、そんなの、どうにでもなる! とにかくおれは二人を連れ戻すんだ!」

 

移動手段はともかくとして――エニエス・ロビーの存在はナミの知識の中にあった。

世界政府所有の“司法の島”エニエス・ロビー。

そこにあるのは道連れを望む海賊の死刑囚達を陪審員とした名ばかりの裁判所。

そんなエニエス・ロビーに聳え立つのは、とても巨大な“正義の門”。

その扉から繋がる場所はたった二つ。

 

一つは世界中の“正義の戦力”の最高峰“海軍本部”。

一つは世界中の“ 悪 の戦力”の最下層“大監獄・インペルダウン”。

 

無辜の人々にとっては希望の集まる場所であり、海賊にとっては入れば二度と出られない絶望を形にした場所だ。

 

「――確認するけど、本当に行くのね? 青キジとか、他にもスゴイのがたくさんいるかも知れない場所なのよ?」

「なんとかする。おれは!!! 勝てないかもしれないからで、仲間を見捨てたりはしねえ!!!」

 

その場所に、その絶望に――麦わらの一味は、今、挑む決意を固めた。

 

 

~~中略~~

 

 

「――では、これより海賊、プトレマイオス・E・T・スターの裁判を始める」

 

場所はエニエス・ロビー。

ルフィ達がそんな決意を固めている事とは関係なく、裁判長“3つ首のバスビカル”の宣誓により、海賊、プトレマイオス・E・T・スターの裁判は始まってしまった。

スターは腕に“海楼石”の手錠を嵌められ、能力が封じられた状態で被告人として証言台に立たされている。

 

「ギャハハハ、道連れだ! 道連れ!」

「有罪! 有罪!」

 

陪審員席にはすでに死刑が決定している希望のない十一名の海賊達。

故にこれは形ばかりの裁判であり、スターの有罪は確定している。

まぁ、そうでなくても、7777万ベリーの賞金首であるスターだ。

有罪になり、そのままインペルダウンにでも投獄されるのが当然ではあった。

しかし――判決の時が迫るにつれて、海賊達の心境に言いようのない変化が表れ始める。

 

「うっ……!!? なんだこの感覚……!」

「あ、あいつをここで死なせちゃならねェ!!? なんでおれはそんな事を考えてんだ!!?」

「身体を駆け巡るこの激情は――そう! 歴史的使命感!!!」

 

「「「「「「「「「「「無罪!!!」」」」」」」」」」」

 

「では判決を下す……陪審員の満場一致により、海賊、プトレマイオス・E・T・スターを無罪とする――って、ええ~~~っ!!?」

 

その日、その時、エニエス・ロビーに一足早く歴史的大事件が起こる。

海賊、プトレマイオス・E・T・スターにまさかの無罪判決。

スターを連行し、裁判を傍聴していた海軍本部“大将”青キジはその結果に、頭をくしゃくしゃと掻く。

 

「まったく……まいったねえ。エニエス・ロビーの歴史上初だよ。無罪判決が出るなんて……これが、“海賊スター”のカリスマってやつかい?」

「はーっはっはっはっはっはっ! 当然だ!」

「おっそろしい男だよ。これでルーキー。船長でないのが不思議なくらいだ」

 

青キジのそんな言葉に、スターはにやりと笑った。

 

「何言ってる。うちのキャプテンは“どっちも”スゴイ男だぜ」

「……“どっちも”?」

「そうだ」

「まぁ……裁判で無罪になった以上、他の奴らはともかく、おれはお前に対してこの島で手を出す気はない。そのカリスマだか強運やらでせいぜい生き延びろ」

 

 

~~中略~~

 

 

まさかスターに無罪判決が出ているとは夢にも思わない麦わらの一味は、ロビンの残した言葉から、今度こそアイスバーグを暗殺するのではと、市長の屋敷を遠目から張りこむ事にした。

スターの事もそうだが、まずは近くにいるロビンを捕らえて、ロビンの事情を聞いた上で、一緒にエニエス・ロビーに乗り込む方法を考えようと、そういう理由からなる行動だった。

そしてそこで対面する事になったのが、世界政府直下暗躍諜報機関“サイファーポールNO.9”。

サイファーポール――“CP1”~“CP8”まである諜報機関の隠された9番目。

そこに所属するのは政府の指示で古代兵器“プルトン”の設計図を求め、ガレーラカンパニーに潜入していた秘書や職長……あと街の酒場のマスター。

正義の名の下にならば、非協力的な市民に対して“殺し”が許可された9番目の正義の形。

 

