輝きのスター!   作:第7サーバー

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今回天竜人とかも出るわけですが、正直存在がウザすぎてほぼ出番をカットしてしまいました。
実際にはそのウザさを書いた上でぶっ飛ばした方がいいんでしょうけどね。
そのウザさを知ってる人はそのままで、知らなくて知りたい人は原作を読んでください。
それはそうと超新星達の魅力を描ききれない。
人数もそうだし、オリジナルでもっと絡ませる展開にするべきだったかなー。


第21話・伝説とシャボン玉

スリラーバークを出航してから数日……麦わらの一味は偉大なる航路(グランドライン)へと入る際に越えてきた“赤い土の大陸(レッドライン)”を再び見る事になった。

赤い土の大陸(レッドライン)”は世界を縦断している大陸なので、これで偉大なる航路(グランドライン)も半分進んだ事になる。

事情もスタートラインも違う一味だが、その雄大な壁にそれぞれ感慨にふける。

だが、それでもまだ半分だ。

 

「世界を、もう半周した場所でこの場所をもう一度見る事になる。……その時は、おれは海賊王だ!!!」

「おれぁ大剣豪」

「私の世界地図もだいぶ完成してるわね」

「おれは勇敢なる海の戦士だ!」

「当然おれさまは世界一の有名人(スター)になっているだろうな!」

「“オールブルー”も見つかってるはずさ」

「お、おれも今よりずっと立派な医者になるぞ!」

「“空白の100年”……隠された歴史の謎も解明しているのかしら」

偉大なる航路(グランドライン)を制覇したならおれの夢も叶ってる事になるな」

「ヨホホホホ! 私もそうしたらようやくラブーンとの“約束”を果たせますね!」

 

「しししし! ――さァ!!! 行くぞ野郎共!!! 目指すは“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”だ!!!」

 

 

~~中略~~

 

 

決意を新たにした麦わらの一味だったが、肝心の“赤い土の大陸(レッドライン)”を越える路、魚人島への行き方がわからず、周辺を調査する事になった。

頼りの“記録指針(ログポース)”は空島の時とは真逆でここに来てからずっと真下を指している。

そんな中、海の海獣“海兎”に食べられ消化されかかっていた人魚の“ケイミー”とケイミーのペットで師匠だという喋るヒトデ“パッパグ”を偶然助ける形になった。

ちょっとおかしな肩書だが、実はパッパグは“クリミナル”というブランドのデザイナーであり、ケイミーはデザイナー志望であるからそうなったらしい。

あとはハマグリをくれるからだそうだ。

 

「クリミナル? 聞いた事あるわ。っていうか私も持ってるわね。そのブランドのTシャツ。星形のロゴが入ってて、着るとスターが歌のリクエストだなとかうるさいからあまり着てないけど」

「つーか、おめーなんで喋るんだ?」

「おいおいルフィ、そんなのその姿を見ればわかるだろ。おれさまのファンだからだよ!」

「え~っ! スタースゲェな!」

「そうなのか?」

「……」

 

本当は自分を人間だと思っていた勢いで喋れるようになったパッパグだったが、パッパグはスターを前に衝撃を受けていた。

新進気鋭のデザイナーとしての嗅覚に加え、ヒトデであるために星形の身体をしているせいかパッパグはスターの圧倒的なスター性を他の者達よりも敏感に感じ取っており、頭の中で素早く計算を始める。

 

「お、おい、お前! うちのブランドの“専属スター”にならないか!!? 報酬ならいくらでも出すぜ!!!」

「“専属スター”? 心惹かれる響きだが、おれさまは麦わらの一味に所属してるしなぁ……」

「ストーーーップ!!! やるわ! だけど、そこからの話はこの“マネージャー”を通してもらおうかしら! 特に報酬に関してじっくり……」

「おい、ナミ……」

「あんたは黙ってなさいスター!!! 大丈夫悪いようにはしないから!」

「目がベリーな時点で全然信用できないんだが……」

 

パッパグのスカウトに対して、なぜか伊達メガネを掛けたナミが“航海士兼マネージャー”に就任する運びとなった。

肝心のスターをよそに、何やら黒い話し合いが行われている。

 

「キャプテン。おれさまの“プロデューサー”はキャプテンだろ。あれは放っておいていいのか?」

「うーむ。よし任せろスター。おれが話をつけてきてやる」

 

スターの肩を叩くと、頼もしい足取りでその話し合いに加わるウソップ。

だが――。

 

「いや、だからスターの意思をだな……えっ!!? そ、そんなにか!!? …………いや、でも………それは……(ごにょごにょ)」

 

「キャプテン?」

 

「……スター、よく聞け。厳正なる話し合いの結果、お前は“専属スター”をやるべきだという結論が出た」

「え」

「いいか? これはチャンスなんだ。お前の名前を世界中に知らしめるための!!! どれだけ才能があってもチャンスに恵まれない人間もいる中で、お前は目の前に現れたそれを迷わず掴み取るべきなんだ!!! 金だとかそういう話じゃねェんだよ!!!」

「キャプテン……目がベリーになってるぞ」

 

「「…………」」

 

「ピュヒー、ピュピュー。と、とにかく、後の事はおれやマネージャーのナミに任せておけ!!! おれ達の力で必ずお前を“世界一の有名人(スター)”にしてやる!!!」

「いや、おれさまは自分の実力でそうなるつもりなんだが……」

「大丈夫だ。ちゃんとわかってるからよ。売り出し方を少しばかり変えるだけだ。最後にものを言うのは結局お前の実力だ! おれを信じろスター!!!」

「……なるほど。了解だキャプテン。それならここはキャプテンに任せる」

 

頷くスターにウソップとナミはガッツポーズを取る。

 

「でも、海賊を“専属スター”になんてしてもいいの?」

「そこはおれの腕の見せ所ってやつよ。なんにしてもあの身体から溢れんばかりのスター性を持つ男を、見逃す手はねェぜ。これはドデカイ金が動くぞケイミー!」

 

そうしてスターはクリミナルブランドの“専属スター”になった。

いくらクリミナルと冠しているブランドとはいえ、本物の海賊を雇っていいのかという問題はともかく。

さらにはスターにしてもあまり状況を理解していないものの、これはその業界の中では歴史的な出会いとして長く語られる事になるのだが……それはまた別の話。

 

 

~~中略~~

 

 

