輝きのスター!   作:第7サーバー

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第9話・死闘

「はーっはっはっはっはっはっ! そしておれさまは気づいた! ファンを殴れないならば、ファンじゃない奴を相手にすればいいと! ルフィ、交替だ! 交替! ……って、おろ?」

 

ビビを小脇に抱え、足につけた星で地上へと浮かび上がってきたスターの視線の先で、麦わらの一味の船長モンキー・D・ルフィは、王下七武海のサー・クロコダイルと、海軍本部大佐のスモーカーの二人と睨み合っていた。

三つ巴の戦闘を前に相手の出方を窺っていた三者は、さらに事態をややこしくしそうな乱入者であるスター達を睨みつける。

一般人じゃなくても萎縮してしまいそうなその三者の威嚇に、けれど人に注目される事に慣れているスターは、動じる事なくその状況に対応した。

 

「ルフィ! ミス・オールサンデーがおれさまのファンだったから、交替してくれ!」

「交替? いやだ。クロコダイルはおれがブッ飛ばすんだ!」

「わかってるよ。でもわかってて頼んでるんだろ? スターであるおれさまがファンを殴るなんてあり得ないんだ! 今、何よりも重要な問題はそこだ!」

「知るか。なら殴らなきゃいいじゃねェか」

「戦う事自体が問題なんだよ!」

「じゃあ、戦わなくていい。おれがクロコダイルをブッ飛ばすまで邪魔をさせるな」

「それだとビビのためにおれさまだけ何もしていないみたいじゃないか! おれさまにとってファンは大事だが、仲間だって大事だ!」

「……わかった! だったら、スターはケムリンを相手してくれ! 決闘の邪魔だ! それと、そのミスなんたらがこっちの邪魔をするようだったらそれも!」

 

スターはルフィの言葉にスモーカーを見て考える。

スモーカーはB・Wではないので今回の目的には関係ないが、海軍だから敵だ。

スモーカーと戦いながら、ミス・オールサンデーが何かするようならばそれも抑える。

それは充分に一人分の働きだとスターは納得した。

実際には、スターは“スターシップ”という移動手段を提供したり、すでにMr.3を倒したりしているので、とっくに一人分の働きというものは果たしていると言えるのだが、こういうのは本人が納得するかどうかが一番の問題であった。

 

「それでいこう!」

「よし!」

「……てめェら何を勝手に決めてやがる。おれの目的は第一に“麦わら”だ!」

 

麦わらの一味の勝手な都合に、そのやりとりを見ていたスモーカーの痺れが切れた。

 

「“ホワイト・アウト”!!!」

 

そしてその場にいる者は全て捕まえてやろうと、両腕から“煙”を噴き出す。

 

「チッ……」

「くそっ、ケムリンめ!」

 

クロコダイルはそれを“砂”で阻むが、ルフィにはそういう手段がなく、“煙”の射程範囲から慌てて跳び退いた。

 

「“トリックスタービーム”!!!」

 

スターはスモーカーとの最初の邂逅で、ビームによって“煙”を一時的にだが霧散できる事を知っていた。

なので“トリックスター”と“スタービーム”が掛け合わされたこの技を放つ。

“トリックスターボム”が威力を求めたものなら、これは完全に牽制とか目晦ましの方向にレベルアップした技だ。

宙に浮かぶ無数の星の一個一個がビームを放ち“煙”の進行を抑える。

それはスターの操作によって、ルフィやビビとの間に、二人を守るように配置された。

 

「はーっはっはっはっはっはっ! おれさまの仲間にはそう簡単に手を出させないぜ、スモーカー!」

「プトレマイオス・E・T・スター……面倒な技を使いやがる」

「ふっふ、お前の相手はおれさまだって事だ。ウチの船長と戦いたければおれさまを超えるスターになるしかないぜ! しかし、それは不可能だ。なぜならおれさまはいずれ世界一の有名人(スター)になる男だから!!!」

「もともとそんなもんになる気はねェよ!!!」

 

スモーカーは吼えると“白蔓(ホワイト・バイン)”で、螺旋状の“煙”となり、スターへと突撃を仕掛ける。

 

「その程度の動きで! ――“十手”!!?」

 

“煙”に捕らわれるのは避けたものの、そこから繋がる攻撃で、スモーカーの持つ“七尺十手”の先端がスターに掠ると、一瞬、スターの“スターオーラ”が弱まった。

 

「バカな!!? まさか、おれさまのスター性を揺らがせるほどの“スターパワー”を秘めているとでも言うのか、その“十手”は!!?」

「わけわかんねェ事を言ってんじゃねェ!」

「“スタービームソード”!!!」

 

理屈はわからないが、あの“十手”はヤバイと感じたスターは、ビームゆえにちょっとだけ伸縮自在になった“スターソード”で“十手”の腹を弾く事で、その攻撃に対応する。

 

「ちぃ……コイツがたった777万ベリーだと!!? 東の海(イーストブルー)の出身だからっていい加減な仕事をしやがって……!」

 

