輝きのスター!   作:第7サーバー

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第17話・夢を繋ぐ声

蘇る。

ロビンの頭の中に忌まわしい過去の記憶が。

20年前――西の海(ウエストブルー)の地図から消えた故郷、オハラの記憶だ。

当時はまだ8歳のロビンだったが、その時点ですでにハナハナの実の能力者で、オハラの図書館兼考古学研究所である“全知の樹”で行われた博士号の試験に満点で合格し“考古学者”と名乗れるようになっていた。

そしてロビンはそこの学者達と同じく100年間の“空白の歴史”の謎を解き明かす事を求めた。

だが“歴史の本文(ポーネグリフ)”を解き明かす事は800年前に世界政府に禁じられた“犯罪”行為。

能力者であるために町の子供達には気味悪がられ、その身を案じた学者達には仲間外れにされ、一人海岸にいたロビンは漂着した巨人“ハグワール・D・サウロ”と出会う。

デレシシと笑う巨人は偉大なる海(グランドライン)で能力者に慣れていたためにロビンの事を気味悪がらず、ロビンは彼と打ち解けた。

しかしその中で現れる政府の船。

謎を解き明かすために世界中を旅していたロビンの母の“ニコ・オルビア”達から、それがオハラの者であると掴んだ彼らは、世界に対する“見せしめ”のためにその姿を現した。

当時のCP.9の手によって、学者達のその“罪”は暴かれ、知りすぎた彼らには死刑が確定した。

“バスターコール”も発動され、島には“中将”を乗せた軍艦が集まる。

元“中将”であったサウロは、今回の作戦を知っていた。

学者達を“悪”と断じる事ができず、オルビアを逃がすと共に自分も海軍から抜けて海を漂流した結果、()()()()漂着した島がオハラで、ロビンに助けられた。

避難船をも吹き飛ばす“バスターコール”に、海軍にサウロは反抗するが、後の海軍本部“大将”青キジの前に敗北……しかしオハラの全てを消し去ろうという、その“徹底した正義”を前にして、青キジはサウロが守ろうとしたロビンを逃がす事を決断する。

炎に包まれるオハラの姿を目に焼きつけながら、ロビンは一人オハラから生き残った。

だが――ロビンが生存している事はすぐに政府にバレた。

その結果、“歴史の本文(ポーネグリフ)”を解読でき、そこに記された古代兵器の数々を復活させる可能性のある“オハラの悪魔”の生き残りとして、ニコ・ロビンはわずか8歳にして、7900万ベリーの賞金首となるのである……。

 

 

~~中略~~

 

 

それからの生活にイイ事など一つもなかった。

子供の首に懸けられた賞金に目の色を変える大人達……わずかでも期待を懸ける度に裏切られ続け、辿り着いた先はB・W。

目的は違えど、国家転覆にまで加担して、堕ちるところまで堕ちていたと言っていい。

だが、その中で現れた自分の存在をあっさりと受け入れる者達。

ロビンはその“輝き”に希望を見て……それでも、過去の悪夢を拭い去る事はできずに、今回の選択をした。

……だというのに、だ。

今ロビンの目に映るのは、裏切ったと思わせたにも拘らず、それを信じず、真実へと辿り着き、自分の目の前に立つ――ずっと望み続けながらも、そんなものはこの世界のどこにも存在しないのだと諦め続けてきた仲間の姿。

 

「20年前……私から全てを奪い、大勢の人達の人生を狂わせた……たった一度の攻撃が“バスターコール”……!!! その攻撃が……やっと出会えた気を許せる仲間達に向けられた」

「……」

「私があなた達と一緒にいたいと望めば望むほど、私の運命があなた達に牙をむく!!! 私には海をどこまで進んでも振り払えない巨大な敵がいる!!! 私の敵は……“世界”と、その“闇”だから!!!」

 

麦わらの一味は、その事情を全て理解しているとは言い難い。

特に――これまでエニエス・ロビーにいたために、事情がまるで呑み込めていないプトレマイオス・E・T・スター。

けれど、必死さは伝わる。

細かい事情はともかくとして、それが敵であるという事だけは、麦わらの一味の誰もが理解した。

 

「青キジの時も! 今回の事も……! もう二度もあなた達を巻き込んだ……! これが永遠に続けば、どんなに気のいいあなた達だって……! いつか重荷に思う!!! いつか私を裏切って捨てるに決まってる!!! それが怖いの!!!」

 

そして、いつも冷静に見えたロビンの中に渦巻いていた激情……そのロビンの心の内も。

 

「……だから、助けに来て欲しくもなかった!!! いつか落とす命なら、私は今ここで死にたい!!!」

「ワハハハハハハハ!!! なるほどなァ……まさに正論だ!!! そりゃそうだ! お前を抱えて邪魔だと思わねェバカはいねーよ! ワハハハハハ!!!」

 

けれど、その必死さを笑う者もいる。

その者にとってみれば、ロビンはその過去がどうであっても“罪人”で、それが取り乱し叫ぶ姿に“正義”を感じているのだ。

 

「あの象徴(バッチ)を見ろ海賊共ォーーー!!!」

 

ロビンを笑っていたスパンダムは、司法の塔の屋上に設置された世界政府の旗を指差した。

 

「あのマークは四つの海と“偉大なる航路”にある170国以上の“結束”を示すもの……!!! これが世界だ!!! 楯突くにはお前らがどれほどちっぽけな存在だかわかったか!!! この女がどれほど巨大な組織に追われてきたかわかったか!!!」

 

世界を後ろ楯に見下すスパンダムに、見上げるルフィは平静な顔でそれを命令する。

 

「ロビンの敵はよくわかった! そげキング」

「ん」

「あの旗、撃ち抜け」

「了解」

 

「!!? は?」

 

「新兵器巨大パチンコ、名を“カブト”。その威力とくと見よ!!! 必殺……“火の鳥星(ファイアバードスター)”!!!」

 

エニエス・ロビーが、世界が激震する。

麦わらの一味は、たった一人の仲間のために、世界に対して宣戦布告をした。

 

 

~~中略~~

 

 

意味もなく中略を入れたくなるほどの驚愕による間が、麦わらの一味以外の者達を襲う。

 

「……!!?」

「あ……ああ……!!!」

「あいつら……やりやがった!!! 旗への攻撃の意味がわかってんのか……!!?」

 

「「「「「やりやがった~~~!!!!!」」」」」

 

「海賊達が……“世界政府”に!!! 宣戦布告しやがったァ~~~!!!」

「正気か貴様らァ!!! 全世界を敵に回して生きてられると思うなよォッ!!!」

 

「望むところだァーーーーーっ!!!!!」

 

燃え上がる旗、ルフィの昇り立つ“覇気”に、気の弱い者達が外れで次々と失神していくが、それは彼らの知るところではない。

 

「ロビン!!!」

「!」

「まだお前の口から聞いてねェ!!!」

「……!!?」

「“生きたい”と言えェッ!!!」

 

