Vol.1 未来国にてサイボーグ動物に芸を仕込む
~おれはかつて恐竜に玉乗りを仕込んだ男(ウソ)~
※フランキーと合流
Vol.2 貧困の国にて見世物になる長鼻
※ブルックと合流
Vol.3 労働の国にて邂逅する革命軍と狙撃の王様
※ロビンと合流
Vol.4 シッケアール王国跡にて因縁の対決ネガティブホロウ
※ゾロと合流
Vol.5 全員集合! 帰り道を忘れて仲間相手に危機一髪!
※C・ウソップの運命や如何に!!?
「ハァ……ハァ……おい、意識はあるだろうな、スター……!」
「と、当然だ……! ハァ……!」
“海水”に囚われたスターとチョッパーを追いかけて、メルヴィユを走るに走ったサンジは、荒い息を吐きながらも何とか二人を“海水”から引きずりだす事に成功していた。
「チョッパーは気絶してるか……くそっ、早ェとこ、ナミさんを助けに行きたいが、このまま放っておくわけにもいかないな……」
シキの言葉通り“青海”に落とされるよりも早く、助けられたのは僥倖だった。
しかし、自分が意識を失えば“スターシップ”が消えて、ウソップが危険な状態に陥るために意地で持たせたスターとは違って、身体の小さいチョッパーは、生きてこそいるものの意識を失っていた。
サンジはナミを助けに行きたくて逸る気持ちを何とか抑えつける。
「ふー……スター、とりあえず移動するぞ。お前らを追いかけてる間に、村のようなものを見た気がする。シキの配下がいるだけかもしれねェが、それならそれで使える物でも頂いて行こう」
スターとサンジ、そして意識を失ったままのチョッパーが辿り着いたのは湖に寄り添う村だ。
見る限り男のいない女性ばかりの村だが、その村に入った女好きのサンジが若干がっかりした様子なのは、男だけではなく、若い女性もおらず、中年や老人、それから子供ばかりだったからである。
その村の住人達には、腕に生えかけの翼のようなものがあるという身体的な特徴がありはしたが、
何よりも、シキの配下という雰囲気でもなかった事もあって、二人は普通に村人に話しかけてみた。
麦わらの一味は、常に刀を三振りも差しているゾロや、厳つい容姿のフランキー、骨であるブルックなどはともかくとしても、知らなければ海賊と思われる事はあまりなく、スターやサンジは珍しがられながらも普通に村人と交流を持つ事ができた。
そしてその中で“シャオ”という女の子と、その母親と病気の祖母の三人が暮らしている民家にお邪魔させてもらう事になった。
そこはもう、スターのスター性とサンジの女性に対する紳士的な態度の賜物である。
翌日……チョッパーも回復し、世話になったお礼にと、サンジが料理を、チョッパーが祖母の病気を見るが、身体に緑色の痣が出ている祖母の病気は、チョッパーでも見た事のない症例らしく、有効な手立ては用意できなかった。
だけど実は、その病気についても、治す方法についてもわかってはいるらしい。
「この病気は“ダフト”って言ってね……。緑色の痣が硬直していって動かせなくなるって言う病気さ。ダフトグリーンの粒子を大量に吸い込むとなっちまうんだ。唯一治せる薬は“I.Q”って言う植物から作られるんだけど、それはシキが独占しているのさ」
「シキ……!」
「んなら話は簡単だ。おれ達にお任せあれマダム。おれ達もそいつにはちょっと用があってね。一宿一飯の恩義で、その“I.Q”とやらも一緒に頂いてきますよ」
「え、任せるってあんた達……まさか、シキにケンカでも売ろうってのかい!!? 無謀だよ! やめときな! 命は大事にするもんだ……。それに、もうしばらく耐えさえすればシキはこの場所からいなくなる……」
「いなくなる?」
「ええ。あともうしばらくしたらシキは、その配下の者達を連れて、“計略の海”に――」
「“計略”……? そりゃいったい――」
「おばーちゃん、おかーさん、大ニュース!!!」
ちょうどその時だった。
“計略の海”とは何か……シキが一体何を企んで海賊達を集めているのか。
それをサンジが尋ねようとしたところで、診察の邪魔になるからと外に出ていたシャオと、スターが戻ってきた。
「シュウちゃんとこのおとーさんが帰ってきたの! もうすぐみんなも戻ってくるって! おとーさんとおねーちゃんにまた会えるんだよ!」
「え、本当かい!!? それはつまり――」
「そう。シキがここを出ていくんだって! 動物達も連れて“計略の海”へ――
シキの目的は
少し前に新聞で見た、
シキの狙いは、ルフィの兄であるエースの公開処刑を発表した事によって、起こる事が確定したと言っていい、海軍本部と“四皇”の一人である“白ひげ”海賊団との“頂上戦争”。
海軍の目が完全にそちらに向いている間に、最弱の海として、一番手薄な
「ナミさんだけじゃなく、
シキへの怒りがMAXまで高まり、血気に逸るサンジは、民家を飛び出て、スターに“スターシップ”をと言いかけて、そう言えばウソップが乗っていったのだったと、苛立ち紛れに地面を蹴る。
だが、不意に自分を呼ぶ声が、そしてその声の主に気づいて、喜色を浮かべて、大きく手を振る。
「――サンジくーん! スター! チョッパー!」
「んナミさーん!!!」
シキに捕らえられたはずのナミが、黄色の若干ブサイクな鳥に乗って、彼らの前に現れたのである。
「ゴメン!!! 後任せた!!!」
ナミはそう言って村を素通りする。
何事かと思えば、逃げ出して来たのであろうナミを追いかけて、シキが用意したのであろう浮島に乗った百計のクロと首領・クリーク-9000の姿が見える。
更にはその配下の海賊達が数十人単位で後に続く。
それもあって、ナミは村を巻き込んではマズイと一瞬で判断したようだ。
サンジもその事に気づき、スターとチョッパーを急き立てる。
「おい! あのクソ野郎共だ! 外で迎え撃つぞ! とっとと動け!」
「り、了解!」
「よし! おれさまに任せろ! 昨日のお返しをしてやる!」
村の外れにある岩場で海賊達は向かい合う。
浮島の上から一味を見下ろす二人の姿に対して、前回は水の中にいたせいで喋れなかったスターが口を開く。
「百計のクロに首領・クリーク……お前ら、シキの手下になったのか?」
「ちっ……バカが」
「手下じゃねェ。同盟、利害の一致というヤツだ」
「利害の一致?」
「それから、おれはもう首領・クリークじゃねェ。首領・クリーク-9000だ」
メカメカしいボディでスターの言葉を訂正するクリーク。
「――じゃあ、Dr.インディゴとやらにギンを治してもらって、さらには自分を改造してもらった代わりの同盟って事か?」
「それだけじゃねェさ。当然、
「裏切る気満々って事かよ」
「裏切りじゃねェ。乗っ取るだけさ。シキの野郎の野望もろとも、おれが頂くッ!!!」
シキ本人がいないからか、クリークは当時と変わる事のない自らの尽きない野望を語る。
クロもメガネをくいっとするだけで訂正しないという事は、おそらく同じような事を考えているのだろう。
「……」
彼らは身の程知らずの野望を抱く愚者なのか……いや、それは違う。
要はそれを貫き通せるかどうかなのだ。
それこそ、一度ルフィに敗北してなお立ち上がった彼らには、野望を語る資格がある。
命を落とすか、折れない限りは何度でも。
新世界の前に存在する壁に阻まれ、それでも再び立ち上がろうとしている麦わらの一味のように、だ。
「お前らの野望を否定する気はねェ……。でも、おれさま達の野望がお前らの野望と共存しない事は知ってる……。だから、ここで決着をつける……!!!」
「てめェらの状況は知らねェが、船長不在の一海賊がデケェ口を叩きやがる。やってみろ……! 返り討ちにしてやるぜ……!!!」
戦闘が始まる。
クリークの号令で浮島から、その配下であるらしい海賊達が降りてくる。
さすがにかつて五千人の大艦隊を率いていた男だ。
それに比べれば規模はだいぶ落ちるが、すでにシキの配下ではなく、シキを裏切る事を口にしても大丈夫な自分の配下を何十人と作り掌握しているらしい。
――かと思われたのだが、海賊達の中から二人の男が跳び出すと、浮島の上でふんぞり返ったままのクロとクリークに対して、それぞれ刀で斬りかかる。