スモーカーがスターのしぶとさに苛立った声を上げる。

一番の目当てである“麦わらのルフィ”がすぐ傍で戦っているとなればそちらも気になって仕方がない。

そもそもなぜ麦わらの一味は王下七武海の一人などと争っているのか。

麦わらの一味と共にいる、この国の王女だと思われる人物の存在も気になる。

スモーカーが戦いながらもそんな思考を巡らせていると、先行したために置いて来る事になった部下の海兵達が集まって来た。

 

「海兵!!? なんでナノハナの時といい、七武海のいるこの国にいまさら海軍の人達がこんなにいるの!!?」

 

ビビがその姿に驚くのも無理はない。

クロコダイルは世界政府公認の七人の大海賊、王下七武海の一人。

そしてその王下七武海とは“海軍本部”と“四皇”と呼ばれる世界政府非公認の――要は単純に賞金首だが、強すぎて簡単には手が出せない――四人の大海賊と合わせて偉大なる航路(グランドライン)の“三大勢力”の一つとされているのだ。

三大勢力のバランスが失われると世界の平穏が崩れるなんて言われるほどにその影響力は大きい。

つまりクロコダイル一人いれば、海軍の支部など必要なく、同時にクロコダイルの機嫌を損ねるのもよくないので、アラバスタにおいて海兵がいる事は稀なのである。

それもあり、アラバスタは海軍にも頼れずな状況が続いていた。

そもそもがアラバスタで起きていたのは内乱であり、それにクロコダイルが関わっていると知っていたのはビビ達だけなのだから頼ろうにも頼れないのだが。

しかしだからと、ちょうどこのタイミングで来られても嬉しくはない。

この状況では性格が荒いスモーカーはともかく、他の海兵達はクロコダイルの側につき、麦わらの一味の方だけを捕えようとするに違いないのだから。

 

「スモーカーさん!」

 

「「「大佐!」」」

 

「たしぎ! それとてめェら! こっちの戦いには手を出すな! 麦わらの一味が近くにいるはずだ! てめェらはそっちを当たれ!」

「わ、わかりました!」

 

そのまま、たしぎを先頭に駆け出そうとする海兵を抑えようと、スターが“トリックスタービーム”の星を動かす。

 

「邪魔はさせねェ!」

「そりゃ、こっちのセリフだ!」

 

しかしそれは逆にスモーカーの“煙”に絡め取られ、動きを止められた。

 

「くそっ! ――ビビ、悪ぃ! 仲間は任せた! おれさまもすぐに追いつくから、傷ついてたら、協力して海軍から逃げろ!」

「わかったわ!」

 

スターとしても、この状況でビビを一人で動かす事に不安がないわけではなかったが、スモーカーは手強く、なんでもかんでもやれる状況ではなかったので決断した。

ビビもこの場にいても自分には何もできないと、すぐに駆け出す。

 

「……え?」

 

しかし、その足が不意に止まった。

ビビの視線の先、麦わらの、モンキー・D・ルフィの腹にフックが突き刺さっている。

突き刺したのは当然、そのフックを左手に持つクロコダイル。

 

「ルフィさん!!!」

 

どれだけ信じられない光景でもそれは現実である。

スターが派手にビームやらをバラ撒いて周りの目を引いている中で、海賊、モンキー・D・ルフィは……静かにクロコダイルに敗北していた。

 

「――何っ!!?」

「麦わら……!!!」

 

ビビの叫びによって、その状況に気づいたスターとスモーカーの二人も動きを止める。

 

「おれを、誰だと思ってる。……てめェのような口先だけのルーキーなんざ、いくらでもいるぜ……? “麦わらのルフィ”。この、偉大なる航路(グランドライン)にゃあよ……」

 

ルフィの身体がクロコダインとの身長差によって、フックに刺し貫かれた状態でググッと持ち上げられた。

 

「やった! さすがクロコダイルさんだ!」

「見たか海賊! この国には英雄がいるんだ!」

 

「「「クロコダイル!!! クロコダイル!!! クロコダイル!!!」」」

 

真実を知らない者達が、ルフィの敗北を無邪気に喜ぶ。

ビビの唇……そして掌から血がこぼれた。

それは、ビビにとっては初めての事かも知れない。

何も知らないからとはわかっているのに、アラバスタの国民の、その無知さを憎んでしまったのは。

 

「ルフィ!!!」

「……悪いが行かせねェぜ。これを、不本意な結末だと思うのはおれも同じだがな……!」

 

「邪魔を――するなッ!!!」

 

“スターオーラ”の輝きが強まり、スターはこれまで以上の速度で、スモーカーとの距離を詰めると、その拳で立ち塞がったスモーカーを殴り飛ばす。

 

「がっ……!!? なん……だとぉ……!!? おれァ“煙”だぞ……!!? まさか――」

 

スターはスモーカーがその後に呟いた言葉には興味がなかった。

スモーカーの横を抜け、クロコダイルと対峙する。

 

「クハハハハ……! 次はお前か? さて、お前の名前はなんだったか……」

「プトレマイオス・E・T・スター」

「ああ、そうだ。スターだったな……。何せこんな小物の部下の事までは覚えていられなくてな。許せよ。……まァ、名前はともかく、お前の能力には興味がある」

 

