A. 書きたいものが有りすぎて話が纏まらなかった結果。
久々に馴染みの店に行くようにしてアクセスした桂樹通信の更新が止まっていることに気付いた。
(※拙作を読んでいる方の中で知らないよーという方に簡単に説明すると、千雨魔改造愛好家という名の世界最高レベルの感性を持つ紳士淑女たちが長らく愛している大変素晴らしいサイト様です)
に、日記の更新が2月で止まってるのは、リアルが忙しいだけですよね……?そう、ですよね……?
雄英のヒーロー科は土曜日も6時間授業がある。
そして本日のヒーロー基礎学の授業は避難訓練。体操服で実際の器具を使って使い方を学ぶ。
荒廃した街並みを模したここは雄英に数ある演習場のひとつ。その崩れかけたビルの三階から垂直式救助袋で降下していく。
千雨がらせん状になった内部をぐるぐると滑り降りて救助袋を出ると、爆豪に飯田が詰め寄ろうとしていた。どうやら千雨が降下している間に爆豪が避難訓練に対して文句を言ったのだと飯田の発言で察した。
爆豪が掌の上で爆発を起こしたのを見て、女子の降下を待っていた男子たちは止めに入ったり呆れている。千雨も常闇の隣で呆れていた。
「……おまえら、今、何の時間かわかってんのか」
地を這うような相澤の声と"個性"を発動した赤い眼光に、騒いでいた生徒全員が一瞬で姿勢を正して動きを止めた。相澤の静かな怒りは日頃から騒いでいる生徒にとって骨身にしみていることだろう。なお、千雨は騒がないのでその点では怒られないどころか騒ぎを嫌うので相澤側である。
そうして大人しくなった生徒たちに"個性"を解いて口を開く。
「向いてるとか向いてねえとかさっき言ってたが、現場でそんな言い訳は通用しねぇからな。やること当たり前に出来てこそプロヒーローなんだよ。
救助隊や警察が間に合わなかった場合、避難の誘導をするのも務めだ」
ヒーローのするべきことは敵との戦闘や捕縛だけではない。災害時に一般人の救助も立派なヒーローの仕事。千雨は相澤の言葉はもっともだと言わんばかりにうなずいていた。
「一人や二人なら救助は難しくないだろう。だが、大勢いた場合は救助器具が大いに役立つ。いざ、その時になって使い方がわからねぇんじゃ話にならないだろ。だから一通りの救助器具のカリキュラムがあるんだよ。
わかったか、爆豪」
「……ッス」
名指しされた爆豪は小さく呟いた。爆豪なりの譲歩なのだろう。
そんな爆豪に千雨が追い撃ちをかけた。
「そもそも向いてなくても、普通のプロなら全員出来る事が出来なくて良いって発想が出るのが論外だしな。
まぁ本人がやりたくないなら、他のヒーロー全員が出来る"簡単なこと"すら出来ないままでいいなら良いんじゃないか?
全員出来ることが
「覚え殺してやろうかクソアホ毛がァ…!!!」
爆豪がキレているが手出ししないのは、相澤に怒られたばかりだからである。相澤はやる気になったのなら良いかと思い、次の指示を出そうと口を開いた。
「じゃ、次は…」
その続きを遮るようにバリバリという音が空から響く。見上げた空を飛ぶヘリコプターから、見慣れた巨躯が飛び降りてきた。
「空から…私が来たー!!」
「オールマイト!?」
ズシンと地響きを起こして着地したのはオールマイトだ。ピンと立った二本の前髪に白い歯を見せていつもの笑顔を見せている。
「やぁ遅れてすまないね、諸君!ちょっと出がけに敵を捕まえてきたものでね!」
「まったくですよ。本来ならあなたの担当時間だったんですから」
呆れたように呟く相澤の言葉を聞いて、千雨は眉間に皺を寄せる。当のオールマイト本人は緑谷が興奮気味に銀行強盗事件を解決したことがニュースになっていたと聞いている。
「その様子だと、もう1つの立てこもり事件はまだニュースになっていないようだね」
「っ…さすがオールマイト…やっぱりスゴ……ハッ!」
オールマイトの言葉にヒーローとしての活躍に目を輝かしていた緑谷は、千雨の視線に気がついた。
『担当時間に遅刻して敵の退治とか、お前はこの間私が言ったことをもう忘れたのか?相変わらずクソのままとはどういう了見だ。緑谷も目ェ輝かせてんじゃねぇよ、殺すぞ』という侮蔑と殺意の篭った千雨の視線にオールマイトと緑谷は胸が痛くなった。
「ゴ、ゴホンッ!