ケイミーに魚人島への行き方を聞こうとしたところで、ケイミーの“電伝虫”に連絡が入り、友達の“はっちん”が攫われた事を知った一味は流れでそのはっちんを助けに行く事にした。

しかしそのはっちんとはかつてナミの故郷を支配していた“アーロン一味”の元幹部であるタコの魚人の“はっちゃん”の事であった。

はっちゃんはアーロン達が海軍に捕まった中で一人様々な困難を乗り越えて脱走してきたらしい。

そんなはっちゃんはアーロン一味の中にあって、仲間達に流されていただけで無害と言える性格をしていたので、ナミの許しが出て、そのまま救出するために人攫い屋の“トビウオライダーズ”と戦う事に。

 

「ある日突然おれを地獄のどん底へと突き落としやがったその男!!! ……おれは今日ここで……!!! たとえ刺し違えようとも、……必ずお前を殺す!!! 海賊“黒足”のサンジ!!! 会いたがったぬらべっちゃ……」

 

なぜかサンジに怨嗟の念を向けるトビウオライダーズのヘッド“鉄仮面のデュバル”は奇跡の顔面を持つ男だった。

まるで呪われたような落書き顔で手配された“黒足”のサンジ、デュバルのその鉄仮面の下の顔は、その手配書の似顔絵とウリ二つの顔をしていたのだ。

そのために海賊ですらないのにサンジに間違われて海軍や賞金稼ぎに命を狙われる日々。

もともと田舎のマフィアではあったものの、レベル違いの敵に狙われるようになったせいで、その仕事もできなくなり、仕方なく鉄仮面を被り、人攫い屋として生きるようになった。

聞くも涙、語るも涙の悲劇の物語である。

そんなサンジとの因縁も、サンジが“整形(パラージュ)ショット”でデュバルの顔面を骨格から変える事で“人生バラ色ライダーズ”のヘッドになったデュバルに、逆に恩人としてありがたがられるようになって決着。

 

はっちゃんも無事に救出する事ができたので、今はタコ焼き屋をやっているというはっちゃんの、お礼のタコ焼きを食べながら、麦わらの一味は魚人島へ行くために必要な準備をするために、一路シャボンディ諸島へと向かうのだった。

 

 

さて、諸島などと言ってはいるが、シャボンディ諸島は厳密には島ではない。

世界一巨大なマングローブ“ヤルキマン・マングローブ”という樹の集まりなのだ。

79本の樹の島からなるそれぞれに町や施設があって、それらをまとめてシャボンディ諸島と呼ぶ。

“ヤルキマン・マングローブ”は縞々の樹で、それぞれの樹にはわかりやすく○番GRなどと数字が地区番号として割り振られている。

特徴的なのは、その根っこから特殊な天然樹脂が分泌されており、樹が呼吸をする時にその樹脂が空気を取り込みまるでシャボン玉のように空に上がっていく事だ。

そのためにシャボンディ諸島には多くのシャボン玉が常に浮かんでいて幻想的な光景を作り出していた。

そして麦わらの一味の次の目的地であった魚人島に行くためにもまた、そのシャボン玉を利用して船をコーティングする事が必要となってくるらしい。

ちなみに島ではないために“記録指針(ログポース)”の記録(ログ)が書き換えられる事はないので停泊する事に問題はなかった。

 

 

41番GRにサニー号を停泊させた麦わらの一味はシャボンディ諸島へと上陸する。

その上陸の際に一味は、はっちゃんからこの島に関する注意事項として“世界貴族”には何があっても手を出さないようにと教えられる。

 

世界貴族――別名を“天竜人”。

 

天竜人はこの世界の支配者であり、決して逆らう事は許されない存在だ。

というのも800年前に“世界政府”を作りあげた二十人の王達の末裔こそが天竜人であるからだ。

故に“創造主”である天竜人を傷つけると、海軍本部の“大将”が軍を率いてやってくる。

それはつまり、あの“バスターコール”以上とも言える戦力が差し向けられる事に他ならない。

だから逆らえる者などそうそう居るはずもないのだが、そこは権力に屈しない麦わらの一味なので“くれぐれも”とはっちゃんは念を押した。

 

まぁそれはともかく……今回の留守番はウソップ、サンジ、フランキーの三人に決まったので、それ以外の者達は、各々の考えでシャボンディ諸島を回る。

 

その中でスター。

スターは初めこそルフィ達と一緒に行動していたのだが、スターとしての“勘”に導かれ、一人33番GRへ。

そんな30番台GRは“シャボンディパーク”という遊園地や、それに関連する施設で構成されており、知ればすぐにルフィ達も来たがるだろうが、一足先にその場へとやってきたスターは、楽しげな乗り物類は全て無視してとある建物の前に立った。

 

その建物“ライブ会場・シャボンドーム”。

 

パーク内のイベントステージであり、パークの人気とも相まって連日大盛況の場所だ。

そのドームの前の立て看板に“飛び入り参加歓迎!”の文字。

まぁ、だからとドームのステージに誰でも立てると問題なので、その下に但し書きとして“くだらないステージをした者は屈強な警備員に叩き出された上で参加料100万ベリー頂きます”と書かれていた。

 

「なるほど……これは間違いなくおれさまに対する挑戦。いわゆる“スターチャレンジ”だな」

 

実際そういう趣旨のイベントではある。

スターが見てる立て看板には“キミもスターになるチャンス!”とかデフォルメされた遊園地のマスコットであろう存在の口からふきだしによる煽り文句が一緒に描かれていた。

 

「ふふふっ、はーっはっはっはっはっはっ! おれさまを誰だと思ってる! おれさまはプトレマイオス・E・T・スターだぞ! さて……それじゃあ、一つ“伝説”になってくるとしようか!!!」

 

そして――スターはその宣言通りに“伝説”となった。

先のクリミナルブランドの経緯よろしく、この事もシャボンドームにおける“伝説のライブ”として長く語られる事になるのだが……それもまた別の話。

 

 

~~中略~~

 

 

スターが“伝説”になっていた頃、ショッピングモールに買い物に行ったナミとロビンの二人とも別れたルフィ達は、当初の予定通り船をコーティングするための“コーティング職人”がいるというBARに来ていた。

