輝きのスター!   作:第7サーバー

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ようやくスリラーバーク編が書き上がりました。
だけどとにかく終わらせたかったので結構良いシーンを削りすぎてしまった感も。
まぁこれでやっとシャボンディ諸島に入れるのでね。
そのうち書き直したりするかもしれませんがとりあえずはこれで。
スターとかくまとかここで激突させるわけにもいかないしまとめ辛いんじゃお前ら。


第20話・太陽をありがとう

「はーっはっはっはっはっはっ! “オーズ”!!! お前がどれだけ強かろうが、ルフィの“影”を取り込んでいようが、おれさまには絶対に勝てん!!! なぜならおれさまは飛べるからだ!!!」

 

巨人族の中でも特別巨体と言える伝説の“魔人”オーズ。

王下七武海の一人ゲッコー・モリアとドクトル・ホグバックの手によって蘇ったオーズだったが――しかし今、そのオーズが一方的にやられている。

ルフィ、ゾロ、サンジと麦わらの一味の主力三人からいきなり“影”を奪う事に成功したモリアと、ホグバックに誤算があるとすれば、まさにこの男、空を飛べるという優位性を存分に活かし戦うプトレマイオス・E・T・スターの存在であった。

 

 

時間は少し遡り――オーズ復活前。

ナミの指揮の下にびっくりゾンビを――主にスターが返り討ちにしつつ、お宝を探す先行組。

その中で見つけた隠し部屋にあった新聞記事で、使用人のシンドリーもまた、10年前に事故で死んで蘇ったゾンビである事を知る。

さらにホグバックの研究所……その中ではホグバックが死者の身体を弄り、強靱に作り直していた。

ここからゾンビが生まれるのかと、その誕生の秘密をこっそりと覗き見ていた四人。

しかし、そんな彼らの背後から掛けられる声――。

 

「ヨホホホホホ! ごきげんよう! 中の様子が見たければ、中に入ればよろしいのに!」

「……!!? ヨホホって……」

「ブ、ブルック!!?」

 

その特徴的な笑い声に少し前に出会ったガイコツの姿を思い出す四人だが、そこにいたのは肉も皮もついている誰か。

その存在によって研究所の中に斬撃の風圧で押し込まれた四人はホグバックと対峙する。

ホグバックは研究所を覗き見ていた四人に激怒――というか、そもそもの計画通りに麦わらの一味への夜討ちは始まっていると、先程の斬撃の主を嗾ける。

 

「フォスフォス……! お前らがこれまでに見たゾンビ共とは“格”が違うぞ。そいつは特別な肉体を持つ将軍(ジェネラル)ゾンビ!!! 新世界“ワノ国”から来た男!!!」

 

その男“リューマ”は――空飛ぶ竜をも斬り落としたという伝説を持つ侍のゾンビである。

リューマゾンビは着流しに下駄とワノ国の民族衣装を纏い、その腰には立派な拵えの刀を佩いていた。

そしてあまりに自然、流れる動作で刀を抜くと、カランコロンとこれまた自然に四人との間合いを詰めてくる。

 

「“ヘキサグラム・フィールド”!!!」

「!」

 

その“壁”に阻まれて、甲高い音が室内に響いた事で、スターを除く三人は、ようやく自分達が斬られるところだった事を知った。

 

「……まさか防がれるとは。さすがに億越えの賞金首ですね」

「な、なんだ、こいつ……ヤベェ……スターがいなきゃいきなり全滅してたところだ……!」

 

地面から伸びる六芒星の光の壁の中、四人はリューマゾンビの鼻唄まじりに敵を斬るような達人的な技の冴えに脅威を感じている。

一方のリューマゾンビは自分の技を防いだスターにのみ注目しているようだ。

 

「「「「「…………」」」」」

 

沈黙が場を満たす。

焦れたようにホグバックがリューマゾンビをさらに嗾けるが、リューマゾンビは動かない。

強者同士の戦いは時に一瞬で終わるというが、今回の状況はそれなのか。

スターVSリューマゾンビ……その渦中の人物であるスターは、スター故に普段は見える場所に掻かない汗を、しかし頬に一筋流した。

 

「……キャプテン」

「ど、どうしたスター!」

 

ウソップは場の静けさとその緊張感の中で突然自分が呼ばれた事に動揺しつつ、何かできる事があるならと意気込むが――。

 

「この技を発動してるとおれさまも動けねェ……! どうにかしてくれ」

「アホかーーー!!!」

 

やるべき事はスターに対するツッコミであった。

 

「……どうやらお困りのようですね」

 

不意に横合いから掛けられた声の持ち主は、見た目紳士なガイコツ、ブルック。

 

「お前――」

「ブルック……!」

「お話ならば後で。コイツの相手は私に任せて貰えませんか」

「いや、そりゃ頼みてェけどよ! コイツ、お前となんか関係あんのか!!?」

「……ハッキリと言ってしまえば、コイツは私の“影”から生まれたゾンビなのです」

「えっ……!!?」

 

そうしてブルックの口からゾンビ誕生秘話が語られるかと思われたが――やはり悠長に喋っている時間はない。

 

「好き勝手に秘密を喋るんじゃねェ!!! 侍・リューマ!!! そいつをどうにかしろ!!!」

 

