ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武
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前書きに書くことがねぇ・・・と思ったが、1つあった。
千雨の過去をちょい捏造してます。
フワッと、フレーバー程度に。


思いが交差する昼下がり

騎馬戦が終わり、体育祭は一時間の昼休憩を挟んで午後の部となる。

 

昼休憩では、生徒たちは一度控え室に戻ってから、校舎の大食堂へ向かうことになっている。

大食堂を利用出来るのは生徒と教師とプロヒーロー以外の学校関係者のみ。

これはマスコミの執拗な取材や、プロヒーローに指名以外のスカウトをさせないためだ。

 

「アホ毛てめぇ本選で当たったら覚悟しとけよ!」

「おいおい爆豪、落ち着けって」

 

控え室に戻ってすぐに爆豪が千雨に絡んだ。騎馬戦で単騎突撃したにも関わらず落とされたことを根に持っているらしい。

 

「騎馬戦で負けたからってうるせぇな爆豪…いや、負け犬は」

「んだとコラァ!!?」

「長谷川!お前煽るなって!!」

「爆豪落ち着け!今手出ししたら本選出れなくなっぞ!?」

 

煽る千雨にツッコミを入れる上鳴と、爆豪の怒りを鎮めようとする切島。

ここでケンカしたら確実に最終種目の本選出場資格を取り消されるだろう。

 

「チッ…爆豪が攻撃したら失格にしてやろうと思ったのによ…」

「長谷川ァーっ!!!」

「聞こえてんだよこのクソアホ毛ェ!!!絶対にブッコロス!!!」

 

ボソッと本音を漏らす千雨に対し、両手を爆発させて吼える爆豪。それでも実際に攻撃しない所がみみっちい。

千雨は少しでも爆豪が攻撃してくれば、それを証拠にトーナメントから落とす気満々だったのだ。

えげつない攻撃力の高さ、目で見てから対応できる反射神経、戦闘センスの高さを持つ爆豪と本選で当たりたくない。

 

「あれ…長谷川、どっか行くの?」

「トイレ。食堂行くなら先に行ってろ。席は取らなくていいから」

「はいよー」

 

耳郎に告げて控え室を出て生徒用の女子トイレに向かう。

スッキリした千雨はそのままスタジアム出口に向かおうと壁に表示されている矢印にしたがって移動する。

角を曲がった所で見慣れた白金色の爆発頭が見えた。

 

「爆豪?」

「チッ…ついてくんなアホ毛」

 

控え室で散々煽ったからだろう。苛ついている爆豪。この様子だと本選で当たったらさっきの分の怒りもぶつけてきそうだ。

流石に煽りすぎたかと反省する。後悔はしていない。

 

「お前についてってねぇし。じゃあ先行く」

「アホ毛、てめぇ俺の前歩こうなんざ…!」

 

爆豪を抜かして先に行こうとする千雨と、それに突っ掛かる爆豪。

何かに気付いた千雨が振り向き、声を荒げようとした爆豪の口を押さえて静かにするようにと人差し指を立てて口に当てる。

爆豪は千雨の突然の行動に驚きながらも声をひそめた。

 

「…んだよ?」

「静かに」

 

千雨は少しかがんで、そっと曲がり角の先をうかがう。そんな千雨の頭上から爆豪も同じく曲がり角の先を見た。

 

「轟くん、あの…話って…何?

早くしないと、食堂すごい混みそうだし…えと……」

 

人気のないスタジアム出口。そこには向かい合う轟と緑谷がいた。

轟の発する空気が重苦しい。

ここを通るのは無理そうだと思ってUターンしようとした千雨の腕を爆豪が掴んだ。

1人でこの場から逃げるのは駄目らしい。

おいやめろ離せ爆発頭と小声で告げていると不意に轟の声が聞こえた。

 

「気圧された。自分の制約を破っちまう程によ。

飯田も、上鳴も、八百万も、常闇も、麗日も、長谷川も…感じてなかった。

最後の場面、あの場で俺だけが気圧された。

本気のオールマイトを、身近で経験した、俺だけ」

 

USJで見た、怪人脳無を殴り飛ばしたオールマイトの本気を思い出しているのだろう。

確かに轟のチームにも緑谷のチームにもあの時オールマイトの近くにいたのは緑谷以外には轟だけ。

 

「……それ、つまり…どういう……」

「お前に同様の何かを感じたってことだ。

なァ…」

 

 

 

「オールマイトの隠し子か何かか?」

 

 

 

えっ………えっ???