望んではいけない事だと思っていた……。

誰もそれを許さず、執拗にロビンを追い詰めた。

けれど、それを望む者達が、確実に八人と一羽はいる。

だからロビンは瞳から溢れる涙を止める事はできず、口を大にして、ただ叫ぶ。

 

「生ぎたいっ!!!!! ……!!! 私も一緒に、海に連れてって!!!」

 

それとほぼ同時に、変わらずに戦い続けていた職長達とフランキー一家の手によって、司法の塔へと続く跳ね橋が下ろされた。

 

「跳ね橋が下りるぞ!」

「あいつら、うまくいったみてェだな」

「……しまった。戦いになるんだったら、そのまま司法の塔で手錠の鍵を手に入れるべきだった!」

「まっ、任せろよ、スター……! そ、その時までは、お、おれが、お前の分も戦ってやる!」

 

「来るぞ! あいつら!」

 

「早く下ろせ!」

「悪そうな顔……!」

 

「ぎゃあああァ、来んなー!!!」

 

「――行くぞ!!!」

 

 

~~中略~~

 

 

跳ね橋は下りきる前に、三つ首改め、くっついていただけの三人の仲良し裁判長達に止められたが、その勢いまでは止まらない。

フランキーが身体の中に隠し持っていた、トムやアイスバーグの願いである、もしもの時の“抑止力”の古代兵器“プルトン”の設計図を、けれど古代兵器を復活させる事のできるロビンが政府の手には落ちない事に賭けて、燃やし捨てた。

そして飛び出すは、再びの暴走海列車・ロケットマン。

運転手であるココロばーさんに操縦された暴走海列車は、屋上から飛び降りた麦わらの一味と、設計図を燃やした事で司法の塔から蹴り落とされたフランキーを乗せて、裁判所と、司法の塔の間の狭間を飛び越える。

スパンダムはルッチを護衛に、ロビンを連れて“正義の門”へと急ぎ逃げていく。

残るCP.9はロビンの“海楼石”の手錠の鍵を武器に麦わらの一味にフザケタ時間稼ぎを迫った。

CP.9五人はそれぞれ一本ずつ鍵を持ち、どれが本物かわからない中で、それを賭けて戦わなければ、海にでも捨てると言う。

 

「ちょっと待て! おれさまは無罪だぞ! とりあえずおれさまの鍵を寄越せ!」

「それは知らないぞ。チャパパパパ……お前の鍵は“大将”から長官にでも渡されたはずだ。チャパパパパパパ」

 

おしゃべり故にか口にチャックを持つ、まん丸い体形のCP.9“フクロウ”から伝えられた言葉に、麦わらの一味は船長であるルフィをとりあえず先に進ませて、残りは司法の塔のどこかにいるCP.9達から鍵を奪い取るという選択を採った。

麦わらの一味はバラけ、手分けしてCP.9を探す。

“海楼石”の効果で、悪魔の実の能力者の弱点である海に浸かったような状態であるために、ほぼ無力なスターは、おれが守ってやるから安心しろと若干震えながら宣言したウソップと共に行動する。

 

「いねェ……いねェ……いねェ……」

 

ウソップとスターの二人は、CP.9の姿を求めて、司法の塔のドアを開いては閉めていく。

そして見つけたのは、室内にも拘らず庭園風な改造がなされた部屋の真ん中で、鍵を置いて寝ているべん髪で武道家風の服を着た男“ジャブラ”。

 

「おい、寝てるぞ……」

「そうだな、キャプテン。ここはおれさまの歌で爽やかな目覚めを――」

「いや、ちょっと待てスター。起こす必要なんてねェ。ここは鍵だけ奪って逃げよう」

「それはちょっと卑怯じゃないか? キャプテン。スターっぽい行動じゃないぞ」

「バカ野郎! ロビンのためだろうが! それくらい我慢しろ!」

 

ウソップの敵と戦いたくない気持ちからなるちょっとマジな説教に、スターは「確かに……見せかけのスター性に拘るおれさまが浅はかだった……」と反省したが、その説教でジャブラは起きた。

 

「よし、じゃあそーっと行くぞ……って、起きとるーーー!!?」

「そりゃ、そんな風に騒いでたら起きるだろうよ。それにしてもお前らが来たか。“狙撃手”に能力が封じられた男か……おい、お前の手錠の番号は!」

「番号?」

「手錠についてるだろ」

 

後ろ手に手錠を嵌めてるために見れないスターに代わって、ウソップがそれを見る。

 

「あった。“7番”だ!」

「ちっ……やっぱり、ハズレか。残念だが仕方ねェ。安心しろ。おれにいたぶる趣味はねェ」

 

言うとジャブラの姿が獣のそれへと変化していく。

 

「あ……悪魔の実!!?」

「“イヌイヌの実・モデル(ウルフ)”!!!」

「お、狼……!」

 

ウソップは身体が倍加して二本足で立つジャブラの“人獣型”……“狼人間”となったその姿に身体を震わしたが、一歩前に出たスターの後姿に、“カブト”を握る手に力を籠めると、スターを押し退けさらにその前に立った。

 

「キャプテン……」

「ハァ……ハァ……任せろよスター! おれがお前もロビンも助けてやる!!!」

「なんだ……戦る気か? あんまり強そうには見えねェが……」

「うるせェ!!! 来るなら来やがれ、狼野郎!!!」

 

そしてウソップとジャブラの戦闘が始まるかと思われたが――唐突に天井にヒビが入り、そこからゾロとキリンが落ちてきた。

 

「キリーーーン!!?」

「うおっ! いかんっ! “人獣型”で止めるつもりが……キリンになってしもうた!!!」

「キリンが喋りながら落ちてきたーーーっ!!?」

「ぎゃ~~~はははは!!! カク!!! お前のその能力サイコーだ!!!」

「狼!!? なんだ……ここは動物園かァーーー!!?」

「くっ……みんな大好き動物園の人気者キリンに化けて落ちてくるだと……? おれさまより目立ちやがって……!!!」

 

そのキリンの正体は悪魔の実を食べたばかりのカク――任務達成の褒美としてスパンダムに貰った物なので、まだその能力の制御に慣れていなかった。

 

「“ウシウシの実・モデル麒麟(ジラフ)”。ぎゃ~~~ははは、お前も不憫な奴だ。一生“キリン人間”とは……!」

「キリンの何がおかしいんじゃ! わしは気に入っとると言うとろうが!」

「そうだ! 動物園と言えば、ゾウ、キリン、パンダは鉄板だろうが! 子供人気で言えばライオンにだって劣ってないぞ! ええいっ、妬ましいっ!!!」

「おお……わかってくれるか、おぬし!」

「馴れ馴れしくすんな! お前なんかもうファンじゃねェ! ライバルだ!!!」

「いや、もともとファンになった覚えはないんじゃが……」

「なんだって!!?」

 

なぜかカクとジャブラの口論に参加するスターの姿を見て、突然の動物園状態に頭を整理していたゾロが口を開く。

 