そこに着くまでに件の天竜人の姿を見たり、ルフィの首に懸かった億越えの賞金を狙った賞金稼ぎ達を返り討ちにしたりしていたが、そこら辺は割愛。

そうして辿り着いた店の名は“シャッキー'S ぼったくりBAR”。

ボッたくる気を前面に押し出したそのBARではっちゃんに紹介されたのは、40年前に海賊をやっていたという元海賊で女店主の“シャクヤク”こと“シャッキー”。

ルフィ達はそんな年齢には見えないスレンダーな体型を維持したシャッキーにコーティング職人について聞くが、ここ半年ほど帰って来てはいないとの事だった。

その代わりに情報通だというシャッキーに、現在のシャボンディ諸島の状況を教えてもらう。

 

「私の情報網によると、キミ達が上陸した事で、現在このシャボンディ諸島には……12人! “億”を超える賞金首がいるわ。モンキーちゃんとロロノアちゃん、プトレマイオスちゃんを除いて――」

「スターはスターって呼ばないと怒るぞ」

「……スターちゃんを除いても9人いるって事ね」

「そんなにィ~~~!!?」

 

チョッパーがシャッキーの言葉に驚くが、それはある意味で必然の出来事であった。

偉大なる航路(グランドライン)には全部で7本の航路があるが、この先の“新世界”に向かうためには、どうあっても“赤い土の大陸(レッドライン)”を越える必要があるので、その準備をするために他の航路を越えた海賊達も全部この諸島に集まるのだ。

 

「懸賞金で言えば……その中でキミはNO.2よ」

「ルフィより上がいんのか!!? この島に……!!?」

「ウフフフ……情報は武器よ。ライバルの名前くらい知っておいたら? ただ……少数でありながらも“億”超えを三人抱えている麦わらの一味への注目度は高いわね。そうじゃなくてもあっちこっちでやらかして来たみたいじゃない」

 

 

[手配書更新]

 

    カポネ・“ギャング”ベッジ:1億3800万ベリー。

  “大喰らい”ジュエリー・ボニー:1億4000万ベリー。

   “魔術師”バジル・ホーキンス:2億4900万ベリー。

  ユースタス“キャプテン”キッド:3億1500万ベリー。

 “海鳴り”スクラッチメン・アプー:1億9800万ベリー。

      “赤旗”(ディエス)・ドレーク:2億2200万ベリー。

         “怪僧”ウルージ:1億800万ベリー。

        “殺戮武人”キラー:1億6200万ベリー。

“死の外科医”トラファルガー・ロー:2億ベリー。

 

 

シャッキーはあまり興味のなさそうなルフィにそこまでの説明はしなかったが、これにルフィ、ゾロ、スター、そして王下七武海入りした“黒ひげ”を合わせた十三人が“超新星”と言われる新世代の海賊達であった。

 

「この中の誰かが、次世代の海賊達を引っ張っていく存在になるかもね。いずれにしろこれだけのルーキーがなだれ込めば、“新世界”もタダでは済まないでしょうね」

「まーおれは、とりあえず楽しけりゃいいや。――でも、そんな荒れた町にいるって心配だな。職人のおっさん」

「ウチの人なら大丈夫よ」

 

ルフィの言葉にシャッキーはタバコをふかしながら、軽く笑った。

 

「ボーヤ達の100倍強いから」

 

 

~~中略~~

 

 

シャッキーがそう言うのも当然の事だ。

何せルフィ達が探すコーティング職人とは“海賊王の右腕・冥王・シルバーズ・レイリー”その人だったのだから。

しかしそのレイリー、ウェーブの掛かった白髪に丸メガネ、視力はあるようだが右目の傷と口髭が特徴の、矍鑠とした人の良さそうな老人なのだが、偉大なる航路(グランドライン)を制した船の船員(クルー)なだけあって豪放な性格をしているようだった。

というのも、どこに行ったのかと思ってみれば、なんとギャンブルで負けて“人間屋(ヒューマンショップ)”が開催する奴隷オークションに身売りをしていたのだ。

ちなみにその身売りも店から金を盗むためのものだったらしい。

そんな海賊王をよく知る男との出会い、それはルフィ達がレイリーを探すと言いながら、やはり向かったシャボンディパークで人魚のケイミーが攫われた事から端を発した。

 

だが、そもそもなぜケイミーは攫われたのだろうか。

実は先のはっちゃんを救出した出来事にしても“人攫い屋”達の本来の標的はケイミーであった。

もともと魚人や人魚は200年前に世界政府が魚人島への交友を発表するまで“魚類”と分類されていて、魚であるから人権はなく迫害や差別の対象となっており、このシャボンディ諸島ではまだその“悪い歴史”が残っていた。

それだけではなく、実はシャボンディ諸島は人身売買もいまだに文化として黙認されている場所なのである。

故に海賊とはまた別の無法者も多い。

基本的には海賊のような“悪人”が奴隷として取引されるのだが、“悪い歴史”が残っているために魚人や人魚は“悪人”でなくても売られ、そしてその中で容姿の整った者が多い人魚は総じて高額で取引される。

そんなだから人魚であるというだけでケイミーはこの島では狙われる立場で、しかしルフィ達の誘惑を断れず、子供の頃からの夢だった遊園地で遊んでいたために、絶好の獲物とばかりに“人攫い屋”達に狙われ、まんまと攫われてしまったというわけだ。

 

けれどルフィ達がそんな事を許すわけがない。

同じく遊園地にいたスターと他の場所にいる一味にも“電伝虫”で連絡を取り、ケイミー大捜索網を張る。

その捜索には元同職種である“人生バラ色ライダーズ”も恩人となったサンジの協力要請で動き、見事にその場所の当たりをつけた。

 

その場所こそがレイリーもいるショボンディ諸島1番GR“人間(ヒューマン)オークション”の会場であり、その出会いへと繋がっていったのだ。

 

 

「ヴォゲァア!!?」

 

ルフィの拳がその男に突き刺さると、それまで騒がしかった会場がその()()()()()事態に沈黙した。

 

「悪い。お前ら……コイツ殴ったら海軍の“大将”が軍艦引っ張ってくんだって……」

「はーっはっはっはっはっはっ! ……関係ないな。おれさまのファンを金で取引しようなんて奴らはぶん殴られて当然だ」

「お前がぶっ飛ばしたせいで……斬り損ねた……」

 

その場所に辿り着いたルフィは、ケイミーを買おうとした上に魚人であるというだけではっちゃんを撃った男を――。

下々の者と同じ空気を吸いたくないという理由で、この島特有のシャボン玉を使い、宇宙服のような恰好をしている天竜人の一人、鼻炎なのか常に鼻水を垂らしている“チャルロス聖”を問答無用でぶん殴った。

そして巻き起こる大混乱。

 