ホグバックがリューマゾンビへと指示を出して、それを止めにかかった。

そして奏でられる剣戟の響き。

見ると二人の技は同じ……これがブルックの“影”から生まれたゾンビだからという事なのか。

ブルックの剣はゾロのような“豪剣”ではなく“柔剣”。

とある王国の奇襲部隊仕込みの技の冴え。

しかしリューマゾンビはその枠を超えた強靭さ(パワー)によってオリジナルであるはずのブルックを追い詰めていく。

 

「おい、押されてるぞ! このままじゃヤベェんじゃねェのか!!?」

 

その状況にスターは“ヘキサグラム・フィールド”を解除すると“トリックスター”をバラ撒いてブルックを回収、ウソップの“超煙星”の援護も受けて全員でとりあえずその場から逃げる。

状況を理解しないままに戦うよりも、状況を理解してそうなブルックから話を聞く事をまずは考えたのであった。

 

 

~~中略~~

 

 

そしてスター達は後でルフィ達も知る事になるブルックの話を聞く。

ここスリラーバークの主は“カゲカゲの実”の能力者であり王下七武海の一人であるゲッコー・モリア。

その能力で“影”を奪い、ホグバックが改造して保存している強化した死体“没人形(マリオ)”に融合させる事でゾンビとして自分の部下(しもべ)にしている。

奪われた“影”はモリアに従順になるが、その本来の持ち主と同じ“性格”と“戦闘能力”を持っており、それ以上の肉体レベルを持つ“没人形(マリオ)”に融合させれば“影”の持ち主であるオリジナルをも超える戦闘能力を発揮する。

 

「つまりお前より、あのゾンビの方が肉体レベルが上だったから苦戦してたのか」

「……ええ、その通りです。さすがは伝説の侍! 本来は“豪剣”の使い手であるはずなのに、私の技の冴えをも凌駕している! ですが、現時点では殺される事はない。それこそが私の唯一の勝機でしょう」

「殺される事がない?」

「“影”の持ち主は生きている必要があるのです。持ち主が死ねば“影”も消える。だから“影”を利用したければ持ち主を生かしておく必要がある」

「なるほど……なら仮に私たちの誰かが“影”を奪われる事態になっても逆転のチャンスはあるわけね」

「ゾンビの弱点は“塩”! 海の性質を持つ“塩”はお祓いなどで言うところの清めの効果を今回の状況でも正しく発揮する! ゾンビに“塩”を食わせれば“影”を取り戻す事ができる!」

「“塩”……」

「“影”を奪われた者は太陽の光を浴びれば消滅する身体です。普通の生活に戻る事はできず、隠れ生きる事になるでしょう。だからそれではダメなのです……どれだけ強い相手であっても私には必ず自分の“影”を取り戻さなければならない理由がある!」

 

ブルックは5年前に今回の麦わらの一味のようにスリラーバークに誘われ“影”を奪われた。

そして反抗するであろう本体は邪魔と再び海に流されたが、運よくスリラーバーグと距離が離れる前に意識を取り戻し、“影”の奪還を試みて戦うも、伝説の侍の肉体を得て自分より格上の存在となったリューマゾンビの前に敗北。

ある“約束”のために死ぬ事だけはできなかったブルックは命乞いをして再び海を彷徨う事になった。

 

「その約束ってのはなんだ? お前はその約束のためにそんな身体になっても生き続け、今もまたこうして戦ってるんだろ?」

「簡単な事です……昔、我が海賊団の仲間をある場所に置き去りにしたのです。致し方ない苦渋の別れでしたが……その場所へ“必ず帰る”と約束をして、我々は船を出しました……」

 

しかしブルックが所属していた“ルンバー海賊団”はこの海で全滅した。

ブルック一人、悪魔の実の能力で蘇ったが、約束は果たせずじまいである事には変わりがない。

だからせめてその“結果”を伝えに行かなければならない。

 

「でもちょっと待って! 約束をしたのって……」

「ええ、我々が死んだあの日から……もう50年は経つでしょうか。しかし、私になぜ……彼がもう待ってやしないと見切りをつける権利がありますか。万が一約束を信じてずっと待ってくれているとしたら……」

「……!」

「今、彼はどんなに淋しい気持ちでしょうか!!? 我々に裏切られたと思いながら、今でもずっと待ち続けているとしたら、どんなに惨めな気持ちでしょうか!!!」

「お前……」

「無責任に死んでしまった我々を、彼が許してくれるとは思いませんけど、身勝手な約束をして声も届かぬ遠い空から、死んでごめんじゃないでしょうに……!!! 男が一度……!!! 必ず帰ると言ったのだから!!!」

 

その“約束”の重さを知って黙る者達の中で、スターは何か直感するものがあったのか尋ねる。

 

「……その相手の名前は」

 

そしてブルックはそれに応えてその名前を口にした。

伝説の侍を前にして、命と共に必死に守り抜いたアフロ、彼に似てるとみんなが笑ったその面影の先に見える仲間の姿。

 

「約束の岬で再会を誓った仲間の名は――“ラブーン”」

 

「「「!!!」」」

 

東の海(イーストブルー)から偉大なる航路(グランドライン)に入った者なら覚えているその名前。

今も、変わらず“約束”が果たされる時を、仲間の帰りを信じて待ち続けている“クジラ”の名前を。

 

 

~~中略~~

 

 