えーさて少年少女たち!早速だがこれからヘリによる救助訓練を行うぞ!アーユーレディ!?」
オールマイトの声にワァッと盛り上がる生徒たち。しかし千雨の視線は今も冷たいままである。
「長谷川、どうかしたのか?」
「なんでもないよ常闇。それよりヘリの発着場に移動しよう」
オールマイトに向けられていた凍えるような視線は嘘だと言わんばかりに優しい声色で常闇と並んでヘリの発着場に向かう千雨。
オールマイトは移動しながら相澤から「長谷川に何かしたんですか」と聞かれてしどろもどろになっていた。
完全に余談だが、爆豪が千雨の挑発によって一番手際良く救助訓練をしていた。
あれからヘリを使用した雪山と水辺での救助訓練を終え、教室に戻った千雨たち。SHRが終われば帰宅だけである。ワイワイと話していた生徒たちだが、相澤が教室に入ってきた途端に全員姿勢を正して静かになった。
「はい、おつかれ。
さっそくだが、再来週、授業参観を行います」
唐突!しかしそれは雄英にとって大体いつものことである。が、それで本当にいいのだろうかと思わざるを得ない。
保護者の予定とかもあるだろうにと思いつつ、千雨は回ってきたプリントを手にざわめくクラスメイトの声を聞きながら相澤の説明を聞く。
「プリントは必ず保護者に渡すように。で、授業内容だが、保護者への感謝の手紙だ。書いてくるように」
小学生かよと思ったのは千雨だけではない。一瞬だけ静まった教室でドッと笑い声が響く。
しかし、本気の相澤に笑いもおさまっていき、困惑が広がってざわつく。
相澤がいくら本気で授業参観に感謝の手紙の朗読をすると言っても、それに納得がいくかは別だ。飯田が鼻息荒くしながら相澤に意見する。
「授業参観といえば、いつも受けている授業を保護者に観てもらうもの。それを感謝の手紙の朗読とは、納得がいきません!もっとヒーロー科らしい授業を観てもらうのが本来の目的ではないのでしょうか!?」
「ヒーロー科だからだよ」
「それはどういう……」
「お前たちが目指しているヒーローは、救けてもらった人から感謝されることが多い。だからこそ、誰かに感謝するという気持ちを改めて考えろってことだ。
ま、プロになれるかどうかまだ分からないけどな」
その相澤の言葉に飯田はすぐさま納得した。その変わり身の早さに苦笑しつつも、クラス全体に諦め承認ムードが漂う。
「ま、その前に施設案内で軽く演習は披露してもらう予定だが」
「むしろ、そっちが本命じゃねぇ!?」
上鳴がクラス全員の心の声を代弁するかのように叫んだ。
「それから来週は中間テストだ。明日休みが一日あるとはいえ全員勉強怠るなよ。
最後に長谷川。お前は後で職員室に来い」
職場体験明けから2度目の呼び出しである。
流石に授業中に爆豪を煽った事の個別呼び出しによる注意だろうかと考えつつも、号令でさよならの挨拶をしてSHRは終わった。
職員室は今日も教員たちがデスクで授業に使う資料の作成や書類などを片付けている。
千雨は毎度の如く、相澤の机の左隣にあるミッドナイトの席を借りた。ちなみにミッドナイトは只今お手洗いに行っている。
「呼んだのは他でもない、授業参観の話だ。
お前は事情持ちだからどうするか事前に聞いておこうと思ってな」
千雨の保護者はヒーロー委員会の会長である。その立場を鑑みても、わざわざ千雨の授業参観に来るような人ではないだろう。
加えて彼女が来るということは、千雨に肉親がいないという事がクラスに知られる事になる。
「私あの人にプリント渡すつもりもないですし、渡した所で来て欲しくないというか……外せない用事で来れませんでした、とかじゃダメですか?」
「……まぁ良いか。
あともう一つ、お前がいると一人で解決されちまうから先に話しておく」
「解決?」
相澤が声をひそめて千雨に話したのは、参観会とは名ばかりの、保護者が人質役をする救助訓練演習を行うということ。
感謝の手紙は、親や家族について考えさせるためのブラフだそうだ。
「なるほど、わかりました。
それなら当日は私が保護者の皆さんを演習場まで案内する役をして、学級委員の2人はクラスをまとめておくように言っておき、私も人質役をやるということで…」
「悪くないが不審がられるだろ」
「そこは罰則の代わりとか適当な名目で行えば良いと思います。
良い感じにボロボロになっておけば、保護者を人質に取られたため負傷して気絶しているという事で動かずとも不審がられませんし。
いっそのこと、敵役の人に保護者たちをボロボロになってでも守っていたことを言ってもらって思考誘導するのはどうでしょうか?」
「……よし、それでいこう。
話は終わりだ。帰っていいぞ」
相澤が千雨の提案を飲み、呼び出しは終了した。
職員室を後にした千雨が鞄を取りに教室に戻ると、八百万が一人で残っていた。
「八百万?誰か待ってるのか?」
「あ、ええと……勝手ながら、千雨さんを待っていたんです」
「私を?」
「千雨さんに折り入ってお頼みしたいのです。…その…私に、戦い方を教えて下さい!」
「はぁっ!?」
八百万の突然のお願いに千雨は驚いた。
「い、いやいや……ちょっと待ってくれ。どうした急に?というよりも、何で私に?