「スター、お前もいたのか……ウソ――そげキングはどうした?」

「キャプテン?」

 

スターが周囲を見回してみると確かにウソップの姿がない。

瓦礫に押し潰されたかと心配するが、その前で口論に一段落ついたカクが“人獣型”へと変化した。

 

「かっこ悪っ!!!」

 

ゾロのつい口から出てしまった率直すぎる感想に衝撃を受けるカク。

カクの“人獣型”はキリンらしく長い首に、元の長鼻が影響したのか、それがより太く突き出した不格好なものだった。

仲間であるはずのジャブラもさらに笑いを深くし、またカクとの間で口論が始まる。

 

「!!? わっ! ……!!? なんだこの手錠は」

 

平静になれと念じながらそのやりとりを見ていたゾロの腕に、どこからともなく飛んできた手錠が嵌る。

 

「ぎゃー! しまった、すまないゾロ君!」

 

飛んできた方向に視線をやれば、そこには頭を抱えて謝るウソップの姿。

 

「オイ、なんのマネだ、てめェ!!!」

「そいつは! たぶん例の“海楼石”の手錠なんだ! 敵は二人とも能力者だから、そいつを嵌めてやれば弱ると思って!」

「それをなんでおれに嵌めてんだバカ野郎!!!」

「だ……だってよ! キリンの顔がおかしくって……つい、手元が狂って」

 

ぷふーっと吹き出すウソップの姿に、ついにカクの堪忍袋の緒が切れた。

 

「嵐脚……“周断”!!!」

 

カクがその場で回り始め――その危険さを感じたスターとジャブラが咄嗟にその場で伏せる。

 

「! キャプテン!!!」

「伏せろ!!! ウソップ!!!」

 

唯一棒立ちだったウソップは、ゾロが跳び込んでその頭を押さえて伏せさせた。

カクのその、巨体を存分に活かした蹴りの斬撃によって、司法の塔が斬れてズレ……わずかにだが空が見える。

 

「フン! みっともねェ。戦闘で感情さらけ出しやがって」

「やかましい! わしはキリン気に入っとるんじゃ! キリン大好きじゃ」

「あー、わかったわかった」

 

技の破壊力、そしてそのリーチも驚異的だが、その程度なら問題ないと不敵に笑ってみせたゾロの顔が次の瞬間、驚愕に崩れた。

 

「何やってんだ、てめェはァア!!!」

「おれのせいじゃないでしょーがァ!!!」

 

ゾロが頭を押さえて伏せさせたウソップ……そんな二人が立ち上がった時に、ウッカリ、ゾロの右腕に嵌められていた手錠にウソップの左腕も囚われる。

二人は手錠によって繋がれた。

加えて鍵がないという事実に口論する二人。

二人の“海楼石”の手錠の鍵も、CP.9の誰かが持つそれに紛れていたのであった。

協力して戦うのが嫌なカクとジャブラは、スターの時にジャブラが尋ねたように、親切にもその手錠を外そうとしてくれるが、どちらの鍵も結果はハズレ。

 

「ハズレだ」

「わしもじゃ。残念」

 

息を吐き、じゃあ先に殺したもん勝ちだな――と同時に思う二人の、ジャブラの隣になぜか普通にスターの姿。

 

「ん?」

「……とりあえずスマン」

 

微妙にシリアスさの欠けた戦場を一人移動していたスターは、ジャブラのその腕に口で銜えていた“海楼石”の手錠を嵌めた。

 

「なっ……くっ、力が……油断した……!」

「ジャブラ!」

 

「「ナイス、スター!!!」」

 

スターの好プレイにゾロとウソップがガッツポーズをするが――。

 

「ぐぬぬ……まさか、おれがこんな手に……ん?」

 

手錠を見て呻いていたジャブラは、その手錠についた番号を見ると、自分の持っていた鍵でその手錠を外した。

 

「「「「「…………」」」」」

 

「無意味かっ!!!」

「ぎゃ~~~はははは! 運がなかったようだな! こんな手はもう二度と食わんぞ!」

「うげっ!!?」

 

笑うジャブラに殴り飛ばされたスターが吹っ飛び、開いたままの部屋のドアから外へ――。

 

「!!? えっ、スター!!!」

 

CP.9を“人型”で探し回っていたチョッパーが、ちょうどその場を通りかかり、吹き飛んできたスターをキャッチした。

 

「「チョッパー!!!」」

 

「ゾロ! そげキング! なんだ!!? 楽しそう! お……おーいっ!!!」

「アホォ!!! 手錠に注目しやがれ!!!」

「“2番”の手錠の鍵を探してくれーーーっ!!!」

 

吹き飛ばされたスターに続いて、カクとジャブラに追いかけ回される事になったゾロとウソップが手錠を示し叫ぶ。

 

「ついでだからスターも連れてけ!!! この状況じゃ気にしてる余裕がねェ!!!」

 

 

――“獣型”、本来のトナカイの姿に戻ったチョッパーは、スターを背中に乗せて司法の塔の中を駆け回る。

この状況ならば、最初に鍵を手に入れる可能性が高いのはサンジだろうと、サンジの匂いを探していたのだが、その途中でナミの匂いを見つけ、そちらへと急行した。

 

「“刻蹄・(ロゼオ)”!!!」

 

歌舞伎役者のように顔に隈取を入れた男――その名もそのまま“クマドリ”。

クマドリは“錫杖”を武器とし、さらには“生命帰還”という技で髪の毛を自在に操って、ナミを追い詰めていた。

そこにチョッパーは割り込み、自ら開発した“ランブルボール”で腕力を強化すると、クマドリを自慢の蹄で殴り飛ばした。

 

「ナミ!!! 大丈夫か!!?」

「チョッパー……! ありがとう、助かった……」

 

ナミは髪の毛で締めつけられていた首に手をやって、ゴホゴホと咳き込む。

 

「スターもいるのね。状況はよくわからないけど――とにかく今の内よ! 早くここを離れましょう!」

「なんで!!? あいつ倒さなきゃ鍵が!」

「これでしょ」

 

クマドリを倒していないのに、スッとナミが取り出した鍵にスターとチョッパーは目を見開いて驚いた。

 

「鍵だけは気づかれずにスッたのに、逃げられなくて!」

「なァなァ、それ何番って書いてある?」

「番号?」

 

ナミが確かめた番号は“3番”。

ロビンについてはどうかわからないが、スター達がとりあえず求めるものからすればハズレだった。

 

「なんなのこの番号?」

「この司法の塔に保管されている“海楼石”の手錠に対応した番号だ。おれさまは“7番”。キャプテンとゾロの腕に嵌ってるのは“2番”」

「ウソップとゾロって……いったい何をやってたのよ……」

 

ナミに事情を話しながら逃げる三人の前に、今度は上からツルツルの人形のような姿になったサンジが墜ちてきた。

 

「「「!!?」」」

 

