ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武
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次は早く書き上げたいと言ったのがフラグだったようです、遅くなりました。
12月に忙しいのはサンタとトナカイだけで充分なのに。
テメェがサンタになるんだよ、だって?(´・ω・`)そんなー


罪と英雄 前編

職場体験3日目。

 

2日目の昨日、ギャングオルカは午前中のトレーニングの途中から水族館に向かったまま、夜まで帰ってこなかった。

 

千雨は事務所待機していたサイドキックたちから役立つ情報や資料などを貰っていた。

事件解決後に申請しなければならない書類の種類や書き方、警察や外部からの依頼についてなど事務仕事をはじめ、プロヒーローのみが使えるヒーローネットワークというサービスや、仮免許取得試験について、インターンについて。

それ以外にも役立つ情報や、サイドキックの皆さんが持つ武勇伝や面白い話、プログラムへのアドバイスなどを聞く。

千雨はアドバイスを元にプログラムの作成や着色、改良など中々有意義な時間を過ごせた。

 

夜に事務所へ帰ってきたギャングオルカはかなり疲れた様子だった。ちなみにここまで長時間は初めてらしくサイドキックたちは何かあったのではないかと心配していたが、ギャングオルカは伊佐奈館長と話し合いがヒートアップしただけだと話していた。

どんな話をしていたらそんなに疲れるんだろうかと思ったが、結局そのまま2日目は終了。

 

 

3日目の今日はトレーニングの前に話したい事があると言われた。

 

「依頼、ですか?」

 

ギャングオルカは心の底から申し訳ないという心苦しさからなのか、深い深いため息をつき、眉を寄せるかのようにして白いアイパッチを歪ませる。

 

「ああ……丑三ツ時水族館の館長からの依頼で、君にショーに出て欲しい」

「え!?いや、待ってください!水族館のショーに、私が!?」

「ああ」

「……マジですか?」

「信じがたいことにな。

勿論、無理ならそれでも構わん。なんとか……なんとか、説得する」

 

思わず敬語が外れてしまったが、千雨は昨日のヒートアップした話し合いの内容が千雨をショーに出す出さないだということと、同時にギャングオルカは館長にあまり強く出れないことを察した。

無理と言いたいところだが、職場体験で世話になっている身だ。無下に出来ない。

 

「……ちなみに、ショーって何をするんですか?」

「海洋生物のプログラムを出してほしい。ショーといってもイルカショーの前座。ショーを見に来た来館者の客席に出して、海の中にいるかのようにしてくれれば充分だ」

「……それなら、大丈夫です。館長さんが満足するかわかりませんが。

プログラムの作成と調整に時間を貰えますか?」

「ああ。

急なことですまない、助かる」

 

歌って踊れということでないなら大丈夫である。

その日はトレーニングの後に昼のパトロールをして、本日のヒーロー活動はひとまず終了。

 

午後3時から千雨は2階会議室を借りて、持ってきていた自前のノートパソコンでショー用にプログラムの作成と調整をしていた。

もうすぐ午後8時、そろそろ夕食を兼ねた休憩をするかと思ったその時、室内に声が響く。

 

「ちうたま!飯田さんがヒーロー殺しを発見しました!!」

 

電子精霊のその言葉が聞こえた瞬間に千雨は舌打ちをしてから立ち上がり、すぐに行動を始めた。

 

「アデアット、力の王笏!」

 

千雨は現れた魔女っ子ステッキをクルクルとバトンのように回転させながら呪文を詠唱する。

 

広 漠 の 無(ニヒル・ヌールム・) そ れ は 零(ゼフィルム)

大 い な る 霊(スピリトゥス・マグヌス・) そ れ は 壱(ウーヌム)

電 子 の 霊 よ(スピリトゥス・エレクトロニキー) 水 面 を 漂 え(・フェラントゥル・スペル・アクアース)

 

我 こ そ は(エゴ)

 

電 子 の 王(エレクトリゥム・レーグノー)

 

目の前にあったノートパソコンが光り、千雨の意識は電脳世界へダイブした。

 

 

 

電脳世界には既に電子精霊たち5体が待機していた。居ないのはきんちゃとだいこ。2匹は飯田のもとにいるのだろう。千雨はすぐに電子精霊たちに指示を出す。

 

「市内のヒーローたちに救援要請!位置情報と現場の映像!緊急防壁の起動準備!」

 

複数のディスプレイが瞬時に立ち上がり、様々な情報が表示されていく。

 

「ちう様まずいです!保須市内でヴィランが3体暴れてます!プロの救援は難しいかと!」

「何でよりによってこのタイミングで……!