「海軍“大将”と軍艦を呼べ!!! 目にものを見せてやれ!!!」

「ちっ……文句があるならお前で来いよ。それとも、おれさまから行ってやろうか!」

「な、ま、待てェ!!? ――ぶべっ!!!」

 

先程こそルフィに後れをとったが、スターはそう言ってチャルロス聖の父親であり、チャルロス聖が殴られた事に激怒する“ロズワード聖”との距離を詰めるとこちらも躊躇なくぶん殴る。

 

「ふふん、スターなおれさまはロックな行動もお手のものだ」

 

はっちゃんが“くれぐれも”手を出してはいけないと言った天竜人。

麦わらの一味はそのはっちゃんが手を出された事で、相手がどんな人物であるかなど関係なく、いつものようにケンカを売った。

 

「ふふ……面白れェもん見せてもらったよ。麦わら屋一味」

「何だお前……何だ、そのクマ」

 

混乱する会場の中でルフィに話しかけてきたのはぶち模様の入った白い毛皮の帽子を被ったシャツとジーンズのラフな格好をした細身の男。

ドクロのようなニコマークのようなプリントが入ったシャツから覗く腕や手には刺青が彫られており、この状況でも動じずにいるクールな姿からはただ者ではないという雰囲気が現れている。

だがそれも当然だ。

その男こそ、十三人の“超新星”の一人、“死の外科医”トラファルガー・ローであるのだから。

しかし、ルフィが気になるのは、そのローと一緒にいるつなぎを着た白熊の方らしい。

その白熊はローが船長を務める“ハートの海賊団”の航海士で“ベポ”。

人語を喋り、武術も嗜むが、チョッパーと同じ経緯を辿りでもしたのか懸賞金はたった500ベリーだったりする。

 

「まさか天竜人をなんの躊躇もなくぶっ飛ばすとはな。オークションが始まる前からこの会場を取り囲んでいる海軍の奴らも、この事態には泡を食っている事だろう」

「えェ!!? 海軍はもう来てんのか!!?」

「ああ……誰を捕まえたかったのかは知らねェがな」

 

この“人間(ヒューマン)オークション”の会場にはルフィ、ゾロ、スター、そしてローの四人の他に後二人の“超新星”が存在していた。

海軍の目的はその誰か、あるいは全員なのか?

それとも……。

しかしこの場所にはそんな今はまだルーキーである彼らよりもよほど大物――ここでようやくその名前と姿を現す“海賊王の右腕・冥王”シルバーズ・レイリーもいるのである。

 

「その()()()()()は……精悍な男によく似合う……! 会いたかったぞ。モンキー・D・ルフィ」

 

伝説を知り、自身もまた伝説として語られる男、シルバーズ・レイリーは懐かしいものを見るような目でルフィにそう告げた。

 

 

~~中略~~

 

 

かつて海で遭難しているところをはっちゃんに助けられて以来の仲だと言うレイリーは、現れただけでその場を一気に支配した。

ルフィ達や“超新星”の海賊一味などを残して、会場中の衛兵達を指一本触れる事もなく全て一瞬にして気絶させる。

ビリビリとした空気が肌に痛い。

 

「悪かったな()()()……見物の海賊だったか……今のを難なく持ち堪えるとは、半端者ではなさそうだな」

「――まさか、こんな大物にここで出会うとは……」

「“冥王”シルバーズ・レイリー……!!! 間違いねェ、なぜ、こんなところに伝説の男が……」

 

レイリーは会場に残るローの一味と、残る二人の“超新星”、逆立つ赤い髪にゴーグル、黒いロングコートに身を包んだルフィよりも高い懸賞金が懸けられた男ユースタス“キャプテン”キッドとその海賊団の戦闘員であるキラー達に注目する。

 

「――この島じゃ、コーティング屋の“レイさん”で通っている……。下手にその名を呼んでくれるな。もはや老兵……平穏に暮らしたいのだよ」

 

そう嘯くレイリーの言葉を遮るように会場の外からは大音声が聴こえてきた。

 

『犯人は速やかにロズワード一家を解放しなさい!!! 直“大将”が到着する。早々に降伏する事を勧める。――どうなっても知らんぞ!!! ルーキー共!!!』

 

「おれ達は巻き込まれるどころか……完全に共犯者扱いだな」

「“麦わら”のルフィとその一味の噂通りのイカレ具合を見れたんだ。文句はねェが……“大将”と今ぶつかるのはゴメンだ……!」

 

「あー、私はさっきのような“力”はもう使わんのでキミら頼むぞ。海軍に正体がバレては住みづらい」

 

「長引くだけ兵が増える。先に行かせてもらうぞ。――もののついでだ。お前ら助けてやるよ! 表の掃除はしといてやるから安心しな」

 

そう言って会場を後にしようとするキッドの、上から目線のその言葉にルフィとローがカチンとキレる。

今は同格とされている“超新星”同士、その格付けはすでに始まっている。

いずれ自分達の夢に立ち塞がりそうなライバルの存在に、それぞれ海賊団を率いる立場の三人の“船長”は譲る事のできない意地を張る。

 

「出てきたぞ!!! 構えろ!!! ――あれは三人共“船長”だ……!!! 先陣切って出てきやがった!!! 右から“3億”、“3億1500万”、“2億”……!!!」

 

「お前ら……下がってていいぞ」

「お前ら二人に下がってろと言ったんだ」

「もう一度おれに命令したらお前から消すぞ。ユースタス屋」

 

並び立つ三人の“船長(キャプテン)”。

ルフィ以外の二人も何がしかの能力者のようで、陣形を組んで待ち構えていた海軍の大砲も簡単に無効化した。

 

「――だが、一番目立つのはおれさまだ!!! こればっかりはルフィにも譲れねェ!!!」

 

並び立つ三人の“船長”達――のその上空。

 

「あーっ!!! スター、ずるいぞ!!! お前、空を飛べるからって!!!」

 

「空飛ぶ船……コイツの仲間か」

「……スター屋。麦わら屋の一味の懸賞金NO.2だったな」

 

そこにはいつの間にか、目立ちたがりのその男が、“スターシップ”の上にステージよろしく立っていた。

その周囲には無数の星“トリックスターボム”が浮かび、会場を取り囲む海軍の陣形を壊していく。

 

「ど、どう対処すればいんだこんな奴ら!!?」

「怯むな!!! 何とか“大将・黄猿”到着まで持ち堪えろ!!!」

 

