一人で海列車に潜入したサンジは――けれどその潜入がすぐにバレてしまう。
とりあえず、最後尾の第7車両と第6車両の役人を全滅させ、そこに転がっていたウソップと、もう一人簀巻きにされた人物こと、解体屋兼賞金稼ぎフランキー一家の頭であるフランキーと合流。
そのフランキー……本名“カティ・フラム”は、ウォーターセブンの市長であり、ガレーラカンパニーの社長でもあるアイスバーグの兄弟弟子であり、そのアイスバーグから、古代兵器“プルトン”の設計図を託されていたのであった。
そしてウソップは偶然か必然か……ともかく、CP.9がフランキーを捕えにきた現場に居合わせた事で一緒に捕まってしまったのだ。
その後サンジは海列車内にあった“電伝虫”を使い、メッセージと共に残してきた“子電伝虫”でナミと連絡を取り、ロビンの事情やら何やらを全部聞いた。
そうじゃなくても女好きで、それを守るという騎士道精神を信念としているサンジだ。
そんな話を聞けば、ルフィ達を待つ事などはできず、一人戦いを決意する。
だが横で同じく話を聞いていた人情話に弱い男フランキー。
彼もまた協力を申し出た。
しかし――ウソップは意地を張る。
一味を抜けた自分は一味の戦いは関係ないと。
そしてウソップはどこかへと姿を消し――代わりにヒーローが現れた。
「話は全て
仮面を着けているために正体はまったくもって不明だが、その“狙撃の島”からやって来た長鼻が特徴の“狙撃の王様”も加わり、彼らは三人でロビンの奪還を目指す。
車両を切り離して敵を減らし、CP.6やCP.7の諜報員を倒していく。
“
だがウソ――そげキングの説得もロビンには届かない。
仕方ないので、煙幕を放ち、ロビンを無理矢理に引き連れ、車両を切り離し逃げようとするも失敗。
フランキーは車両を切り離すためにCP.9がいる車両へと自ら飛び込み、ロビンは“ドアドアの実”を食べたCP.9の能力者が、大気に作った――空間を移動できる“ドア”を通り、自らの足で戻っていく。
「ムダだ。ニコ・ロビンは協定を破らない」
「なんでそう言える!!!」
「――その昔、発動された海軍の“バスターコール”によって、ある島が焼き尽くされ、跡形もなく滅びる事件が起きた。その時のたった一人の生き残りがまだ幼い日のニコ・ロビンだ」
ロビンにとって“バスターコール”は拭い去れない悪夢。
先行部隊はロビンの奪還に失敗し、嵐によって荒れ狂う海の中、自分達が切り離した車両に取り残された。
それからしばらくして現れるルフィ達を乗せた“暴走海列車・ロケットマン”。
スピードの調整が効かないために失敗作として長い間倉庫に放置されていたその海列車に、サンジとそげキングの二人は拾われ、いざ決戦の地エニエス・ロビーへと向かう。
~~中略~~
「正門を開けーーーっ!!!」
エニエス・ロビーの海兵達が正門前の道の端に整列し、ロビンとフランキーを捕らえたCP.9を迎える。
そして開いた正門の先には――後ろ手に“海楼石”の手錠をしながらも、スタンドマイクの前に立つ一人の男の姿。
『今日はおれさまのライブに来てくれてありがとう!!! たっぷりとおれさまのステージを楽しんで行ってくれよな!!! それじゃあ早速一曲目――』
その男が背後の海兵服を着た楽隊に合図をすると、パワフルなサウンドが流れ始める。
「「「「「「…………」」」」」」
皆一様に真顔――いや、整列していた海兵達はノリノリだが、CP.9の四人とそれに囚われた二人は真顔……と思えば、CP.9で唯一の女性で、元アイスバーグのメガネが似合う美人秘書の“カリファ”は途中から若干縦揺れしている。
とか、まぁそんな事は置いておいて、その男――誰かと言わずともわかるだろうが、プトレマイオス・E・T・スターは、本当にたっぷりと連続して5曲ほど歌うと、少し離れた地面に置いていた水筒を器用に足で蹴り上げて水分補給をした。
そして水筒をプッと口から吹き捨てると再びスタンドマイクの前に――。
「やめんか!!! いったいなんの騒ぎじゃこれは!!!」
――立って歌おうとしたが、それはウソップよろしく長鼻が特徴の男の声に止められた。
ウソップに比べれば四角っぽい長鼻の男“カク”だ。