「あァ?」
「「その首貰ったァーーー!!!」」
それは不意を突いた一撃だったが、そもそもの実力が足りなかったらしく、それぞれクロとクリークの足と拳で浮島から叩き落とされ、スター達の前へと墜ちた。
「「か、紙一重か……っ!」」
「あれ……お前ら確かゾロの……」
「お、お久しぶりです。兄貴達もお元気そうで……」
目の前でボロボロの姿で倒れる二人の姿に、スターの記憶の中からその名前が掘り起こされる。
そう、ヨサクとジョニー。
ゾロが海賊狩りとして賞金稼ぎをやっていた時の子分だ。
「何してんだ、お前ら?」
サンジとチョッパーが降りてきた海賊達を倒してくれている間に、スターはかくかくしかじか方式で手早く事情を訊く。
それによると、麦わらの一味と別れた後、二人は再び賞金稼ぎとして賞金首を追いかけていたら、なんかこの場所に辿り着いてしまい、敵ばかりのこの場所でどうしたものかと思っていたところに、スター達の姿を確認して、これは好機と跳び出したらしい。
ちなみにクリークの配下にいたのは、油断したところを狙うみたいな潜入作戦からの流れだったようだ。
「おれさま達も狙うのか?」
「い、いえ、そんなまさか! たとえ賞金首になろうとも兄貴達を狙うなんて、おれ達の仁義に反します」
ちゃんと賞金首になったのは二人と別れた後だったなと一応訊いてみるスターだが、ヨサクとジョニーはぶんぶんと首を振る。
「そうか。なら、ナミと村を頼む。鷹の目のせいで、クリークの方は正直あまり記憶にないんだが、あいつらは卑怯だったはずだからな。取りこぼしが出たらお前らが止めてくれ」
「「了解です、スターの兄貴!!!」」
残念ながら実力不足の二人はスタコラとその場を離れ、仕切り直し。
その頃にはサンジとチョッパーがあらかたの海賊達を倒し終わっていた。
「チッ……使えねェ連中だ」
「親分が親分だからな」
「言ってくれるじゃねェか、クソコック。ハッハッハ……よォ“毒ガス”の味は覚えているか? ああ、コレを食ったのはギンの方だったか」
「!!!」
「「毒ガス?」」
「逃げろ!!! スター、チョッパー!!! あいつは本当に戦闘に毒を使うぞ!!!」
「え!!? そんなのダメだ! おれは許せないぞ!!!」
「ああ、おれさまの技で弾き返してやる!」
チョッパーが医者として憤り、スターもやられる前にやるとばかりに“スピードスター”で一気に浮島の二人へと突撃を仕掛ける。
「あの、バカ……!」
「確かに、バカの一つ覚えとはよく言ったもんだな」
肩から盾のようなパーツを外したクリークは、スターへと照準を合わし、“毒ガス”――ではなく、金属製の杭を銃弾のように何本も撃ち込んで来た。
「おわっ……!」
「あのカナヅチ小僧と反応が同じだ。おれは同じ轍は二度と踏まねェ。あの時の屈辱、貴様で返してやるとしよう」
クルクルと回転して、何とか杭を避けたスターは、少し離れた空中で制止する。
スターは安堵の息を吐きながらも、すぐに不敵に笑い返した。
「そりゃ無理だ。二度でも三度でも、お前が何度おれさま達の前に現れても、お前は敗れる。毒ガスよりも病みつきにしてやるぜ……! 首領・クリーク-9000!!!」
スターがクリークと向かい合った事で、獲物を取られたと、サンジは仕方なくクロへと視線を向けた。
「スターがあっちに行っちまった以上はおれ達の相手はお前って事か。2対1の格好になって悪いがな」
「気にするな。複数を相手にする方が得意だ」
フッ……と浮島からクロの姿が消える。
サンジは一瞬で目の前に現れたクロの腕を蹴り上げる事で、クロの武器である猫の手から繰り出される斬撃を逸らした。
「チッ、お前がやたら速ェのはわかったがよ……! そういう奴らの相手もしてきたんだよ、おれ達は!」
「なるほど……。まがりなりにも、
斬、避、蹴、避、斬、避、蹴、防……。
見守るチョッパーの瞬き2回の間に行われた、わずか数秒の攻防。
その間に行われたアクションは16。
足に自信がある同士の高速戦闘。
その攻防を経て、クロはバックステップでサンジから少し距離を取るとくいっとメガネを直す。
「素直に降参したらどうだ。速いだけが取り柄なら、おれには勝てないぜ」
「フッ、確かにな」
サンジの言葉にクロは素直に頷く。
その様子をサンジは少し意外に思うが、実際に優勢なのはサンジだった。
クロの攻撃をすべて避けたサンジに対して、クロはサンジの蹴りを防御した事で、防御した腕越しに顔にもダメージが入り、つーと口の端から血が垂れていた。
「……」
クロはぺっと口の中の血を吐き出すと、自身の武器である猫の手を外しながら、スタスタと近くで倒れている海賊に歩み寄る。
「なんのつもりだ……?」
意図がわからずその様子を見守るサンジとチョッパーの前で、クロは海賊の頭をぐいっと掴み起き上がらせると、懐から取り出した注射器をその海賊の首筋に刺した。
「「!!?」」
「“毒”を使うのが野郎だけだと思ったか?」
「毒!!?」
「まぁ、毒というかドーピングだがな」
クロが海賊から手を放すと、耳に痛い叫び声を上げながら、ボコボコッと海賊の筋肉が盛り上がっていく。
「お前らがこの島をどこまで見たか知らねェが、この島にはおかしな進化をした動物達が無数にいる。その進化を促したのがDr.インディゴが“I.Q”という植物から生み出した“S.I.Q”。これはそれを利用したドーピング剤というわけだ」
「気絶してる相手だぞ……!!?」
「役に立たない駒は必要ない。――お前の言う通りだよ、海賊。戦闘で言えばおれは速いだけだ。
「その方法がこれだって言うのかよ……!」
「戦闘でやられた駒を再利用して、てめェらの体力を削いでいく。さっきは瞬殺できた相手も、10倍、20倍に強化されれば、少しは堪えるだろう。あとはそれをコツコツと積み上げるだけだ。てめェらの体力が尽きるまでな」
「オォオオオオオオオオオオッッッ!!!!!」
そして暴れ出したそれはもはや人間ではなく、緑色のゴリラのような怪物だった。
サンジとチョッパーがその変化に気を取られている間に、クロはさらに数人の海賊に注射を刺していく。
海賊達を使い捨てという事で鬼畜度は上がっているが、これは元々クロが配下である催眠術師のジャンゴを使って採っていた戦法の派生系だ。
「あいつ……!!!」
「やめろォオオ!!!!!」とチョッパーがクロを止めるために駆ける。
だが、それを緑の怪物となった海賊達が阻んだ。
「くそっ……なんでおれ達の方に!!!」
「おれには理解できないが、海賊の本能というやつらしい。船長ないし副船長の命令は絶対。そういう事だ」
「お前っ……!!! そこまで知っててなんで……!!? こいつらはその海賊人生をお前らの野望に懸けたんだぞ!!!」
「なら、その踏み台になるのは本望だろうさ」
「!!!」
「野郎ォ……!!!」
サンジとチョッパーがクロの言葉にブチィっとキレる。
人型になったチョッパーと緑の怪物の腕力は互角――いや、僅かにチョッパーが押されるほどで、力任せに押さえ込もうと思っていたチョッパーは、仕方なく動きに変化を加えて緑の怪物を押し飛ばす。
「ゴメン……!!! どいててくれ……!!!」
戦闘は激化する。
一方ではスターとクリークの銃弾や爆発物、技と兵器の応酬。
もう一方では、緑の怪物達に阻まれ、消耗戦を強いられながらクロとの追いかけっこ。
だが、それらの戦いはあくまで前座に過ぎない。
この島における支配者は、クロでもクリークでもなく、あくまで――。
「ジハハハハハ! 時間切れだよ。いけない子だベイビーちゃん。このおれの下から逃げようだなんて……」
そう、あくまで“金獅子”のシキ……。
かつて、大監獄・インペルダウンからの脱獄に成功した……海賊王世代の大海賊。
~~中略~~
そして麦わらの一味と、“金獅子”のシキが再び向かい合う。
シキが自ら姿を現した事で、一時的に戦闘が中断されはしたものの。
今度は最初から一触即発……戦闘態勢でだ。
「ハッ、のこのこと追いかけてきたのが運の尽きだな、クソ野郎。ここでテメェのくだらねえ野望……
「フッフッフッ……船長すらも不在のお前らにそれができるとでも?」
