ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武

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我がサイレントヒル県のソウルフードたるSA☆WA☆YA☆KAを臨時休業にした台風が絶対に許せない作者です。フジヤマの偉大さに消失すればいいのに。

感満作の『千雨降り千草萌ゆる』が更新されましたね。最の高。神と楽園はここにあった。祈りは届く。主に栄光あれ。怒濤の千雨ブーム再来展開に感動し過ぎてエクスクラメーションの霊圧が消えた。
ところで後書きの「ひねくれた人」が拙作のことだと自意識過剰な事思ったので言わせて下さい。

神作家たちはまたそうやって!作者を喜ばせる!!(例の画像)
ありがとうございます!!!



U.A.1st Semester Final Exam
六月最終週


授業参観から時は流れて、六月最終週。

期末テストまで残すところ一週間を切っていた。

 

「全く勉強してねー!!

体育祭やら職場体験やらで、全く勉強してねー!!」

 

教室の真ん中で、愛ではなく危機感を叫ぶのは上鳴。その横で芦戸は何も考えていないのか満面の笑みを浮かべている。

上鳴は中間テストにおいてA組21人中の成績がクラス最下位。芦戸はブービーの20位。だが、上鳴の叫びはクラスメイトたちの総意ともいえるものだ。

 

その叫びを聞いている常闇はクラス15位、口田は11位、砂藤は13位、そして千雨は12位。ここに14位の麗日と10位の障子を含めた中間順位10位から15位の6人のテスト順位はほんの1、2点程度の誤差と呼べる差である。

 

「中間はまだ範囲狭いし、特に苦労なかったんだけどなー……。行事が重なったのもあるけどやっぱ、期末は中間と違って……」

「演習試験もあるのが、辛えとこだよな」

 

砂藤の言葉を引き継ぐようにして演習試験について話すのは峰田。ちなみに峰田の中間での成績は9位。ギリギリとはいえまさかの一桁である。

普段は性欲の強さが目立つのだが、頭は良いのだ。信じがたいことに。本当に、信じがたいことに。

 

「あんたは同族だと思ってた!」

「おまえみたいな奴はバカではじめて愛嬌出るんだろが……!どこに需要あんだよ……!」

「"世界"かな」

 

余裕そうな顔で芦戸と上鳴の妬み嫉みを鼻でフフンと笑う峰田。誰かに妬まれる優越感が心地好いのだろう。

 

「芦戸さん、上鳴くん!が……頑張ろうよ!全員で林間合宿行きたいもん!ね!」

「うむ!」

「普通に授業うけてりゃ赤点は出ねぇだろ」

「言葉には気をつけろ!!」

 

発言順に上から緑谷がクラス4位、飯田がクラス2位、轟がクラス5位。演習のみならず座学においてもクラス上位陣である。

中でも轟の言葉は上鳴の繊細なハートを傷付けた。

 

しかし、神は見捨てないということか。落ち込む上鳴と芦戸に女神こと八百万が声をかける。

 

「お二人とも。座学なら私、お力添え出来るかもしれません」

「ヤオモモー!!!」

「演習の方は、教える自信がありませんが……」

 

八百万はクラス1位の成績。通常のテスト勉強であれば教える位造作もないのだろう。演習については千雨から戦闘のノウハウなどを教わっている最中のため教えるほどの自信はないようだ。

しかしそんな八百万の内心とは裏腹に、周囲にいた他のクラスメイトたちが声をかける。

 

「ねぇヤオモモ、お二人じゃないけどウチも良いかな?実は、二次関数ちょっと応用つまずいちゃって……」

「わりィ俺も!八百万、古文わかる?」

「俺も」

「……ッ!!

良いデストモ!!」

 

クラスメイトに必要とされ頼りにされることに歓喜しながら了承する八百万。

どうやらとても嬉しかったらしい。

 

「では、週末にでも私の家でお勉強会を催しましょう!」

「まじで!?うん、ヤオモモん家楽しみー!」

「ああ!そうなると、まずお母様に報告して講堂を開けていただかないと……!」

 

お嬢様とはわかっていても八百万家がどれほどの家なのか知らなかったのだろう。勉強会に参加が決まった面々の顔にはデカデカと『今"講堂"って言った!?』と出ていた。

 

「皆さんお紅茶はどこかご贔屓ありまして!?我が家はいつもハロッズかウェッジウッドなのでご希望がありましたら用意しますわ!」

 