ブルックの話を聞いてやる気が漲るスター達は、いろいろあったらしくルフィ達とはぐれたロビンとフランキーの二人と合流する事に成功した。

ロビンとフランキーにもブルックの事情を話して、男泣きするフランキーをよそに、現れたのは“ゴーストプリンセス・ペローナ”。

ツインテールに王冠、ゴスロリチックな服装とそれらしく纏めた彼女は、モリアの部下であり、霊体を自在に生み出す“ホロホロの実”を食べた“霊体人間”。

そして得意とする技はゴーストがすり抜けた相手の心を虚ろにする“ネガティブ・ホロウ”。

その力は超ポジティブ人間のルフィですらもネガティブにして一切の戦闘行為を放棄させるという強力なものである。

だが――。

 

「――情けない奴らだ。こんな技に心を折られるとは」

「その通りだな、キャプテン」

「えっ!!? なんでお前らネガティブになっていないんだ!!?」

 

「なんでも何も……おれは元から!!! ネガティブだぁ!!!」

 

まさかの事態に驚きの声を上げたペローナに対してウソップは本来なら情けないはずのその言葉を堂々と言ってのけた。

続いてスターもいつも通りの高笑いを上げる。

 

「はーっはっはっはっはっはっ! おれさまはスターだぞ! 世界の人々に夢や希望を与える存在だ! そんなおれさまの前に、その程度の精神攻撃は効きはしないのだっ!」

 

それは悪魔の実の相性による結果。

空島でゴム人間のルフィが雷人間のエネルの天敵になったように。

世界の誰もが見上げた先にある星――その星の力を扱えるスター人間たるプトレマイオス・E・T・スター。

彼は拗ねる事などはあっても、そもそもルフィ以上にネガティブな思考に陥る事がない。

そしてそれはルフィとは違って能力であっても同じ事なのだ。

故に彼はホロホロの実の一番の能力とも言えるネガティブ化を無効化する。

 

「そんなバカな事は……! ポジティブがネガティブを打ち破るのはともかく……! 人は……生きてる、それだけで前を向いてるハズなのに……この男……!」

 

「「「「「頑張れ!!!」」」」」

 

「励ますなおれを!!!」

 

ペローナの部下(しもべ)であるゾンビ達にも励まされてウソップはツッコミを入れる。

 

「とにかく、だ。この場はおれとスターに任せてナミ達はルフィ達を探して合流しろ! 何はともあれ、あの三人がいないと戦闘力が激減だ!」

「なんかウソップが頼もしいとウソみたいだけど、わかった……!」

 

ネガティブ状態から戻ったナミ達は頷くとその場から駆け出す。

残ったのはウソップとスター、それにペローナの三人だ。

ペローナの部下(しもべ)のゾンビ達や“クマシー”という等身大サイズのクマのぬいぐるみ型ゾンビなどもいるにはいるが、その主人であるペローナが喋ると可愛くないからという理由で喋る事を禁じているからとりあえずは無視してもいいだろう。

 

「くそっ、なんでネガティブとポジティブ、真逆な人間が平気な顔でコンビを組んでるんだ……! 普通ちょっとくらい反発し合ったりするものじゃないのか……!」

「お前らみたいに人の“影”を操って部下(しもべ)にするような奴にはわからねェかもしれねえが、本物の海賊の絆は血の繋がった家族以上に強ェもんだ!」

「そういう事だ。おれさまとキャプテンのコンビはかなり強いぞ! 降参するなら今のうちだ!」

「降参なんてするもんかよ……! 私の能力が“ネガティブ・ホロウ”だけだと思うなよ!」

 

……なんて言っていたペローナだが、最終的にはウソップのハッタリ系の技であっさりと気絶した。

まあゴキブリの玩具やらは、確かにその耐性がない者にはキツイかもしれない。

とにかく方法はどうであれ敵の幹部・三怪人の一人である“ゴーストプリンセス”に勝利したウソップとスターの二人だったが、実はその時にはすでにルフィ、ゾロ、サンジの三人がモリアによって“影”を奪われ、一時的ながらも敗北を喫していた。

さらにはナミも前に風呂場で襲ってきた透明人間こと三怪人の一人“墓場のアブサロム”によって花嫁にすると攫われ、全体の戦況で見れば、麦わらの一味はむしろ押されていた。

 

だが“影”を奪われた際の衝撃で意識を失い縛られラクガキもされたルフィ達をサニー号で発見した事で反撃の狼煙は上げられた。

 

ルフィはモリアを倒せば全て解決するとモリアに挑み。

ゾロは伝説の侍の強さに興味があるとブルックに感情移入したフランキーと共にリューマゾンビに挑み。

サンジは当然ナミを攫ったアブサロムに挑み。

チョッパーとロビンは他のみんなをサポートするつもりだったが、三怪人の一人、ドクトル・ホグバックに挑む事になる。

 

 

~~中略~~

 

 

そして再び現在……。

一足先に対峙したペローナとの戦いに決着をつけたスターはやたらと目立っていたオーズに「おれさまの許可なくおれさまより目立つな」とケンカをふっかける。

そんなスターは空を自由に飛び回る事でオーズを押していた。

しかし、時間の経過によって状況が変化する。

 

「腕が……伸びた……!!?」

 

スター達はわかっていないが、オーズ単体ではスターとの相性が悪いと見たモリアが“影革命”遠隔操作でルフィの“影”――ではなくオーズの足下にできる“影”を自分の“影”で操る事によって、通常時では無理な挙動を再現したのだ。

紙一重でその一撃を回避するも、さすがのスターも驚きを隠せない。

ルフィの技の数々はそもそもその“特性”があってこそ真価を発揮するものだ。

ゴム人間と化した巨人オーズなんて、それこそ“悪夢”のような存在だ。

 