「――そんなに待ってられるかよ」

 

ローが“ROOM”と呟くと、円系の薄い膜のようなものが張られたフィールドが生まれる。

そしてそのフィールドの中は全てローの間合いだとでも言うのか、手にした大太刀をその場で振るうだけで離れた海兵達の身体がスパスパと斬れた。

しかし不思議な事に、その海兵達の身体からは血の一滴すらも出ておらず、戦闘不能である事には違いないが、胴が斬り離されたり、生首の状態になってすらも変わらず喋るし動いている。

 

「この腕は巨人族の腕だ」

「ひ、怯むな、武器を構えろ!!! 必ずスキはある!!!」

 

ローから少し離れた場所ではルフィが“ギア(サード)”を発動し、腕を巨大化させる。

 

「大佐!!! ――しかし武器が!!! 飛んでいきます!!!」

 

その言葉通りルフィに向けられるはずだった海兵達の武器は引き寄せられるようにキッドの腕に。

いや、それだけではなくあちらこちらから武器がキッドの腕に集まっていく。

そしてキッドはルフィの腕にも劣らず巨大な鋼鉄の腕を作り出した。

 

「「「「「う、うわぁ~~~~~~~ッッッ!!?」」」」」

 

“超新星”達は止まらない。

残るそれぞれの一味も会場から現れ、この場での形勢は完全に喫した。

 

「来たな。もう向こうに作戦なんかねェ。後は……大乱闘だ……!!! ――それじゃあな“麦わら”……! お前に一目会えてよかった……次に会った時は容赦しねェ……!」

 

キッドがそう言うとルフィは“にぃっ”と笑った。

 

「……ふーん、でも“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”はおれが見つけるぞ」

 

「「!」」

 

「おれ達の通ってきた航路じゃあ、そんな事口にした奴は大口開けて笑われたモンだ。その度におれは……笑った奴らを皆殺しにしてきたがな……! ――だが、この先は……それを口にする度胸のねェ奴が死ぬ海だ……! ――“新世界”で会おうぜ」

 

ルフィの宣言に対して、同じ夢を持つキッドは競うに足る存在だと認めたのか、目指すべき場所の名前を口にして去って行く。

 

「…………」

 

ローもまたキッドとは別の方向へと。

どんな運命の悪戯か一つの場所に集った三人の“船長”は、それぞれの道へと歩き出す。

しかし彼らが目指すものが同じであるのならば、再び交わる時は来るのだろう。

その時はきっとそう遠い未来ではない……。

 

 

~~中略~~

 

 

「え~~~~~~~!!? 海賊王の船にィ~~~~~~~!!?」

 

「ああ。副船長をやっていたシルバーズ・レイリーだ。よろしくな」

 

「「「副船長~~~~~~~!!?」」」

 

人間(ヒューマン)オークション”会場から“シャッキー'S ぼったくりBAR”へと無事に戻ってくる事ができた麦わらの一味は、レイリーの自己紹介に驚愕の声を上げた。

 

それから少しして場が落ち着きを取り戻した頃……サンジがある疑問を投げかける。

 

「しかしよ、ゴールド・ロジャーは22年前に処刑されたのに、副船長のあんたは打ち首にならなかったのか……? 一味は海軍に捕まったんだろう?」

 

そもそも偉大なる航路(グランドライン)を制した、最強の海賊とも言える海賊王がなぜ22年前に海軍に捕らえられ処刑されたのか。

そんな歴史の謎が今、当事者であったレイリーの口から語られていく……。

 

「捕まったのではない……ロジャーは自首したのだ……」

 

それは海軍の勝利、海軍の大手柄からなるものではなかった。

ロジャーは処刑から遡ること4年前……つまり26年前に不治の病に罹ったのだという。

自分に終わりが来る事を知ったロジャーは、誰にも治せないその病に苦しみながらも、唯一その症状を和らげる腕を持っていた、今は双子岬でラブーンを見守りながら灯台守をやっている医者“クロッカス”を“船医”として仲間に加え――。

 

その“最後の航海”において、達成は不可能だと思われていた偉大なる航路(グランドライン)の制覇を成し遂げたのだ……。

 

「ク……ク……クロッカスさん!!?」

「そういえば……数年“船医”をやったって言ってた。じゃあ、その3年間海賊をやってたのね!」

「キミらが会ったという事は……まだ元気でやっとるか! クジラを可愛がっていて……クロッカスは何やら……探したい海賊団がいると乗船を承諾してくれたのだが」

「ブルック! それ完璧におめェらを探しに海に出たんじゃねェかよ!」

「ク……クロッカスさん……! そんな事までして……!」

 

そして――。

 

『おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやるぜ……探してみろ。この世の全てをそこに置いてきた』

 

海賊王と呼ばれるようになったロジャーは、己の先のない未来に一計を案じて自首。

その処刑の場において海賊王がにやりと笑って遺した言葉は世界を変えた。

海賊王の仲間達は“船長命令”で解散し、バラバラとなっていたが、世の中は“大海賊時代”となり――海賊王の遺した宝“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を求めて、野望ある者達は海に生きる事を決めた。

 

「残り数秒、僅かに灯った“命の火”を、奴は世界に燃え広がる“業火”に変えた。あの日ほど笑った夜はない……! あの日ほど泣いた夜も……酒を飲んだ夜もない……! 我が船長ながら……見事な人生だった……!!!」

 

「「「…………!!!」」」

 

「なんかスゴイ話、聞いちゃったみたい……。当事者から聞くとまた別の話みたい」

「じゃあ……まるで、この“海賊時代”は意図してロジャーが作ったみてェだな」

 

「……ふふふっ、はーっはっはっはっはっはっ! それくらいでないとおれさまが困る! ただ死んだ男の人気を超えるだけじゃつまらねェ……! これは間違いなく次は“大スター時代”が来るな……ははっ!」

 

「コイツはコイツでぶれねェな……」

「スターらしいけどね」

 

「ははは、それでいいのだよ。今の時代を作れるのは、今を生きている人間だけだ……!」

 

その後ルフィの恩人である“シャンクス”や東の海(イーストブルー)で争った“バギー”も海賊王の船で見習いをやっていた事を麦わらの一味は知った。

 

「――さて、状況も状況。船のコーティングの依頼だったな。私も今の本職を果たすとしよう……」

 

そうして酒を置き立ち上がったレイリーをロビンが呼びとめる。

 