 

千雨は轟の言葉で思わず固まってしまった。そして爆豪を見る。

今のマジ?…え、違う?本当に?いや、疑ってるとかそういう訳じゃなくて、隠し子とか色々と信じられなくてだな…。

目で会話をする千雨と爆豪を余所に、轟と緑谷の会話は続く。

 

「『そんなんじゃなくて』って言い方は、少なくとも何かしら言えない繋がりがある、ってことだな。

俺の親父はエンデヴァー。知ってるだろ」

「!」

「万年No.2のヒーローだ。

お前がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら、俺は……尚更、勝たなきゃいけねぇ」

 

フレイムヒーロー、エンデヴァー。

事件解決数史上最多のNo.2ヒーロー。炎熱系最強の個性"ヘルフレイム"を持つ。強力な"個性"の持ち主で強力なヒーローだが激情家の一面を持ち、"個性"が炎熱系ということも相まって行き過ぎることも多々ある。

また、ファンサービスは一切しないしトーク番組にもほとんど出ないため、オールマイトと異なり万人受けしていない。

 

プロヒーローについて知る以上、千雨は過去から現在までのビルボードチャート上位を見ていた。

20年以上も不動のNo.2。

それはとても凄いことであるのだが…世間の評価では、どうしても同じく不動のNo.1であるオールマイトと比べてしまう。

千雨からすれば充分凄いヒーローで、ただひたすらプロとしてヴィランとの戦闘などを淡々とこなしているという印象だった。

 

「親父は極めて上昇志向の強い奴だ。

ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが…それだけに、生ける伝説オールマイトが目障りで仕方なかったらしい。

自分では、オールマイトを超えられねぇ親父は、次の策に出た」

「何の話だよ、轟くん…。

僕に…何を言いたいんだ…」

「個性婚。知ってるよな。

"超常"が起きてから、第二~第三世代間で問題になったやつ…。

自身の"個性"をより強化して継がせる為だけに、配偶者を選び…結婚を強いる。

倫理観の欠落した前時代的発想。

実績と金だけはある男だ…。親父は母の親族を丸め込み、母の"個性"を手に入れた。

俺をオールマイト以上のヒーローに育て上げることで、自身の欲求を満たそうってこった。

うっとおしい…!そんなクズの道具にはならねぇ」

 

轟の声にこもる憎悪が伝わってくる。

エンデヴァーは次世代に…自身の息子に賭け、息子にNo.1の夢を叶えさせて欲求を満たそうとしている。

轟の話ではそうだが……本当に、そうなのだろうか?

 

「記憶の中の母は、いつも泣いている…。

『お前の左側が醜い』と、母は俺に煮え湯を浴びせた」

 

轟の、左目の周囲にある酷い火傷跡はその事だろうと、すぐに察しはついた。

左側…炎熱を持つ父親を憎む気持ちは、炎熱を使う事を日頃からしないのはそこから来ているのかと、納得もしてしまった。

 

「ざっと話したが、俺がお前につっかかんのは見返す為だ。

クソ親父の"個性"なんざなくたって…。いや…。

使わず"1番になる"ことで、奴を完全否定する」

 

暗く、重く、辛い過去。

轟はそれに挫けることなく生きているのではない。

 

 

彼は…轟焦凍は―――――父親への復讐で、生きている。

 

 

千雨の脳裏にいくつかの光景が断片的によぎる。

 

雪の日に焼ける村

いつも暗く冷たい家

押し寄せる悪魔と、ひとりの少年

扉越しに響く口論と、ひとりの少女

少年を救ける、素晴らしい父親

少女の見つけた、愛される形

 

ひとりで泣く、小さな子供。

 

小さな子供が背負った深い闇。孤独、懊悩、絶望。そして、小さな子供に芽生えた光。

彼は同じものを背負っている。しかし、彼に芽生えたものは違った。

 

―――――いや…本当に違うのか?

 

何かが、ひっかかる。ピースが足りない。轟が"今"に至る過去に、何かが足りない。

千雨が思考している間に話は進んでいて、緑谷が轟に話し掛けていた。

 

「僕は…ずうっと助けられてきた。さっきだってそうだ…僕は、誰かに助けられてここにいる」

 

緑谷は今日この日この瞬間までに助けられた事を思い返す。

そして、誰よりも憧れたヒーロー。笑って人を助ける、最高のヒーローを思いながら、言葉を紡ぐ。

 

「オールマイト…彼のようになりたい…。その為には、1番になるくらい、強くならなきゃいけない。

君と比べたら、ささいな動機かもしれない…。

でも僕だって、負けらんない。僕を救けてくれたひとたちに、応える為にも…!

さっき受けた宣戦布告。改めて、僕からも…。

僕も君に勝つ!」

 

その宣言をして、轟と緑谷はそれぞれ別々に食堂へと向かっていく。

去っていく足音を爆豪と千雨は静かに隠れて聞いていた。

 

「………」

「来い」

「あ?」

「爆豪も昼飯まだだろ。…行くぞ」

 

こことは別の出口からスタジアムを出て、食堂へ向かう2人。

道すがらに話すことは本来なかったのだが…どうしても先程の話をしてしまう。

 

「お前…幼馴染みなんだろ。アレは本当に違うんだな?」

「…親も知ってる。半分野郎の勘違いなのは確かだ」

 

爆豪も思う所があるのだろうか。控え室での苛烈さは鳴りを潜めて静かに答える。

その顔は少しばかり思い詰めた表情。考えていることはどうせ1つだろうが。

 

