輝きのスター!   作:第7サーバー

22 / 23
はい、STRONG WORLD編です。
今回はルフィがいないしオリ要素もちょくちょく入ります。
ただ、出てくるキャラ自体は、設定を弄ったりはしてても完全にオリジナルというのはいません。
ちなみに今回は導入回となってます。
それでは、ルフィが女ヶ島やインペルダウンで戦ってる間の一味の奮闘話をどぞー。

あ、STRONG WORLDのパンフが行方不明なので、設定とか間違ってる可能性があります。
なので、そういう場面があった場合は、この作品の設定という事でよろしくお願いします。


第22話・過去からの刺客

船長モンキー・D・ルフィ率いる海賊団“麦わらの一味”の敗北……。

それは彼らを知る者からすれば衝撃的な出来事であろうが、世間も“海軍本部”もその意識は、それ所ではない“別件”に向けられていた。

 

それが“白ひげ”海賊団2番隊隊長、ポートガス・D・エースの“公開処刑”である。

 

“新世界”で覇権を争う“四皇”の一人であり、かつて海賊王とも渡り合っていた“白ひげ”は、仲間の死を決して許さぬ男として知られている。

仲間に手を出した相手には必ず落とし前をつけさせる。

そんな“白ひげ”の、それも隊長格を処刑するという発表は、海軍本部の“白ひげ”海賊団に対する宣戦布告に等しかった。

 

故にそこから予想される未来はたった一つしかない。

海軍“大将”に七武海、そして“四皇”が入り乱れる総力戦――“頂上戦争”、だ。

 

まだ誰も見た事のない大きな波が、新時代へと続く時代のうねりが、誰の目の前にもはっきりとその姿を現そうとしている……。

 

――その中で我々が注目するべきは、やはりルフィとエースの繋がりだろう。

“兄弟”という名の強い絆。

普段はその絆がある故に無条件に相手の無事を信じているが、いざそれが失われるかもしれない状況を突きつけられたらルフィがどう動くか。

それはこれまでのルフィの行動を見ていれば簡単にわかるはずだ。

 

事実、“麦わら”のモンキー・D・ルフィは、兄であるポートガス・D・エースを助けるために、前代未聞の“大監獄・インペルダウン”への潜入を決めた。

 

海賊にとっては入れば二度と出ては来られない終わりの地、絶望を形にしたその場所へ自分から入るという、およそ常人には思いつかない暴挙。

そもそもが、歴史上、インペルダウンから脱獄に成功した者なんて――。

 

……いや、一人いる?

 

そう……エースを脱獄させようとルフィが潜入するより20年も早く、“鉄壁”の監獄から脱獄に成功した一人の海賊がいた。

“白ひげ”と同じく海賊王世代の生き残り。

その男の20年越しの野望が、この“頂上戦争”を間近に控えた最悪のタイミングで動き出す……。

 

 

そして、その戦いに巻き込まれるのは、例によって“麦わら”のモンキー・D・ルフィ――を()()()、まさかの“船長”不在の海賊団“麦わらの一味”であった……。

 

 

 

 

 

【ONE PIECE ☆ 輝きのスター! ☆ STRONG WORLD】

 

 

 

 

 

――空は快晴。

昼間なのに流れる星の上で再会を喜び合うのは、“船長”とした“約束”を果たすために仲間探しに奔走する、その星の持ち主、プトレマイオス・E・T・スター。

そして彼が最初に発見したもう一人のキャプテンこと、長鼻が特徴の“狙撃主兼プロデューサー”ウソップの二人だった。

 

「いやー、スター、助かったぜ! にしてもよくおれのいる場所がわかったな!」

 

ウソップは嬉しそうにバシバシとスターの背中を叩いている。

海に咲く一輪の花のような島、“ボーイン列島”という場所にある森の中を一人彷徨っていたウソップは、空から現れた“スターシップ”に一も二もなく飛び乗った。

 

「“ラッキースター”反応を“スターシップ”のレーダーで確認したんだ」

「なんだよそれ」

 