「くそっ、冗談じゃねェぞ!!!」

 

もともと素手でありながらも巨体を活かした圧倒的な攻撃範囲を持つオーズだ。

ついでに言えばルフィの“影”で動いてるために、その俊敏性も通常の巨人の2倍はある巨体のくせにかなり高い。

スターは空を飛ぶ事でその範囲外に抜け出す事が可能であったが、そこに本来のルフィの技が加わると形勢は逆転する。

しかもそんな攻撃だから一撃喰らうだけでも大ダメージだ。

 

「ぐっ……!!?」

 

スターはその喰らってはいけない一撃をついに喰らってしまい大きく吹き飛ばされる。

それはスリラーバークの端から端に吹き飛ばすような一撃で、スターは何とか意識が残っているだけで動くのもままならない状況に陥った。

 

「て……てめェ……! ルフィ……! よくもスターを!!!」

「……おめェらなんか知らねェぞ。おれはモリア様の部下(しもべ)――オーズだ!!!」

 

その言葉に倒れたままのスターはブチッとキレる。

 

「おれさまを知らねェ……? スターであるおれさまを知らねェだと、あの野郎……!!! ハァ、ハァ、絶対に許さねェ……!!! くそっ、とっとと動けよおれさまの身体……!!!」

 

屈辱に震えながらも起き上がれないスターを置いて、オーズはルフィを除く対峙したそれぞれの相手との戦闘に決着をつけた残る麦わらの一味との戦闘を開始していた。

 

「くらえ必殺“特用油星”三連発!!!」

「おい、飛ばせ!!!」

「“空軍(アルメ・ド・レール)パワーシュート”!!!」

「――“大撃剣”!!!」

 

「をっ!!!」

 

「“百花繚乱(シエンフルール)大樹(ビッグツリー)”」

「フランキ~~~“空中歩行(スカイウォーク)”!!!」

 

「「ス~~~パ~~~“フラッパーゴング”!!!」」

 

「“反行儀(アンチマナー)キックコース”!!!」

 

一味は普段はなかなかない連携攻撃によってオーズと渡り合う。

しかしそれですら時間稼ぎはできても、体力がありすぎるオーズを倒すには至らない。

だが、その時間稼ぎによって復活する者もいる。

 

『オーーーズッッッ!!!!! おれさまを見ろーーーーーッッッ!!!!!』

 

「ん?」

 

『これが“スーパースター”であるおれさまの極限ステージだ!!!!! “サンライトステージ”!!!!!!』

 

オーズが振り返った先には“スターシップ”の上に立った“スーパースター”。

そして、この霧の深い海にはあり得てはならなかった“輝き”。

小型の太陽のようなものを作り出したスターがそれを背にして“スターマイク”を手にしていた。

 

「うっ……!!?」

 

偽物の太陽でも効果はあるのか、ルフィの“影”であるオーズは、逆光越しに見えるスターの姿に怯む。

そんなオーズに対してスターは畳み掛けるように歌い出した。

その無駄に上手い歌声はスリラーバーク中に響き渡り、オーズ――ではなく、影を奪われた本体達の方に疑似太陽によるダメージを与えた。

 

「す、スターーー!!! てめェ何やってんだーーー!!! 太陽で消えるのは影じゃなくて影を奪われた本体の方だ!!! 確かに本体が消えたら影も消えるけど、それじゃあ意味がないだろーーーが!!!」

 

『……あっ、しまった』

 

ウソップのツッコミに屈辱で我を忘れていたスターが正気に戻り、光だけはそれっぽい疑似太陽を消す。

危うく“夜明け”より前に消滅の危機を迎える事になったゾロやサンジもホッとしたのも束の間、怒りの声を上げた。

 

「しまったじゃねェよ!!!」

「おれ達を殺す気か!!!」

 

『スマーン!!! ……おれさまとした事がウッカリしてた!!!』

 

しかし。

 

「なんだもう終わりか? スゲェカッコよかったのに……あ、そうだ。サインください」

 

「「「えぇーーーっ!!?」」」

 

ルフィの“影”が性格のベースとなっているオーズには一定の効果があった……のかもしれない。

 

 

~~中略~~

 

 

麦わらの一味がオーズとの戦闘に悪戦苦闘してる中、人知れずこのスリラーバークに上陸した者がある。

その男は“暴君・バーソロミュー・くま”。

見た目も名前通りの大男であるくまは、このスリラーバークの主であるモリアと同じ王下七武海の一人であり、七武海の中で唯一政府の指示で動く男でもあった。

自分を追いかけてくるルフィやオーズと戦うスターを“影”でテキトーに相手していたモリアはそのくまの存在に気づいて屋敷内で向かい合う。

 

「用件を言え。……ここへわざわざ何しに来た」

 

同じ王下七武海とは言ってもべつに友好的な関係ではない。

だからと戦いを“影”任せにしているモリアはくまと争う気もなくとっとと本題に入る。

 

「報告事項がある。王下七武海クロコダイル降任の後……その後釜が決まった。――後継者の名は“マーシャル・D・ティーチ”。通称“黒ひげ”という男。世間では、すでにちょっとした騒ぎになっているが……霧の海には届いていまい……」

 