「生憎だな。うちの船長は“海賊王”になる予定なんだ。テメェみたいな雑魚に付き合ってる暇はねえってよ。雑魚を捌くのはコックの仕事さ」
サンジがシュボっとタバコに火を点けて、一服しつつ、クールに決める。
「“海賊王”? “海賊王”だァ!!? お前らのような“新世界”前のひよっこが……!!! その言葉を軽々しく口にするなァ!!!」
「……知ったこっちゃねえが、何やら苦い思い出でもありそうだな」
「そうさ。お前らは知らなくていい事よ。――だが、この時期に海軍本部が“白ひげ”とやり合っているとはチャンスだ!!! “海賊王”のいなくなったこの海で!!! 世界を変えるのは“白ひげ”でも海軍でもない!!! このおれだ!!! 当然だが――」
「「「!!!」」」
「――お前らじゃねえ!!!!!」
シキのフワフワの実の能力でフワフワと周囲の岩場が持ち上がり、一味を威嚇するように地形が変わっていく。
「だが、おれは慈悲深い男だ。最後のチャンスをやろうか……。素直にベイビーちゃんを差し出せ。そうすれば命だけは助けてやろう」
「おれさまは!!! ルフィに約束したんだ!!! 必ず仲間を全員集めてみせると!!! だから、お前なんかにうちの“航海士兼マネージャー”をやれるか!!!」
「そういうこった……!!!」
「ナミはおれ達の仲間だ……!!!」
スター、サンジ、チョッパーの三人が一斉に駆ける。
「お前らは手を出すな。生意気なひよっこ共に現実を教えてやる……!」
「「……」」
クロとクリークがシキの言葉に従い、素直に浮島で距離を取る。
二人にしても、それまでの戦闘で消耗していたのもあったし、いずれはシキを裏切る予定なので、その戦闘を見れるのは好都合であった。
「“トリックスターボム”!!!」
「!!?」
まずは先制でスターが走りながら爆発する星をバラ撒く。
シキの周囲に飛んだ星は、ダメージを与えるようなものではないが、爆発によって、その視界を少し奪う。
「“腕力強化”――“刻蹄
シキの視界が奪われている隙に、その背後に跳びあがったチョッパーが、自慢の蹄を連続で背中に叩き込んだ。
「ぐっ……!」
シキは少し呻くが、その程度で落ちるほど容易くはない。
だが、息つく暇も与えず、サンジがチョッパーとは逆に正面から跳びあがる。
「――“
ズガン! とシキの胸を撃ち抜くはずの蹴りは、しかしシキの右手で防がれた。
「なかなか良いチームワークだ……! おれに手を出させるとは……。だが、出した手は引っ込めるわけにはいかねェぞぉ……!」
大海賊の殺気にサンジの背中に悪寒が奔る。
濃厚な死の気配……。
「やらせるかっ!!!」
「ぐむっ!!?」
ドギュン――と“スピードスター”によって、ロケットのような勢いで突っ込んできたスターがシキをサンジから引き離す。
「「スター!!!」」
そして、バラッと再びスターがバラ撒いた星が、サンジとチョッパーの足に付き、二人もそのまま空中へと浮かび上がる。
「……ほう。おれのフィールドに上がってくるか。少しは楽しめそうだな」
にやりとシキが笑う。
悪魔の実の能力者同士の戦いでも珍しい、空中戦の始まり――。
「“
「おぉっとぉ!」
「“刻蹄
「甘い、甘い!」
慣れない空中戦ながら、スターの星を活かした技でシキを攻めるが、シキは空中を自在に飛び回り、なかなか捉える事が出来ない。
「フッ、こういう戦いは貴重だから少し付き合ってやったが、さすがに飽きてきたな。そろそろ終わらせるか。――“獅子威し 地巻き”!!!」
先程も少し見たシキの能力で地形が変わる様子。
今度はその程度では留まらず、岩場の構成が変わり無数の巨大な獅子の頭の形となって、スター達三人へと襲いかかってくる。
「な、なんだこりゃぁ!!?」
「気ぃつけろ!!! 圧殺されりゃあそのまま地面の下で助からねェぞ!!!」
「ジハハハハハハ!!! 逃げろ、逃げろォ!!! お前らのような小者にはお似合いの姿だ!!!」
「だ、だれが小者だァアアア!!! 調子に乗るなよ!!!」
哄笑するシキに、小者扱いされたスターがキレる。
ウソップに“スターシップ”を貸している事もあって、温存していた力を解放し“スターオーラ”を纏うと、“ビッグスター”を空中に生み出す。
「なにっ!!? なんだその輝きは……!!?」
「これでも喰らえ――“フライングビッグスター”!!!」
スターは“ビッグスター”をいつものように墜とすのではなくて、バブン! と投げ飛ばした。
クルクルと回転しながら飛ぶ巨大な星は、シキが作り出した無数の獅子頭を次々に弾き飛ばしていく。
「コイツ……! 能力が良いだけのただのルーキーかと思えば……! “覇気”を覚えていやがったのか……!」
「“スターオーラ”だ!!!」
「また、それかよ……。何なんだ“覇気”ってのは……」
スター的にはいつもの返しだが、サンジは
それが“新世界”へと踏み込むために重要なものなのではないかと思い始めていたのだ。
だが、そんな事を考えている暇はない。
「スター、星の足場をくれ!!! 逆回転で頼む!!!」
「逆? こういう事か?」
スターはサンジの望み通りの足場を用意した。
サンジはそれに跳び乗ると、その上で左足を軸に回転する。
サンジ自身の回転による熱と星の逆回転によって生まれる熱が合わさり、いつも以上の高熱をサンジは足に帯びる。
赤ではなく青色の炎からなる高熱だ。
「合作――“
思った以上の高熱に、サンジは内心でこの状態が長くは持たないと悟る。
しかし、この技の威力は間違いなく普段の数倍。
“覇気”だか何だか知らないが、それがスターのように攻撃を強化する技なら、これでとんとんだろうと、スターが意図を察して用意してくれた、シキに向かって一直線に続く飛び石のような足場を一気に駆ける。
やはり完全な空中戦よりかは、地に足がついている方がイイとサンジは駆けながら思う。
「“
最後に星を一蹴りして跳び上がると、“フライングビッグスター”を黒い腕で弾き飛ばした直後の無防備なシキへと連続で蹴りを叩き込む。
「ぐぉおおおおおおおおおおっっっ!!!??」
「やった……!!?」
シキが地面へと蹴り墜とされる姿を見て、チョッパーが声を上げる。
たんっとそのまま地面に着地したサンジは膝をついて、シキの倒れた場所を窺う。
「手応えはあったが……ぐっ……!」
足を触った手にジュッと熱を感じる。
コックとして火を恐れるような事はないが、やはりこの技は今のサンジが使うにはまだ早かったようだ。
「…………20年か。ずいぶんと鈍っていやがる」
地に倒れ、空を見上げて呟いたシキがゆらりと立ち上がる。
25年前には海賊大艦隊の大親分として名を馳せ、後の“海賊王”ゴールド・ロジャーや“四皇”白ひげともバチバチにやり合っていたのに、今はルーキーの一撃に墜とされている。
「新時代の突き上げ? それがどうした!!? おれが本物の海賊の力と恐さを見せてやるぜ……」
シキの“覇気”が見物人のクロやクリークも含めて、ビリビリと凶暴にその意識を刈り取りに掛かる。
「「「「「!!!」」」」」
そしてそれは思ったのと違う形の戦いの終わりを呼び込んだ。
その高いプライドから、意識を奪われる事に抵抗したクリークの撃った一発の銃弾、それを“スターオーラ”で強化されているが故に素手で払い除けようとしたスターに異変。
「なっ……力が抜ける……“海楼石”の銃弾……!!! 悪ぃ、油断した……!!!」
それはルフィという悪魔の実の能力者に敗けたクリークが備えとして用意していた切り札のひとつだった。
“海楼石”の銃弾によって、スターが墜ちた事により、スターの能力は全て消失……まだ空にいたチョッパーと一緒に大地に墜ちる。
「スター!!! チョッパー!!!」
「ぐっ……」
「うべっ、痛ェ!!!」
「チッ……シラける事をしてくれる。だがまあいい……。思い通りの決着がつけられないなんてのはよくある事だ」
シキはその処刑によって終わってしまったロジャーとの戦いを振り返り、くだらねェと“覇気”を治めると、息を吐いた。
興味が失せたとばかりに、軽く手を振って、フワフワの実の能力を発動させる。