サンジの相手はカクと同じく任務達成の褒美に“アワアワの実”を食べ“石鹸人間”になったカリファだった。

女性を蹴れないサンジとの相性はすこぶる悪く――それでもサンジは蹴り技の冴えでカリファを圧倒し、その精神を折る事に苦心したが、相手は困難な任務を担う政府の諜報員であるために容易ではなく、さらにその能力を喰らった事で形勢は逆転してしまった。

その結果にナミがカリファと対峙し、後を追いかけてきたクマドリの前にはチョッパーが立った。

そして残るスターは、ツルツルになったサンジを背負って、どうしたものかと考えながらとりあえず走り出した。

 

 

~~中略~~

 

 

仲間達に鍵の回収は任せて、一人ロビンを追いかけるルフィ。

司法の塔の裏に出るも――“正義の門”まで橋でも架かっているのかと思えばそんな事もなく、目の前には大渦。

試しにとボートで進んでみるが失敗。

溺れ死にかけていたところを、ココロばーさんについて来たココロの孫である“チムニー”という少女に助けられ、さらにはその先導で海の地下通路へと進入した。

分厚い鉄の扉がその行方を阻んだものの――エネルと戦った時に腕に巨大な黄金をつけた時の破壊力からヒントを得た新技“ギア(サード)”で、骨を膨らませて、その腕を巨人のようなそれにしたルフィは、その扉をブチ破って、先へと進む。

そして――地下通路の先、“正義の門”の門前にある“ためらいの橋”。

その地上へと上がる支柱内部で、追いかけてくるルフィの声に気づき待ち構えていた、CP.9歴代最強“殺戮兵器”ロブ・ルッチと“麦わら”のモンキー・D・ルフィは向かい合った。

 

『ちくしょう、しまった。こっちだ“子電伝虫”は!!! なんて事を!!! ウッカリした!!! よりによって“ゴールデン電伝虫”を押しちまった!!! よりによって、“バスターコール”をかけちまった~~~っ!!!』

 

そんな状況にあって追いかけてくる存在に焦ったスパンダムの大ポカが発生。

“バスターコール”は発動され、さらにCP.9に向けたはずの通信もエニエス・ロビー全域に流された。

しかし発動してしまったものは仕方ないと開き直ったスパンダムは、島の兵士達を含めて、誰をどれだけ犠牲にしても栄えある未来のためならば構わないと言い放つ。

 

『……その“子電伝虫”通話中に』

『え!!? うげェッ!!! しまった!!! 今の会話つつぬけか!!? …………!!! そ……そんなわけで、おれの名は麦わらのルフィだ』

 

スパンダムはどこまでもウッカリしていたが、事態は切迫していた。

“バスターコール”で現れるのは海軍本部の“中将”五人を乗せた軍艦十隻だ。

 

『全員、島を離れて!!! エニエス・ロビーに“バスターコール”が、かかった!!! 島にいたら誰も助からないわ!!!』

 

ロビンのそんな声と殴られたのであろう音を残してその通信は切れた。

 

 

「だーっ、くそっ!!! つまりおれさまはいったい何をどうすればいいんだっ!!!」

 

司法の塔をサンジを背負ってデタラメに走り回っていたスターは、流れてきた通信に事態の悪さを感じていたが、能力が使えない状況に変わりがないために困っていた。

 

「み……水、水を……」

「水!!?」

「おれが喰らったのは“泡”だ……洗い流せば……な、なんとかなるかもしれねェ……」

「なるほど!!! 水だな!!!」

 

背中で呻くようなサンジの呟きに、スターは司法の塔の窓を蹴破り、外へと飛び出す。

 

「!!?」

 

そしてスターは見た。

飛び降りるスターとは逆に、司法の塔の壁を登っていく巨大なモンスターの姿を。

 

「チョッパー!!?」

 

見た事のない形態ではあったが、ウソップ命名の“スターアイ”を持つスターが仲間を見間違える事はない。

それに帽子と角は巨大化していてもチョッパーだと判断できる要素として残っている。

変動していく事態に、それでもスターはとりあえずサンジを後ろ手に――だとやり辛かったので、足に挟みながら司法の塔の横の海につけてジャブジャブと洗う。

 

「戻れ、戻れ――あっ、ヤバ……!!?」

 

そうしてサンジを洗っていたスターだが、海にぽっかり空いた穴――その滝壺に一直線の海は流れが急なため、ツルンとサンジが流れていってしまう。

 

「おいーーーっ、ヤバいって!!!」

 

追いかけるスターの前で、高く上がる水飛沫。

 

「ハァ……ハァ……ゲホッ……手荒な治し方だったが、助かった。スター、恩に着る」

 

水を蹴り、陸地へと戻ってきたサンジは、司法の塔を見上げる。

 

「――とにかくおれァ、ウソップ達のとこに行きゃいいんだな?」

「ああ――って、今度はなんだァ!!?」

 

上空……同じくスターが司法の塔を見上げると、その壁をブチ破り、モンスター化したチョッパーとフランキーが墜ちてくる。

二人の目の前で海へと一直線に墜ちた彼らだったが、すぐにフランキーが気絶して小柄な“人獣型”の姿に戻ったチョッパーを抱えて上がってきた。

 

「おい、そこのおれさまのファン!」

「あァん? ……ってお前は」

「状況を説明してくれ! 何がどうなってる!」

 

それからのフランキーの説明によると、モンスター化して暴走していた原因はわからないが、チョッパーはクマドリを倒したらしい。

そしてフランキーもフクロウを倒し、ナミもカリファを倒したという話だった。

フランキーはナミと打ち合わせ、“3番”の鍵を託されており、自身が手に入れた“4番”の鍵と共に、これから一足先に“正義の門”へと向かう役目を負っていた。

そのナミはカリファから手に入れた“2番”の鍵でゾロとウソップの解放へと向かっているそうだ。

 

「んじゃあ、おれは予定通りナミさんの方に行く」

 

フランキーの説明を聞いてサンジはそう言うと、続けてスターに指示を出す。

 

「スター、お前はフランキーと一緒にロビンちゃんを追え。どうせお前の鍵はあのクソ長官が持ってるって話だし、ハト男はルフィに任せておけばいい。他の奴はフランキーに任せろ。残りの鍵はウソップに届けさせる」

 

要所要所で頭脳派になるサンジの指示にスターは素直に頷く。

その場を足早に去って行くサンジを見送って、スターはフランキーと共に、“正義の門”へ行く方法を考えていると、ルフィにその道を教えたチムニーが他の者達の案内役として残っており、二人もその先導で海底地下通路の中へと進入していった。

 

 

~~中略~~

 

 

初っ端から“ギア(セカンド)”の全開状態で戦うルフィに対し、ルッチは“ネコネコの実・モデル(レオパルド)”による“人獣型”……“豹人間”となったその力で真っ向から渡り合っていた。

 

「“剃刀”」

「くっ……この!!!」

「“指銃”」

「危ねェ! ハァ……ハァ……手強い……」

 