尋ねるウソップにスターは普段は使ってない操縦桿の側にある丸い画面を指差した。

見るとその画面には星形の光点がいくつか点滅している。

 

「その反応がある場所にはおれさまの求めるものがある確率が高いんだ」

「へえ! ちなみにその確率ってのはどれくらいなんだ?」

「なんと50%だ!」

「ただの運じゃねェか!!!」

 

自信に満ちたスターの返答にウソップのツッコミが冴える。

 

「いや、確かに求めるものが“ある”か“ない”かだけでみれば50%だが、だいたいの場所がわかるんだから運だけじゃない。“スターパワー”の賜物だ」

「ああなるほど……って納得していいのかおれ。それでこの星が点滅してる場所に他の連中がいるって事か?」

「その可能性が高い。実際キャプテンは見つかった」

 

あの後……くまに飛ばされ、月のような場所で目覚めたスターは、その周囲を探索する事もなく、戻った体力によって“スターシップ”を出すと、一直線に海を目指した。

それからはレーダーに従って、見事二つ目の光点でウソップを発見した。

 

「二つ目ってやっぱり運……いや、場所の当たりがついてるのは確かにスゲェんだが……」

 

微妙に釈然としないウソップは、その事について考えるのはやめて、先程までいた島について思いを巡らせる。

 

「しかしあの島もなんつーか不思議な場所だったな……」

「そんなの興味があるならみんなと合流してからまた行けばいいだけだ」

「そうだな……。あいつらちゃんと全員無事だろうな……。ゾロやサンジ、フランキーなんかは普段なら放っておいてもいいくらいだけど、ボロボロだったからな……」

 

ネガティブホロウを打ち破れるくらいに、ネガティブな事を考えるのに定評があるウソップは頭に浮かぶ悪い想像を打ち消すために首を振った。

 

 

「それにしてもなんか大変な事になってるみてェだな……」

 

飛行中の“スターシップ”。

手持ち無沙汰だったウソップは、ボーイン列島に飛ばされたせいで読めていなかった新聞を軽く叩きながらスターに話しかける。

 

「ああ、ルフィの兄ちゃんの事か」

「もちろんそれもだが、この裏面もだよ……!」

 

そう言ってウソップがスターに突きつけた新聞の裏面には、“東の海(イーストブルー)で脅威! 突如消えゆく町の謎!”という三流ゴシップ誌の見出しのような記事が載っていた。

 

東の海(イーストブルー)で一夜にして次々と町が滅びてるらしい。幸い、おれ達が関係してるような場所はその現象に巻き込まれちゃいないが、原因不明とあっちゃ、いつ巻き込まれたっておかしくないぜ」

「今は仲間を探すのが先だ」

「わかっちゃいるけどよ……! この兄貴の事を知ればルフィが黙ってるとは思えねェし、おれは心配事だらけだ……!」

「……」

「そうじゃなくても、そのレーダー、偉大なる航路(グランドライン)以外の海を示してるものまである……! そんなに時間を掛けてちゃ、何もかも全部終わっちまう……!」

「……キャプテンの心意気はわかった。キャプテンの身体への負担を考えて速度を抑えていたが、そこまで言うなら、速度を上げよう」

「え、」

 

ーーっーーっーーっーーっーーっ!!!??

 

そう言って、これも普段は使わない星形のボタンをスターが押すとデフォルメされた星形の“スターシップ”は通常運航ではあり得ない加速をした。

そしてそれはまるで本当の流星のように――泣き叫ぶウソップの声も置き去りにして、煌めく一条の光となった。

 

 

~~中略~~

 

 

「これで四人……」

「スター!!! それにウソップとナミ――って医者~~~っ!!!」

「お前だろ」

「あ、おれだーーー!!! ど、どうしたんだ二人共!!? そんなに引き攣って、泡まで吹いて……! あの戦闘でのダメージがそんなに酷かったのか!!?」

 

空から現れた“スターシップ”に乗り込んで、すぐに見る事になったあられもない二人の姿に、これからの自分の運命を知らないチョッパーは、真剣に二人の心配をして具合を診る。