再びせり上がる大地。
麦わらの一味はなんとか逃れようともがくが、大地に囚われている以上は逃れようもなく――。
「ジハハハハハハッ!!! 戦いの終わりだ……麦わらの一味!!!」
一方その頃……。
例えばそれが漫画なら扉絵になるような冒険をして、残る仲間達を集めて、スター達の前に救世主よろしく現れるはずだったウソップは。
最後迷った事もあり、ギリギリでそのタイミングに間に合わず。
何とか戻ってきたメルヴィユ上空にて、突如消失した“スターシップ”のせいで、その集めた仲間達と共に、絶賛墜落中であった……。
どうも、お久しぶりです。
作者がこの作品を放置している間に原作は何やら20周年を迎えたようで、スゴイなーとか思って、久しぶりに自分の書いたものを見返してたら、投稿できるだけの文量が書き終わってる事に気づいたので、チラシの裏で投稿しておく事にしました。
投稿のし忘れというか……うーん、書き足しでもしようとしてたんですかね。
覚えていないので投稿しちゃいますが。
そもそも他の作品はともかく、この作品は一区切りつけたと思い込んでたんですけど。
どうやら、頂上戦争のクライマックス辺りを先に書いてしまった事で勘違いしていたようです。
しばらくサイトを離れてたってのもありますが、作者あるあるの自己完結ですね。すみません。
まぁそんな事ばかり言っててもあれなので、今回の話について少しだけ。
とりあえず、なんかサンジがスターの協力で新技を使ってますね。
これはあれですよ。
書く書かないは別として、2年後のサンジ強化案のちょい出しみたいなやつですね。
かなり安直な強化方法なので、同じような技を考えた事がある人もいるかもしれませんが、変に捻っても微妙になりそうなのでそのまま採用してます。
原作で新技が出たら普通にそっちを採用するでしょうけど、この作品だとスターが仲間に飛行能力を付与できちゃうせいで、空飛べるだけの強化だと微妙なので、こうなったはずです。たぶん。
ゲームなら料理バフが使えるキャラとかスゴイ役に立つはずですけども、その効果で強くなってもよくわからないですしね。
最終的には黒足だけに覇気ブレンドの黒い炎とか纏い出すはずです。……見聞色のようだけど。
あとはシキとの戦闘が展開の都合上で三人になっちゃったので、ちょっと強い技出した上で敗けてもらうかみたいな。
まぁシキが蹴散らすというか、スターが勝手にやられた感がありますが。
ゾロ辺りが一緒にやられてくれると、ルフィが何とかしないと倒せない強キャラ感みたいなのが出るんですけど、この作品だと状態リセットされてないので、ゾロはボロボロですし、ウソップが連れて来たら全員集合しちゃうしで合流は見送りで。
どうせルフィも不在なので。
ヨサクとジョニー? あいつらは顔出ししただけです。特に活躍する場面はありません。
他の強化案としては、今なら、ヴィンスモーク家のヒーロースーツみたいなので、武装色による強化と同等の効果を得るとかもありかもしれません。
サンジにはサポートキャラじゃなくて、戦闘キャラであって欲しいですがどうなんでしょう。
まぁ一番効果的なのはサンジの靴底に海楼石を仕込んで能力者キラーにする事ですが、簡単に敵を弱体化させる事が出来ちゃうと戦闘の派手さが減りますからね。
それはたぶんしないかな?
スターはそれでやられてますが……。
それよりも、何だかまた後書きが無駄に長くなってきたので今回はこの辺で。
作者は世界を救うのが趣味なので、続きは少なくともロトゼタシアを救った後になると思います。
まぁこの主人公が世界を救う系なのかは知りませんが。それではまたねー。
どうも、こんばんは。
このまま放置してると忘れてしまいそうだけど、1話分には足りないというか、ちゃんとした更新だと検索の上に上がってしまうのでとりあえずというか。
この後書きで少しだけ次の話を載せておきます。
ちゃんと完成してから読みたい人は、スルーしてください。
「みんな――っ!!!」
それまでこっそりと様子を窺っていたナミが、スター達の敗北に、思わずといった感じで飛び出してくる。
「おぉっと、ベイビーちゃん、自分から出てきてくれるとは、感心な事だ」
「シキ……!」
腕を広げて歓迎の様子を見せるシキに対して、ナミは怒りや憎しみの籠った目を向けた。
“輝き”が墜ちた所為なのか、曇天となった空の下、スター、サンジ、チョッパーの三人は、墓標のようにせり上がった大地のオブジェに囚われている。
大地に埋まりながらもシキの意向で顔だけは見えるようになっているのだが、みんな意識はないようで、ピクリとも動く気配がない。
「安心しろ。殺してはいない。だが、ベイビーちゃん。こいつらの命が、お前の返答ひとつに掛かっているという事は当然理解してるだろうな?」
「っ!」
シキは懐から取り出した葉巻をスパーと吸って、ナミに答えを迫る。
「私があんたの仲間になれば、こいつらを……それに
「ジハハハハハハ……そりゃオメェ。おれは何より仲間を大切にする男だ。仲間の故郷ならおれは手を出せなくなるってものよ」
ナミは手首の金色のリングに触る。
故郷を出る時に義理の姉であるノジコに貰った物だ。
「(私はどうすれば……っ)」
答えが出せないナミの足下にカランと石が転がってくる。
「え……?」
疑問に思うより早く、すぐにボゴンッ! と大地が爆ぜる音がした。
「や、やめろナミ……! そんな事、ルフィが許さねェ……!」
「スター!!?」
バッと振り返ると、わずかな気絶で済んだのか、意識を取り戻したスターの上半身が大地から抜け出ていた。
「何ィ……? テメェまだ抗う気か! そもそも海楼石はどうした!」
「能力が使えないと人は戦っちゃいけねェのか……? そうじゃねェだろ……。人が戦うのはどうしても譲れない何かがあるからだ……! 何もないなら素直におれさまのファンになって人生を謳歌すればいい!」
「なるほど……さっぱりわからん!」
間違いなく海楼石の銃弾はまだスターの腕に埋まっていた。
ジワリ……とスターのスター服にも血が滲んでいる。
そうでありながら、能力に頼らず、弱体化した腕力だけで無理矢理抜け出そうとしているスターに対して、シキは理解不能とその言葉を切り捨てた。
一方でスターも抜け出し作業の中で自分の状態を確かめる。
「(“スターシップ”との繋がりが消えてる……。すまないキャプテン……。みんな……。でも、今は――!!!)」
意識を失った事がキッカケでスターとの繋がりが消えた“スターシップ”は、スターパワーの補充が効かずに通常ではあり得ない消失をして、ウソップ達を危険に曝しているに違いなかった。
それでもだいぶ近くまで来ていた事はスターにはわかっていたし、何よりあの仲間達がそう簡単に死なない事も信じていた。
だから、自分の失態を悔やむ前に、スターは今やるべき事に全力を向ける。
「おれさまはホシホシの実を食べたからスターになったんじゃない……!!! 幼少の頃からスターくんスターくんとご近所でも評判のスターだったんだぜ……!!!」
ツッコミはない。
この状況ではさすがにナミもツッコまない。
そうこうしている間にスターが完全に大地から抜け出す事に成功する。
「ナミは渡さねェ……! ハァ……! そうさ。ルフィだけじゃない。おれさまだって許さないぜ……! 引き抜き工作は他所でやれ……! ナミは――うちの航海士兼マネージャーだ!!!」
スターはスターなりのファイティングポーズ、いわゆるカッコイイポーズを取って、戦いを続行する事をアピールする。
そんなスターの様子にシキは苛立たしげな声を上げた。
まがりなりにも海賊相手だ。
命が脅しにならない事はままある。
しかしそれでも、歴戦の大海賊であるシキをもってしても、スターという存在はまるで未知の生物のように思えた。
「テメェ、一体何なんだ……。そんな状態でおれに勝てるつもりか? たった今おれに敗けたばかりだろうがァ!!!」
「勝手に戦いを終わらせておいてなに言ってる!!! お前がおれさまの限界を決めるんじゃねェ!!!」
シキに加えてクリークにクロ。
海楼石によって能力を封じられ、そうでなくても勝ち目はほぼゼロ、しかしそんな状況でこそスターは不敵に笑う。