ルッチはこれまでルフィが戦ってきた相手の中で最高と言える体術を使う者だった。

CP.9が修めるその体術“六式”を、さらに極限まで高めた者。

それが目の前の敵。

ルフィが持てる力を振り絞っても、なお互角のその戦場に、二人の乱入者……スターとフランキーが姿を現した。

 

「ルフィ!!!」

「! スター!!! それとフランキー!!!」

「ロビンは!!? とりあえず鍵を二つ持ってきた!!!」

「ロビンはハトの奴の後ろの扉だ!!! そこから“正義の門”に行けるんだ!!!」

「ルッチか……! あいつに手こずってんのか! 手ェ貸すか!!?」

「いや、いい! あいつはおれが抑えるから、二人はロビンを追ってくれ!!!」

 

ルフィはフランキーの協力を断り、ロビンの奪還を二人に託す。

 

「……行かせると思うか」

「行かせるさっ!!! おれが!!!」

 

当然ルッチは、それを止めるために動くが、ルフィの猛攻に阻まれ、スターとフランキーの二人は、その横をすり抜け――地上、“ためらいの橋”へと走る。

 

 

その“ためらいの橋”……ロビンは文字通りその石橋に喰らいついてでも先に進む事を拒絶していた。

スパンダムはそんなロビンを何度も蹴りつけ、引きずりながら橋を進んで行く。

 

「ワハハハハ! 見ろ、出航準備は万端だ。もう邪魔するものなど何もない!!!」

 

そう笑うスパンダムはこれまでマヌケさが目立っていたが、ここに来て万全を期して、“ためらいの橋”に続く支柱内の階段の地雷をONにしていた。

()()追いかけてくる者がいたとしてもそこで吹き飛ぶ。

 

「ハァ……でも……門はくぐらない……!!! ハァ……“助ける”と……ハァ……言ってくれたから……!!!」

 

それでもロビンは信じた。

そんなロビンの往生際の悪さに、スパンダムはそれで20年前どうなったと言う。

実は20年前のCP.9の長官はスパンダムの父親で、スパンダムは全てを聞かされていた。

親子二代で“正義”のために“オハラの悪魔”を追い詰めていたのだ。

 

「ハハ……! 泣くほど不幸だったか。20年前……お前の首に賞金を懸けたのはおれの親父だ!!! ワハハハハ、世界平和のためにな!!!」

「!!?」

「そして20年経った今……! 息子のおれがそのたった一人の生き残りを狩り……! オハラの戦いは幕を閉じる!!! オハラは敗けたんだ!!!」

 

ロビンの脳裏には20年前の光景が絶えず再生され続けていた。

悔しさに涙が溢れ出す。

 

「まだ私が生きてる!!!!!」

「そのお前が死ぬんだろうがよ!!!!!」

 

その時、“ためらいの橋”へと繋がる支柱から爆発音――支柱の壁が壊れ、フランキーがそこから海へと墜ちていく姿が見える。

 

「カ……カティ・フラム!!! 地雷か……!!! なぜあいつがここに!!? ハァ……あァ……ワハハ!!! だが、かかった!!! バカめ!!! あのバカかかった!!!」

 

スパンダムは吹き飛ばされ墜ちていくフランキーを笑う。

だが、近くで見ればわかっただろうが、墜ちていくフランキーもまた笑っていた。

 

「え……!!?」

 

“ためらいの橋”へと繋がる支柱を昇っていたのは二人。

フランキーは地雷に吹き飛ばされ墜ちていったが、そのフランキーに庇われ、投げ飛ばされたもう一人は“ためらいの橋”を、ロビンと同じく後ろ手に手錠をされた姿で走る。

爆煙を突っ切って――“海楼石”によって能力だけでなく、身体能力まで落とされているとは思えないその脚力で一直線に駆け抜ける。

 

「……!!? は……い、いや、ちょっと待て……!!!」

「またねェ!!!」

 

飛び蹴り一閃。

勢いのままにスパンダムの顔を蹴り飛ばしたその男は、ロビンを庇うようにその前に立った。

 

「スター!!!」

「その通り。おれさまは麦わらの一味の“海賊スター”こと、プトレマイオス・E・T・スター!!! ロビン!!! お前を助けにきた!!!」

 

ドン!!! と登場シーンを決めるスターの前でスパンダムは頬を押さえながらよろよろと立ちあがる。

 

「て、てめェ……プトレマイオス・E・T・スター……!!! 裁判で無罪になったからとつけ上がりやがって……!!! だが、これで、てめェは今度こそ有罪だ!!! 能力が使えない無念さを噛みしめて、たった一人の女のために、ここで死ね!!!」

 

スパンダムが“ためらいの橋”の先、“正義の門”を越えるための船着き場にいる海兵達を呼ぶ。

スパンダムの背後から手に銃を持った海兵達が続々と現れる。

 

「能力が使えないからなんだ!!! おれさまは怒ってるぞ!!!」

 

能力なしでも戦おうとするスターの視界では不可思議な光景。

続々と現れた海兵達が、次々に爆発によって吹き飛ばされていく。

 

「な……なんだァ!!? 能力は封じられてるはずだぞ!!! ――ポガバ!!!」

 

同じく吹き飛ぶスパンダムの姿に、振り返れば遠く離れた司法の塔。

その屋上に仮面をつけてマントをなびかせるヒーローの姿。

 

「――キャプテン!!!」

「長鼻君……!!!」

 

ウソップの援護にスターはロビンを促して、“ためらいの橋”を駆け戻る。

 

「なんだ、あいつはァ~~~っ!!? この距離で、風の吹く中……!!! 寸分狂わずおれ達を狙ってるのか!!?」

「あっ、ニコ・ロビンが逃げます!!!」

「んのおォのれェ~!!! 逃がすなバカ共!!! 撃っていい!!! 殺さねェ程度に撃ち殺せ――ぐばァ!!?」

 

「「「う、撃てェ!!!」」」

 

「チッ……!」

 

海兵達が構えた銃に顔を顰めるスターだが、それに気づき笑顔を作る。

銃弾をも弾く鉄の身体を持つ男。

 

「フランキー!!!」

「おうよ! 丈夫なのよ鉄だから。地雷程度どうって事ねェ!!!」

 

スターとロビンの前で大の字に立って、その身体で銃弾から守るフランキー。

そこに通信が入る。

 

『スター、それとフランキー君。こちらそげキング。ナミから受け取った“電伝虫”でそちらに声を飛ばしている。それはそうと、その付近に小さな赤い包みが落ちているはずだ。その中には一本の鍵が入っている。君達のと合わせてこれで全て――』

 

手錠を後ろ手に嵌められている二人に代わり、自由の効くフランキーがそれを拾い、中を確認する。

これでこの場にある鍵は三本。

ゾロとウソップの解放、それとジャブラが自分の解放にそれぞれ一本使ったから、計五本。

CP.9が持っていたはずの鍵の全て。

 

『――確かに届けたぞ』

 

 

~~中略~~

 

 

