ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武

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1日に2話上がらないとは、誰も言っていない……!
このスピードは世界を縮められる!(ФωФ)
書いててこれ一番オールマイトが先生してるなぁと思いました。


振り返りの時間です

同ビル地下のモニタールーム。

モニターの前に第三戦の5人が並ぶ。

 

「まずは5人ともお疲れさん!

そして今回のMVPは長谷川少女だ!」

「ありがとうございます」

 

オールマイトの言葉でクラスメイトから拍手がおきる。その中でスッと手が上がる。麗日だ。

 

「オールマイト、何で長谷川さんがMVPなんですか?」

「カメラでは見えにくかった部分もあるし、音声もなかったし、ヒーローチームはモニターを見ていないからね!

セッティングの段階から何をしたのか、長谷川少女は何をしてどんな役割だったのか。説明してもらえるかな?」

 

オールマイトが千雨に話をするように促す。

 

「まずチームである2人の"個性"を詳しく確認して作戦を立てました。

簡単に説明すると、分断して各個撃破です。

その作戦のために、4階に瀬呂さんのテープを張り巡らせて室内の様子を分かりにくくしました。

ヒーローチームが潜入してくるまで、瀬呂さんは5階の核兵器前で待機。切島さんは3階で待機。私は2階で待機。

ここまではモニタールームから見ていた人にはわかっていたと思います」

 

頷くクラスメイトたちに千雨は説明を続ける。

 

「潜入した2人に対して2階にいる私が最初に立ち塞がります。

私の役割は、耳郎さんだけを上の階に行かせて上鳴さんを確保することでした」

「え、最初から上鳴は行かせない予定だったの?」

「はい。なので上鳴さんをひき止めて確保する役割といっても間違いではありません」

「どうして上鳴なんだ?」

「上鳴さんは""個性"が不明だった"からです。

私たちの3人は全員、上鳴さんの"個性"を知りませんでした。

しかし耳郎さんの"個性"は耳たぶのイヤホンジャックということは外見で分かってましたから、耳郎さんは切島さんが対応しても大丈夫と判断しました。

また、上鳴さんの"個性"が何であれ……作戦を立案した私が一番のリスクを負うべきと考えてました。

だからこそ、"個性"のわからない上鳴さんは私が絶対に2階でひき止めて確保しなくてはいけませんでした」

「なるほど……」

 

おおー、という歓声が上がる。そんな中で再びスッと手が上がる。今度は八百万だ。

 

「話を聞く限り、作戦の司令塔でもある長谷川さんがハイリスクを負うのは失敗した場合を考えると、どうなのでしょうか?」

「ハイリスクだからこそです。

確実に作戦を成功させるためには司令塔の私が動くべきだと思いました。

2人より作戦に対して柔軟に対応出来るからこそです。その場で指示の修正が出来ますし、2人にはなるべく事前に伝えていた役割を全うして頂きたかったので」

 

続けて説明をしようとしたが、千雨の言葉を遮ってオールマイトが質問をした。

 

「2人の役割ということだが、3階に上った耳郎少女を迎え撃った切島少年。君の役割はどんなものだったかな!?」

「ッス!俺の役割は耳郎の意識を俺に集中させること!

上ってきた耳郎に距離を詰めて、男らしく真っ向からの接近戦!

訓練での敵とはいえ、女子相手だからスゲー難しかった……」

「訓練に男女は関係ないからね。そこは気を付けよう!

しかし、怪我をさせないで接近戦を続けるのはとても難しい!プロとなったら敵を無傷で捕らえなきゃいけないから、その予習にもなる!