千雨は普通の高校生はご贔屓のお紅茶はないのではと八百万に言おうかと思ったが、家庭にもよるかと思って言わないでおいた。

麻帆良ではネギやいいんちょを筆頭に紅茶好きが身近にいた上に、周囲にも振る舞うこともあって紅茶は身近なものである。

 

「必ずお力になってみせますわ……!」

 

顔を赤らめてプリプリとやる気に満ちている八百万は周囲との格差に気付いていないようだ。

耳郎と上鳴は癒されたかのように笑顔である。この二人、プリプリしているのがかわいいからどうでもいいやで済ませたな、と千雨は気付いた。

 

「なんだっけ?いろはす?でいいよ」

「ハロッズですね!!」

「……元気だな」

「千雨さんは中間が確か12位でしたけど、参加しますか?」

「んー……じゃあ、お願いしようかな。

いつもの特訓はどうする?」

「特訓についての詳しい話は昼休みに決めてしまいましょう!」

「おう」

 

目どころか周囲の空気まで輝かせんばかりの笑顔を向ける八百万に、美女の笑顔ってやっぱ威力あるなぁと眩しそうにしながら千雨は昼休みの約束をした。

 

 

 

時間は進んで、SHRが終わって放課後。

緑谷たちがB組の拳藤から昼休み中に期末の演習試験について聞いた事をクラス全員に話した。

どうやら入試と同じでロボを倒していくそうだ。この事にクラスで一番喜んだのは上鳴と芦戸だ。

 

「んだよ、ロボならラクチンだぜ!!」

 

緑谷からの演習の情報によって心配事は無くなったと言わんばかりに普段の笑顔を取り戻した上鳴と芦戸。二人の"個性"は威力が強い分、対人戦闘においては細かな調整が必要なのだ。

 

「おまえらは対人だと"個性"の調整大変そうだからな……」

「ああ!ロボならぶっぱで楽勝だ!!」

「あとは勉強教えてもらって!」

「これで林間合宿バッチリだ!!」

 

瀬呂も交えて喜んでいる。そんな能天気な二人に対して爆豪が悪態をついた。

 

「人でもロボでもぶっとばすのは同じだろ。何がラクチンだ、アホが」

「アホとは何だ、アホとは!!」

「うるせえな、調整なんか勝手に出来るもんだろ。アホだろ!

なあ!?デク!」

「!」

 

緑谷は突然自分に話題を向けられてビクリと体を震わせた。

 

「"個性"の使い方……ちょっとわかってきたか知らねぇけどよ、てめェはつくづく俺の神経逆なでするな」

「あれか……!前のデクくん、爆豪くんみたいな動きになってた」

「あー確かに……!」

 

緑谷が救助レースで見せたパルクールのような機動力のある移動。あれは確かに爆豪の移動方法によく似ていた。

爆豪の動きを参考にしたのかまでは分からないが、可能性としては考えられる。

 

「体育祭みてぇなハンパな結果はいらねぇ……!次の期末なら個人成績で、否が応にも優劣つく……!

完膚なきまでに差ァつけて、てめェぶち殺してやる!

長谷川に轟ィ……!!てめェらもなァ!!」

 

「久々にガチなバクゴーだ」

「焦燥……?あるいは憎悪……」

「だな。……まぁ、そうなるのも仕方がないか……」

 

爆豪の心情を読み取った常闇と、それに同意した千雨。千雨は爆豪の態度の理由をなんとなく理解していた。

爆豪があんなにもキレているのは、体育祭と職場体験が大きいことだろう。

 

体育祭では満足のいく戦いが出来なかった上に、たまたま運が良かったから得られたかのような形での優勝。ネットの評価でも、決勝戦の話題よりも千雨と轟の準決勝を実質的な決勝戦と言われていたほどだ。

職場体験については本人が話さないため詳しくは分からないものの、思っていたような活動やプロから技の指導なども無かったらしいことは周囲への反応を見てわかった。

周囲ばかりが経験を積み上げている中で、思うようにいかない苛立ちはプライドの高い爆豪にとって大きなストレスだというのが分かる。

 

特にクラスで一番嫌っている緑谷の成長は爆豪にとって一番のストレスの要因だろう。

爆豪の機動力の高さはクラスでも上位だ。それを得るためにどれほどの時間をかけたのかは分からない。

しかし不完全とは言えども一週間の職場体験で自身に迫るほどの機動力を身に付けられたのは不愉快極まりないことだろう。

 