クラスの奴らで市内にいる奴はいないのか!?」

 

映された市内の防犯カメラには脳無に似たヴィランと戦うヒーローたちの姿。

スマホに登録されているクラスメイトたちの連絡先から位置情報を探させる。千雨以外の20人のクラスメイトたちは職場体験で全国に散らばっているとはいえ、全国で一番ヒーロー事務所が集中している都内の事務所での職場体験は多い。学校側のオファーした事務所も都内の事務所が多かったのを覚えている。

しかも保須はヒーロー殺しの事件で警戒度が高まっているため、管轄外のヒーローも応援で出張している可能性がある。クラスメイトが相手なら事情を説明せずとも向かってくれることだろう。

 

「飯田さんの近くを緑谷さんが移動中!市内には他に轟さんもいます!」

「緑谷に繋げ!

プロがそばにいるはず…そのヒーローに現場に向かって貰えれば……」

 

緑谷の目の前に空中ディスプレイを出すように指示をする。画面の1つが【ACCESS NOW】という表示からすぐに画面に緑谷の姿を映す。

緑谷は突然目の前に現れた空中ディスプレイに驚いた様子だった。

 

「うわっ長谷川さん!?どうやって……っていうかどういう仕組みで!?」

「個性だから気にするな。それより緑谷、飯田が危ない!」

「飯田くんが!?それってヒーロー殺し!?」

「そう……って待て緑谷!お前今1人か!?職場体験先のプロどこ行った!!?」

「市内で脳無の兄弟みたいなヴィランと戦ってる!」

「緑谷バカお前わかってんのか!?資格ねぇ上にプロがいないところで個性使ったらマズいだろ!!」

「そんな理由で友達を見捨てるなんて出来ない!!」

 

緑谷の職場体験先ヒーローに救援要請しようと考えていた千雨はあてが外れてしまった。

市内の人間全員のスマホの位置情報を調べることも出来るが、それでは市民とヒーローがごちゃ混ぜになってしまう上に持ち歩いていない人がいたりするため、クラスメイトのものだけ調べていたのが逆に仇となった結果だ。

 

現在、市内のヒーローはほぼ全員戦闘中。今すぐ頼れるのは無資格の同級生、緑谷1人。

緑谷は人を救けるために危険に飛び込む性格である。ここで千雨が協力しないと告げても飯田が危険だと知ってしまった以上、走り出してしまうことを千雨は知っている。

 

緑谷とは別の画面に飯田の頭が踏まれて腕に刀を刺された様子が映ったのを見て、千雨は叫んだ。

 

「ああクソッ!ねぎ、緑谷をナビしろ!!」

「イエッサー!」

「長谷川さん……!」

「お前が来るまで持ちこたえる!早くしろよ!」

「うん!ありがとう!」

 

免許の無い者の"個性"無断使用は法律違反である。自己防衛ならばともかく、戦闘などもってのほかだろう。なんとかして事件を揉み消すか、もしくはヒーローや警察と交渉するしかない。

救援要請として緑谷を巻き込んでしまった以上、出来る範囲で巻き込んだ責任を取らなくては。千雨は頭痛を耐えながら覚悟した。

 

画面から電子精霊のねぎが出ると同時に通信が切られたのか、ディスプレイが消える。

緑谷はねぎを連れて走り出した。

 

「ちう様、緊急防壁準備完了!」

「緊急防壁起動!

しらたき、お前は轟の所に向かえ!もうこうなったら1人だろうが2人だろうが同じだ。巻き込んだ責任は取る。

現場にディスプレイ展開しろ!」

「イエッサー!」

 

電子の海の中、千雨は1人で複数の画面と向き合う。

 

「ったく……当たって欲しくねぇ予想ほど、当たるんだよなぁ……!」

 

目の前の画面には薄暗い路地裏で日本刀を持った殺人鬼と、殺人鬼に頭を踏まれながら倒れている飯田と、ビルに背を預けている見知らぬプロヒーローが映っていた。

 

 

 

 

東京都の西部にある保須市、江向通りの細道。

 

「ぐっ…!!」

「弱いな」

「ああっ!!」

 

ヒーロー殺しは飯田の蹴りをかわして左上腕にブーツのつま先についた飾りとは到底言えない程に鋭く尖ったスタッズを刺し、倒れた飯田の頭を右足で踏みつけて左腕に刃こぼれした刀の鋒を突き刺す。

 

「おまえも、おまえの兄も弱い……贋物だからだ」

「黙れ悪党……!!