振り返れば、超高速飛行モードとなった“スターシップ”は、その進行上にあった空島に飛ばされていたナミを勢いで掻っ攫い、一息吐く暇もないまま飛ばした結果、偉大なる航路(グランドライン)からもウッカリ外れ“南の海(サウスブルー)”へとやってきていた。

しかし、運の良い事にその場所にチョッパーがいたので結果的にはよかったのかもしれない。

 

 

「スター!!! 今日ほど、お前が仲間にいてくれた事を感謝した日はない!!! ……あの島は、地獄だ!!!」

 

そして再びの偉大なる航路(グランドライン)

ある特定の種類の人間にとっては楽園だが、常人にとっては悪夢の島“カマバッカ王国”。

サンジを追いかけるオカマを着陸に失敗して轢き飛ばした“スターシップ”は、しかし幅広の涙をそれこそ滝のように流すサンジに大感謝されて迎えられた。

 

「サンジがそこまで言うなんてどんな島だったんだ……?」

「口にするのもおぞましい……!」

「そこまでなのか……」

 

そもそも着陸失敗の衝撃故に、オカマを轢き飛ばした事に気づいていないスターはごくりとその喉を鳴らした。

 

「それよりも、サンジ君と合流できて、これで五人……どうにか手分けをしたりできないものかしら」

 

ここまで上手く仲間と合流できてはいるが、残された時間は多くはない。

ナミは白目を向いているチョッパーの横でどうにかその身を起こすと、例の新聞を視界の端におさめながら呟く。

 

「ああ、目と心が洗われる思いだ……! んナミさ~~~ん!!! おれはキミの魅力を再確認した~~~!!!」

「はいはいどうもね」

「しかし手分けっつってもな……“スターシップ”みてェな空飛ぶ船がそこらに転がってるわけも――」

 

同じく復帰を果たしたウソップはそこまで言うと、目を見開き、口を大きく開けた姿で斜め上空を震える指先で示す。

 

「あったーーー!!! なんだありゃ~~~!!? なんで島が飛んでんだ~~~!!?」

「空島だろ」

「あ、なるほど……って、んなわけあるかァ~~~!!! 船首に帆……それにあのドクロ! “スターシップ”と同じ空飛ぶ船――しかも、海賊船だ!!!」

 

サニー号のようなデフォルメされたライオンとは違い、リアル風味の黄金の獅子の船首に、島が飛んでると見間違えるのもおかしくない岸壁の船底。

そんな空飛ぶ島船――いや、空島船は“スターシップ”の頭上を悠々と飛んでいく。

 

「スリラーバークといい、最近は島を船にするのが流行ってるのか……」

「どんな流行だよ!」

 

「…………なァ。あの船の持ち主に頼んで、残りの連中を探すのを手伝って貰うってのはどうだ?」

 

空島船を見送ってしばらく、不意にサンジがそんな事を提案した。

 

「ばっ、サンジお前! 相手は海賊だぞ!」

「そりゃそうだろ。わかってるよ」

「いいや、わかってねェ! 海賊ってのは()()()悪い奴なんだ! 怖ェだろうが!」

 

唾を飛ばして情けない事を喚くウソップにサンジは呆れた表情を向ける。

 

「おれらは何だよ……。最悪、無理矢理言う事を聞いてもらえばいいだけだ」

「簡単に言うな!!! あんな船に乗ってる海賊だぞ!!? 普通じゃねェ! また七武海みてェのが出て来たらどうすんだ!!?」

 

確かに空島を丸ごと船にするという常識外の海賊船の持ち主だ。

ウソップの言う事も間違いではなかった。

 

「普通じゃないなら、気の良い相手かもしれないだろ」

「え……いやいや! そんな言葉で騙されるかァ!」

「もしもの時はおれとスターが相手にするさ。なァ?」

「え、ああ……そうだな。そこはおれさまに任せてくれていいぞ」

「それに今は何より他の連中の……特にロビンちゃんの無事を確認するのが最優先事項だ……!」

「結局それかーいっ!!!」

 