『ん? ――鼻!!? キャプテンの血縁者か!!?』
止められはしたものの、未練たらたらなスターはマイク前から離れず、マイク越しにCP.9と会話をする。
「何を言って……というか何をやっておるんじゃ、おぬし」
『ああ、おれさまは――って、ロビン! お前がおれさまを引き取りに来てくれたのか?』
少しノリすぎていたために、ロビンの姿を見てはいたものの認識していなかったスターがその存在にはっきりと気づき声を上げる。
「スター……あなた、無事だったのね。みんな心配してたわ」
ロビンはスターのいつも通りすぎるその姿に若干呆れながらも、内心では安堵の息を吐く。
『――そうか。連絡が取れればよかったんだがな。おれさまも早く会いたいぜ!』
「おぬし、見た顔だな……麦わらの一味の“輝き”だか“明星”だかそんな感じの異名を持つ男じゃな」
ロビンと話すスターの姿に、その関係者かと考えたカクがその素性に辿り着いた。
『なんだそれ? おれさまの愛称か? やはりおれさまほどのスターになるとファンがそういうのをつけるんだな!』
「……微妙に話が通じておらぬ気がする」
『むむっ! そっちのお前、腕に星のマークなんかつけて――しかも、ここまでおれさまを追いかけてくるとは、熱狂的なまでのおれさまのファンだな!』
「あァ? お前、何言ってんだ?」
カクもまた話の通じなさに嘆息する一方で、スターはフランキーの存在に目をつける。
アロハシャツに海パン、リーゼントにサングラス、捕らわれの身であるために鎖でぐるぐる巻きにされているが、格好的に“変態”なんだなと考えたスターはそこにはツッコまず、けれどフランキーの腕にある★印から自分のファンであると認識した。
変態であってもファンはファンと、スターは友好的に接するが、たとえ変態であっても、このエニエス・ロビーにあり、シリアスさが感じられないスターのノリにはついて行けずにいた。
『はーっはっはっはっはっはっ! 緊張しなくてもいい。そして安心しろ。おれさまはここの裁判で無罪判決が出た。まだ解放こそされていないが、すぐに釈放される予定だ』
「そうかい……」
「――ちょっと待って! 無罪判決ですって……っ!!?」
ロビンはスターの言葉に声を上げる。
それはあり得ない事だ。
なのに、スターは普通にあり得た事として頷き肯定する。
『ああ。なんでお前がそんなに驚いてるんだ? ロビン』
「このエニエス・ロビーで無罪判決……? スター、あなた一体何をしたの?」
『べつに何も。しいて言うならおれさまはスターであっただけだ』
「「「「「「…………」」」」」」
「――で、結局おぬしは何をしておるんじゃ」
『見てわかるだろ? ステージだよ。なんでも一仕事終えて帰ってくるCP.9とやらをおれさまの歌で労ってやって欲しいと頼まれてな!』
「海賊に何を頼んでおるんじゃ……」
「まぁ、確かにイイ歌でしたけど」
「「「…………」」」
「こほん。私は客観的な事実を述べただけです」
CP.9の他のメンバーからの無言の視線に、カリファは軽く咳払いをして誤魔化すが、スターが合流した事によって生まれたその微妙な空気感はしばらく続いた。
~~中略~~
巨大な――巨大すぎる“正義の門”を背景にしたエニエス・ロビーは、“不夜島”と呼ばれる夜がない島で、ウォーターセブン周りを襲っていた嵐もまたそこまでは及ばない。
正門を越えたその先は海にぽっかりと穴が開いており、正門から繋がり――本島前門、裁判所とある中心の島は、柱のように立っているわけではなく、正門の方から繋がっているだけなので、もしも下から見る事があれば、浮いているようにも見える。
嵐を越えてその前にまで辿り着いた麦わらの一味は、今回の落とし前をつけるためにというガレーラカンパニーの職長達や、フランキーを慕うフランキー一家の者達と共同作戦でそのエニエス・ロビーへと挑む。
主力である麦わらの一味は温存し、まずは他の者達が正門などを解放する予定だったのだが――「わかった!!!」と力強く頷いたはずのルフィは、一人“ゴムゴムのロケット”でエニエス・ロビーの周囲を取り囲む柵を飛び越え、その内部へと侵入を果たす。