頑張ったな切島少年!」

「ッス!ありがとうございます!」

 

熱血漢である切島が元気に返事をする。

第一戦の講評では八百万にほとんど評価について言われていたが、オールマイトも少しずつ教師としての話し方を身に付けてきたようだ。

 

「長谷川少女、それじゃあ続きから説明を頼むよ!」

「はい。耳郎さんが切島さんと戦っている間に私が上鳴さんを確保しました」

「まさか遠距離対応されるとは思わなかった……」

「そこは上鳴さんが油断した部分ですわね。如何に有利な"個性"だったとしても相手がどんな手を打ってくるか分からないのですから」

「ま、まぁ……その通りだが、上鳴少年のように相手の戦闘方法を狭めるのも、ひとつの手段ではあるからね。

初めての訓練だったわけだし、そこは長谷川少女が一枚上手だった」

 

八百万の指摘に対してオールマイトが頑張ってフォローするが、結構胸にきたのか分かりやすく落ち込む上鳴。

 

「確保してから上鳴さんの無線機を奪い、耳郎さんに"偽の情報"を流しました」

「偽の情報?」

「上鳴から長谷川を確保したって無線で言われたんだ。思い返してみれば違う声だったんだけど……」

「接近戦の途中でそんなこと言われたら、普通誤認するよな」

「そっか、敵の情報に撹乱されたのか」

 

千雨の説明を補足するように耳郎が話す。

ざわざわと話しだしたクラスメイトを遮るようにして説明にもどる千雨。

 

「切島さんには耳郎さんを4階に誘導してもらい、瀬呂さんには窓の外から3階に移動して貰い私は瀬呂さんと合流。

4階に向かって耳郎さんを挟み撃ちにしました。

下から来るのが上鳴さんだと思っていた耳郎さんが混乱した隙に切島さんが確保テープを巻く。

以上が私の作戦です」

「あれ、瀬呂の役割は?」

「4階のトラップ作成と核兵器の最終防衛。

それから私が負けた場合も同じように移動して貰うこと。切島さんが負けた場合は4階に降りて耳郎さんと戦闘してもらうことが役割でした。

セッティングで"個性"をかなり使って無理をさせてしまったので……その休憩も含めて最初は待機して貰いました」

「俺はまさか、雄英でビルの5階から3階へ窓の外を移動するとは思わなかったけどな……」

 

瀬呂が苦笑しながら感想を言う。

活躍らしい活躍があまり出来なかったためだろう。

 

「いいや、これは瀬呂少年の"個性"があってこその作戦だった!

それにビルの外壁を移動することが出来れば、籠城するヴィランへの奇襲のみならず、高層ビルにおける救助活動や街中での移動にも活用出来る!

今回の経験を忘れないようにな!」

「はい!」

「即席にも関わらず、それぞれが役割を全うして勝利!とても素晴らしいチームワークだった!

というわけで、この作戦を即席で考えた長谷川少女がMVP!」

 

再びクラスメイトたちから拍手がおきる。千雨は軽くお辞儀をしてみせた。

 

「もちろん負けてしまったヒーローチームの2人の索敵能力も、こうした屋内ではとても重要だ!敵が何処に潜んでいるか事前に知れるアドバンテージはとても強いからね!

そして勝てたヴィランチームも、クラスメイトと戦ってみてわかった対人戦闘における弱点を克服出来るように、今日の経験を今後忘れずに活かしてほしい!

それでは、次のチームにいってみようか!」

 

 

 

その後も対人屋内戦闘訓練は続き、全チームの戦闘訓練が終了した。

演習場の出入口に移動して授業は終わった。

 

「お疲れさん!!

緑谷少年以外は大きな怪我もなし!

しかし真摯に取り組んだ!!初めての訓練にしちゃ、皆上出来だったぜ!」

「相澤先生の後でこんな真っ当な授業……何か、拍子抜けというか……」

「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!

それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!