サンジにとっては自分の前に七武海が現れるかどうかより、今この場に居ないロビンが無事であるかどうかの方が完全に優先度が上であるようだ。

 

 

「あ、何か見えてきたぞ!」

 

“スターシップ”が通常運航に戻った事で復活したチョッパーが前方を示す。

 

「あの船が目指してるのはあの空島か。ちょうどいい。いきなり“スターシップ”で乗りつけるのも悪くないが、協力してくれるかもしれない相手だ。まずは穏便に接触しよう」

「わかった」

 

サンジの言葉にスターは“スターシップ”を前方に見えてきた大小合わせて十数の島からなる空島群に向かわせる。

 

「あの一番デケェ島に向かってるみたいだな」

「う、海ごと、浮いてんぞ! どうなってんだ!!?」

 

その一番大きな空島含め、いくつかの島は、もともと海に浮かんでいたものをくりぬいて空に浮かべたかのような景観をしていた。

 

「下の海の……あの塔みたいになってる島を中心にして浮いてるみたいね」

 

上空の空島から視線を下に向ければ、ナミの言うように雲にまで届くような岩山が中心に聳える島があった。

 

「ちょっとチョッパーがいた島に似てんな」

「ホントだ……。懐かしいなー。ドクトリーヌ、元気かな……」

「あの婆さんが元気じゃないほうがビックリだろ」

「……そうだな!」

 

その島に故郷を重ね合せ、少しの間物思いに耽ったチョッパーだったが、すぐに明るく元気な声を出した。

 

「ってちょっとまてェ!!? その島の周りにも海賊船がチラホラと見えるぞ。なんかあの島に集まって来てんじゃねェか!!?」

「え……!」

 

見れば数隻の海賊船がその塔のような岩山がある島に向かっている。

いや、それどころかよくよく見れば、さらに遠方からもその島を目指している海賊船らしき影がいくつか。

 

「……ドクロのマークは違うみたいだけど、あの数、同盟でも組んでるのかしら」

「よし! あの島はスルーしよう! あそこにおれ達の仲間はいねェ!」

「確かにレーダーに反応はないが……」

「いえ、これは逆にチャンスかもしれないわ。あれだけ海賊がいれば全員の顔を覚えてる人間なんていないでしょうし、何が起こってるか探りを入れやすい。それで協力してもらえるかどうかも判断すればいいわよ」

 

ウソップは一人、断固として反対の姿勢を見せていたが、そこは勢いと多数決。

ナミの意見が採用され、一味はその海賊達の集まりに潜入する事にした。

 

ただし――。

 

「そ、そうだ! こっちには有名人のスターがいる! さすがにスターほどの有名人となれば顔バレしてしまう事だろう!なので、おれとスターは今回は留守番していよう。いやァ、残念だが、こればっかりは仕方ないな」

 

という往生際の悪いウソップの言葉により、とりあえずの情報集めはナミとサンジとチョッパーの三人で行われる事になった。

 

 

「――じゃあ、その“金獅子のシキ”とやらが海賊の同志を集めてるって事か」

 

情報集めから戻ってきた三人の説明に、ウソップはそれらしく頷いた。

 

「ええ、シキは“フワフワの実”の能力者で、ここの空島は全部、シキがその能力で浮かせたものらしいわ」

「これ全部!!? とんだバケモンじゃねェか!」

 

泡を食ってそう言うウソップだが、ナミは人差し指を立て冷静に諭す。

 

「まぁ確かにスゴイ能力ではあるわね……。でも今重要なのは、同志を集めてるって方。これは狙い目よ」

「どういう事だ?」

「私達が同志になるフリをして、ある程度事情を説明すれば、“億超え”で戦力になるルフィや、ゾロと合流するために、あの空飛ぶ船を出して貰える可能性が高いわ」

「なるほど! さすがはナミさん!」

「空の路も天候の影響は受けるけど、偉大なる航路(グランドライン)を普通に彷徨うよりはずっとマシ……。まぁそもそも基本は“スターシップ”で探せばいいんだし、それで人手が増えるなら儲けものでしょ」