ティーチは懸賞金も懸かっていない海賊ではあったものの、ある“手土産”を持ってきた事でその実力を示し、王下七武海入りが認められた。

その事が麦わらの一味――特にルフィに対して因縁を生むが、それはまだ少し先の話である。

そして報告事項を終えたくまはモリアがクロコダイルのようにやられはしないかと形ばかりの心配をしたが、それがモリアの逆鱗に触れ、モリアは麦わらの一味との戦いに本腰を入れて動き出す事になった。

 

 

~~中略~~

 

 

「キシシシシ……! オーズを放置していた結果、船は流れ、図らずも清々しい夜空。ぐずぐずしてていいのか? 貴様ら……」

 

本腰を入れたモリアはいつの間にやらオーズの――ゾンビであるが故に空洞に改造された腹の中に、まるで巨大ロボットをコクピットで操縦するかのように居座って麦わらの一味と対峙する。

ようやくその姿を一味の前に見せたモリアは、ゴシック調の服に身を包んだ異様な体型の、7m近くはあろうかという、スリラーバークの主に相応しい悪魔のような容姿の大男だった。

ただオーズに乗っているためにそのサイズ感はもう滅茶苦茶である。

そんなモリアを追いかけていたはずのルフィはスカされたのかいまだにその姿を決戦の場には見せない。

 

「キシシシ! さァ、お前ら。おれと戦うチャンスをやろう。おれを倒せば全ての“影”を解放できる。全員でかかって来い!!! ――ただし、オーズを倒さねばこのおれは引きずり出せねェがな……!!!」

「……! あのヤロー、汚ェぞ!!!」

 

モリアの姿が見えても、状況は何も改善されていない。

むしろ悪化している。

モリアを倒さなければオーズを浄化できないのに、そのモリアがオーズの中に入ってしまったからだ。

何とかオーズを抑えている間にルフィがモリアを倒すというわけにはいかなくなった。

しかもモリアが本腰を入れてきたという事は、最初スターがオーズと戦っていた時のように、オーズがゴム人間の“特性”を持てるという事だ。

モリアの出現により、スターが歌った事で一時的に止まっていた戦闘が再開される。

 

「“三刀流 大・仏・斬り”!!!」

 

ゾロはエニエス・ロビーで失った刀の代わりにリューマゾンビとの斬り合いを制して手に入れた大業物21工のうちの1本“秋水”を手にモリアの屋敷の尖塔の一つをスパスパと斬り裂く。

 

「くらいやがれ!!! “ジェンガ砲”!!!」

 

特大の瓦礫の塊となった尖塔をサンジがオーズに向けて次々と蹴り飛ばす。

オーズが相手ではその規模の攻撃でなければわずかでもダメージを与える事はできない。

 

「ん~~~!!! こんにゃろォ!!!」

 

だがオーズに当たったのはその内の1、2発だけでオーズは逆にその特大の瓦礫を殴り返しカウンターで麦わらの一味を攻撃する。

 

「どわァ~~~!!! 塔が飛んでくる~~~!!!」

「しまった! 利用されちまった!」

 

「……新兵器“クワガタ”……いけ!!! “必殺・鉄人彗星”!!!」

 

そうして麦わらの一味がルフィの化け物という“悪夢”と戦っている中、その場所からは少しだけ離れた森の中で、もう一つの“悪夢”が誕生しようとしていた。

 

 

その“悪夢”の素となるのは“麦わら”のルフィ。

モリアに騙されて“影”のモリアと追いかけっこをしていたせいで、いまだに決戦の場に現れていない我らが船長。

そんなルフィの前に現れたのがモリアに“影”を奪われてスリラーバークの日陰に生きる“被害者の会”。

“被害者の会”はモリアの“影”の秘密に――その活用方法に気がついていた。

それが死体にではなく生きている人間に“影”を憑りつかせるというもの。

そうする事により“影”の戦闘力をその人間に上乗せする。

ただし並の人間ではせいぜい2、3人も上乗せすればその重圧に押し潰されて意識を失ってしまう。

しかしそこはルフィだ。

“被害者の会”がゾンビに“塩”を食わせて確保した100人分の“影”の重圧に耐え、超絶パワーアップに成功する。

 

そして今ここに“悪夢”に対抗する“悪夢”が誕生した!

 

その“悪夢”……いや、戦士の名は――“ナイトメア・ルフィ”!!! だぜ!!!

 

 

~~中略~~

 

 

ナイトメア・ルフィが到着する前に、アブサロムの悪足掻きで行方がわからなくなっていたナミや、厨房で“塩”を集めてきたブルックが先に決戦の場に合流していた。

だが、ルフィを除けば勢揃いと言える状況でありながら、巨人オーズを操る王下七武海のゲッコー・モリアの前に、麦わらの一味は一人また一人と戦闘不能に追い込まれていく。

 

「“ビッグスター”!!! セット!!! 墜ちろ――“シューティングスター”!!!」

「……“ギア(セカンド)”!」

「!」

「お、おいおいおい、まさか……!!?」

 

「“ゴムゴムの(もともと巨人(ギガント))JET(ピストル)”!!!」

 

これが“悪夢”でなければなんなのか。

本体のルフィがこれまでの戦いで強くなっていれば強くなっているほどに、ルフィの“影”で動くオーズの戦闘力も高いのだ。

しかもオーズは巨人族であるために“ギア(セカンド)”でありながら“ギア(サード)”の特性もデフォルトで持っているという反則っぷりだった。

 

「くそっ! 腹が空洞になってるゾンビのくせに血は流れてやがんのかよ!!!」

 