そして正門、さらには本島前門もその身軽さでスルーした先に待っていたのはエニエス・ロビーの兵力“1万”。
「おい“麦わらのルフィ”……仲間は何十人連れてきたんだ? ハハハ……エニエス・ロビーの兵力は1万だぞ!!!」
「ああ、おれは一人だ。道をあけろ!!!」
麦わらのルフィVSエニエスロビーの兵力1万の戦いが始まる頃、本来の作戦に則り、他の者達もまたエニエス・ロビーへと攻撃を仕掛ける。
正門はその勢いのままに開ける事に成功し、本島前門の前に門番として立ち塞がった二人の巨人族もなんとか抑え、作戦は成功。
けれどルフィを除く暴走海列車に残る麦わらの一味は――暴走海列車の名前に相応しく、倒した柵を発射台として二つの門を一気に飛び越えたために、それらはどうにも無意味な行動となった。
戦いは続き――いや、始まり、麦わらの一味は確実にその場所へと近づいていく。
一方で――CP.9に連行されたロビンとフランキーは、本島から跳ね橋で繋がった先にある司法の塔の長官室にいた。
ちなみにスターは関係ないからと、“海楼石”の手錠こそしたままだが、一人放り出され、司法の塔を自由にウロついている。
海賊なのに海軍本部の“大将”も受け入れてしまった無罪という意味不明な状況に、スターの存在はエニエス・ロビーにおいても――不意の思いつきでステージを頼んでしまうくらいには――持て余し気味だった。
それはともかく……ロビンとフランキーはCP.9の長官“スパンダム”と対面する。
スパンダムはフランキーにとっては仇……8年前、フランキーの師匠である魚人の船大工“トム”がスパンダムの謀略の下に死んだ。
トムはかつてあの“海賊王”の船を造り、その罪で死刑に処されるところを、ウォーターセブンの希望となる海列車を造った事で恩赦されるはずであったが、それが覆されたのだ。
フランキー自身もその時に死にかけ、自分で自分を“
そんな因縁の相手を前に、フランキーは猛るも、悲しいかな捕らわれの身でできるのは、噛みついてやる事くらいだった。
スパンダムもその時に顔を傷つけられた事もあり、容赦なくフランキーを痛めつける。
そしてその矛先は次にロビンに向いた。
「ワッハッハッハ! 悪魔の土地“オハラ”の忌まわしき血族め! 散々逃げ回っていたようだが、おれの前に現れたのが運のツキだ! 覚悟しておけ! 痛めつけて! 利用して! 海へ捨ててやる!!! お前の存在はそれほどに罪深い!!!」
「……!」
“海楼石”の手錠で能力を封じられているロビンは、スパンダムに殴られて床に倒れる。
そんなロビンを見下ろしながら、スパンダムは愉快そうに笑った。
「ワハハハハ……ああ、そういえば……さっき、そんなくだらねェ、お前を取り返しに来たバカがいたなァ……」
「!!? まさか……!」
「なァに、もう今頃全員捕まっている頃だろうが……! “麦わらのルフィ”とその一味だ……! このエニエス・ロビーの1万の兵力の前にはゴミ同然だったようだな!!!」
それはいっそわかり易い伝達ミスからなる情報だったが、どちらにしろ実際に、こんな場所まで追ってきているという事実が大問題である。
「まァどうせ監獄への船を出すとこだ、手土産にちょうどいい。このままインペルダウンへ連行するつもりだ」
「待って……約束が違うじゃない!!! 私があなた達に協力する条件は、彼らを無事に逃がす事だったはずよ!!!」
「……何を必死にイキリ立ちやがって……“ルッチ”、我々が出した条件を正しく言ってみろ」
普段の冷静さもなく必死に叫ぶロビンにスパンダムは嘆息すると、CP.9の中でも一番の実力者である肩に鳩を乗せたシルクハットの男に話を振った。
「ニコ・ロビンを除く、“麦わらの一味”が無事ウォーターセブンを出航する事」
「ああ……そうだな。あいつらはウォーターセブンを
「なんですって……!!? まさか、そんなこじつけで協定を破る気じゃ……!!?」
非難された事に苛立ったスパンダムはロビンと、ついでにフランキーも蹴りつける。
「おいおい、てめェがどうしてもと頼むから“バスターコール”も使わずにやったんだろォが!!! そもそもてめェら罪人との約束なんざおれ達が守る必要すらねェんだ!!! 調子にのんじゃねェ!!!」