「三人まとめてかかってこい……!!! 全員ぶっ飛ばしてやる……!!!」
スターの啖呵に最初に応えたのはシキではなく、スター達がまとめてやられる原因にもなったクリーク……。
「――ハハハ。それでおれ達の注目を集めてるつもりか? スターとか言ってる割には芸がないな。お前の仲間のコックと動物はいまだに意識を失ったまま……そこにおれが毒ガスを打ち込んだらどうなる」
「!」
「何を……!!?」
「対等なんかじゃねェ。お前がどれだけ粋がろうと、お前達は敗けたんだ。無駄なあがきはやめて素直に命乞いでもしたらどうだ」
スターはちらっと視線をいまだに大地に囚われたままのサンジとチョッパーに向ける。
「……死んだら終わりだ」
「フ、そりゃそうだ。命乞いをする気になったのか?」
「違う。あいつらが死んだらお前達が終わりだ。おれさまのファンにはなれなくなる。だからおれさまのファンになりたかったら、仲間に手を出すな」
「アァ゛!!? 何を言ってやがる……!!!」
「おれさまは本気だぞ!!!!! 後悔したくなければ、セコイ事を考えてないで、正面からおれさまと戦え!!!!!」
スターの身体が点滅する。
海楼石によって封じられた能力と、海楼石では封じる事が出来ない覇気が、スターの激昂を現す異常として身体に現れていた。
「馬鹿が……! どっちが後悔するのか思い知らせてや――」
「待て」
スターの忠告を無視して、毒ガスの照準をサンジ達に向けたクリークをシキが手を上げて制止する。
「いい啖呵だ。気に入った」
「アァ゛!!?」
クリークが不満を声に上げるがシキはそれを無視した。
「ベイビーちゃんを手に入れる事を除けば、ただの暇潰しのつもりだったが、お前の覚悟を認めて、海賊として真剣に相手をしてやる」
「海賊として……?」
この状況をどうやって切り抜ければいいのかと必死に頭を回転させていたナミが、シキの言葉にもしかしたら風が向いてきたかもと反応する。
「仲間を賭けての決闘……。そう、殺し有りの本物のデービーバックファイトだ!!!」
「ルール付きで戦おうっての?」
「そうじゃねェさ。今の若い世代は、ごっこ遊びのようにその名前を使っているが、実際には海賊同士の血みどろの決闘をそう呼ぶ。仲間がどれだけ無残に殺されようと、最初に誓ったその仲間の名誉に懸けて、奪われた人間は決して裏切る事を許されない」
「……それで賞品が私ってわけ?」
「そういうこった。こいつを見てお前らがどういう海賊かはわかった。ベイビーちゃんもだ。おれの下に来るフリはしても、結局仲間は裏切らねェ。だからその仲間の名誉に懸けておれの下に来てもらう」
命を懸けた血の誓約。
どれだけ憎い相手の下に行く事になろうと、誓約に同意した仲間の名誉の為には決して裏切れない。
それが本物のデービーバックファイト。
自分に従わない強者を従わせる為に、仲間の結束を利用し、それを皆殺しにした上で従わせた、ある一人の強欲な海賊が生み出した凄惨な儀式だ。
「(チッ……デービーバックファイトだか何だか知らんが、ここでトドメを刺さないとは存外シキの野郎も甘い……。まあいい。それでもシキの実力は本物だ。
クロとクリークの内心はそんなだったが、ここで動く気はないらしい。
それを察したナミは、この流れに乗るべきだと感じた。
「……スター、信じていいのね?」
「ナミ、イイ事を教えてやる。真のスターは期待を裏切らない。期待以上のパフォーマンスをしてみんなを喜ばせるだけだ」
ナミはスターの言葉に一度目を瞑ると頷いた。
「わかった。――必ず、助けにきて」
「助けに?」
「シキ!!! 私はあんたの王宮に戻るわ!!!」
「そこを決闘の場にすると?」
「そうよ。あんたの王宮にいる私を、麦わらの一味が奪い返しに来るわ。あんたはそれを王宮で迎え撃って、もしあいつらを撃退できるようなら、私はあんた達の仲間になる。いえ、仲間にしてくださいと自分から言う事になるわね」
ナミは決意を込めた目を向ける。
もはや戦いは避けられない。
自分達の進退だけでなく、
ナミは冷静に時間を稼ぐ提案をしながらも、後は仲間達を信じるくらいの事しかできない。
「なるほどなるほど……。こいつらが仲間を揃えて乗り込んでくればおれに勝てると言いたいわけだ。――いいだろう。その提案に乗ってやる。そしてすっきりとした気持ちでおれのものになれ、ベイビーちゃん」
シキはナミの腰に手を回すと、ナミを抱えたままフワフワと浮かび上がる。
「おれはこの計画の為に20年待った!!! だから、あと少し、お前らが集まるのを待ってやるくらいの気持ちは持ち合わせている。せいぜい万全の準備をして乗り込んで来い!!! おれが創る新時代の生け贄として丁重にもてなしてやろう……!!!」
ロジャーではなく、な……とシキは内心で付け加える。
大海賊時代の幕開けによって、数だけ無駄に増えた海賊達、シキはそれら有象無象の連中に本物を見せつける事も目的としていた。
いや、野望の大部分を占めていると言ってもいい。
結局のところ、シキ自身もロジャーという伝説となった男の引力に囚われたままでいる一人だった。
~~中略~~
スターは空へと消えていくシキ達を見送った。
正確には能力が使えないので、見送る事しかできない。
だが、そんな事でスターの気持ちが落ちる事はない。
絶望している暇があるなら、これからの事を考える男だ。
スターはすぐに行動を開始した。
まずは大地に囚われたままのサンジとチョッパーの救出だ。
そしてチョッパーに腕の弾丸を摘出してもらう。
「チッ……」
大地のオブジェはかなりの高さまでせり上がっている為に、自力で脱出するのはともかく、掘り出すのは少し面倒そうだったのでスターは舌打ちした。
「「スターの兄貴!!! おれらも手伝います!!!」」
「おお……お前らいたのか」
「すんません! なんでか気絶してました!」
スターに声を掛けてきたのは、賞金稼ぎ時代のゾロの子分であるヨサクとジョニーの二人。
偶然この場に居合わせる事になった二人は、スターによってナミや村人の事を任されていたが、あまりの戦闘の規模にビビってオタオタしているうちに、シキの覇気によって気絶してしまっていたようだ。まぁ仕方のない事だろう。
「ほんとすんません兄貴達……! すぐに、すぐに掘り出しますんで……!」
「くそォ……! 何の役にも立たねェで……みすみすナミの姉貴を連れて行かれちまうなんて……! ゾロのアニキに顔向けできねェ……!」
そんな二人とスターに近づく影……。
「「「!」」」
「おれが、何だって……?」
それは麦わらの一味でも戦闘に特化した、世にも珍しい三刀流の戦闘員。
「「ぞ、ゾロのアニキ゛ィ~~~~~!!!!!」」
~~中略~~
「――で? こいつら、何してんだ? つーか、お前らもなんで居んだよ!」
「そ、それは……」
大地のオブジェを怪訝そうに見上げるゾロに、かくかくしかじかと、身振り手振りを交えながら、ヨサクとジョニーの二人はこれまでの経緯を説明した。
話を聞いてゾロの顔が険しくなる。
“スターシップ”が消失して、放り出された後、戦闘の気配を感じて、この場に来たのは確かだ。
しかし、その結末が気にくわなかった。
「だらしねェ……。スター、お前もこいつらも、そのシキとかいう野郎に敗けたって事か」
「まだ敗けてねェよ!」
「フン……」
「で、でも、兄貴。実際あのシキってのは、本当にとんでもねェ野郎で!」
「相手がどうかじゃねェ……。絶対に敗けちゃいけない戦いってのがあるだろうが。――まぁ今更言っても仕方ねェ。お前らにできねェってんなら、おれがそのシキって野郎を斬るだけだ。とりあえずこいつらを掘り起こすぞ」
「「へい!!! アニキ!!!」」
そして、掘り起こされたサンジとチョッパーは、しばらくの後に目を覚ました。
事情を聞いたサンジは自らのふがいなさに地面を蹴り、チョッパーも俯いていたが、スターの要請ですぐに弾丸の摘出に取りかかる。
「……おい、ロビンちゃんや他の連中は?」
チョッパーが治療する横で、サンジがゾロに尋ねる。