それはもうすぐそこまで迫っていた。

“正義の門”はそのために開けられており、閉められていた事によって生まれていた大渦もまた消えている。

 

「“3番”……“4番”……違う! “5番”……外れた!!!」

 

だが同時に、麦わらの一味+フランキーもまたニコ・ロビンの解放という目的を達成していた。

 

「バカなァ~~~っ!!! ほ……本物の鍵っ!!? そんな……! って事はおめェら!!! 司法の塔のCP.9を全員倒したってのか!!? いや、そんなはずはねェっ!!! うまく奪って逃げたな、さては!!! チキショー!!!」

 

CP.9の戦闘力に絶大の信頼を寄せるスパンダムがいくら取り乱そうとその事実は変わらない。

麦わらの一味は確かにその全員を倒した。

残るのは“ためらいの橋”へと続く支柱内部で、変わらずルフィと激闘を続けるCP.9最強のロブ・ルッチ、ただ一人。

 

「こちらフランキー!!! おい長っ鼻!!! ニコ・ロビンの手錠は外したぞ!!!」

 

フランキーがウソップに通信を返すと、向こう側でも歓声が上がるのがわかった。

 

「長鼻君……ありがとう!!!」

『礼なら全てが済んでから、必死に鍵を集めた者達に言いたまえ。君は紛れもなくルフィ君達の仲間だ!!! もう思うままに動けばいい!!!』

 

“海楼石”の手錠が外れた事で能力が解禁されたロビンは、手始めにスパンダムに腕を咲かせてフルボッコにした。

 

「オシ! おめェら急いでこっちへ来い! 脱出の準備は整えておく!」

「――違う! ロビン! おれさまの鍵だ! そいつが持ってる! それさえあればおれさまの“スターシップ”が使える!」

「!」

 

ロビンがスターの言葉に応えるより早く――砲撃が始まり、柵が、司法の塔が吹き飛ばされ、それが姿を現した。

“バスターコール”によって緊急招集された海軍本部の五人の“中将”、十隻の軍艦……国家戦争クラスとされる軍事力。

 

『おい、こっちは無事だ!!! それより――』

 

「“バスターコール”だ……“バスターコール”が始まるぞォ~~~っ!!!」

 

 

――“ためらいの橋”、支柱内部。

“麦わら”のルフィVS“殺戮兵器”ロブ・ルッチ。

 

「ハァ……ハァ……」

「だいぶ息が……ハァ……上がってきたようだな。そろそろ貴様の体力も限界か?」

「いや、まだまだだ……」

 

そう言って笑うルフィに、ルッチもまた口角をつり上げた。

 

「フッ……なかなかに骨がある。だが、さっきの爆音を感じたか? 海軍本部の軍艦が試し撃ちでもしたのだろう。“バスターコール”はもう始まっている。――もう、数分も待たず一斉砲撃が始まり、司法の塔にいるお前の仲間達は死ぬ」

「!」

「――もし運よく……ここへ辿り着く者達がいたとしても……“嵐脚”!!!」

 

ルッチが蹴りの斬撃で支柱の壁を斬り裂くと、そこから勢いよく海水が入りこんできた。

 

「この海水が勢いよく通路へと流れ込み、そこにいる者達は溺れ死ぬ。何も、うまく運んでやしないんだ……麦わら」

 

ルッチの行動の意味がわかっていなかったルフィは、その説明を聞いて、やはり笑った。

 

「……わかってねェよ、お前」

「何?」

「地下水路を走ってる奴なんていねェ。おれの仲間は――空を飛べるんだ」

 

 

そして再び“ためらいの橋”……スパンダムの上着のポケットからその鍵を見つけたロビンの手によって、ついにその男も解放される。

眼前にはすでにその威容がはっきりと見て取れる十隻の軍艦。

 

「フン……出でよ――“スターシップ”!!!」

「うおぉっ!!? なんじゃそりゃ!!?」

「世にも珍しい空飛ぶ船だ。こいつを貸してやる。二人はそれでキャプテン達と合流してくれ!」

「待って、スター、あなたは!!?」

「まだもう一人の船長(キャプテン)が、ルフィが戦ってるだろ? ――おれさまは、その決着がつくまでの足止めだ!!!」

 

“バスターコール”という悪夢に震えながらも、自分も残ると言うロビンだが、スターはロビンを“スターシップ”に押し込んだ。

 

「いいから行けって!!! ここからはおれさまのステージだ!!! どいつもこいつも散々目立ったんだ……なら“海賊スター”であるおれさまは、それ以上に目立たなきゃウソってもんだろうが!!!」

 

スターの身体から金色が噴き出し、足につけた星で空へと浮かび上がる。

その周囲には巨大な複数の星。

これまで能力を封じられていた事で溜まりに溜まった鬱憤が、かつてないほどの規模で“輝き”を放つ。

 

「とりあえずの目標は――おれさまより目立ってる“バスターコール”!!! “バスターコール”がどれほどスゴイのか知らないが、そんなものよりもっとおれさまに注目しろ!!!」

 

 

~~中略~~

 

 

『“バスターコール”発動!!! 標的、“麦わらのルフィ”とその一味、約六十名!!! ――なお“大将”青キジとの内約により、“ためらいの橋”に存在が確認されたニコ・ロビンのみ標的外とする!!!』

 

十隻の軍艦からなる砲撃により、エニエス・ロビーが破壊されていく。

 

『現状把握不要!!! “司法の島”エニエス・ロビー、その全てを破壊せよ!!!』

 

そこに容赦は欠片もなく、麦わらの一味という“悪”を滅ぼすために、本当にその島の全てを破壊しようとする攻撃が続く。

不意に――その空に到底無視する事ができないほどの金色の“輝き”が現れる。

 

「――“ビッグスター”!!! 連続セット!!! これが進化し続けるおれさまの最強“スターパワー”だ!!! 墜ちろ――“メテオストリーム”!!!」

 

そして“輝き”は巨星を墜とす。

一つ一つが“メテオインパクト”級の威力を、その圧殺力を持っている。

 

「う、ウワァ~~~っ!!? 星が、巨大な星が墜ちてきます!!!」

 

直撃すればさすがに軍艦も落ちるレベルのダメージを与えるだろうその巨星に、慌てる海兵達の中で、まるで慌てた様子のない五人がいる。

 

「狼狽えるなバカ共が」

 

“ドーベルマン”、“オニグモ”、“モモンガ”、“ストロベリー”、“ヤマカジ”……今回の作戦に参加する五人の“中将”達はそれぞれ“覇気”を纏うと、その手に持った刀で、墜ちてくる巨星を一つ残らず斬り裂き砕く。

さらに空を自由に飛べるスターを厄介な存在と見たのか、“中将”の内の一人モモンガが、CP.9も使う体術“六式”の内の一つ“月歩”で空気を蹴り、スターへと迫る。

 

「ぐぬっ……強ェ……!!?」

 