「レイリーさん、質問が……! “Dの意思”っていったい何……?」

「……!」

「空島で見た“歴史の本文(ポーネグリフ)”に古代文字を使って、ロジャーの文字が刻まれていた。彼はなぜあの文字を操れたの……!!?」

 

「何の話だ?」

「さァ」

 

「……あなた達は900年前に始まる“空白の100年”に、世界に何が起きたかを知ってるの!!?」

 

事情のわからぬ麦わらの一味の中で必死な表情で問うロビンに対して、レイリーは少しの沈黙の後に頷いた。

 

「ああ。知っている……我々は……歴史の全てを知った……」

 

こんなにも突然に自分の望む答えを持つ者の出現にロビンの心臓は高鳴った。

しかし、レイリーはそんなロビンに対して諭すように喋る。

 

「――だが、お嬢さん、慌ててはいけない……。キミ達の船で……一歩ずつ進みなさい。我々もまた……“オハラ”もまた……少々急ぎすぎたのかもしれん……」

「!」

「キミ達に今ここで……歴史の全てを話しても、今のキミらには何もできやしない……! ゆっくりと世界を見渡して、その後に導き出す答えが我々と同じであるとも限らない……! ――それでも、聞きたいと言うのなら、この世界の全てを、今、話そう」

 

「……いいえ、やめておくわ。旅を続ける」

 

その真実を手にするためだけに生きてきたはずのロビンは、しかしその機会を前にして、首を振った。

“いつか必ずその瞬間は訪れる”。

レイリーの言葉に、仲間を信じられるその心が、今は真実よりも大事だった。

 

「何だいいのか!!? ロビン! 今なんかすげェチャンスを逃したんじゃねェか!!?」

「……」

「あの、おっさん! おれも1コだけ聞きてェんだけど! “ひとつなぎの大秘宝”――“ワンピース”ってのは本当に、最後の島に……」

 

「ウソップ~~~~~~~っ!!!!!」

 

それまでぼけーっと話を聞いていたルフィがウソップの質問に対して怒声を上げて、その言葉を遮る。

 

「宝がどこにあるかなんて聞きたくねェ!!! 宝があるかないかだって聞きたくねェ!!! 何もわかんねェけど、みんなそうやって命懸けで海に出てんだよっ!!! ここでおっさんから何か教えてもらうなら、おれは海賊やめる」

 

「「「!!?」」」

 

「つまらねェ冒険なら、おれはしねェ!!!!!」

 

本気で怒っているルフィの姿にウソップはバタバタと手を振って謝った。

 

「わわわ……悪かった! わかってたんだけど、口が勝手に今……滑ってよ!!! お……おれだって聞きたくねェよ! そうだ、おれ! “ワンピースについて知ったら死ぬ病”だったァ!!! おい、おっさん、何も喋んじゃねェぞ!!!」

 

そのやり取りに僅かに口角を上げたレイリーが尋ねる。

 

「やれるかキミに……“偉大なる航路(グランドライン)”は、まだまだキミらの想像を遥かに凌ぐぞ! 敵も強い。キミにこの強固な海を支配できるか!!?」

 

「! 支配なんかしねェよ。この海で一番自由な奴が海賊王だ!!!」

 

「……そうか」

「やっぱり私モンキーちゃんのファンだわ」

 

今度こそはっきりと微笑みを浮かべるレイリーに、女店主のシャッキーも笑顔でそんな事を口にする。

そしてその言葉に引っかかるスターが一人。

 

「ちょっと待て……。他は概ねルフィに同意してもいいが、ファンになるならおれさまのファンになるべきだ! たとえ、過去だろうと未来だろうと、これからのおれさまの人気に――“海賊王”は敵わない!!!」

「あら」

「ふふふ、キミの仲間もまたおもしろいな」

「おう。スターは世界一の有名人(スター)になる男だからな。おれも負けてられねェ」

 

「なんだお前ら……それは間違いなくおれさまに対してステージのリクエストだな。今日はすでに一つ大きな仕事をこなしたが、まぁいいだろう。本当のスターは求められたらいつでも全力を尽くすもの!」

 

「じゃあ、私はショッピングにでも……」

「ほのぼの人生(ライフ)か、お前ら!!! おれ達は追われてんだよ!!! 天竜人をぶん殴ったのを忘れたか!!! 身を隠すんだよ!!! アホめ!!!」

 

「おい、ナミ、おれさまのステージを見ないでショッピングとはどういう事だ」

「いいじゃないの。スターのステージはいつでも見れるんだから」

 

「――人のツッコミを無視してそこで言い争うな!!!」

 

「ステージはしないのか。では私は41番GRでキミ達の船を見て来よう。とはいえ、私もフダツキだ。実際の作業はどこかへ移動してすると思う。シャッキー、あれがあったろ」

「ええ。一枚あるわよ」

「いやいや、ステージはするぞ。すぐに準備を――」

「だからお前はいったん黙れスター! 話が全然進まねェ!」

 

ステージをしたくて騒ぐスターとそれを止めようとするウソップをよそに、レイリーはルフィ達に“ビブルカード”をちぎって渡す。

“ビブルカード”とは“新世界”にある店で、自分の爪の切れ端を混ぜて作る特殊な紙の事で、一部をちぎって床などに置くと、“親紙”の方に向かって動く。

それによってその持ち主がいる方角がわかるというアイテムだ。

別名“命の紙”とも呼ばれ、その持ち主の生命力と連動していて、持ち主が弱ると“ビブルカード”も小さくなっていくという“不思議紙”だ。

ちなみに、少し前の話になるが、アラバスタでエースがルフィに渡した紙もこの“ビブルカード”である。

 

「コーティング作業には3日貰おう。命を預かる作業だ、それが最速。私はその時何番GRにいるかわからんが、その“ビブルカード”の導く先で、コーティングを済ませ、キミ達を待っている。魚人島への海中航海に備え、必要な物を買っておくといいだろう」

 

 

~~中略~~

 

 

レイリーとした約束から、3日間という時間を潰さなくてはならなくなった麦わらの一味だったが、“人間(ヒューマン)オークション”の一件によって、海軍の手はすぐそこまで迫っていた。

すでにシャボンディ諸島のあちらこちらで“億超えルーキーズ”と海軍“大将”を始めとした海軍との戦いが始まっている。

そしてそれは麦わらの一味のところでも……。

 

「さがれ!!! ルフィ!!! そいつは七武海の一人だ!!!」

 