ぷらぷらとルフィの身体を揺すってみせるその姿に、スターはギリリと奥歯を噛み鳴らした。

だが、それはクロコダイルに対する怒りからではない。

――いや、もちろんそういう感情もあるのは間違いないが、それ以上の怒りの対象がスターの目の前にはあった。

 

「ルフィ、てめェ! 敗けてんじゃねェよ! おれさまはそんな――海賊王にもなれないような弱い奴の一味に入ったんじゃねェぞッッッ!!!」

「す、スター……」

 

血を大量に流しながらも、仲間の声にルフィがわずかに反応する。

 

「クハハハハハハッ! 確かにこんな弱い船長の下についちまって残念だなあスター。これを機におれの下につく気はないか? おれァ、お前のその能力は買ってるんだ」

「うるせェ。ちょっと黙ってろ」

「何?」

「――ルフィ。てめェがこいつには勝てませんって言うならおれさまがてめェの代わりにこいつを倒してやる。だけど! その時はてめェとはここまでだ! おれさまに仲間でいて欲しかったら! 今ここでこいつを超えてみせろッッッ!!!」

 

スターの宣言に、焦点の定まらずにいたルフィの目に活力が宿った。

 

「仲間……おれの仲間……おれの夢……終わらせねェ……奪わせねェぞ……何一つ……ッ!」

「そんな状態で何を言ってやがる。諦めろ。麦わら、お前は何も守れねえ。何も掴めねえ。お前はおれに敗けたんだ。お前の野望はここで終わりだ」

 

「終わらね゛えッッッ!!! おれは――“海賊王”になる男だッッッ!!!」

 

血に塗れた手でルフィはクロコダイルのフックのついた左腕をおもいっきり握りしめた。

 

「ぐあっ!!?」

 

クロコダイルはその痛みに顔を顰めルフィを放り投げる。

 

「“ギア(セカンド)”」

「何――ぷべっ!!?」

 

着地すると同時、ふらつきながらも、ルフィは足をポンプのように動かし、残った血を汲み上げ、クロコダイルを殴り飛ばした。

血の巡りが速くなったからか、ルフィの身体の血色が良くなり、さらに蒸気のようなものが噴き上がる。

 

「考えてたんだ。ずっと……スターの速さに追いつくにはどうすればいいのか。地面をたくさん踏めばその分だけ速く動ける……でも、それだけじゃ足りねェ。スターみたいに身体そのものを強化する方法が必要だったんだ」

「てめェ……いったい何を……」

 

血の巡りが速くなった分、外に流れ出る血も増えたルフィは、ふらふらしながらも何かに憑りつかれたかのように喋る。

 

「考えて考えて、今やっと繋がった。身体をカラカラにされて思いついた。肉や骨だけじゃねえ……流れる血を速く動かせばいいんだって……これが、これからの戦いのためにおれが見つけ出した答えだ……ッ!」

「そんなガキみたいな思いつき一つで! このおれがやられてたまるかァッ!」

「“ゴムゴムのJET(ピストル)”!!!」

 

極限の状況で一段階進化したルフィの技によって、クロコダイルがまたぶっ飛ばされた。

効いている、間違いなくだ。

ルフィの攻撃にクロコダイルもまた流血し、その顔にはもう余裕も見られない。

 

「ぐぼぉっ!!? な、何……今度は油断してねェ……てめェ、さっきからなんでおれを殴れる!!? このおれは自然系(ロギア)の能力者だぞ!!!」

 

クロコダイルが吼える。

その能力に絶対の自信を持っているからこそ、それが破られるという状況が受け入れられないのだ。

 

「何言ってんだ。お前、水怖いんだろ?」

「あぁ゛?」

「だったら、血でも同じだ。血でも砂は固まるぞ」

 

血の巡りがよくなった頭はルフィにその答えをもたらした。

スターにスモーカーを任せた事で、“十手”が試せないぞどうしようと考え戦っていた中でようやく見つけ出した答え。

 

「なん……だと……?」

 

そしてそれは、その通り正解であった。

スナスナの弱点は“水”。

悪魔の実の共通の弱点である“海”ではなく、普通の水を被るだけで“砂”は固まり、攻撃を受け流す事ができなくなる。

 

「これで互角だ。だから、絶対に敗けねェ! お前がどこの誰であろうと、今ここでお前を超えていくッッッ!!!」

「――調子に乗るな、この小僧がァーーーッッッ!!! てめェみたいなルーキーに潰されてやるほどに、おれの野望は安くねえんだよッッッ!!!」

 

それは壮絶な死闘だった。

互いの誇り、互いの夢、互いの野望、互いの信念、それら全てをぶつけ合い、喰らい合う、弱肉強食の海賊世界の決闘。

竜巻のような激しさを持ち、炎のように熱いその死闘は、互いをこのアラバスタの砂漠のようにカラカラにしてなお続いた。

しかし、それでも終わりは訪れる。

 

その決闘の勝者は――。

 

「――お疲れ。船長」

「しししし! おれは腹が減ったぞスター。みんなの場所まで連れて行ってくれ」

「ああ。おれさまに任せておけ」

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