「…緑谷ばかり認められて、轟の過去を立ち聞きして、自分ばかり置いていかれてる…ってか」

「っ!誰が!」

「んな顔してりゃわかるっての。

爆豪、お前は強いよ。能力も才能もある。自分を活かすための努力もしてる。

緑谷の持つ強さはお前の強さとは違う。その強さってのは攻撃力の話じゃねぇ。

だが、その強さが緑谷が認められている理由だ」

 

爆豪は珍しく静かに千雨の話を聞いている。

他の人からであれば素直に聞く気は起きないだろう。性格が似ているから聞こうと思えたのかもしれない。

 

「その強さが何かって答えは自分で出せよ。私は何でも答えてやれるほど優しくねぇんだ。

でも、もしお前がその"強さ"を得たら―――今以上に強くなる。必ずな」

 

真剣な表情で強くなると言い切る千雨。

爆豪としては強くなる答えを教えないところは腹が立つものの、素直に教えて貰うのも癪であるため不問とした。

それよりも爆豪は千雨に聞きたいことが1つあった。

 

「テメェはアイツの話聞いて…どう感じたんだよ」

 

千雨の様子はまるで普段と変わらない。

驚きはしていたが…あんな重い過去の話を聞いても悩む様子がないのだ。だからこそ爆豪は聞きたかった。

 

「ん?ああ―――あの顔を思いっきり殴る」

 

思いっきり殴るという思わぬ返答に、爆豪は思わず千雨を見る。

千雨はそんな爆豪に冷めた笑みを見せた。

 

「んだよ、私がアイツを心配してると思ったか?

あんな不幸はな、形は違えど世界のどこにでも転がってるよ」

「!」

「私が轟を殴りたいのは"不幸だから"じゃねぇ。あの考えが気に入らねぇからだ。―――ただ不幸に酔って、前を見ねぇで誰かを恨むだけというのがな。

だから思いきり殴って、何の為に生きているのか力ずくで思い知らせてやろうと思った」

「…殴って、出来んのかよ?」

「たとえ思い知らせられなくても…全力出せば案外スッキリするし、負けるつもりはねぇ。

そうだろ、爆豪?」

「……違いねぇな」

 

千雨の言葉に爆豪もニヒルな笑みで答える。

そうだ。やることは最初から1つだけ。

 

 

 

全力で叩き潰して1位になる。ただそれだけだ。

 

 

 

千雨は食堂でそのまま爆豪と食事をとった。混みあった食堂で他に席がなかったのだ。

マグマかと思うほどの激辛担々麺を食べている爆豪と、唐揚げ定食を電子精霊たちに少し分けながら食べている千雨。

そこへ八百万と耳郎がやって来た。

 

「千雨さん、こちらにいらっしゃいましたか」

「あれ、爆豪と一緒とか珍しい…控え室であんだけ口論してたのに」

「あー…まぁ他に席がなかったから。で、どうした?」

「それが、午後は女子全員で応援合戦しなきゃいけないそうですわ」

「相澤先生からの言伝だって、上鳴と峰田が言ってた」

 

上鳴と峰田。

その2人が言っていたとすると怪しいのだが、相澤からの言伝となると信憑性が増す。

 

「…衣装は?」

「私が創りますわ」

「ウチらは女子更衣室に先行ってるから」

 

どうにも怪しい。

そう思いながらも昼休憩の時間は残り少ない。食事を終えた千雨は爆豪に一声かけてから更衣室へ向かった。

 

 

 

昼休憩が終わって、スタジアムに戻ってきた。…のだが。

 

「どーしたA組!?」

 

チアガール姿でポンポンを持ってならぶA組の女子7人。千雨の目はとても冷めきっていた。

うん、少し察していたが…やはりか。

 

「峰田さん、上鳴さん!!騙しましたわね!?」

 

応援合戦というのは案の定、峰田の嘘だった。

露出の多いチアガール衣装をきたA組女子7人をカメラが映す。

A組女子は綺麗な子も可愛い子も多く、スタイルも良いので観客席の男性客から嬉しそうな歓声が上がっている。

 

千雨は相変わらずあのバカ2人は、と思いながらも、制裁が加えにくい状況に歯痒さを感じていた。

ここで制裁したら最終種目どころじゃない。確実に本選出場権を剥奪される。それは回避したい。

 

「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの、私…」

「あいつらエロに関しては無駄に頭回るから、気にすんな」

「アホだろアイツら…」

「まァ本選まで時間空くし、張りつめててもシンドイしさ…。

いいんじゃない!!?やったろ!!」

「透ちゃん、好きね」

 

落ち込む八百万を麗日と共に慰める。葉隠は応援する気満々のようだ。最終種目に出ないからというのもあるのだろうが。

 

レクリエーションが終われば最終種目。

進出4チーム、16名からなるトーナメント形式。

 

 

一対一の、ガチバトルだ。

 

 

 


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