麦わらの一味の下に現れた追手は、スリラーバークで遭遇した“暴君”くまであった。

あの時は満身創痍の身ではあったものの、一味を戦闘不能に追い込んだ強敵だ。

 

「ビーム!!?」

「おれさまのパクリか!」

 

一味は“ニキュニキュの実”による大気の衝撃波を警戒していたのだが、くまは掌からビームを撃ち出して攻撃してきた。

 

「気をつけろ、スターのより貫通力がある……!」

「な、何ィ~~~!!?」

 

スターがその事実に憤っているが、それよりもなぜスリラーバークの時と攻撃手段が違うのか。

敵対しているのだから、喋らないのはともかくとしても、雰囲気もだいぶ違う。

何より、一味にはわかるはずもない事だったが、他の“億超えルーキーズ”の下にもくまは現れていた。

 

「ハァ……ハァ……そんなに違うのか……!!? ハァ……じゃ、あいつ双子なんじゃねェか……!!?」

「それも考えられる……!」

「肉球がないし、あのビーム……フランキーと同じ“改造人間”……だが、それならそれで問題だ。こんなに強ェのが二人もいるって事になる……!」

 

「たとえ別人でも、無関係ではないんだろ! だったら、前回のお返しだ!」

 

「三刀流……」

「“ゴムゴムの”」

「“悪魔風(ディアブル)”」

 

「「「「“羊肉(ムートン)JET六百煩悩攻城星砲(スターキャノン)”!!!!!」」」」

 

一味はかなりの消耗をしながらも、くまのような存在を倒す事に成功した。

しかし、その事に対して安堵するのも束の間。

 

「オイオイ……何て無様な姿だ“PX-4”……! てめェら“パシフィスタ”を一人造るために軍艦一隻分の費用を投入してんだぜ!」

 

新たな敵が新たなくまのような存在を引き連れて現れる。

 

「うわぁ~~~!!? またいるぞ~~~!!! 七武海!!!」

「も……もしかして、あれが本物か!!?」

「本物だろうが偽物だろうが、七武海もどきとの連戦なんてやってられるか……! ハァ……!」

 

くまのような存在の事を“平和主義者(パシフィスタ)”と呼ぶ男は、おかっぱ頭で腹当て、巨大な鉞を担いだかなり特徴的な格好をしていた。

 

「……おい! いきなり現れやがって、名前くらい名乗ったらどうだ!」

「何も答える筋合いはねェな。わいは世界一ガードの堅い男。“戦桃丸”だ。したがって口も堅いんだ」

「戦桃丸だな……」

「あ、今のはわいが自発的に教えたんだぜ。てめェらの質問には答えねェ。――始めるぞ、“PX-1”!!!」

 

戦桃丸の号令で、PX-1と呼ばれたくまのような存在の掌からビームが射出され、一味を襲う。

 

「おいおい、こんな何人いるかもわからないような奴、イチイチ全部戦ってられないぜ!」

「ああ……ハァ……ハァ……ここは逃げよう!!!」

 

ルフィの言葉にスターが“スターシップ”を出す。

しかし――。

 

「「「!!?」」」

 

「……“スターシップ”が!!?」

 

“スターシップ”はどこかから飛んできたビームに貫かれて爆散した。

 

「誰だ!!? おれさまの“スターシップ”を!!!」

「……ん~~~、空に逃げられると厄介だからねェ~~~」

 

そして麦わらの一味の前に現れた男。

縦縞のスーツにサングラス、“正義”の二文字を背負う海軍コートを羽織ったその男こそ、あの青キジとタメを張る実力者、海軍“大将”の黄猿であった。

 

「ったく、遅ェんだよ! やっと来たか、黄猿のオジキ……」

「!!! 黄猿……!!? ――気をつけて!!! その男海軍“大将”よ!!!」

 

「――“大将”!!!」

 

「オジキ、他のルーキーは始末してきたのか?」

「何人かは戦闘不能にしたんだけどねェ~~~、君から連絡があったから、その後の事は知らないねェ~~~。何もなければ捕まえてると思うけどねェ~~~」

 

ルフィ達と同格とされる海賊をすでに数人倒してきたと黄猿は何でもない事のように軽く言う。

 

「ぐっ……!」

 

それが事実である事を証明するかのように、そんな軽口の中で向けられた指先から放たれたビームに貫かれ、黄猿が現れた場所のそばに運悪くいたゾロがどさりとその場に倒れこんだ。

 

「ゾロ!!!」

「あいつもビームを……!」

「くそっ、やっぱりあの野郎、まだ身体が……!」

 

「一発KOとはずいぶん疲れが溜まってたんだねェ。ゆっくり休むといいよォ~~~」

 

「危ねェ!!! ゾロが危ねェ!!!」

 

「ちくしょう!!! なんでだ当たらねェ!!!」

「刺さりもしません!!! ちょっと、どうしたら……!!!」

 

指先だけではないのか光る足をゾロに向ける黄猿に対して、ウソップとブルックがその行動を阻害しようと攻撃するも、その全てがすり抜けていく。

 

「ムダだねェ……わっしは“ピカピカの実”の……“光人間”だからね」

 

海軍“大将”の黄猿もまた自然系(ロギア)の能力者であった。

そうであるなら、これまでの自然系(ロギア)の能力者達と同じく通常の方法ではダメージを与える事はできない。

 

「“スーパースター”に不可能はねェ!!!」

 

だから、この状況で唯一対抗できるのはこのスターだけであった。

スターは“スピードスター”によって、一気に黄猿との距離を詰めるとその勢いのままに黄猿を吹き飛ばした。

 

「おっとォ~~~、麦わらの一味にも“覇気”使いがいたのかい」

「“スターオーラ”だ!!!」

「でもムダだよォ~~~。そうだとわかってればねェ~~~……ヒヨっ子に不可能を教えてあげるよォ~~~」

「やってみろ!!!」

 

黄猿はスターの一撃を受けた腕を軽く振ると、指先をスターに向ける。

当然のようにそこからはビームが射出されるが、スターは指先を向けられた瞬間にはその射線から外れておりビームを避ける。

攻守逆転、スターは黄猿のビームを避けた勢いそのままに“スタービームソード”で斬りかかり――黄猿はその攻撃をマトモに身体で受けた。

 

「!!?」

 

ズブリとスターの剣が黄猿の身体を貫いているにも拘らず、そこからは血の一滴も流れない。

それは自然系(ロギア)特有の攻撃の無効化現象に他ならなかった。

 