「まぁ……たぶん無事だろうが、ここにはいねェ。合流まで後少しってところで、急に“スターシップ”が消えて、結構バラバラに放り出されたからな」
「そうか」
「……悪ぃ」
「いや、それはべつに構わねェ。問題はそれ以外の全部だ」
「――ってるよ! 野郎をぶっ倒して、ナミさんは必ず助け出す!」
「できんのか?」
憤るサンジ、そしてスター達にゾロが腕を組んだまま冷静に問いかける。
「あァ?」
「お前ら三人いて敗けたんだろ」
「うるせェ! 次は敗けねェよ! なァ!」
「ああ……ナミは必ず連れ戻す。ルフィとの約束だ」
「そうか……まぁ、無理なら早目に言えよ。おれが斬ってやる」
「マリモヘッドが偉そうに……」
「誰がマリモヘッドだ! てめェから斬るぞ!」
「おーおー、上等だ! やれるもんならやってみやがれ!」
結局、いつものようないがみ合いを始めるゾロとサンジだが、スターの腕を治療していたチョッパーは、ゾロに視線を向けると心配そうに尋ねる。
「ゾロ……お前の方こそ大丈夫なのか? あんな大怪我してたのに吹き飛ばされて……全然休めてないよな?」
「大丈夫だ。貧弱なコック辺りと一緒にするな」
「んだとこらァ!!! てめェって奴はイチイチそういう事を言わねえと気が済まねェのか」
「お前に言われたくねェよ」
「ま、まーまー、兄貴達落ち着いて。今はナミの姉貴の事でしょう?」
「「わかってるよ!!!」」
「ひぃー……!」
~~中略~~
思ったより意識を失っていた事もあり、スター達が決戦の準備を整え、“スターシップ”に乗り込んだ頃には、空は夕暮れから夜の色へと移り始めていた。
ヨサクとジョニーには村の人間を人質に取られないように守ってもらうという建前で残ってもらった。
ルフィがいない上に、シキに三人がかりで敗けたという事もあって、さすがに二人を連れていく余裕はなかったからだ。
二人もさすがに自分達が戦力不足だというのはわかっていたようで「御武運を」と、麦わらの一味の勝利を信じる言葉を託して、一味を見送った。
そうして、一味はかつてクロコダイルと戦った時のようなノリで、シキの王宮へと突撃を仕掛ける。
「ヨホホホホ! お待ちしてました」
「遅かったわね」
「暴れる準備ならできてるぜ」
王宮をぶち壊しながら、降り立ったスター達のもとに、バイクのようなこの島の
「キャプテンは?」
「残念ながら合流できてねェ」
「事情は?」
「さあ? 詳しい事までは知らないわ」
「みなさんが怒ってるんです。私達が戦う理由ならそれで充分!」
「そういうこった!」
一味は周囲の騒がしさを気にせず、最低限の会話を交わす。
怒りは内に……爆発の瞬間に備えたまま、一度はシキに案内された道を歩くスターに続く。
ルフィ不在の麦わらの一味において、今回その代役となるのは目立つ事に定評のあるスター、これまでの航海の中での実績からもそれに不満を覚える者はいない。
加えて、シキとの戦闘はその能力から、必ず空中戦になる。
同じく空を飛べるスターが戦闘の要になる事は決定事項のようなものだった。
王宮の大廊下をスタスタと歩き、一味は多数の気配を感じる大広間の襖を開いた。
「なんだ!!? てめェら!!!」
「殴り込みか!!?」
「どこのモンだ!!?」
中にはシキが集めた同志――いろんな海賊団の船長が集まっており“集会”が行われている最中だった。
スター達のために集めたのかとも思ったが、事情を理解しているシキ達以外の反応からするとどうやらそうでもないらしい。
一味の突入タイミングがちょうどそれに重なっただけのようだ。
だがそれを運が悪いなどとは思わない。
ここで全部ぶちのめしてシキの野望を打ち砕く。それでいい。
「……来たか。待ちわびたぜ。麦わらの一味」
「麦わら……そうか! こいつら、あの麦わらの!!!」
「シャボンディ諸島で海軍にやられたって聞いたがなんでこんなところに……!!?」
「そんな事より、ナミは無事なんだろうな?」
「ベイビーちゃんは今回の賞品だ。そりゃどっかにはいるだろうよ。探してみな。おれ達を倒してな――さあ、どっちが生き残るか。デービーバックファイトの開戦だァアアアアア!!!!!」
シキの合図に、その場に集った海賊達の怒号が響き渡った……。
~~中略~~
「しまった……! もう始まってやがる……! あいつら、おれが到着するまで待つ事もできねェのか!」
王宮からの戦闘音に、ようやくその音が届く場所まで辿り着いた長鼻の少年が、怒りながらもその場所に行こうと足を動かす。
その少年――誰あろうC・ウソップ。
スターに代わり“スターシップ”に乗って仲間達を集めた、本来なら最大の功労者でありながら、最終的に迷ったり墜落したりでグダグダになりその称号を逃してしまった悲運の男だ。
そして今も、他のメンツと違って、島の
だが、それが逆に幸いしたのか、シキの王宮周りに植えられているダフトグリーンの傍で、その姿を発見した。
「! え??? はっ……!!? ナミ!!?」
ウソップが発見したナミの身体は、ダフトグリーンの毒に冒されて、緑色の痣が浮かび上がっている。
スター達が村で見たダフトという病気の症状だ。
ナミはダフトグリーンの傍に拘束され、無理矢理にその症状を発症させられていた。
「ウソッ……プ……?」
「ナミ!!! オメェ何でこんな事になってんだよ!!?」
ウソップは“スターシップ”が消失した事で、スターに何か異変が起きた事は察していた。
そしてこの島で何かが起こるとすれば、それには当然シキが関わっているだろうと、これまでの経験から答えを出していたが、細かい事情は当然だがわかっていない。
「ヘマ……しちゃってね。この、ダフトグリーンさえ……どうにかすれば……この島の猛獣達がシキに……大打撃を与えてくれるかもって……そうすれば、あとは……」
ナミはデービーバックファイトを承認して、スター達の前から去っていったが、それだけで自分の役目が終わりとは思っていなかった。
あんな会話を交わした直後に裏切るバカはいないという思いを逆手にとって、必ず乗り込んでくるであろう一味のために、シキに大打撃を与えるための行動を開始したのだ。
だがそれは失敗――映像電々虫に暗躍している姿が映ってしまい、シキを怒らせて現在に至る。
「わ、わかった……! もう喋るな……! あとはおれに任せろ……! この植物をどうにかすればいいんだろ……!」
ウソップはそう言ってナミをその場から少し移動させると、ダフトグリーンと向かい合った。
~~中略~~
空に流星が瞬いている。
それは“輝き”のプトレマイオス・E・T・スターと“金獅子”のシキ。
二人の海賊による戦闘の軌跡――。
シキの開戦の合図と共に、普段使う“スピードスター”よりも突進力を増した“ロケットスター”によってスタートを切ったスターは、他には目もくれず、シキと激突、宮殿の天井をぶち破り外へと飛び出した。
スターの拳を掌で受け止め、背中で宮殿の天井を壊す役目を負ったシキは、しかし欠片のダメージもないのか不敵に笑う。
「少しは楽しませてくれるんだろうなァ、ルーキー!!!」
「大御所ぶってるな。だけど、いい加減そういう評価は聞き飽きた!!!」
バチィ!!! とお互いの圧力が弾け、二人は少し距離を取った。
距離が出来てすぐ、二振りの“スタービームソード”、更には無数の星がスターの周りを飛び回る。
「ジハハハハハハハ!!! 威勢だけは良いな!!! 大変結構!!!」
シキは自らの足と化した愛刀“桜十”と“木枯し”で自らに向かってくる星を斬り落とし、ビームを避け、その合間から飛び込んでくるスターの突撃にも対処する。
縦横無尽。
空中にいる為360度あらゆる方向からの攻撃の応酬が二人の間で行われている。
「うおっ……!!?」
スターの進路に浮島が割り込む。
危うく衝突するところだ。
スターは瞬間的に停止して旋回するが、それをやらかした人物を睨みつける。当然シキだ。
「ジハハハハハハハ!!! 知らなかったか? メルヴィユを構成する空島群は全ておれの能力により浮かんでいる。つまりやろうとさえ思えば、おれはそれを武器に出来ると言う事よ!!!」
「そう言えばそんな話を聞いたな……」