スターは“スタービームソード”で対抗し、しばらく空中での斬り合いが続くが、徐々にその力に押し負け、“ためらいの橋”へと叩き落された。

橋はすでに先の砲撃で崩れており、ルフィがいる第一支柱側の道がなくなってしまい、そのどちらもが孤立したような状況になる。

モモンガはそのままスターにトドメを刺そうと、上空から刺突の構えでスターに突撃するが、その横合いからの射撃に気づき、背中に大きく“正義”と書かれた海軍コートで払った。

 

「キャプテン……!」

「す、スターはやらせねェぞ!!!」

 

モモンガにギロリと睨まれ、若干ゾロの後ろに隠れながらも、ウソップが叫ぶ。

ウソップを含めた麦わらの一味……それにココロばーさんやチムニーは“スターシップ”で上空から“ためらいの橋”へと降りてくる。

 

「そのまま逃げてもよかったんだぜ」

「何言ってんだ。やられそうになってたくせによ」

「なってねェっての! おれさまの本気はまだまだこれからだ!」

「それはどうでもいいけど……なんとかルフィを回収しないと」

「ルフィの奴は……まだ戦ってやがんのか」

 

「――“ゴムゴムの巨人の銃(ギガント・ピストル)”!!!」

 

ゾロがルフィの戦っている第一支柱に視線をやると、その壁が巨人族のような巨大な腕によって内部から破壊された。

“ギア(セカンド)”に比べて慣れておらず、無理に骨を膨らませたその反動も大きいために温存していた“ギア(サード)”を発動したのだ。

その腕の先には“六式”の一つ“鉄塊”で防御を固めながらも吹き飛ばされたルッチの姿。

ルッチは吹き飛び――けれど運よく海には落ちず、“ためらいの橋”や支柱を取り囲みだした軍艦の甲板の上に落ちた。

 

「い、今のは!!?」

「ルフィだ!!!」

 

「“ゴムゴムのロケット”ォーーーッ!!!」

 

ルフィはルッチの後を追って飛ぶ。

その身体は“ギア(サード)”の影響でボコッと膨れている。

 

「“ゴムゴムの巨人の斧(ギガント・アックス)”!!!」

 

軍艦を踏み潰し、マストをへし折り、それでも戦いは続く。

そんな二人の戦いに対して、海軍本部“中将”の命令は常軌を逸したとも言えるもので――“麦わら”のルフィという“悪”を摘むためだけに、味方が千人は乗るその軍艦を砲撃し撃沈した。

 

「おいおいおい……あの軍艦には味方が乗ってんじゃねェのかよっ!!?」

「これが……“バスターコール”よ……!!!」

「イカれてやがるぜ……!!!」

「この状況じゃあ、簡単に“スターシップ”で脱出ってわけにも行かなそうだな……!!!」

 

ルフィの戦いの決着もついていない。

加えてスターの動きはかなり警戒されており、空に上がればまた叩き落されるだろう。

 

「これがおれが発動した“バスターコール”の力だァ!!!」

「……まだいたのかよアイツ」

 

フランキーが起き上がったスパンダムの姿に呆れたように溜息を吐く。

だが、気にしている暇はない。

 

「敵は“中将”か……」

「“大将”よりはマシだろ……たぶん」

「違えねェ」

 

『少佐以下出陣不用。大佐及び中佐のみ精鋭200名により、速やかに始末せよ』

 

海軍本部“中将”と戦う覚悟を決めるルフィを除いた麦わらの一味だったが、敵は質よりも量で押し潰す作戦を選んだ。

それと言うのも今回の“バスターコール”には、ニコ・ロビンを生きたまま捕らえるという制約があるからだ。

“中将”が本気で動けば、その戦闘規模は格段に上がる。

ロビンがウッカリ死んでしまうような事態を避けるための作戦だった。

“中将”五人より、“中佐”、“大佐”200名の方が戦闘規模が小さいと言うのだからフザケタ話である。

 

「ほ、本部“大佐”っつったら、あの“ケムリ野郎”スモーカーと同じクラスじゃねえか! あのレベルがあんなに!!?」

「おれ達にびびってる証拠だ……!」

「え!!? あれっ!!? あいつは!!? サンジは!!?」

「!!? さっきまでそこに……なんだァ!!? どこ行きやがった!!? あのバカコック!!!」

「おで!!! 動けねェよーーー!!!」

 

『――かかれ! ニコ・ロビンを奪還しろ!!!』

 

「「「「「「「!!!」」」」」」」

 

「なんだコイツら……! 当たってくれねェ!」

「気ィつけろ! 能力者もまざってるぞっ!!!」

 

第一支柱に戻ったルフィの戦いが最終局面へと入る中、残る麦わらの一味も正念場を迎えていた。

“中将”の号令により、軍艦から飛び出してくる海兵達。

それは決して雑魚ではなく、フランキーの鉄の拳による一撃を往なし、ゾロの刀を錆びらせ、ウソップの射撃を避ける。

 

「……能力を封じられたおれさまをみんなが助けてくれた!!! だから――ここはやっぱりおれさまの出番だろうが!!!」

 

スターの“スターオーラ”の“輝き”が感情に合わせて強まっていく。

 

「“大佐”如きが――今更、おれさまの邪魔をするなァッッッ!!!」

「強ェッ!!! スターの奴、マジだと本気で強ェな!!!」

 

“トリックスターボム&ビーム”が空を舞い、“スタービームソード”が数人の海兵を纏めて薙ぎ払う。

それらは“スターオーラ”の“輝き”が伝播したのか、いつもの何倍以上もの威力を生み出し――“中佐”、“大佐”と関係なく倒していく。

その状況に、戦況を見守っていた五人の“中将”が、再び腰に提げている刀に手をかけた。

 

 

第一支柱の壊れた外壁からルフィとルッチの戦いが見える。

 

「――どうした。心なしか、ハァ、その()()()()()の技のキレも落ちてるぞ」

 

その戦いが始まってからもうどれだけ経ったのか……互いに力の、技の限りを尽くして、なお決着はつかない。

 

「所詮貴様らにこのエニエス・ロビーは越えられん。そういう事だ!!! たとえこの島の形が滅んでも……!!! “世界政府”の志向を邪魔する()()()は、地の果てまで追っておれが消し去る。“闇の正義”の名の下に!!!」

「……ハァ、そこからロビンを逃がすために、おれ達は来たんだ!!!」

 

しかしルフィの攻撃は躱され、逆に“六式”の奥義である“六王銃”をカウンターでその身に受けて崩れ落ちる。

そんな状況に“ためらいの橋”の上で必死に戦っていたウソップが気づき、そげキングの仮面を投げ捨てて、ルフィの名を叫ぶ。

 

「ウソップ……!!? お前、来てたのか……!!?」

「か……勘違いすんじゃねェぞ!!! おれはスターとロビンを助けるためにここへ来たんだ!!! お前の顔なんか見に来たわけじゃねェ!!!」

 

