「新技炸裂!!! “トリックスターボム”!!!」
スターが秘密地下VIPルームにいるB・Wのエージェント達に放った、無数の爆発する星によって、その決戦の火蓋は切って落とされた。
実はそれも演出用に過ぎなかった飛ばす事ができるだけの“トリックスター”に、戦闘用の攻撃力を持たせたその技の爆発に紛れて、それぞれが本能や相手の実力を察して、自分に適切だと思える相手に向かう。
ルフィは当然Mr.0、クロコダイルに。
ゾロはその次にヤバイ相手と見たMr.1に。
女性と戦う事を禁じているサンジはオカマであるMr.2に。
ウソップとチョッパーはコンビでエージェントの中で一番弱いであろう“Mr.4”と“ミス・メリークリスマス”のペアに。
ナミはMr.1のペアだとは知らずに女性だからと“ミス・ダブルフィンガー”に。
そしてスターは――リトルガーデンでルフィにやられた怪我が治っていなかったMr.3が、“トリックスターボム”からの追撃であっさりと倒せてしまったために、ビビと共にMr.0のパートナーであるミス・オールサンデーと対峙していた。
「ミス・オールサンデー……!」
「フフフ、驚いたわお姫様。まさか、わずかなお供を連れて、正面から乗り込んで来るなんて思わなかった」
「イガラムの仇……討たせてもらうわ!」
「あらあら、随分と強気ね。彼らが本当に勝てると思ってるの? 特に麦わらの船長さんが戦っているのは、あの、王下七武海の一人なのよ?」
「勝つわ! ルフィさんは絶対に敗けない!」
「そういうこった。ウチの船長をなめるなよ。ルフィのスター性はこのおれさまが認めざるを得ないほどに輝いてるんだぜ……!」
王下七武海のサー・クロコダイル。
元懸賞金8100万ベリーの海賊であるその男の真価は、その額面どおりの価値には収まらない。
クロコダイルは“スナスナの実”を食べた“砂人間”であり、“
そんなスナスナの力に冷徹な頭脳、知らずとも纏う事のある“覇気”に、後の脅威を見た海軍本部は、大幅にその懸賞金額を上げる前に交渉し、王下七武海として制御できる範囲内に止めた。
しかしクロコダイルはそういう海軍本部の思惑もほぼ理解した上で交渉を受け入れ、海軍の情報を得ながら水面下でB・W社を起ち上げる。
己の力だけで海軍本部の者達を出し抜いたのだ。
この事からも勢いだけのルーキーとは一線を駕す力と頭脳の持ち主だとわかるだろう。
そうじゃなくても、同じ王下七武海の“鷹の目”に、ルフィとそこまで戦闘力が変わらないはずのゾロとスターの二人は敗北している。
「そう。信頼してるのね。でも……それならあなた達はどうかしら? 私よりも強いのかしらね」
「当然だ。おれさまはスターだぞ」
「あら、そう」
「お?」
「“
ミス・オールサンデーが腕を身体の前面で交差させると、スターの身体に四本、地面に二本の腕が生えてスターを拘束した。
「ぐげ……!!?」
「スターさん! なんなの、この腕は!!?」
「フフ、私の能力よ。そう……私が口にしたのは“ハナハナの実”。身体の各部を花のように咲かせる力。これが私の能力よ」
余裕からか自らの能力を親切に解説してくれるミス・オールサンデーは、そう言って自分の身体にも数本の腕を咲かせてみせる。
「な、なんてこった……ファンと握手するのにとても便利な能力だ……あと、サインを書くのも……」
「そんな事を言ってる場合!!? 待ってて、今、引き剥がして――」
「残念だけど、そんな時間はないわよ。――“クラッチ”!!!」
「“スターオーラ”!!!」
「!!?」
六本の腕に関節を破壊されるその前にスターは力を解放した。
“スターオーラ”の効果により“スーパースター”状態になったスターは身体能力やら何やらが数倍に高まり、その関節技に耐えると、なんか無理矢理腕を引き剥がした。
「ふぅ……危なかったぜ。かつておれさまがファンの間で引っ張り合われたり揉みくちゃにされるという経験がなければやられていたに違いない……!」
「スターさん……ちゃんとファンいたんだ?」
スターのそんな言葉にビビはどこかズレた感想を漏らした。
「し、失礼なっ! おれさまはスターだぞ! いずれ世界一の
「そっ、そうなんだ……」
「ビビ……まさかお前がそこまでおれさまの事をわかっていなかったとは……。仕方がない……! ここは一度じっくりとおれさまのステージを――」
「ま、待って! 今はそんな事してる場合じゃないでしょ!」