スターが悪態を吐くがそんな暇はない。

ギアを上げたオーズの技も俊敏性も、それまでのものから一段階進化する。

 

「“ゴムゴムの”ォ」

「ヤバイ……!」

「“(もともと巨人(ギガント))JET銃弾(ブレッド)”!!!」

 

「がっ……! “スターオーラ”越しだぞ……! ルフィ、てめ゛ェ……!」

 

スターの“覇気”、“スターオーラ”すらも突破するその攻撃に、スターは今度こそ完全に意識を失って倒れた。

 

「スターーーッッッ!!!」

「こ、こんな化け物……いったいどうすればいいのよ……」

 

ゾロもサンジもチョッパーもロビンもフランキーもブルックもやられた。

残っているのは麦わらの一味で最弱争いをしているウソップとナミの二人だけ。

この“悪夢”の前に希望は全て失われたのか?

――いや、そんな事はない。

なぜならついに決戦の場にその戦士が姿を現したからだ。

 

「おい!!! デケェの!!!」

「!」

「お前はいったいおれの仲間に何をやってくれているんだ?」

「誰だ、お前」

 

「モンキー!!! D!!! ルフィだぜ!!!」

 

「「る、ルフィ~~~!!?」」

 

ウソップもナミも一瞬それがルフィだとは信じられなかった。

なぜなら今のルフィは身体が通常の3倍くらい大きくなり、髪は逆立ち、目は縁取られ、背中に巨大な刀を背負うという普段の姿からはだいぶかけ離れた容姿になっていたからだ。

ついでにいろいろ混ざったせいなのか喋り方もちょっとおかしい。

 

「……あいつ、変身能力もあったのか!!? それとも……ふん!!! 構わねェ、潰せ!!!」

「勿論だ!!! “ゴムゴムの”」

 

「き、来た! わかってんだろうが、アレがお前の“影”が入ったゾンビだ、ルフィ!!! さらに身体もゴムみてェに伸びてお前の技を使ってくる!!!」

 

「“(もともと巨人(ギガント))JET回転弾(ライフル)”!!!」

 

強烈な一撃。

それこそ通常のルフィのそれよりも強力だろうその攻撃を、しかしルフィは片手でピタリと止めた。

 

「ルフィはおれ一人だぜ!!!」

 

しかもそれだけではなく――。

 

「猛進っ!!! “猪鍋シュート”!!!」

 

「蹴り!!?」

「っていうかあの蹴り……!」

 

「まだだぜ!!! ……“一刀流”!!! “飛竜火焔”!!!」

 

「今度は刀ァ!!?」

「ルフィに何が起こってるの!!?」

 

ルフィはオーズを強烈な跳び蹴りで吹き飛ばすと、そのまま空中へと飛び上がり背中に背負っていた刀を抜いて、オーズを斬った。

斬り口が発火したオーズはじたばたとその場を転がって火を消す。

 

「くそ! “麦わら”のどこにこんな力が……!!?」

 

モリアも驚くルフィの変貌の理由。

それは当然ナイトメア化した事にあるが、その際にルフィは知らずゾロとサンジの“影”もその身に取り込んでいたのであった。

モリアがそれまでに集めた強者の“影”だけでは100人分あっても、ギア化したオーズには敵わなかったかもしれないが、そこにゾロやサンジが加わっていれば話は別だ。

今のルフィは確実にオーズよりも格上の存在になっていた。

その証拠に――。

 

「ハァ……このヤロー……ち、チビのくせにィ!!! ハァ……」

 

散々に麦わらの一味を痛めつけたあのオーズが次から次へと繰り出されるナイトメア・ルフィの一人連携技によって満身創痍の体になっている。

 

「これで終わりだぜ!!! “ゴムゴムの”!!! “暴風雨(ストーム)”!!!!!」

 

トドメの一撃――いや、実際に何撃入れているのかはわからないが、最後はやはり自分の技とばかりにナイトメア・ルフィはオーズを、その腹の中にいるモリアごと、その技名通りに滅多打ちにしてKOした。

それとほぼ同時にナイトメア・ルフィにも約10分間という制限時間が来て、その身体から“影”が抜けていく。

 

「た、倒した……!!!」

 

「「「「「オーズとモリアを倒したァ~~~ッッッ!!!」」」」」

 

ナイトメア・ルフィとオーズの戦闘の間にウソップとナミに合流して、軽く事情説明もしていた“被害者の会”が一斉に歓声を上げてルフィの勝利を称えた。

 

……だが、忘れてはならない事が一つある。

 

オーズを動かしているのは、あのルフィの“影”なのだ。

ルフィが一度倒れて、それで終わった戦闘がこれまでにあっただろうか。

どんな状況にあっても、どれほど強大な敵を相手にしていても、最後には起き上がって、そして勝利を掴み取る。

それが“麦わら”のルフィという男であったはずだ。

 

故にオーズは、()()()()のようにゆらりと立ち上がった。

 

「痛くもカユくもねェ……!」

 

見るからにボロボロの姿、だからそれはやせ我慢であるはずだ。

しかしオーズが痛覚のないゾンビであるという事もあって、まるで攻撃が効いていなかったかのようにも錯覚してしまう。

 

とはいえ、そのオーズの敵こそがオリジナル――本体のルフィとその一味だ。

 

戦いの終わり、勝負どころの気配を無意識で感じとったのか、それこそゾンビのように順番に起き上がり麦わらの一味はそれぞれの配置につく。

 