スターは冷静に呟くが、しかしこれは、面倒が増えた。
浮島を使った攻撃、シキの飛び道具の種類が増えてしまったということだ。
今のように進路妨害で済めばいいが、ものによっては、スター自身が使う“ビッグスター”以上の質量、破壊力を持った攻撃になるだろう。
人も暮らせるほどの島との力比べなんて、さすがのスターでも洒落にならない。
「しかしよく避ける。花丸をくれてやろう!!!」
「いつまで上から目線だ!!!」
「そりゃ仕方ねェ。お前とおれの間には圧倒的な“格”の差が存在している。確かお前の懸賞金は2億いかないくらいだったか?」
「そうだ。それがどうした」
「――25億。それがおれの首に懸かった賞金だ」
「!」
14.0625倍。
それがスターとシキの間にある“格”の差。
「……」
「フ、いままで闇雲に目の前の壁にぶつかってきたんだろう。その壁の全体像が見えた気分はどうだ。言葉もねェか?」
黙り込んだスターをシキが嗤う。
だが――。
「シキ、お前20年待ったとか言っていたな」
「そうだが?」
「なら今のお前の価値はせいぜい5億だ。この世界は第一線から退いたお前から興味を失った。今はおれさま達の時代だ!!! 過去の栄光に縋るだけなら、そのまま隠居しておれさまの活躍を楽しみに生きてろ、ジジイ!!!」
「~~~つまりその答えは、今ここで殺してくれという意味だよな!!!??」
「素直におれさまのファンになってろって意味だよ!!!!!」
~~中略~~
(麦わらの一味の活躍アレコレ※また今度追加します)
~~中略~~
スターの言葉にブチ切れたシキはメルヴィユから切り離した海を操る。
「なっ……」
「おれは今までも本気だった!!! お前と本気で
「海が……!!?」
「どうだ……? これがおれの力の真骨頂。すべての悪魔の実の能力者が嫌う海……おれの能力は、それすらも支配する!!!」
海が逆巻いて獅子の形になり、空をフワフワと
……確かにシキの能力ならそれが可能だ。
スターは最初、シキが操った水の塊ひとつに無力化させられた事を思い出して舌打ちした。
「おれはこの力と大艦隊の兵力、さらには長い月日を費やした完璧な計画で、この世界を支配する目前まで行っていた。あの男――忌々しい、ロジャーがおれの誘いを断りさえしなければ!!! 」
「知るか。それはお前にスター性が足りなかったせいだ」
「アァ゛!!?」
スターは襲いくる海を――津波のような圧倒的な自然の驚異を、何とか回避しながら反撃の瞬間を狙う。
「ちょこまかと抵抗するな……!!! どこへ行こうと、皆殺しの運命に変わりはない!!!」
「おれさまの運命はとっくに自分で決めた!!! 今更お前が出る幕はねェ!!!」
――とは言うもの、だ。
シキの創り出した海獅子は、単純な突進もさることながら、口からレーザーのように水を射出したり、泡のように水の塊を配置したり、鬣を針のように飛ばしてきたり、そういった弾幕を避けるだけでも、かなりの労力を強いられる。
そのどうしようもなさから逃げ回っていたスターだが、このまま逃げていても活路はない。
「これで――!!!」
スターは右手の“スタービームソード”を海獅子に対抗できる長さまで伸ばし、その握りを放すと、多少なりと弾幕を防いでいた周囲の星のように回転させる。
いや、星ではなく月。円月輪。
スターは巨大な
「無駄だ!!! 海を斬ってどうなる!!! おれの技はどれも斬った程度じゃ止まらねェ!!!」
「地獄へ落ちろ――“
迫る暴力、スターは咄嗟に握ったままだった左手の“スタービームソード”を伸ばして近くの浮島の岸壁に突き刺し、一気にそれを縮める事によって進路を変更、その場からの離脱を試みたが、それは誘導されただけの
「バカが!!! 浮島もおれの支配下だと言ったはずだ!!!」
「!!!」
スターの思いとは裏腹に、三頭の海獅子へと向かっていく浮島。
スターは“スターオーラ”を全開に“ヘキサグラム・フィールド”を張るものの、パリン! と軽い音がして、スターの身体は海獅子の突撃で浮島の岸壁へと強く叩きつけられた。
「あが……ッ!!?」
遠のく意識に軋む身体、スゥ――っと“スターオーラ”が消えていく。
だが、完全に消えるかと思われた矢先にスターの腕が動き、岸壁を叩いた。
その直後、再びスターの身体から“スターオーラ”が噴き出す。
「ほう。まだ動くか。耐久力だけはなかなかだ。その変わった“覇気”のせいか? それとも悪魔の実の特性で体質が変わっているのか?」
「ハァハァ……知るか!!!」
「だがなぜそうまでして戦う事を選ぶ。仲間のためか? 見捨てりゃそれで終わりだ。そっちの方が簡単だとは思わねェのか」
「ハ……何言ってんだ。見捨ててもいいような相手は仲間と呼ばねェ」
「なるほど。そりゃそうだ。悪い事を言った。そのためのデービーバックファイトだったな」
スターは岸壁を蹴り、最大加速でシキに突っ込む。
距離があるとシキの能力が強すぎる。
しかしその規模ゆえに、近距離ならばと考えた。
人一倍格好を気にするスターらしくない泥臭い殴り合い、いつものルフィのような戦い方だ。
「オォオオオオオオオオッッッ!!!!!」
“スーパースター”状態の“スーパースターパンチ”や“スーパースターキック”が黒腕、黒刀の脚のシキとぶつかり合う。
常人では目で追うのも難しい、衝撃音だけが響く高速戦闘が空中で行われている。
何十回目かの衝撃音の後に二人が別々の方向に弾け飛び、それを幸いとシキは海獅子を操り――スターはそれに対抗するために“スターシップ”に飛び乗って、海獅子へとそのまま突っ込んだ。
「何ィ!!?」
そして海獅子内部の激流と圧力をボロボロになりながらも耐えきった“スターシップ”から飛び出すと、再びシキに殴り掛かり格闘戦へと引きずり込む。
シキはその状況を嫌い、スターを殴ると同時に、フワフワの能力でスターに浮力を与え、反対方向に引き離そうとしたり、他にも感覚を惑わすような細かい変化を加えるが、スターは星の浮力を使って上手く対応、瞬間のアドリブ力を発揮して切り抜けていく。
結果、高速ながらに何十分と殴り合いが続き、二人の体力が徐々に削られていく。
研ぎ澄まされた時間、しかし不意に雑音が混じる。
それはシキが持っていた子電々虫の着信の音だったが、反射的にスターは距離を取ってしまい、シキもそれを追う事はしなかった。
だからと海獅子を出したりもせず、二人の暗黙の合意からなる小休止。戦場が止まる。
「ハァ……ハァ……ハァ……!!!」
「しつこい……小僧だ……!!! ハァ……!!!」
荒い息を吐くスターから視線は外さず、自分も肩で息をしながら、シキは懐から子電々虫を取り出し応答する。
「おれだ。どうした! ――何? 嵐?」
それはスターに有利な状況を作るためのナミの作戦だったが、しかしそれに異議を唱えたのはそのスター自身だった。
「……おい。針路は変えるな。その先は嵐だ」
「何ィ? ……お前にそれが分かるとして、なぜそれをおれに教える。お前にとって有利な条件になるとは思わないのか」
シキにとっての弱点は嵐。
そんなナミの考えは確かに当たっていたし、ここまで戦っていれば、スター自身が気づいていてもおかしくはない。
それともこいつは馬鹿なのか――シキは何となくそこに思い至る節が無いでもなかったが、自分と何だかんだで戦えている相手がただの馬鹿と言うのはどうにも嫌だった。
「――有利? どうしておれさまがこれ以上有利になる必要がある。どうせ超えるお前だ。そうだ。どうせなら、おれさまは――全盛期のお前と戦いたかった!!!」
そんなスターの言葉にシキは確信する。
こいつはただの馬鹿ではなく――大馬鹿者だった、と。
「フ……ジハハハハ、その大口嫌いじゃないぜ。ただしそれは、おれに楯突かなかったらの話だ!!! 囲い込め――“水琴窟”!!!」
「くっ……!」
戦闘再開。
距離が出来た事でシキに有利な間合い。
浮島からせり上がった大地が、フワフワとスターの周囲を壁のように囲い込んでいく。
「“獅子威し――添水”!!!」
カコーン! と海獅子が土壁の中に入り、スターを追い詰める。逃げ場は――ない!