今にもマイクとステージを出しそうなスターをビビは止める。
しかし敵のはずのミス・オールサンデーは、そのやりとりを面白そうに観察していた。
「あら、私の事はべつに気にしないでいいわよ。なんなら私もそのステージとやらに興味があるわ」
「なんだって!!? 悪の一味かと思えば、おれさまのファンだったとは! 危ない! もう少しでファンをブッ飛ばしてしまうところだった! それは大変なスキャンダルだ!」
「騙されないでよ、スターさん! あいつはMr.0のパートナーなのよ!」
「いや、それはどうでもいい。重要なのはおれさまのファンかそうじゃないかだ」
「ファンじゃないわ!!! そうでしょう、ミス・オールサンデー!!!」
「どうかしら」
含み笑いを漏らすミス・オールサンデーにビビは激昂する。
「だいたい、スターさんにそんなにファンがいるわけないじゃない!!!」
あっ……と思った時にはもう遅い。
ビビのそんな言葉に――スターはわかり易く拗ねて戦いを放棄した……。
~~中略~~
一方で――我らが船長“麦わら”のモンキー・D・ルフィ。
クロコダイルとの極限の一騎討ち。
“ゴムゴムの
「この、砂怪物めっ!」
「おれとお前では……海賊の格が違うんだ……!!! “
「うおっ!!?」
クロコダイルの攻撃はいちいち規模が大きく、両者の戦闘は地下から地上へと移る。
“スターシップ”が突撃した事で、避難しながらも集まる野次馬の前で、彼らは変わらず戦いを続けた。
「クロコダイルさまっ!」
「クロコダイルさんが戦ってるぞっ! レインディナーズにあんな無茶苦茶な事しやがって、相手はやっぱり海賊か!!?」
「頑張れー! クロコダイル!」
そんな彼らの戦いを見た民衆が応援するのは砂漠の“英雄”クロコダイル。
ルフィを応援する者の姿は一人もない。
「クハハハハ……悲しいな、麦わら。お前がどれだけ無駄な頑張りを見せたところで、お前を応援する者は誰もいない」
「関係ねェ。おれは海賊だからな」
ルフィは強がりではなくそう言うと、変わらずにクロコダイルに攻撃を仕掛けた。
「“ゴムゴムの鞭”!!!」
「いい加減に学習しろ麦わら。――“
「う……っ!」
クロコダイルの“砂”に捕まった自分の右腕を見てルフィはギョッと目を見開いた。
「腕が……っ!!? うわああああっ!!? 腕がミイラになったァ!!!」
「“砂”だからな……お前の腕の水分を吸収しちまったのさ」
「ハァ……じょ、冗談じゃねェ……!」
ルフィはそれを聞いて即座に駆け出すと、レインディナーズの周囲の湖にその腕を浸けて、自分も頭を突っ込み水を飲む。
「……ちっ」
クロコダイルがそんなルフィの姿を見て舌打ちする。
レインディナーズはレインベースオアシス――その湖の中央に建っているので、周囲には水が満ちていた。
「戻った……!」
「くだらん」
クロコダイルの“砂”の攻撃を躱し、ルフィは治ったばかりの右腕でクロコダイルに殴りかかる。
クロコダイルはその攻撃を、今までのように無視するのではなく、避けた。
「……!!?」
ルフィがそのクロコダイルの様子に違和感を覚えるが、考えが纏まる前に――現れた、乱入者の声に動きを止める。
「麦わらァ!!! それに、クロコダイル!!! てめェら、こんな町中で何やってやがるっ!!!」
その男、海軍本部大佐“白猟のスモーカー”。
ローグタウンからこちら、執拗に麦わらの一味を追いかけている執念の男。
~~中略~~
――視点は戻って、“海賊スター”。
変わらずに拗ねるスターを必死にビビが宥めている。
「ご、ごめんなさい! あれは、だから……その、違うの! つい本音が――じゃなくて! ついその場の勢いで言ってしまっただけなのよっ!」
「つーん」
「お願いだから戦ってスターさん! ミス・オールサンデーとの戦いには、あなたの力が必要なの!」
「……」
ビビの必死な願いに、しかしスターは動かない。
そもそもが、勘違いしているかも知れないが、もともと戦いがあまり好きではないスターだ。
戦うよりも輝いていたい男なので、ミス・オールサンデーも先程はともかく――問答無用で襲いかかってくるような好戦的な感じでもないために、頭の片隅では、ルフィの決着さえつけば戦う必要はないのではなんて考えていたりもする。
もっとも、拗ねているのはフリではなく本心からなので、そちらの理由の方が大きいのは間違いない。