一通り蹴りつけてとりあえずの満足を得たスパンダムは衛兵へと指示を出す。
「――カティ・フラムは“インペルダウン”へ。ニコ・ロビンは“海軍本部”へ。護送船の準備が出来次第“正義の門”をくぐり出航する!!!」
そしてエニエス・ロビーへ乗り込むという大事件を、今まさに起こしている海賊“麦わらのルフィ”は、裁判所の屋上で様子を見に来たCP.9の一人“ブルーノ”と向かい合う。
「“世界政府”始まって以来、前代未聞だぞ……“政府の玄関”にここまで踏み込んで来た男は……!!! いつまで暴れる気だ」
「死ぬまで!!!」
大柄な身体に牛の角のような髪型をしたCP.9で四番目の使い手。
ドアドアの実の能力者でもあるその男を前にして、ルフィはあくまで強気の態度を崩さない。
「やめとけよ。お前じゃおれには勝てねェよ」
「ふん……お前達は――まだ気がついていないようだな……。これが全世界規模の“大犯罪”だという事に」
「……何が言いてェんだ」
「全世界の海より……加盟国170以上の勢力を誇る“世界政府”という巨大な組織が所有するこの島に、お前達が攻め入るという事は……その全ての国々に反旗を翻す事を意味する!!!」
「なんだ……そんな事か」
「何……?」
「世界がどうだとか政府がなんだとか、そんなもん勝手にやってろ。おれは……勝てないかもしれないからで仲間を見捨てはしねえ!!! だから、スターとロビンは奪い返す!!!」
勝負は一瞬だった。
“ギア
それだけでブルーノは崩れ落ちた。
「よし……終わり!」
ルフィは軽く周囲を見回して、裁判所の屋上の縁に立つと、息を大きく吸い込んで叫んだ。
「スタ~~~!!! ロビ~~~ン!!! 迎えに来たぞォ~~~!!!!!」
~~中略~~
「……おれさまを呼ぶ声がした」
スターはその声に反応すると、何を考えたのか一瞬の間の後に、その場所からひたすら上を目指して走り出す。
同じく――ロビンとフランキーの二人にもその声は届き、“
「ルフィ……」
「おーーーっ!!! ロビーーーン!!! よかった! まだそこにいたのかァ! スターは一緒じゃねェのか!!?」
「……」
「よし! そこで待ってろ!!! 遠いけど飛んでみる!!!」
そう言って、ルフィが“ゴムゴムのロケット”の体勢に入ると、堪えかねたようにロビンが声を荒げた。
「待って!!! 何度も言ったわ私は……!!! あなた達の下へは戻らない!!! 帰って!!! 私はもう、あなた達の顔も見たくないのに!!!」
ロビンの必死さを感じる叫びに、ルフィは腕を元に戻し、その声を聞く。
「どうして助けに来たりするの!!? 私がいつそうしてと頼んだの!!? 私はもう……死にたいのよ!!!」
「!!?」
死にたいと叫ぶロビンの周囲にCP.9が集う。
跳ね橋が架かっていないために、大きく分かたれた裁判所と司法塔で、互いに敵の姿を確認した。
「死にてェ!!?」
「そうよ!!!」
「ロビーーーン!!! 死ぬなんて――何言ってんだァ? お前」
しかしルフィは、そのCP.9は無視して、ロビンに対して鼻をほじりながら応える。
「……!!?」
「あのなァ!!! ロビンっ!!! おれ達もうここまで来ちまったから!!! とにかく助けるからよ!!! それでも……まだ、お前死にたかったら!!! その時死ね!!!」
応えるルフィのその後ろでは、ルフィのいる場所を目指していた麦わらの一味が、続々とそれぞれの方法で上がってくる。
ナミ、チョッパー、ゾロ、サンジ……そして最後にそげキングが、かつてリトルガーデンで出会ったブロギーとドリーの海賊団に所属していたという縁から、政府の交換条件というウソを見抜き、説得に成功した門番の巨人の手で投げられて飛んでくる。
「頼むからよ! ロビン……!!! 死ぬとかなんとか……何言っても構わねェからよ!!! そういう事はお前……おれ達のそばで言え!!!」
「!!?」
「――あとはおれ達に任せろ!!!」
裁判所の屋上の縁に並び立ち、司法の塔から見下ろす者達と向かい合う麦わらの一味。
だが、まだ一人足りない。