 

ナミは集めてきた情報からそういう判断を下したようだが、ここでもまたウソップが待ったをかけた。

 

「いやでもよ……協力してもらうだけしてもらって、じゃあさよならとはならねェだろ。そもそも何のための同志集めか知らねェけど、それで怒らせるはめにでもなったら、その全部がおれ達の敵になるんだぜ!!?」

「んー、そこはほら、あれよ。ルフィとも合流してから、ルフィの判断に任せればいいじゃない」

「行き当たりばったりか!!! どうした、ナミ!!? お前の中の“何かがヤベーセンサー”は本格的に故障したのか!!?」

「そういうわけじゃないんだけど……ちょっと気になる事があって……」

「気になる事?」

「……とにかくもう少しここで情報を集めてみたいのよ」

 

何か思うところがある様子のナミの態度に、ウソップも渋々ながら納得する様子を見せる。

 

「じゃあここからは本格的に二手に別れましょう。“スターシップ”でこのままみんなを探す人間と、シキと接触して交渉する組にね」

「となるとスターが別行動か? 何かあった時のためにスターには残って欲しいが……」

「そうね……」

 

顎に指を当てて、考える素振りを見せるナミが答えを出すよりも早く、当のスターが口を開く。

 

「なら、おれさまの“スターシップ”はキャプテンに託そう。キャプテンは“スターシップ”に乗ってこのままみんなを探してくれ。重要な任務だぜ!」

「お、おいおい、おれ一人かよ!!? そもそも“スターシップ”ってのはそんなにお前から離れても大丈夫な乗り物なのか?」

「おれさまの意識が失われでもしない限りは大丈夫だ」

「お前が眠ってる時とかはどうすんだ」

「安心してくれキャプテン! 本当のスターとは仮に別の仕事やらで徹夜をしていても、ファンの前では笑顔でいる事のできる人間なんだ! 慣れてる!」

 

そんなスターの言葉に後押しされて――。

“スターシップ”は例の空島船が向かっていた、一番大きな空島にあるシキの王宮の前にウソップ以外の四人を降ろすと、そのままウソップの操縦で空島群から離れていく運びとなった。

 

 

~~中略~~

 

 

そのシキの王宮がある、空島群で一番大きな島は“冬島”としての特性を持っていた。

それ故に先程まで快晴だった空はこのエリアに入ってから曇天へと変わり、雪もちらほらと降っている。

“冬島”用の服装ではない一味は寒さに若干身を縮こまらせながら、目の前に聳え立つ大きな建物を見上げる。

全体的に和風な造り。

この大きな建物が空島船を持つ海賊のアジト、シキの王宮であるらしい。

こんな王宮に住んでいるのだから“金獅子”のシキ、やはりタダ者だとは思えない。

 

「う……何だこの臭い……」

「臭い?」

「鼻の奥がビリビリするようなイヤーな臭いだ……。この建物の周りの植物からか……? みんなは感じねェのか?」

 

寒さとは別の理由で、鼻をぐずつかせるチョッパーだったが、他の三人にはよくわからず首を捻る。

それはともかくとして、その外の寒さに、ナミが一味を代表して、訪問を知らせるために大声を上げた。

 

「すいませーん!!! 誰かいませんかーーー!!?」

 

何度かそんなナミの声が響く。

 

「――ジハハハハハハッ! これはどうした事だ。まさかおれの招待なくして、この“メルヴィユ”へとやってくる者があるとは!」

 

「! 足が剣だ……! しかも頭に舵輪が生えてる!!?」

「いや、ありゃ生えてるんじゃなくて刺さってるんだろ……」

 

その王宮の中から現れた男はかなり独特な風貌をしていた。

長い鬣のような金髪に、何より特徴的なのが、和装――袴姿から覗くその足が、二本とも抜身の刀剣であるという事、そしてなぜか頭にモヒカンのように舵輪が突き刺さっている。

 