脊髄損傷で下半身麻痺だそうだ……!もう、ヒーロー活動は叶わないそうだ!!

兄さんは、多くの人を救け…導いてきた、立派なヒーローなんだ!!

おまえが潰していい理由なんて、ないんだ…!」

 

飯田の脳裏によぎる、兄との日常。ヒーローとして活躍する兄の姿。誰よりも身近にいて、誰よりも憧れた存在。

 

「僕のヒーローだ…。

僕に夢を抱かせてくれた、立派なヒーローだったんだ!!!

殺してやる!!!」

「あいつをまず救けろよ」

 

ビルを背に動けずにいるプロヒーローを指差しながら静かに告げるヒーロー殺しの言葉は、連続殺人を犯しているヴィランの言葉とは思えないほどに正論だった。

その正論に思わず飯田は言葉を失う。意図が分からないからだ。

 

「自らを顧みず、他を救い出せ。己の為に力を振るうな。

目先の憎しみに捉われ私欲を満たそうなど…ヒーローから最も遠い行いだ。ハァ……。

だから、死ぬんだ」

 

ヒーロー殺しは刀を飯田の腕から抜き、鋒に付着した血を舐める。

身体の自由がきかなくなった飯田に、ヒーロー殺しはトドメに刀を刺そうと構える。

 

「じゃあな、正しき社会への供物」

「黙れ……黙れ!!!

何を言ったっておまえは、兄を傷つけた犯罪者だ!!!」

「!?」

 

ガキンッという音を立てて日本刀の鋒が飯田に刺さる前に何かに阻まれる。

それは淡く光る円形の板のようなもの。大小の円と見慣れぬ記号が組み合わさった魔法陣のようなそれは飯田に刀が刺さるのを防いでいた。

 

「これは……!?」

「ちう様特製の緊急防壁です」

「ったく……当たって欲しくねぇ予想ほど、当たるんだよなぁ……!」

 

飯田は聞き慣れぬ声とクラスメイトの声が聞こえたことに驚く。

動かない身体で目だけを動かすと、淡い黄色のネズミのようなモンスターが数匹と、投影機がないにも関わらず空中ディスプレイが浮かんでいる。その空中ディスプレイに映っているのは飯田のクラスメイトの1人。

 

「長谷川くん……!?長谷川くんなのか!?」

「ああ、救けになるかはわからねぇけどな。

飯田の頭から足どかせよヒーロー殺し。

頭上注意だぜ?」

「頭上……!?」

「ごめん嘘、お前から見て左だった」

 

上を向いて油断して緑谷に思いきり左頬を殴られたヒーロー殺しは足を飯田の頭からどかし、倒れないようにと地面をしっかりと踏みしめる。

緑谷は飯田とヒーロー殺しの間に着地して立ち向かう。

 

「緑谷……くん……!?」

「救けに来たよ、飯田くん!」

「間に合ったな。ねぎ、よくやった」

 

緑谷の近くに浮遊していたねぎが千雨の映るディスプレイ近くに移動する。

困惑したままの飯田に、緑谷はヒーロー殺しから目をそらさずに返答した。

 

「ワイドショーでやってた……!

ヒーロー殺し被害者の6割が、人気のない街の死角で発見されてる。だから……騒ぎの中心からノーマルヒーロー事務所あたりの路地裏を探してたら、長谷川さんから連絡を受けたんだ!

飯田くん、動ける!?大通りに出よう、プロの応援が必要だ!」

「身体を、動かせない…!

斬りつけられてから…恐らく奴の"個性"……」

「それも推測されてた通りだ……。斬るのが発動条件ってことか……?