「特別だ。おれさまより目立つ事を許してやる」

 

「“ゴムゴムの”ォ……!!! “巨人の星(ギガントスター)バズーカ”!!!!!」

 

ルフィはスターの星の推進力も得た“バズーカ”によってオーズの顔面を潰し、さらには一味の連携によってオーズの伸びきった背骨を粉々に砕き壊した。

オーズの巨体が大きな音を立てて仰向けに倒れる。

 

「!!? 痛くねェのに……動かねェ……!」

 

いくらゾンビであろうと身体が動かなければ何もできない。

問答無用の戦闘不能状態だ。

それにより、今度こそオーズとの戦闘が終わった。

 

「「「「「勝ったーーーっ!!! 今度こそやってくれた~~~っ!!!」」」」」

 

「喜んでる場合か! もう夜が明ける! 早くお前らの“影”を取り戻せ!!! 全員消滅しちまうぞ!!!」

「“影”……そうだ! 急がにゃあ」

「さァ、モリアを叩き起こして“影”を返してもらうのよ!!! 朝日は、もうそこまで来てる!!!」

 

“被害者の会”が知っている“影”を本来の持ち主に戻す方法は“影”の支配者であるモリアに「本来の主人の元へ帰れ」と言わせる事であった。

何せスリラーバークにゾンビは無数にいて、どこに自分の“影”があるかわからない者がほとんどなのだ。

 

「……!!! 起こすにゃあ及ばねえ……!!!」

「モリア……!!!」

「め、目を覚ましたならちょうどいいわ! さァ……む、麦わら達にまたブチのめされたくなかったら!!! 私達の“影”を全部解放しなさい!!!」

 

“被害者の会”の代表である“求婚のローラ”の脅しに、しかしモリアはキシシと嗤う。

 

「ガキのケンカじゃあるめェし……!!! 本物の海賊には“死”すら脅しにならねェ……おめェら“森の負け犬”共が関わっていたとは……“麦わら”の過剰なパワーアップの謎が解けた……!!!」

 

自分の能力を利用された忌々しさにモリアはルフィを睨みつける。

 

「ハァ……“麦わら”ァ、てめェ、よくもおれのスリラーバークを……ハァ……ここまで滅茶苦茶にしてくれたな……!!!」

「お前がおれ達の航海を邪魔するからだろ!!! 日が差す前に早く“影”を返せ!!!」

「航海を続けても、てめェらの力量じゃ死ぬだけだ……“新世界”には遠く及ばねェ……!!! なかなか筋のいい部下も揃っているようだが、全て失う!!! ハァ、なぜだかわかるか!!?」

「……?」

 

モリアはその日の“悪夢”にいまだに苛まれているかのように虚ろな表情で捲し立てる。

 

「おれは体験から答えを出した。大きく名を馳せた有能な部下達をなぜ、おれは失ったのか……!!! 仲間なんざ()()()()()()失うんだ!!! 全員が初めから死んでいるゾンビなら、何も失う物はねェ!!!」

 

“新世界”とは、王下七武海の地位にいる者ですら、そこまでの敗北を経験する海だというのか。

その場所を知るモリアは麦わらの一味の未来を予言する。

 

「ゾンビなら不死身で!!! 浄化しても代えのきく無限の兵士!!! おれは、この死者の軍団で再び“海賊王”の座を狙う!!! てめェらは“影”でおれの部下になる事を幸せに思え!!!」

 

そう叫んだモリアは“影の集合地(シャドーズ・アスガルド)”という大技でスリラーバーク中の“影”を自分へと集める。

先のナイトメア・ルフィと同じ要領でモリアは自分の戦闘力を強化していく。

 

その数――200……300……600……700……1000!!!

 

オーズを圧倒したナイトメア・ルフィの10倍の“影”をその身体に取り込んだモリアは、オーズ並の巨体へと膨れ上がり異形の化け物として麦わらの一味の前に立ち塞がった。

 

「“悪夢”を見たきゃ勝手に見てろ!!! モリア!!! おれはお前に付き合う気はねェ!!!」

 

 

~~中略~~

 

 

モリアは確かに島を割るほどの力を手に入れていたが、それは怒りとプライドからなる無茶なものであったらしく、制御ができずに暴走状態になっていた。

だからこれは時間稼ぎであり悪足掻き。

夜明けがくるまで耐えて、“影”を奪われたルフィ達が勝手に消滅するのを待つだけの勝負とも言えないものであった。

というか勝敗はすでに決しているのだ。

 

消滅が先か自滅が先か……出る杭の勢いを、新世代の突き上げを、必死に叩き潰そうとするモリアだが、その杭はゴムでできているために潰れない。

 

「“麦わら”ァ~~~っ!!! オェ……てめェ……ハァ……ハァ……!!! ……!!! 行ってみるがいい……!!! 本物の“悪夢”は“新世界”にある……!!! あァあああああああ!!!!!」

 

モリアの口から取り込んだ“影”が抜けていく。

完全に制御を手放したために、“影”の支配権は本来の持ち主に戻る。

しかしまさにその瞬間に夜明けは訪れる。

麦わらの一味の、その場に残っていた“影”を奪われた者達の上半身が昇る太陽の眩しい日差しによって消し飛んだ。

 

そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい……生きてるかーーー!!! みんなァ!!!」

 