「嵐の礼に教えてやる。おれは今が全盛期だ!!! お前が死ぬ気で来ようが勝てやしねェ!!! それがおれだ!!! ロジャーですら、嵐を使っておれから逃げた!!! いい加減に現実を思い知れ!!!」
「現実なら知ってる……。ハァ……だからおれさまはお前を超えていくんだ!!! おれさまが海賊王より下だと誰が決めた!!! おれさまの人気は海賊王ですらブッチギリだ!!!」
「何も知らねェ、小僧が!!! おれがそうだと言ってる時点で、それが真実だ!!!」
「ハァハァ……過去の海賊王なんて相手にならねェよ……。これからはおれさま達だ……そうだろ、ルフィ……!!!」
諦めを知らない奴だった。
だが――……今度こそ終わった。
シキはスターを閉じ込めた“水琴窟”を見てそう思った。
スターの声も もう聴こえない。
しかし、カ――ッ! と突然の輝きが土壁を破る。
「な、なんだ!!? いったい何が起こってる!!?」
シキは理解不能の事態に声を荒げた。
ボロボロと崩れていく土壁が渦のように回り、中心に居る人影――スターへと引き寄せられていく。
なぜか海獅子の姿もない。
「……“
これまでと雰囲気の違うスターが脱力したように呟く。
雰囲気が違って見えるのは、スターをあれだけ輝かせていた“スターオーラ”の輝き、そのすべてが空に向けた両掌の上に凝縮しているからだ。
スターはそこから両腕を伸ばし、それを頭上に掲げる。
すでに海を飲み込んだ青い輝きに、今度は土壁が、大地が飲み込まれていく。
「シキ、お前を倒す手段なら最初から持ってる」
「……切り札か。だが、今更お前が何を出そうとも、正面から叩き潰してくれるわ!!!」
それは一点突破の
たとえば、“スーパースター”状態のスターの能力を100として、シキがそれを軽く上回る500の能力を乱発できたとして、1対1の決闘なら、たった一度だけでもそれを上回る事ができれば勝利する事は可能だ。
いや、それを上回る必要すらない場合もある。
相手の能力ではなく、耐久力を瞬間的にでも上回り、問答無用で戦闘不能にしてしまえばいいのだ。
それを後押しするのはスターの若さと無茶と、決して折れる事のない強靭な意志。
そして命の燃焼具合。
本気を出しても全力は出さず、この戦いを後の戦争の前哨戦と考えているシキと、この壁を超えられなければそこで終わりのスターではやはりその熱量に差が出る。
挑戦者、格下ゆえのテンションの高さを、それでも格上の存在はいつも無慈悲に払う……が、その中でもしも、払えない存在が現れた時、時代は変わり、世代交代が起こるのだ。
スターはずっとシキを超えられるそのタイミングを計っていた。
実際その脅威はシキの想定以上、一瞬だがシキの頭にも逃げの考えが浮かぶ。
こんな大技を連発できるわけがない。
一回きりのまさに切り札。
これをどうにかやり過ごせば、避けてしまえさえすれば、勝利は確定するだろうと。
「(いや……何故おれがこんな小僧から逃げる必要がある!!! こいつは四皇でも元帥でも、ましてやロジャーでもない!!! おれが逃げる理由は――ない!!!)」
ここまでの粘りを見せたスターを相手にして、格上のプライドに懸けても、シキはその技を避けるという選択肢を選ぶ事はできなかった。
そう、今、時代が変わる時……!!!
「ルフィがいねェんだ。締めは派手にやらせてもらう……!!!」
スターの創り出した新しい星が、シキが再び創り出した獅子達をばくばくと飲み込み巨大化していく。
収束、圧縮、反転――そして、爆発。
青く美しい星にヒビが入り、卵のように砕け散ると、中から金色に光り輝く
「“金獅子”ィィィ!!!!!」
栄光のスターロード。
星に取り込まれた獅子は“輝き”に魅了され、スターのファンになった。
「ふざけるな……!!! おれが、おれがこんな……!!!」
黒い腕、そして“黒獅子”でシキは、自分の二つ名であるはずの“金獅子”と圧し合う。
バチバチと弾ける衝撃、もはや余裕もなくなり、シキの能力で浮いていた浮島群も次々に落ちていく。
そして――シキはついにその、スターが生み出した一瞬の“輝き”に圧し負けた。
「まさか……おれが負けるのか……!!? いったい何なんだコイツは!!! 海賊王でも何でもねェ! ただのルーキーのはずだ!!! これがロジャーの夢見た新時代の海賊の力だとでも言うのか!!? くそォ~~~!!! ロジャーーーッッッ!!!!!」
絶叫と共にシキの身体と意識が落ちていく。
その目に最後に映ったのは、いままでシキの意識に居座り続けた“海賊王”ゴールド・ロジャー、ではなく、突然現れた理解不能で不思議な“輝き”であった……。
「――シキ。お前の敗因はこんなスターを前にして、いつまでもよそ見をしていた事だ。だが、嘆く必要はないぜ。これがおれさまなんだ。それに、ルーキー時代も もう終わる……」
「揃ったな……」
スターはスター服越しに腕の×印に軽く触れる。
これで10人と1羽。
「野郎共ォ!!! 準備は良いか!!!」
「「「オォ!!!!!」」」
「目的地は――海軍本部!!! おれさま達はそこで行われる頂上戦争に乗り込んで、“船長”モンキー・D・ルフィとその兄ポートガス・D・エースを奪還する!!!!!」
「「「オォオオオオオッッッ!!!!!」」」
「待ってろ、ルフィ……!!! 頂上戦争で一番目立つのはおれさまだ!!! 目指せ、トップスター!!!」
「オ――いや……それは違ェだろ!!!」
ウソップのツッコミもそこそこに麦わらの一味は海軍本部を目指す。
そして世界は――。
あ、作者です。ごめんなさい。
数日前にシキとの決着を一旦ストップとかやったんですけど、よく考えれば次いつ更新できるか分からないしやっぱり出しとくことにしました。
この後はクロとかクリークとかと麦わらの一味の対決のところを書いて、後エピローグ部分をもう少し加筆して、戦争編に行くと思います。
それでは今度こそ次のちゃんとした更新で! またね!