「おれのこの足が珍しいのか?」

「え、そりゃまァよ」

「これはおれの義足よ。足は邪魔になる事があったから自分で切り捨てた」

「……じゃあ、その頭の舵輪は」

「これは戦闘中の事故だな。まさか頭に舵輪がハマるとはおれもウッカリしてた。だがまぁよくある事だ」

「ねェよ!!! そんなウッカリは!!!」

 

サンジはシキの義足に、自分のために片足を失った恩人の姿を思い出したが、そんな感傷に浸る暇もなくツッコミを入れた。

 

「それはそうと、いったいお前らは何者だ。何の目的でここに来た」

「……あの、私達、“金獅子”のシキの噂を聞いて……同志にしてもらおうと思ってきたんです」

「ほう! 同志に」

 

多少おかしな部分もあるが、“金獅子”の異名に相応しい恰好の男だ。

この男こそがシキであるのは間違いないと、ナミは早速交渉モードに入った。

 

「ええ、そうなんです」

「ふぅむ。ところでお前達は名のある海賊なのかね?」

「……私達の船長は“麦わら”のルフィです。懸賞金3億ベリーの。そしてこのスターも1億7777万7777ベリー」

「なるほどなるほど……。“億超え”とはなかなかだ。――いいだろう! 詳しい話は中で聞くとしよう!」

「ありがとうございます……!」

 

どうにかシキのお眼鏡に適う事ができたらしい一味は、シキの先導でその王宮へと足を踏み入れる。

 

「なァ、この建物の外にあるスゴイ臭いの植物は何なんだ?」

「……臭い? ああ、“ダフトグリーン”の事か。あれは猛獣避けだ。獣達はみんなあの臭いが嫌いなのさ。この島には他ではお目に掛かれないないような猛獣が多くいるんでな」

「そうなのかァ……おれも辛いけど、我慢するぞ」

 

障壁画の並ぶ朱塗りの廊下にキンキンとシキの特徴的な足音が響く中、その前方から白衣と水玉模様のマフラーが特徴のピエロ顔の男が、こちらは屁のような足音を響かせながら、サングラスと帽子を被り、きちんと服を着たゴリラと共にドタバタと現れた。

 

「おお、“Dr.インディゴ”。ちょうどいいところに」

「ドクター? 医者なのか?」

 

興味を引かれたチョッパーが尋ねると、Dr.インディゴは身振り手振りで、よくわからないパントマイムのような事を始める。

 

「……?」

「いや、私は科学者」

「伝わるかァ!!! ってか、なんだよ! 今の無意味なパントマイムは!」

 

そんなサンジのツッコミを素知らぬ顔でスルーするDr.インディゴに、サンジはキレそうになるが、シキのフォローが入る。

 

「許してやってくれ。Dr.インディゴの個性だ。それにその頭脳は本物……それからそっちのゴリラは“スカーレット隊長”だ。……ああっと、そうだ。おれはちょっと寄るところがある。お前達はそのDr.インディゴ達について、先に行っていてくれ」

「あ、はい。わかりました……」

「ピロピロピロ。了解」

 

そうしてシキと別れ、Dr.インディゴの微妙に嫌な気持ちになる足音について歩くこと数分。

一つの部屋の前でDr.インディゴは足を止めて再びのパントマイム。

だがさすがにこれは入れという事だろうと、一味は巨大な障壁画の襖をさっと開けて、その部屋に入る。

 

「ゴボ……!!? (な、なんじゃこりゃ~~~!!?)」

「ゴ、ゴボガボボベ……!!?」

 

その部屋に入るや、スターとチョッパーの二人が溺れた。

球状の――人間が丸ごとすっぽりと入るフワフワと浮く水の塊に囚われたのだ。

 

「罠!!? どういうつもりだ、てめェ!!!」

 

水の中でもがく二人に変わってサンジがDr.インディゴに詰め寄ると、その背後からどこかに寄り道をしていたシキが姿を現した。

 