体術とかなら芦戸とか麗日とかいるし、優秀さで言えば蛙吹もだろ。というか女子だけじゃなくて男子とか、むしろ先生とか……!」
体育祭の結果は千雨が全力で"個性"に頼っていた結果だ。素の体力は一般的な女子高生である上に、誰かに教えるほどの技術もない。
実技の特訓であるならば、元々ダンスが趣味ということで女子でトップの身体能力を持つ芦戸と、職場体験から近接体術を鍛えている麗日。
他のクラスメイトであっても、教師であっても、八百万が教えを請えば大半が手を貸してくれるだろう。
しかし、そんな千雨とは裏腹に八百万は俯きながら今まで抱えていた感情を吐露しはじめた。
「私、雄英に入学以来ずっと感じて…考えていたんです。同じ推薦入学者の轟さんとの差を。千雨さんとの、差を。
雄英の推薦入学者の轟さんとはスタートは同じハズでした。千雨さんは特別入学者ですが、私をクラス委員に推薦して下さいました。そんなお二人はヒーロー科の実技で優秀な成績を残されていますが、私は結果を何も残せてません。
USJ事件で、轟さんはお一人でヴィランを一網打尽にして…千雨さんもヴィランを倒して相澤先生と13号先生の応急手当をされて、緑谷さんを救けたと聞きましたわ。
体育祭でも……私は騎馬戦で一度は千雨さんの策を破れましたが、それもまぐれ当たりと言わんばかりに逆転されてしまいましたし、本選のトーナメントでは常闇さんに為す術なく敗退してしまいました。
職場体験先でもヒーローとして思っていた活動を体験することがありませんでした……。
戦闘などについては、"個性"の相性や向き不向きがあるというのは理解しています。ですが…クラス副委員長に推薦してくださった千雨さんとの差が、日に日に増していっていて……」
八百万は頭が良く、"個性"も強力だ。そして、今まで周囲の誰よりも優秀でいた。だからこそ自分より先を行く千雨と轟を見て、思う所があったのだろう。
轟だけならば、異性である上に彼がヒーローである父親から指導を受けているからという発想も出来ただろう。だが、千雨はそうではない。同性で、自身を認めてくれている存在で、自分よりも活躍しているように見える。
加えて、職場体験先ではウワバミの付き人もしくはモデル見習いのような活動でしか無かった。
八百万は轟と並ぶ推薦入学者という肩書きと千雨が副委員長に推薦した事に対して、ヒーローを目指しているのに結果の出ていない自身に負い目を感じ、それが彼女が持っていた自信を無くす要因となっていた。
ここ最近暗くなっていたのはそういう事かと千雨は納得した。
「……戦い方を教えて欲しいってことは、ヒーロー科を辞める訳じゃねぇんだろ?」
「それは……ですが私より、相応しい方がいるのではないかと……」
「あのな八百万、そうやって落ち込むんじゃねぇ。
謙遜もあるんだろうが、そうやって自分を卑下するのは……お前を認めている私に対する侮辱だぞ」
千雨の言葉に、八百万は顔をあげて千雨を見た。
「まだ……私を、認めてくださっているんですか……?」
「当たり前だろ。つーか学校は学び力を身に付ける為にあるんだ。誰だって最初は未熟で当然なんだよ。
それに……そんな自分から変わりたくて、私に頼もうと思ったんだろ?」
強くなりたい。強迫観念でも逃避でもないその純粋な願いは、千雨にとって応援するに足る願いだ。
何より、自身を頼ってきた者を無下に追い返すほど千雨は冷血ではない。
「先に言っておくが、私だってまだまだ未熟だ。どこぞの流派みてぇな武術を身に付けてる訳じゃねぇし、ほとんど人の真似事。
今覚えてる事も、八百万に教えて身に付けられねぇ技ばっかりだしよ……」
瞬動術も無音拳も、身体強化魔法を使うことで得られる並外れた身体能力がカギとなる技術。しかも、千雨も瞬動術はまだ完璧とは程遠い上に長距離長時間使い続けるほどの体力も魔力もない。無音拳も威力も本家とは天と地ほどに差がある上に精度がいまひとつ。
今は効率的な魔力運用と、瞬動術を使いながら無音拳で動く的に当てる特訓を帰宅後にしている。
加えて千雨の領分であるハッキング技術やプログラミング技術も八百万向きではないだろう。
「それでも強くなりたいって言うなら手伝う。出来ることなんて限られてるけど、八百万に合った戦い方を考えたり……基礎学の無い日の放課後とか、日曜でいいなら、実戦に近い訓練なら私でもしてやれる」
「い、いいんですか!?」
「ああ。"個性"使った時の消耗を考えたら、八百万の家でした方がいいと思うが……平日は移動時間が勿体無いしな。
日曜は八百万の家で特訓するでも良いか?」
「はい!