着替えて教室にお戻り!!」

 

オールマイトは一足先に演習場から離れていく。これで本日の授業はすべて終わりだ。

着替えて教室に戻り、ワイワイと授業の感想で盛り上がる。

 

「なぁ、どうせだったらこのまま教室で反省会しようぜ!俺たちは今回、長谷川の指示に頼りきりだったし!」

「だな」

「ねぇねぇ、それ私たちも反省会参加してもいい?」

「俺も!」

「皆でやった方がいいしな!」

 

クラスの大半が参加する姿勢を見せている中、千雨は鞄を取り出し帰り支度をすすめていた。

 

「あれ、長谷川さん帰っちゃうの?一緒に反省会しない?」

「不参加で」

「そんな事言わないで反省会しようよー!」

「不参加で。あと芦戸さん抱きつかないでください」

「むぅ……ブレないなー長谷川」

 

素直に離れる芦戸。

 

「何か用があるかもしれないし、本人が参加しないと言ってるのだから仕方がないわ」

「そっか。じゃあ長谷川バイバーイ!」

「長谷川くん、気をつけて!寄り道しないようにな!」

「真面目だな飯田」

 

さっさと帰る千雨。その姿が見えなくなったあたりで千雨の話題となった。

 

「……いやーでも長谷川凄かったわ、実際」

「上鳴ちゃん完封されてたもの」

「梅雨ちゃん、結構言うのね……」

「私、思った事を何でも言っちゃうの」

「でもアレは見てた私らもスゴいって思ったよね!」

「蹴りで突風起こしちゃうところとか、オールマイトみたいだった!」

 

ワイワイと今日の基礎訓練での千雨について話す中で、尾白が1人疑問を口にした。

 

「……長谷川さんの"個性"が身体強化なら、実技試験のアレはなんだったんだ?」

「尾白、何か知ってるのか?」

「千雨ちゃんの武勇伝?」

「いや、武勇伝って訳じゃなくて……。

一般入試の実技試験で、実は長谷川さんに助けられたんだ。その時は孫悟空の如意棒みたいに棍を伸ばしてた。

0ポイントのロボットも大きくした棍で止めてたし……てっきり触れたものに作用する"個性"だと思ってたんだ」

「そうなの!?」

「あのデカいロボット止めたのかよ!」

 

尾白から聞かされた話に驚くクラスメイトたち。

 

「いやいや、"個性"把握テストの時の50メートル1秒台だったじゃねぇか!それに今日の戦闘訓練のパワーも見ただろ?」

「つまり……あの超パワーとは別に"個性"を持ってるってことかしら?」

 

"個性"は1人1つ。両親のどちらかもしくは複合型の"個性"である。

しかし、超パワーとは別に触れたものに作用する"個性"など、聞いたことがない。

 

「長谷川って……色々と凄い奴だけど、謎だな」

「特別枠の入学ってのは本人が言ってたよ。一般入試も受けて合格した上での特別枠みたいだけど」

 

そんな中で常闇が口を開いた。

 

「長谷川の"個性"は、身体強化ではない」

「常闇何か知ってるのか?」

「同じ中学出身故」

「思わぬ繋がりが!」

「道理で仲良しなわけだ」

 

入学初日のみならず今日も一緒に登校してきた上に、よく一緒にいるのを見かけるからだろう。

すでに仲良し扱いされている。

 

「長谷川は3年の9月に転校してきた。それ以前のことは知らないが、共に雄英を目指した友である。

長谷川の"個性"は俺の黒影と同じような、モンスターを操るものの筈だが……長谷川は秘密主義なのか、手の内を明かさない」

「あのパワーは素なのか?」

「否、"個性"禁止の体育では普通だった。

それに、あの超加速は中学時代に見たことがある。"個性"の応用と言っていたからパワーについても同じ原理だろう」

「"個性"の応用って……何をどうしたらそうなるんだよ……」

「やっぱり謎が多いわね、千雨ちゃん」

 

常闇の話したモンスターを操る"個性"。それが本当ならば、あの超パワーを発揮する応用の仕組みや、尾白が助けられたという棍の伸縮や巨大化に疑問が残る。

 

「……"個性"について話したくないのかしら?」

「まぁ初めて会ってからまだ2日だし、これからだって」

「そうそう!これからこれから!」

 

ポジティブな上鳴と芦戸が盛り上げながら反省会は続けられた。

 

 


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