最後の一人であるその男は、飛んできたそげキング――ウソップとは逆に空から舞い降りた。
「ルフィーーー!!!」
「!!! スタ~~~ッ!!!」
「「「「「スター!!!」」」」」
「飛距離が足りねえ!!! キャッチしてくれ!!!」
「えっ?」
「……は?」
「ぎゃあ~~~~~~っ!!!」
なぜか司法の塔の屋上に姿を現し、そこからこれまたなぜかルフィ達の裁判所の屋上へとジャンプしたスター。
しかし腕には依然として“海楼石”の手錠が嵌っており、能力が使えないスターは、その狭間を飛び越える事ができずに、海にぽっかりと空いたその穴に落ちて行った。
「ちょっ!」
「スターーー!!!」
ルフィが必死に腕を伸ばし、その襟首を捕まえ、引き寄せる。
スターは裁判所の屋上に引き上げられると、やれやれと首を振った。
「ふぅ……危ないところだった! 危うく死にかけたぜ!」
「危ないところだったじゃないでしょ! あんたいきなり現れたと思ったら何やってんのよ!」
「はーっはっはっはっはっはっ! 何をやっているかといえば決まっている!!! お前達がおれさまの許可なくおれさまより目立っているようだったから、おれさまはさらにその上を行ってみせたまで!!!」
ナミの神速のツッコミにも堪える事なく、スターは高笑いを上げる。
その言葉にナミは途方もない脱力感を感じて肩を落とした。
「あんたねえ……」
「ああ、こりゃ本物のスターだ」
「そうだな。通常運転だ」
「スター! 無事でよかった!」
チョッパーが素直に再会の喜びを表す中、ウソップは仮面越しにスターを見るだけで微動だにしない。
そんなウソップの姿にスターが気づく。
「あ、キャプテン」
「いっ、いや……私は君の言うところの偉大なるキャプテンではない。私の名前はそげキング――」
「何言ってるんだキャプテン? おれさまがキャプテンの事をわからないわけないだろ」
ウソップの言葉にスターが不思議そうに首を捻ると、ウソップの涙腺が決壊した。
「っ……う、うぉおおおおおんッ!!! スター!!! お前、無事でよがったなぁ!!! 本当に、おれ゛は心配したんだ!!! ごべんなぁ!!! おれは何もできないでよぉ!!! 目を覚ました時にはぜんぶ終わってて!!! お前の話を聞いてよォ!!!」
仮面の下で泣きじゃくるウソップに、スターは力強く頷いた。
「大丈夫だキャプテン。おれさまはキャプテンのスゴさを知ってる!」
「おれのスゴさ……?」
ウソップはスターの言葉に、ピタリとその動きを止めた。
「ああ。キャプテンは……弱いんだ!」
「おいっ!!!」
はたして何を言い出すのかと思えばこれである。
ウソップはビシッとお手本のようなツッコミを入れた。
「聞いてくれキャプテン。それって本当にスゴイ事だぞ。おれさま達とは違う。おれさま達は強いから戦えるけど、キャプテンは弱いのに戦ってるんだ。だからキャプテンの相手はいつも格上ばっかりだ。それは本当は誰より心が強い証だ」
「……ひぐっ、お、お前よォ! い、いきなりそういう事をマジっぽいトーンで言うんじゃねェよ!」
天然で落として上げるスターにウソップはまた泣いた。
その様子に微笑む一味の中で、ルフィとチョッパーは不思議そうな顔をする。
「おい、スター。そげキングと知り合いだったのか?」
「ん? 何言ってるんだルフィ。だからこれはキャプ――」
「しー! スターちょっと耳貸せ!」
ウソップは咄嗟にスターを口止めると手招く。
「スター、これはアレだ……そう! ドッキリだ。さすがにスターのような“スターアイ”の持ち主には気づかれてしまったようだが、ルフィにはまだ気づかれていない。今のおれはそげキング。そういう演出なんだ」
「なるほど……!」
スターはウソップの言葉に必要以上に納得すると、屋上の縁に並び立った。
今ここに、一時期はバラバラになりかけた麦わらの一味は揃った。
正確にはビビとカルーがいないが、スターだけに他の者よりも見た目を大事にする傾向にあるスターの服の袖の下には変わらずに存在する左腕の×印。
だから、麦わらの一味はここに揃ったのだ。
ニコ・ロビンの周囲を蠢く、世界政府――そして“正義”という名の巨大な“闇”に、今、麦わらの一味が挑む。