「シキ!」

「……フフフ、いやァ、おれとしてはお前らを同志に加える事に何の問題もないと思うんだがな。最近、東の海(イーストブルー)で仲間に加えた“参謀”がこう言うのよ。お前らは“危険”だと」

「“参謀”だと……?」

 

「なァ!!? そうだろう、“百計のクロ”!!!」

 

「「!」」

 

「…………誰だ?」

 

そしてシキの陰から姿を見せたのは黒スーツにメガネとオールバックの髪型で、執事然とした男だった。

その男の姿と名前に、疑問を覚えるサンジとは違って、スターとナミの二人は見覚えがあった。

ウソップの故郷である“シロップ村”で、両親を亡くした資産家の娘カヤを相手に、その財産をそっくり奪い取ろうと陰謀を働かせていた海賊だ。

 

「久しぶりだな……おれの事を知っているのは二人だけ。“麦わら”に剣士、あのウソツキ小僧もいねェのは残念だが、これで少しは溜飲が下がった」

「なんであんたがここに……!」

 

スターは水の中なので、必然的にナミが尋ねる形となった。

 

「同志としてスカウトされた。それだけの事だ」

「平穏を求めてたんじゃなかったの……!」

「その平穏に飽きちまったのさ。なにせ本来ならバカな村人達を眺めながら余生を過ごすつもりが、気づけば再び海の上だ。東の海(イーストブルー)は穏やかで、だが、もう一度同じ事をやるのも面倒だ。さてどうするかと思っていた矢先の出来事だったんでな。OKしたよ」

 

クロは掌でくいっとメガネを上げる。

その少しだけ特徴的なメガネを直す癖も変わらず健在のようだ。

 

「そしてもう一人、お前らに因縁があるらしい奴がいるぜ。ぜひ挨拶したいそうだ。そうだろう? ――“首領・クリーク-9000”!!!」

 

「「「!」」」

 

「てめェ……! クリーク……!!?」

 

今度はシキの陰からではなく、その部屋の奥にある襖が開いて、その男が姿を現した。

 

「よぉ。元気だったか、クソ“コック”。てめェらの活躍はおれの耳にも入っていたぜ」

「……てめェは、なんで身体がロボみたいになってんだ」

「そんなの決まっている。偉大なる航路(グランドライン)で戦える武力を手にするために、Dr.インディゴの改造手術を受けたのさ……! まァ、Dr.インディゴの専門じゃねェから、少しばかり強力な身体になりすぎちまったがな……!」

 

サンジの元職場、海上レストラン“バラティエ”に現れた時も金色の鎧姿と大概な恰好をしていたクリークだが、改造人間となった今は、同じく改造人間であるフランキーよりもメカメカしい。

胸部は金色の鎧に“NO.1”と描かれていて、当時の名残をより強調しているが、腕回りや腰回りは異様に細く、代わりに拳や足回りはやたらとデカイ。

この場にもしもルフィがいたら目を輝かせて喜びそうなデザインだ。

 

「“ギン”はどうした……?」

「……知らねェな。あの後、偶然おれ達を拾ったというDr.インディゴは、できる限りの手を尽くしたと言っていたが、おれが目を覚ました時にはその姿は消えていた。奴とはもうそれっきりだ」

「ピロピロピロピロ。その通り」

「そうか……」

 

サンジが口にしたギンというのは、東の海(イーストブルー)でクリークが海賊団を率いていた時の戦闘総隊長であり、サンジも少しだが交流を持った相手である。

しかし彼はルフィとクリークとの戦闘が決着する際に、ルフィとサンジを助ける代わりに毒ガスを吸い込み、余命僅かの身となった。

それでもその原因を作り、自分の事も切り捨てたクリークを見捨てなかった忠義の男だが、その最期は――いや、それが最期かどうかも、変わらずわからないままのようだ。

ギンが去り際に残した「偉大なる航路(グランドライン)でまた会おう」という言葉だけが彼の生存を信じる理由となっていた。

 

「感動の再会はもういいか? ――まァとにかく、そういうわけよ。新たに加えた幹部が二人。揃ってお前らの事を“危険”だと言う。そうまで言われちゃこのおれもその言葉を無視はできねェ」