長谷川さん、シールドは?」

「まだ使えるが、守らなきゃいけない命は飯田だけじゃないぞ」

「もう1人……!」

 

路地裏でビルを背に座り込むインディアンモチーフのコスチュームを着たプロヒーロー。このまま見捨てる訳にはいかない。

どうするべきか考えている緑谷に向かって、飯田が声をかけた。

 

「緑谷くん、長谷川くん、手を…出すな。

君たちは、関係ないだろ!!」

「何……言ってんだよ…」

「関係ねぇ訳ねぇだろ!」

「仲間が『救けに来た』……良い台詞じゃないか。

だが俺はこいつらを殺す義務がある。ぶつかり合えば当然……弱い方が淘汰されるわけだが。

さァ、どうする」

 

ユラリと身体を揺らして緑谷と向き合うヒーロー殺し。緑谷はその眼に恐怖で総毛立つ。

USJ襲撃事件のヴィランたちとは違う、思想犯であり殺人者の眼。

 

「……長谷川さん」

「言っておくけど、私は緊急防壁くらいしか使えねぇからな」

 

そもそも、飯田のスマホに仕込んでいたのは電子精霊たちの監視と緊急防壁だけ。ヒーロー殺しに接触してしまっても、プロヒーローにすぐさま救援要請して来てもらうつもりでいたからだ。

逃走用にスカイ・マンタのデータを飯田と緑谷のスマホに強制インストールさせて使えるようにしても良いが、データが大きいためダウンロードに時間がかかる上に、起動出来るようになるまでの時間もかかる。それをしていたら電子精霊たちを使って死角を警戒するのと、緊急防壁を起動させることしか出来ない。

 

電子精霊たちを使って死角を警戒するのと、緊急防壁を起動させることしか出来ない。

千雨は不十分なサポートしか出来ない自分を歯がゆく思った。

 

「動けない2人を守れるなら、それで充分だよ」

「ねぎ、はんぺ、ちくわふは動けないプロを守れ。他の3体は飯田を」

「イエッサー」

 

電子精霊たちが指示通りに待機する。

2人の言葉に再び飯田が声を上げた。

 

「やめろ!逃げろ!

言ったろ!!君たちには関係ないんだから!」

「そんな事言ったら、ヒーローは何も出来ないじゃないか!

い……言いたいことは色々あるけど…後にする…!オールマイトが言ってたんだ。

余計なお世話は、ヒーローの本質なんだって」

「ハァ……」

 

笑いながら拳を構える緑谷に、ヒーロー殺しは笑みを浮かべる。ヒーロー殺しに向かって走り出した緑谷に対し、ヒーロー殺しは日本刀を水平に薙ぐ。

 

「良い」

 

素早い動きでステインに攻撃する緑谷も全身に、緑色の電光が走っている。間合いを詰めて股下をくぐり抜け、飛び上がって視界から外れてヒーロー殺しの頭部に殴りかかった。

その動きはまるで爆豪のような、自由度の高い俊敏な動き。以前とは身体の使い方が違い全身を使っている。おそらく"個性"の使い方を変えたのだろう。ここに来るまでの移動が早かったのもそのお蔭だと千雨にはわかる。

しかし、着地した緑谷はヒーロー殺しがナイフを舐めると、そのまま身体が動かなくなった。

 

「!!なっ…体が……!」

「緑谷!?奴の"個性"で斬られたのか!?」

「斬られた…けど、発動条件はおそらく血の経口摂取…!」

「―――パワーが足りない。

俺の動きを見切ったんじゃない。視界から外れ…確実に仕留められるよう画策した…そういう動きだった。

口先だけの人間はいくらでもいるが…おまえは、生かす価値がある…。

こいつらとは、違う」

 

喋りながら緑谷の前を通りすぎて飯田に近付いていく。それを阻止するように、電子精霊たちと千雨の映ったディスプレイが立ちはだかる。

 

「何が生かす価値がある、だ。全員殺させねぇぞ」

「現場に来れない口先だけの相手だが……厄介だな」

 

ヒーロー殺しの個性は『凝血』という血を舐めた相手の身動きを封じるもの。

血を舐められない電子精霊かつシールドを出せるのはヒーロー殺しにとって相性が悪い。

千雨がどれだけ耐えられるかによっては、3人のうちの誰かが時間切れになる可能性もある。

 

一方で千雨は少しでも時間を稼ごうとして口を開いた。

 

「ヒーロー殺し。あんたに聞きたいことがある」

「何……?」

「あんたがさっき飯田に言ってたことだ。自らを顧みず、他を救い出せ。己の為に力を振るうな。

……ヒーローってのは力なき者……困っている奴に無償で手を貸す奴のことだ。私欲のために動かず、人のために動く。

そこは同意する」

 

千雨の言葉にヒーロー殺しは口角を上げる。千雨が同じ思想の持ち主かと思ったからだ。

 

「ハァ……なんだ、わかってるじゃないか!