スリラーバークでの戦いは、一人元気なルフィと、一人意識の戻らないゾロという結果を残して終わりを告げた。

 

 

~~中略~~

 

 

「――やっぱり、何か、あったんじゃないかな。おれ達が倒れている間に」

 

ゾロの治療を担当したチョッパーはいまだに意識の戻らないゾロの姿に嘆息しながら自分の考えを口にした。

 

「……」

「確かに()()()が何もせずに帰ったとは思えないものね」

「ルフィが異常に元気なのもおかしいよなー」

「そればっかりはおれもわかんねェ。なははは」

 

あの戦いの決着に思いを馳せる。

太陽の光によって消滅しかけた身体は“影”が戻った事で元通りに復活した。

その時にはモリアとの戦闘に全力を尽くしたルフィの意識はなくなっていたので、その先の出来事は完全に知らない。

ただ他の者達は満身創痍の身でありながら、その男と邂逅した。

知らずスリラーバークに存在していたもう一人の七武海“暴君”くまに。

それからの記憶は段階的だ。

例えばスターは“暴君”の手にかかってそのギリギリ繋ぎ止めていた意識を真っ先に刈り取られた。

そのためにスターの記憶はそこで止まる。

次に狙われたのはゾロ。

くまは一味に懸けられた賞金額の順番で標的を決めているようだった。

その戦いの中でくまが“ニキュニキュの実”を食べた“肉球人間”だという事がわかった。

その癒し系な響きとは裏腹に、あらゆるものをその肉球で弾く事ができるというくまは、大気を光速で弾き大気の爆弾を作るという戦闘方法をとり、ゾロだけでなくその場にいる全員が標的となった。

ルフィの首を差し出せば他の者達は生かしてやるというくまの言葉を全員が拒絶し、そこで大半の者の記憶が止まる。

残ったのはゾロとサンジくらいのものだ。

だが、サンジはゾロに気絶させられたのでその結末を知らない。

気絶する前にはルフィの首の身代わりとして自分の首を差し出す事で見逃してもらえるように競うようにして頼んでいたがはたして。

結果として、一人元気なルフィと、一人意識の戻らないゾロという状況が生まれた。

そうなった理由はわからない。

意識を取り戻したサンジは血塗れのゾロに事情を聴いたがゾロは「なにもなかった」とだけ言うとその意識を失い、それ以降まだ目覚めていないからだ。

 

「おい! お前ら二人! さっき何か知ってるような事言ってなかったか? 何見たんだ?」

 

「ヤボな事聞くな」

「みんな無事で……何よりだ」

 

ルフィは何やらそんな事を言っていた“被害者の会”に身を寄せていた二人に尋ねたが、その二人もどういう心境の変化なのかそれだけ言って背中を向けた。

だからやはり理由はわからない。

ただゾロはきっとその身体を張って一味を守り抜いたのだろう。

ならその結果に対して、宴をしてもいいはずだ。

全員ちゃんと生きているのだから。

 

 

~~中略~~

 

 

「……なァ、ラブーンの事だけどさ」

「はい、本当に驚きました。まさか本当にまだ私達の事を待ってくれているなんて」

 

ブルックはその話を聞いた時に散々泣いたというのにまた瞳を――いや、瞳はないのだが、潤ませたのか涙をこぼした。

 

「ああ、だから、おれさまがすぐに連れて行ってやろうか?」

「え……」

「まぁ、すぐにって言ってもそれなりに時間はかかるが、普通に航海するよりはずっと早ェ」

 

スターなら“スターシップ”で単純に逆走するよりも早くラブーンの待つ双子岬へと戻る事ができる。

ブルックはその突然の提案に、しばしその動きを止めていたが、やがてゆっくりと首を振った。

 

「……いえ。いいです」

「なぜ?」

「だって、あなた達はこの偉大なる海(グランドライン)を一周して、またラブーンに会いに行くのでしょう? なら、私も……私にも海賊の意地があります! 壁に向かって待つ彼とは、約束通り“正面”から再会したい!!!」

 

これ以上待たせてしまう事を申し訳なく思う気持ちは当然あった。

しかしできる事なら思い出話を、仲間達が全滅したという悲しいそれを持ち帰るだけでなく、あの偉大なる航路(グランドライン)を制覇したのだという輝くものを持ち帰り、高らかに歌い聴かせてやりたい。

今、自分が生きている事に喜びを感じているブルックはそう思ったのだった。

 

「あ、私仲間になってもいいですか?」

「おう、いいぞ!」

 

スターの隣でその決意を聞いていたルフィはそんなブルックの言葉に最初に誘った時と同じ軽さで答えた。

 

「「「「「さらっと!!! 入った~~~!!!」」」」」

 

これにてスリラーバークでの冒険はおしまい。

偉大なる航路(グランドライン)を制覇してラブーンにその思い出話を持ち帰るという夢を持った見た目紳士なガイコツ“音楽家”ブルックを仲間に加えて、船は魚人島の玄関口であり、多くの運命が交わり動き出す地、シャボンディ諸島へ。

 

 

[手配書更新]

 

“鼻唄”のブルック:3300万ベリー。




これで次は超新星達の出番ですかね?
まぁ原作でもローくらいしかまだ活躍してないのでどれくらいの出番かはわかりませんが。
でも次にいつ投稿できるのか。
さすがに今回みたいな時間は掛からないと思いますけどね。
2年後はともかくとして頂上戦争までは書き上げたいんだけどなー。
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