「……!」

東の海(イーストブルー)は最弱の海だが、たまにはこんな掘り出し物な連中もいるらしい。“新世界”価格なら! 今の10倍の懸賞金がついていてもおかしくはない!」

 

現在は3億の賞金首であるルフィが3000万と評された海だ。

もちろん偉大なる航路(グランドライン)に出てからの行動によってつり上がった懸賞金だが、あながちそれは間違いでもなかった。

東の海(イーストブルー)には確かに、ルフィ率いる麦わらの一味と遭遇したからこそ撃破されただけで、偉大なる航路(グランドライン)における海賊相手でも、ある程度までなら通用すると思える強敵が何人かいた。

 

「だからまずはその能力者二人。“フワフワの実”の力で固めた“海水”によって動きを封じさせてもらった」

 

スターとチョッパーの二人を捕らえた水は、ただの水ではなく海水のようだ。

まぁ海水でなくても水が溜まっていればアウトなのだが、どちらにしろその強力な能力と引き換えに、“海”に嫌われ“カナヅチ”になってしまったために、自力では抜け出せず、そろそろ息が危ないのかもしれない。

 

「だが慈悲はやろう。いまだ“新世界”の手前で必死に足掻くルーキー共。大昔のおれを少し思い出す。ただし、おれの野望の邪魔はするな……! このまま“青海”に送り返してやる。――まァ、うちも人手不足だ。“航海士”は貰っておくがな!!!」

「きゃっ……!!?」

「ナミさん!」

 

シキの言葉に首領・クリーク-9000の腕が伸びて、ナミを掴み引き寄せる。

 

「……あら、私だけ特別扱いってわけ?」

「まがりなりにもあの頭の悪い“麦わら”を偉大なる航路(グランドライン)で生きながらえさせているんだ。お前の“航海士”としての能力を疑う余地はない」

「そりゃどうも……」

「そもそもおれが恨みがあるのは“麦わら”と“鷹の目”だ。最強の武力を手にした今、あの時にすら大して何もできなかった、そこのコック程度の野郎はもはや眼中にねェのさ」

 

「……どうでもいいが――んナミさんを放せ!!! このクソ野郎!!!」

 

自分に対する挑発的な言葉よりも、ナミの腕を掴むクリークにキレたサンジが蹴りかかるが、その前にはこちらも足に自信がある“百計”のクロが立ち塞がった。

いつの間にかその両手には、クロが愛用する、五本の指に爪のように刀身を生やした“猫の手”という武器も装着していた。

サンジは“猫の手”で斬られるところを、危うく急ブレーキで踏みとどまると、バックステップで距離を取る。

 

「こちらを気にしていていいのか? お前以外に誰があの二人の能力者を追いかけ助ける? 命が懸かった状況だ。どちらを選ぶかは決まっているだろう?」

「~~~!」

 

シキがその手を軽く動かすと、スターとチョッパーを捕らえた“海水”は、その部屋から外へと飛んでいく。

おそらく先程の宣言通り“青海”へと落とすつもりなのだろう。

 

「サンジ君……! 私の事はいいから二人を追って! 今もしもスターが意識を失ったら、“スターシップ”も……!」

 

「! くそォ……!!! ナミさん、すまねェ!!! 必ず助けに来る!!!」

 

サンジはナミの言葉に奥歯を噛みしめるとその背を向けて“海水”を追いかける。

その背後からはシキの勝ち誇ったような、ジハハハハ! という笑い声が長く空へと響いていた。




というわけで東の海から二人の男が参戦しました。
ちなみに首領・クリーク-9000は、原作でのクリーク再登場ボツ案からです。
この二人は今後実際に再登場する予定はあるんですかね?
キャラの再利用に定評のあるワンピースで、全然その姿を見せませんが。
まぁそれはともかく、今回はルフィ不在と敵キャラの追加で話を進めていく感じになりました。
1話でも終わらせられたかもですが、もったいないので3話くらいの予定です。
そんなこんなで次回に続きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。