拝金主義の贋物に、ヒーローを名乗る資格は無い!だから……」

「ヒーローはヒーローである前に、普通の人間だ!

ダチがいて、家族がいて、仲間がいる。ありふれた日常を生きる資格がある!なんの罪もない人間だ!!

それなのに、何故殺す!?何故傷付ける!?」

「何故殺すかなど決まっている。ヒーローとは自己犠牲の果てに得うる称号。それを名乗る以上、そいつは個人ではない!

現代のヒーローは贋物だ!血に染まってでも英雄を取り戻さねばならない!俺は英雄のための粛清をしている!」

 

千雨にとってのヒーロー…ネギ・スプリングフィールドは、戦いの果てに人間をやめて世界を救い、魔法世界の10億人を救う業を背負った。

ネギの選択を否定はしない。だが千雨たち白き翼の面々は、元々ネギに麻帆良に戻ってきてほしかったから協力したのだ。

命懸けで父親を探すネギが、今までと変わらない学園での生活をするために。"日常"に帰るために。

滅私奉公と自己犠牲の果てに個人であることを捨ててしまえば、それはただのシステムでしかない。それは、千雨の望む英雄ではない。

千雨には絶対に認められない考え方だった。

 

「身を捨てて社会に尽くしても、個人であることを捨てなければならないなんてことはない!

ヒーローのための粛清?お前はてめぇが気にくわない相手を殺したいだけだ!

いくら正当化しようとも、罪のない人間を殺すなんて間違っている!」

「言葉に力はない!粛清の結果から、世間が気付かねばならない!!

贋物は英雄を歪めた罪を、その身で償わなければならない!!!」

 

ヒーロー殺しがかつて街頭演説をしていた時、足を止めて聞こうとした者は誰一人いなかった。どれだけ声を張り上げても、聞いてくれる人などいなかった。

ヒーローは目立ってヴィランを退治する。格好良く人助けをする。

滅私奉公の精神よりも、どれだけ派手でカッコいいかというものになってしまった社会の、大衆のヒーロー観。腐りきってしまったヒーロー観を助長しようとする現代のヒーロー。

だからこそ、ステインは自ら血に染まってでも成し遂げようとした。

 

真の英雄を取り戻すために。

 

「お前の言葉がその時響かなかっただけだろ!言葉に力はある!人を変え、世界を変えられる!

テメェみてぇな理想を求めて罪のねぇ人間を殺す方法に正しさなんざ一片もねぇ!

テメェのやり方が間違ってるのは、事実だ!」

「……仲間を救けようと動く意志とヒーローとは何かを分かっている。悪くはないが、貴様とは分かりあえない。いくら話しても平行線だ」

「そりゃよかった、こちとら人殺しの犯罪者になる気はねぇからな」

 

どちらも根底に同じ考えを持っているからこそ分かる。

根底がいくら同じでも、この相手とは絶対に分かりあえないのだと。対極にあるのだとわかる。

 

「ハァ……話はここまでだ。

貴様のシールドの耐えられる威力は高いようだが……遠隔からの支援だ、制限がある。時間か、衝撃の回数か」

 

緊急防壁の弱点を模索しながら、飯田に日本刀を刺そうとヒーロー殺しは構える。

緊急防壁はデータが軽くて強度の高いシールド。正面からの防御は強いが、シールドは平面体のため横からの攻撃は防御出来ない。また、展開している魔法陣が一部でも欠けたら一瞬で消え去る。

万能の防壁ではないのだ。

 

「やめろ!!」

 

緑谷の声に呼応するようにして、薄暗い路地裏を照らすように赤い炎が走る。それをヒーロー殺しは飛び跳ねて回避した。

千雨は路地裏に揃った電子精霊に口角が上がる。

 

「来たか!」

「次から次へと…今日はよく邪魔が入る……」

 

薄暗い路地裏が煌々と赫く照らされる。その炎の発生源に緑谷と飯田が驚きながらも目を向ける。

 

「―――遅くなっちまったが、間に合ったみてぇだな」

 

路地裏への出入り口から、炎を纏った轟が救援に来た。

 

 





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