「おい、ロビン!!! なんでお前がこんな奴らと一緒にいるんだ!!! こんな奴らと一緒になって、こんな事してる場合じゃねェだろ!!! スターを助けに行くぞ!!!」

「……聞きわけが悪いのね。コックさんと船医さんに、お別れは言ったはずよ……彼の事は残念だけど……もう私には関係ない事だわ」

「関係ない……? 関係ねェ事あるか!!! おれ達は!!! 仲間だろうが!!!」

「私の願いを叶えるためよ!!! あなた達と一緒にいても決して叶わない願いを!!! ……それを成し遂げるためならば私は、どんな犠牲も厭わない!!!」

 

そのロビンの言葉が本心でも本心じゃなくても、それ以上話している時間はなかった。

CP.9の工作により、屋敷が炎に包まれるまで2分。

ルフィ達はCP.9の四人を相手に善戦するも、時間切れ――相手は政府に重要任務を任される手練れ……2分で決着をつけられるような敵ではなかった。

再び撃たれたアイスバーグ共々、炎の中に取り残され、ロビンは一味の手からすり抜けて行った。

ただ、炎からの脱出後、麦わらの一味よりも前にロビンと話していたアイスバーグの話により、ロビンの事情が見えてきた。

ロビンはもはや世界で唯一と言ってもいい“歴史の本文(ポーネグリフ)”が読める者であり、政府はそこに記されている世界を滅ぼすほどの古代兵器の数々を求めている。

その兵器によって“大海賊時代”に終焉を齎そうとしているのだ。

そしてロビンの“願い”とは、麦わらの一味に対して、CP.9が今回の件につきただ一度だけ許可されている“バスターコール”を発動しない事。

“バスターコール”……それは、本来海軍本部の“大将”三人と、その上の“元帥”にしか許されていない権限で、海軍本部の“中将”五人と、軍艦十隻を緊急招集できるというものだ。

その軍事力は“国家戦争クラス”であり、一度標的が指定されたらもう後には何も残らない。

もちろん、麦わらの一味のような少数の海賊団などひとたまりもないだろう。

ロビンはアイスバーグよりも自分よりも、ましてや世界よりも、麦わらの一味の無事を願った。

 

「じゃあ、ロビンは……!」

「おれ達を嫌いなんじゃないのかー!」

「――待て。ならスターの件はどうなる?」

「そんなのウソついたに決まってるじゃねェか!」

「ロビンがウソをつく理由……? ロビンが政府の人間について行くって事は行き先は――」

 

「「「「エニエス・ロビー!!!」」」」

 

「そうよ! ロビンは“歴史の本文(ポーネグリフ)”を読めるという事を武器に、スターをも解放させる気に違いないわ!」

「……あの女、一人でなんでもかんでも背負いやがって!」

「でも、今度こそやるべき事は一つに繋がった」

「ああ!!! 行くぞ!!! エニエス・ロビー!!!」

 

彼らの考えは正しく正解だった。

そして、そんな彼らよりも一足早く――別行動を取っていたサンジが海列車の駅でロビンの姿を発見する。

ついでになぜかウソップともう一人簀巻きにされた人物がおり……サンジは逡巡するものの、海列車の発車時刻が来てしまった事もあり、一味にはメッセージを残し、一人で海列車に潜入した。

 

 

~~中略~~

 

 

「そうだ……最後にお前に聞いておきたい事がある」

「ん? おれさまのファンクラブの入会方法か?」

「いや、違う……お前、王下七武海に興味はないか? 今、王下七武海はクロコダイルが抜けた分の席が空いている。なんなら、おれがお前を推薦してもいい」

 

青キジにあっさり流された事に若干不満を感じながらも、スターは首を振った。

 

「おれさまは麦わらの一味の“海賊スター”だ。他のところに所属する気なんてない」

「……そうかい。やれやれ……まぁ、一応聞いてみただけだが、難儀だねェ。これで次会う時はまた敵同士だ」

「その問題ならすぐに解決できる。簡単だ。お前がおれさまのファンになればいい」

「いやいや……海軍本部の“大将”が海賊のファンにはなれないでしょ……」

「そんな事は気にすんな! おれさまは全然気にしない!」

「お前が気にしなくてもねェ……はぁ、お前さん、“麦わら”とはまた違う感じに自由すぎるんじゃない?」

 

海軍本部“大将”をファンにする事を諦めないスターに、青キジは溜息を吐く。

青キジの胸中は如何ばかりか――ともかく、前代未聞の事態だから事後処理やら何やらでしばらくは拘束されたままだろうとスターに言い残して、青キジはエニエス・ロビーから去って行った。

麦わらの一味という名の“嵐”が、本当の嵐を越えて、エニエス・ロビーに向かって来ようとしているとは知らずに……。

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