千雨さん、ありがとうございます」
「お、おう……いやでもマジで強くなれるか保証出来ねぇからな?努力必須だからな?」
「勿論です!」
元気になった八百万といつ訓練をするか話しあい、相澤に訓練場の利用予約の申請をした。
そのまま八百万と一緒に帰ろうと千雨が下駄箱に向かうと、飯田から電話がかかってきた。
「長谷川くん!今電話しても良いだろうか?」
「ああ。どうした飯田?」
「職場体験で助けたネイティブさんからお礼が届いたんだ。遊園地のチケットなんだが……来週の日曜日は空いてるだろうか?」
「来週の?」
「ああ。明日は中間テスト前の日曜日だからな。チケット期限前となると来週の日曜しかないんだ。
緑谷くんと轟くんも誘ったのだが、あいにくと二人は用事があるらしくてね」
「私も来週の日曜は予定があるんだ。悪ぃな」
「む、そうだったのか……」
「ちなみに、どこの遊園地なんだ?」
「ズードリームランドだが……どうかしたのかい?」
電子精霊にどんな遊園地か調べさせると、ズードリームランドでは丁度期間限定アップルパイを提供しているらしい。来週の日曜は期間内だ。
「私の代わりに常闇を誘ってやってくれないか?」
「常闇くんを?」
「ああ。常闇リンゴが好きなんだよ。期間限定のアップルパイが食べれるって話を出して誘ってほしい。
常闇に楽しんで貰えるなら、それが一番嬉しいからな」
「相変わらず常闇くんと仲が良いんだな、長谷川くんは」
「ああ。常闇は私にとって大切な奴だからな」
大切な奴と言う千雨の声色はとても優しいものだ。
二人の友情の深さに良いものだと思いつつ、飯田は何故かチクリと胸が痛んだ気がしたが、飯田は気のせいだろうと流した。
「そうだ!緑谷くんとも話したのだが、いつか僕と緑谷くんと轟くんの四人で行かないかい?
長谷川くんは責任は取らなくて良いと言ったが、せめて救けてくれたお礼をしたいんだ。
僕個人からも、あの時の言葉のお礼をしたい」
「……そういう事なら、考えとく」
「ありがとう!ではまた!」
電話を切り、下駄箱からローファーを取り出す。
待っていた八百万に誰からの電話か聞かれたのだが、千雨はヒーロー殺しの一件に関わった事は話せないので簡潔に飯田から遊園地に誘われたと話すと、何故だか百面相をし始めた。
「常闇さんと轟さんだけでなく、最近は緑谷さんとも何かあったと思っておりましたが、飯田さんまで……というよりもまさか、遊園地デート……!?
こ、これは、私どうすれば良いのでしょう……!とりあえず耳郎さんに相談してみないと……!」
「おーい、八百万?どうした急にブツブツと」
「な、なんでもありませんわ!
と…ところで、その……飯田さんと遊園地には……?」
「八百万との特訓優先するから断った」
八百万は友人である自分との約束を優先させてくれる千雨に喜べばいいのか、デートを断ってしまっていることを問いただせば良いのか、複雑な気持ちになった。
ヒロアカ5周年おめでとう!
アニメもあと三ヶ月、映画もあと…半年切ってる……?嘘だろ?時間の流れおかしくないか?
1.25倍速くらい早まってるよな?
世界加速させてるの誰だよ!!!