二人が幼馴染みということはクラスでも知られている。そして二人の性格と態度からして、出来損ないの緑谷と優秀な爆豪という構図がずっと続いてきたのもわかる。そして、そこに存在する複雑になった感情も。

 

爆豪が今感じているのはおそらく、格下と思っていた緑谷が自身を超えるかもしれないことに対する焦燥、それが現実にあり得ることとは認められないが故の憎悪、思うようにいかない現実への苛立ち。

それらの不快感を全て払拭し、爆豪は自身の精神を守るためにも、今一度このクラスで誰が一番上なのかはっきりさせたいのだろう。

 

「というか、あれ……?

もしかして私、爆豪に初めてちゃんと苗字で呼ばれた……?」

 

今まで「アホ毛」呼びだったのが名字になっていたことが千雨にとって一番の驚きだった。

 

 

「長谷川、今日はどうする?八百万との特訓はないのだろう?」

「今日は常闇と一緒に帰りたい……と思っていたんだが、実はコスチュームの改良が終わったらしくて。今日はその確認がある」

「また改良したのか」

「防水性と耐水性を上げたくて。

期末に向けて装備の定期メンテも一緒に頼んでおいたのが終わったらしいからその確認も」

 

職場体験で感じた改良点。期末に間に合うように蜘衣と発目に改良とメンテナンスを頼んでおいたのだ。

 

「長谷川、クラスで一番コス改良とかしてるよな」

「職場体験前にも改良申請してたし」

「デザイン含めて完全一新した轟と違って、装備のアップグレードとかマイナーチェンジだけだぞ。衣装変更は断ってるから」

「あのアイドル衣装にしないのか……」

「轟、それは忘れろ。

じゃあまたな」

 

教室に残っていたクラスメイトに見送られ、千雨は荷物を持ってサポート科のラボに行くべく教室を後にした。

 

 

 

 

 

発目が室内の一角を独占しているラボに向かえば、今日は珍しく発目以外のサポート科の生徒も何人かいた。

 

「悪いな発目、いつも改良とかメンテとか頼んで」

「何を言うんですか!むしろ新たな発見もありますし、ベイビーの様子をしっかり見せてくれる上により良いものへの改良というのは開発者冥利に尽きるというもの!

それに何より、蜘衣さんというプロの開発者の意見も伺えますし作品も見れますからね!私としては願ったり叶ったりです!」

「そりゃ良かった」

「それで長谷川さん、どうですか、私のニューベイビーは!?

以前のHDDからSSDに変更して小型かつ対衝撃、防塵、防水機能を強化しました!もちろん充電器も同等の機能にしてあります!」

 

興奮気味な発目。

装備をポーチにいれて駆動状況などを電子精霊たちにもチェックさせて空中にディスプレイを表示させる。

 

「バッチリだ。

ここまでコンパクトかつスペック高く出来るとはな」

「私のベイビーを愛用して下さっていますからね!これくらいはもちろんです!

あ、ところでこれ着けてもらっても良いですか?」

 

そう言って机の端にあったブレスレットのようなものを差し出した発目。

千雨は何の疑いもなく発目によって右手首に着けられた瞬間、その大きさに反して重いのを実感した。思わずよろけた千雨は咄嗟に身体強化をして倒れずに済む。

 

「んだよコレ!?」

「コンペに出した試作品で重さ10キロの腕輪です」

「お前、よく重くないみたいな顔して持てたな!!?」

「自慢のベイビーですから」

 

まじまじと発目が作った試作品を見る。5センチ幅の太めな腕輪には黒い長方形の出っ張りが複数ある。どうやらこの黒い部分に秘密があるのだろう。

 

「こんなに小さくて、10キロもあるのか……?」

「科学とは日進月歩というものです!この重りは圧縮機によって」

「いや話さなくて良いから」

 

絶対に長いであろう発目のベイビー説明を阻止する千雨。発目は語り足りなくて不満げだ。

 

「それで?何でまたこんなのを?」

「学内コンペの中でも面白そうだったのと……最新のプレスマシン使いたかったので」

 

絶対に最新のプレスマシンが使いたかったんだな、と千雨は察した。

 

「サポート科ってコンペなんかもあるのか」

「今年の期末実技課題が複数用意された学内コンペに参加することと、作品の加工でラボのマシンを最低1台使うことなんです!