「な、なんでだよ……さっきはスターの攻撃が当たってじゃねェか!!! なんでスターの攻撃もおれ達みてェに当たらなくなっちまったんだ!!?」

「そんなの決まってるよォ~~~、これが“格”の違いだよ。“覇気”は万能技なんかじゃないのさァ~~~。同じく“覇気”を纏った“格上”の相手の“特性”は無効化できない。“新世界”の常識なんだねェ~~~」

「おれさまの“スターオーラ”がお前より劣ってるだと……!!?」

「そういう事だねェ~~~」

「冗談じゃねェ!!!」

 

「そうだよォ~~~。冗談なんかじゃなく、ここで死ぬのさァ~~~。懸賞金1億7777万7777ベリー“輝き”のプトレマイオス・E・T・スター」

 

それでもスターは善戦したのだろうか。

光の速さの攻撃手段を持つ黄猿を相手に数十秒……その援軍が到着するまでの時間を稼いだのだから。

 

「――……あんたの出る幕かい。“冥王”レイリー……!!!」

「若い芽を摘むんじゃない。これから始まるのだよ! 彼らの時代は……!!!」

 

異常を感じて、引き返してきたレイリーによって、危うく摘み取られる寸前だったスターの命は守られた。

だが――。

 

「全員!!! 逃げる事だけ考えろ!!! 今のおれ達じゃあこいつらには勝てねェ!!!」

 

レイリーが黄猿を抑えてくれても、戦桃丸にPX-1と敵は残っている。

 

「ハァ……くそっ……この状態じゃ、“スターシップ”は出せねェ……! ハァ……!」

 

黄猿に壊された“スターシップ”を再び完全な状態で出すためには相応の体力がいる。

黄猿との戦闘で消耗した今のスターでは、出す事ができなかった。

 

「くそォ!!! みんな、やられる……!!!」

 

スリラーバークの一件でまだ傷が治りきっていないゾロ。

先の黄猿による一撃も重い。

そのフォローをしようとして、サンジとブルックも無理をして倒れ込んだ。

ルフィは“ゴム人間”という特性を“覇気”で無効化してダメージを与えてくる戦桃丸との戦いだけで手一杯だ。

 

「やめろよ、お前ら~~~!!!」

 

チョッパーはそんな状況に自分の形態変化の制御をする“ランブルボール”を過剰服用する事によって、エニエス・ロビーで行ったモンスター化に望みを託した。

 

「ブォオオオオオオオッッッ!!!」

 

「チョッパーの奴……! またアレを……! サンジ、ブルック、立て!!! ハァ……! ここを離れるんだ早く! ……またビームが来るぞ!!!」

 

ウソップが必死な表情で二人を起こそうとするが、その前にはもう一人くまのような存在……いや、くま。

 

「待て……PX-1」

「喋った!」

「どうなってんだよ!!! もうイヤだ~~~!!! 何人いるんだよコイツら!!!」

 

喋るくまはそれまでのパシフィスタと呼ばれる者達とは威圧感が違う。

ゾロはそれを“本物”だと断定して、立つ事すらままならない身体でその前に出る。

 

「生きていたのか、ロロノア」

「お前の……慈悲のおかげでな……」

 

くまはグローブを外し、くま似の者達にはない肉球を出した。

 

「旅行するなら、どこへ行きたい……?」

 

ぱっ。

 

それは本当に瞬きするような一瞬の出来事だった。

くまがゾロに触れたのか、その次の瞬間にはゾロの姿がその場からなくなっていた。

 

「え……はっ!!? ゾロ……!!? ……??? ゾロ!!?」

「ゾロが……消えた……!!! てめェ、ゾロにいったい何しやがったァ!!! 今……たった今、目の前にいたのに……!!!」

 

「バーソロミュー・くまァ……! 七武海は“例の件”で本部に召集を受けているはず……! これだから“海賊”は信用ならねェよォ~~~……!」

「……!!! 向こうもカバーしたいが……」

 

「ゾロ~~~!!! どこ行ったんだァ~~~!!!」

 

「弾かれただけだ!!! ――しっかりしろ、ルフィ!!! ゾロは死んでねェ!!! 高速でこの場所から弾き飛ばされただけだっ!!!」

「ほ、本当かスター!!?」

「おれさまの“スターアイ”がばっちりと捉えた! 間違いねェ!」

「そ、そうか! よかった……!」

「――って、全然よくないわよっ! 結局状況は全然改善してないじゃないっ! 飛ばされた先が海軍基地や海の上だったら、どっちにしても全滅よっ!」

 

「とにかく全員ここから逃げろ!!! 後は助かってから考えろォ!!!」

 

だが、ゾロのように対象を消すだけでなく、自分まで瞬間移動のように現れては消えるを繰り返すくまの前に麦わらの一味は、一人、また一人と消されていく……。

 

「くそ……!!! 何やってんだおれは……!!! ハァ……目の前で仲間を……!!!」

 

ぱっ。

 

「…………何だよ。どうしたら……!」

 

次々と進行していく事態に、さすがにルフィの口からも弱気が漏れる。

 

「お前~~~!!! おれさまの前で勝手な事ばかり!!! 泣いて頼んでも、もうファンにしてやらねェぞ!!!」

 

「スター! 待ってろ! 今おれが援護して――」

「――危ねェ、キャプテン!」

「えっ、」

 

ぱっ。

 

「キャプテン!!! ~~~くそォ、しくった……! ――ルフィ!!! みんなはおれさまの能力で必ず集めてみせる!!! 約束だ!!!」

 

ぱっ。

 

「…………ああ゛っ!!! 信じでるっ゛!!!」

 

ぱっ。

 

そうして、全てはまるでシャボン玉のように儚く弾け。

 

 

偉大なる航路(グランドライン) シャボンディ諸島・12番GR――。

 

この日、船長モンキー・D・ルフィ率いる海賊団“麦わらの一味”は――完全崩壊を喫した……。




ちょっと長かったですかね。
2話に分けようかとも思ったけど、なんかこのサブタイで行きたかったので。

それはともかく次回。
まさかのSTRONG WORLD編はっじまるよー!!!
(ルフィ抜きで) ←ルフィはインペルダウン。

……まさかってほどではないかな?
スターはインペルダウン編には乱入しません! (ドン!!!) まぁあくまで予定ですけどね。
ルフィ抜きでちゃんと盛り上げられるかどうかが問題ですよね。
基本的にはルフィの代わりをスターがやる事になると思うのだけど……どうかなー。
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