ウソップは死にかけているルフィに対しても意地を張る。

仲間を助けるという重大な目的も達成せずに誰かに敗けるなんて、そんなふがいない船長(キャプテン)の顔になんか興味はない。

お前にできないなら代わりにおれがやってやるとルッチを挑発する。

 

「バカか!!! やめろウソップ、殺されるぞ!!!」

「黙れ!!! じゃあ死にぞこないのお前に、何かできるってのか!!?」

「コイツはおれがブッ飛ばすんだ!!!」

「だったら、すぐに立てよ!!! だったら!!! 死にそうな顔してんじゃねェよ!!! お前らしくねえじゃねェか!!! 爆炎で黒くたって空も見える!!! 海も見える……!!! ここが地獄じゃあるめェし!!! お前が死にそうな顔すんなよ!!!」

「ハァ……ハァ……!!!」

 

ルフィは床を叩き、“ギア”を発動し、無理矢理に身体を起こす。

 

「……っ!!! 心配させんじゃねェよ、チキショーーー!!!」

 

ウソップが泣きながら絶叫するその背後では、プトレマイオス・E・T・スターが五人の海軍“中将”に翻弄されながらも、ゾロなどの助けもあり、ギリギリの状況で踏ん張っていた。

ロビンがいるために攻撃の規模が抑えられている事も、その理由であるだろう。

けど理由がなんであれ生きている。

ルフィの勝利を待っている。

 

「……わかってる……ここは地獄でもなんでもねェ……!!!」

 

たとえここが地獄の穴の、その縁だとしても――。

 

「勝って!!! みんなで一緒に帰るぞ、ルフィ!!!」

「当たり前だ!!!」

 

……それでも、それでも――体術に関して言えば、ルッチはルフィの上を行く。

幼少の頃からそのためだけに鍛え上げ、13歳の頃にはすでにいくつもの過酷な任務を経験し“殺戮兵器”と呼ばれるようになった。

それからさらに15年……ルフィの年齢ともそこまで変わらないその時間の全てを“闇の正義”に捧げて生きてきた。

 

「最大輪――“六・王・銃”!!!!!」

 

必殺の一撃を受けてもなお、ルフィを立ち上がらせるものはなんなのか。

多くの思いが交錯し混じり合っても、もはや残るは意地一つ。

 

「“ゴムゴムの”――」

「! “鉄塊”!!!」

「――“JET銃乱打(ガトリング)”!!!!!」

 

ルフィはルッチが血を吐き意識を失うまで殴るのを止めず――ついには第一支柱の先程壊した壁とはまた別の壁をブチ破り、エニエス・ロビーの戦いの中で一番長く続いたその決闘に終止符を打った。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……終わった……これで……いいんだ……ハァ、すぅ~……一緒に帰るぞォ!!! スタ~~~!!!!! ロビ~~~ン!!!!!」

 

戦いの決着に一瞬の間、続くルフィの勝鬨に、再び動き出す戦場。

 

『ぜ……! 全艦へ報告!!! “CP.9”ロブ・ルッチ氏が、たった今……! 海賊“麦わらのルフィ”に!!! 敗れました~~~!!!!!』

 

ルフィの勝利に沸く麦わらの一味と、動揺する海兵達。

 

「や……やったか……ルフィ……ガフッ……!!!」

 

その中で墜ちる“輝き”の姿。

 

「スター!!!」

「スターはもう限界だ!!! “中将”五人を相手に耐えてたんだ!!! その内の一人に深手を与えただけでも上等だ!!!」

「ちょっ、ちょっと待って!!! スターが動けないんじゃ、“スターシップ”は――」

「“護送船”だ!!! そっちの海兵共はやったんだ!!! それを奪えば!!!」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

フランキーの言葉に視線をやった先で砲撃によって落ちる“護送船”の姿。

エニエス・ロビーすらも破壊する“バスターコール”が、船一隻を惜しむわけもない。

 

「なんてこった……!!! 絶望的だ!!! 他に脱出する手段なんて……いや、それ以前にそっちには戦えねェ、ココロのババー達が!!!」

「ん、なんとか無事だァ~~~っ!!!」

 

チョッパーにココロばーさんにチムニーに、その飼い猫……じゃなくてウサギの“ゴンベ”を連れて、どこかへと消えていたサンジが姿を現した。

だがその無事な姿を喜ぶ間もなく――“ためらいの橋”は次々に破壊されていき、ルフィを除く麦わらの一味は、その橋の中間点である第二支柱の上に追い詰められてしまう。

 

「くそっ、とうとう橋なんかなくなっちまった!!!」

「ここでコレ全部と戦うしか……!!!」

「バカいえ!!! ルフィもスターもなしで“中将”四人なんて相手にできるかよっ!!!」

 

『第一支柱に一斉放火!!! “麦わらのルフィ”をただちに抹殺せよ!!!』

 

先に狙われたのはルッチとの戦いで持てる力を絞りつくし、動けずにいるルフィだった。

 

「ルフィが危ねェ!!! せめてこっちに……!!!」

「スター!!!」

「くっ……」

「ダメだわ……この距離では引っ張ろうにも海に落としてしまう」

 

同じく動けないスターに、ロビンの能力にしても距離が遠く確保するには厳しい。

 

[――]

 

決闘には勝利しても、ピンチが終わらない麦わらの一味……その耳に……頭に、どこかから直接響くような声が聞こえてくる。

 

『第一支柱“麦わらのルフィ”砲撃5秒前……』

 

「海へ飛べーーー!!!!!」

 

『4秒前……』

 

「海へーーー!!!!!」

 

声は変わらずに聞こえる。

ウソップは涙を流しながらに叫び、ロビンにルフィを海に落とすように指示を出す。

麦わらの一味……九人と一羽で仲間は全て揃ったと思っていた。

けれど、忘れてはいけない大切な存在がまだ一人……ではなく一隻。

 

『3……』

 

「助かるんだ……!!! 助けに来てくれたんだ!!! まだ……おれ達には!!! 仲間がいるじゃねェか!!!」

 

それはどんな奇跡の果てなのか――その存在が現れるまでに辿った正確な道程を知る者は、いない。

だけど、そんな理由はどうでもよくて、麦わらの一味はただ喜ぶ。

 

[――帰ろう、みんな。また……冒険の海へ!!!]

 

『砲撃!!!』

 

そして砲撃が開始されても、もうそこには誰もいない。

 

「メリー号に!!! 乗り込め~~~!!!!!」

 

[迎えに来たよ!!!]

 

「「「「「「「「「メリ~~~!!!」」」」」」」」

 

ゴーイングメリー号を信じて飛び降りた麦わらの一味は、姿を消していたサンジが“正義の門”を閉める事で復活させた大渦を越えて逃げる。

同じく一味と共にエニエス・ロビーへと攻め込んだ職長やフランキー一家の者達も、海兵達が一味に気を取られている間に、エニエス・ロビーに停車したままだった海列車に乗って脱出を成功させた。

つまりは――。

 

「このケンカ!!! おれ達の勝ちだァ!!!!!」

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