スターは仲間に、自分のスター性を疑われた事が本当にショックだったのである。
麦わらの一味の強気組における、無敵のメンタルの持ち主かと思えば、意外と繊細な部分があったのだ。
「っ……! あ、そ、そうだわ! わかった! 私がファンになるわ! だからファンサービスで戦って!」
「ビビは仲間だからファンじゃない」
「えっ……」
ビビはその言葉に一瞬、感動しかけ――ああ、違う違うと頭を振って、考えを巡らせる。
「……わかったわ。この戦いが終わったら、アラバスタが元に戻ったら、国を挙げてスターさんをバックアップするわ! ファンクラブとかも作るわ! だから、その未来のファンのためにも戦って!」
その時、スターに電流が奔る。
アラバスタ王国の総国民数は1千万人にも届くという。
1千万人が自分のファンに……スターの身体をかつてないやる気が漲った。
発動はしたままだったが、萎みかけていた“スターオーラ”がバチバチと音を立てて噴き上がる。
それを見たビビは勝利を確信した。
怒ったり感情が昂った時のスターの力は、ルフィにも劣らない――場合によっては、上回っているのではと感じるほどに凄いからだ。
「あら……だったら、私もそのスターさんのファンになる事にするわ。だから無意味な戦いはやめましょう」
――やる気、鎮火。
「え、ええ~~~っ!!?」
「……スマン。一人でも1千万人でもファンはファンだ……! おれさまは、ファンに優劣はつけられない……!!!」
“海賊スター”の戦いは混迷の度を深めていく……。
~~中略~~
そして――こちらはシリアスな場面が続く“麦わらのルフィ”の戦い。
海軍本部大佐、スモーカーの言葉にクロコダイルが軽く応じる。
「クハハハハ……確かお前は海軍本部大佐のスモーカーだったかな? 何をしているって見ればわかるだろう。この国を脅かそうとする海賊を討伐しているのさ」
「……」
クロコダイルの言葉にスモーカーはルフィを睨む。
「なんだ、“ケムリン”! お前は引っ込んでろ! おれはクロコダイルをブッ飛ばしてェんだ!!!」
「引っ込んでろだァ? てめェは海賊で、おれは海兵だ。海兵が海賊を前にして引っ込む道理がどこにある」
「その通りだな。スモーカー君。職務に忠実で大変よろしい」
「うるせェ! そんな事は知るか! おれはクロコダイルが許せねェ!!!」
「クロコダイルがてめェに何をしたって?」
「仲間を泣かせた!!! それだけで戦う理由は充分だ!!!」
「クハハハハ……! 海賊の仲間が泣いて、それで誰が困るんだ? お前の怒りは見当違いだ。そうだろう、スモーカー君?」
「……あァ。そうだ。だが、もう面倒だ。話はてめェら二人を捕まえてから聞く事にする」
「何っ!!?」
スモーカのその宣言にクロコダイルは眉を上げる。
「このおれは“七武海”だぞ! そんなおれを捕まえようたァ、どういう了見だ!!!」
「おれァ、もともと“七武海”なんて“海賊”は信じてねェんだよ。てめェが何もしてない国を守りたいだけの、ただの被害者なら悪かったな。その時は謝る。許せよ」
「噂以上の野犬っぷりだな、スモーカー……っ!!!」
悪魔の実の能力者の弱点である“海”。
その“海”と同じエネルギーを発しているという“海楼石”……それを仕込んだ“十手”をクロコダイルに向けるスモーカー。
「お前は“砂”だろうが、おれは“煙”だ。普通なら勝負はつかねェが、捕らえるだけならこれで事足りる」
クロコダイルの表情がはっきりと怒りに染まった。
「そんなチャチな“海楼石”一つで! このおれを捕らえられるなどと思うなよ……!」
「カイロウセキ……? おい、ケムリン。それがありゃ、あいつを殴れるのか?」
「ふん、てめェに教える事なんて何もねェよ」
「何ぃ~! だったら、そいつを奪って試してみるだけだ!」
「やってみな……!」
そして三つ巴の戦いが始まる――かと思われたのだが。
「はーっはっはっはっはっはっ! そしておれさまは気づいた! ファンを殴れないならば、ファンじゃない奴を相手にすればいいと! ルフィ、交替だ! 交替! ……って、おろ?」
戦いは三つ巴ではなく四つ巴だった!
あ、ビビとミス・オールサンデーもいるので六つ巴……えっ、スモーカー以外の海兵も傍にいる? …………そう、乱戦に移行したのである!
ちなみに……一応他の麦わらの一味も戦っている事はお忘れなく。