しかもコンペで採用されたら追加点出るので、複数のコンペに出す生徒もいますよ。私もですが」

「道理で普段より人が多い訳だ……」

「3年の絢爛崎先輩から、1年の期末実技課題は毎年校内でヒーロー科が主に使う戦闘用ロボの修理って聞いていたんですけど、今年はないみたいで。

私としてはロボの修理と改造もしてみたかったんですが……まぁコンペも私のどっ可愛いベイビーをアピールする機会ですから、何も問題ありませんがね!」

 

ロボットの修理がない。

その言葉が千雨の中で引っかかった。

 

「毎年修理しているロボットって、体育祭でも使った奴だよな?」

「え?ええ、そう聞いてます」

「……発目、そのコンペについて詳しく教えてくれ」

「コンペについてですか?」

「お礼になるか分からねぇけど……お前のベイビーの実験、5個までだったら付き合う」

「何でも教えます!!」

「近い」

 

やだ、こいつちょろ過ぎ……?

 

そんな事を考えながら、千雨は発目から学期末に行われる学内コンペの一覧を見せてもらった。6月末から7月中旬の間にいくつものコンペが行われるようだ。

6月締め切りのコンペは発目の応募したものだけである。コンペで求められるものは【手足に着けられる重りで、着用者によって重さを変えられるもの。ただし着用者の動きを制限しないこと】と書かれている。

 

毎年恒例のロボの修理課題がなく、手足に着けられる重りの学内コンペ。

 

「重り……生徒に着けさせて障害物競争とか長距離走とか持久走とかか?

でもそれだったらロボも障害物にするし、体育祭の競技みてぇなぬるい試験するはずがねぇな……それに生徒数に合わせて重りを用意しなきゃならなくなる。

となると……対人戦闘?一年一学期の期末で?それなら二年か三年の方があり得る……もっと調べねぇと分からねぇな……」

「長谷川さん!考え中の所すみませんが、さっそくこちらのバックパックの実験をお願いしますね!」

「ああ分かった……って、おい待て!!私に取り付ける前に重りを先に外して……!!」

「あ、ごめんなさい!スイッチ入れちゃいました!」

 

発目が右手で何かのスイッチを押した瞬間にバックパックは勢い良くジェット噴射をして千雨は天井に頭を勢いよくぶつけた。そして発目がスイッチを切ると同時に、今度は重りのついた右手首から落下。

内臓が一瞬だけヒュッと浮遊する感覚と、落下による死の危険を感じた千雨。身体強化のおかげで怪我をせずにすんだが、この時点で千雨は期末前のこの怪我なんてしていられない時期に5個も実験に付き合うと言った自分に後悔した。

万が一怪我をしたとしてもコチノヒオウギがある。しかし、発目にコチノヒオウギを見られるのは避けたい。アーティファクトアプリの中でもコチノヒオウギをコイツが知ったら暴走するに決まっているからだ。

"個性"でないのに簡単にその場で回復出来るアイテムなんて、この世界においてはまさに魔法でしかない。

 

千雨は何としてでも怪我をしないで残り4つの実験を乗りきらねばならないと思い、滅多に出さない本気をここぞとばかりに出したのだった。

 

 




千雨が12位に入り、砂藤から下が1つ下に順位ずれていっています。
障子くんだけわからなかったので捏造。中間でクラス中位にいたと公式キャラクターブックにあったのでそれを参照しました。
あと活動報告にて強さ表を載せました。感想で答えていた数字から変えたりしてます。「俺の考えと違うんですけど」って思ってたらごめん!

台風の影響で停電するか断水するか浸水するか屋根剥がれるか分かんないですが、まぁなんとかなるっしょ。
作者は神作家様方に祈りが届く位には幸運値高いし。
それに我がサイレントヒル県にはフジヤマという神山と『新幹線がいつまでも静岡』という時空間をねじ曲げる概念結界が存在するからな!
この2つのパゥワーにはあらゆる台風が勝てないものよ!フハハハハ!
いや待て……停電したら……ヒロアカアニメ見れないのでは……?

仕方がないので、18年振りに続編が出る『JKが異世界に拉致されて剣片手にさ迷い戦い成長していく某長編名作』の復習をしながらポテチをつまみ、電子版ジャンプを読む日とする!!!

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