ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武

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気が付いたら一週間以上たってた件について。
ヒロアカアニメは再放送で見ました。新OPとED良い。アニオリも全体的に面白かった。
作者の家は停電も断水も浸水もなく無事です。

今回の台風などによる被害の大きい地域の方々の一日でも早い復旧を願っています。

政府と自治体は早く都市型シェルターとか避難所の常備品増加とかペットのルール決めとか色々災害対策して。花粉まき散らす木も伐採して別のもっと良い木を植林して。給料増やして。消費税の面倒な制度やめて全部5%にして。週休3日制にして。
あとネギま学園祭編を原作通りに(※重要)アニメ化して、千雨ブームとかも推進してくれたら大体言う事なし。



おとまり

八百万の家でのテスト勉強は日曜日の午後に行われる。

それに合わせ、八百万の期末前最後の特訓は土曜日の夕方と日曜日の午前中で行うことにし、土曜日の夜は千雨が泊まることになった。

 

学校が終わり、一度千雨の家に寄って着替えや日曜のための勉強道具を持って、八百万の最寄り駅まで一緒に向かう。

 

「なんか悪いな、無理言ったみたいで」

「いえ、両親も喜んでますし、私としても少しでも多く特訓して頂けるのは助かりますから!

それにこうしてお友達に泊まっていただけるなんて初めてで、とても嬉しいですわ!」

「お、お友達……そ、そうか……」

 

面と向かってお友達と言われるのは慣れないこともあり、思わず照れる千雨。

そういえば、友達の家に泊まるのは初めてだと気が付いた。

 

小学生の時から寮生活をしていて、長期休暇中もお呼ばれされることのなかった千雨からすればとても新鮮である。

財閥令嬢であるいいんちょの別荘やエヴァの別荘であるダイオラマ魔法球は友達の家ではなく、リゾート感覚だったのもあるのだろうが。

 

「千雨さん、どうかなさいましたか?」

「え、あ、いや……その……私も…………初めて、だから……」

「そうだったんですの?」

「その……友達の家に泊まるような事は、なかったし……」

 

そもそも周囲と仲良くするようになったのなんて、麻帆良ではネギが関わるようになってからだ。

それまでは一緒にいてもこちらに何もしないザジや読書して話しかけてこない綾瀬、クラスメイト全員に気を配るいいんちょや朝倉、オタク仲間で噂好きなパルが時々といった具合だった。

 

雄英ではクラス内に女子が7人だけということと、USJ事件などもあってこうした親密な人付き合いが出来ている。

もしUSJ事件が無ければ千雨はクラスメイトたちと親密な関係性を築くことなく、常闇としか行動しないままだっただろう。"個性"についても何も話す事はなく、体育祭には棄権して轟にあんな言葉を浴びせることもなく、職場体験に向かう飯田に見張りをつけることもなく、ヒーロー殺しの一件にも関わらなかったことだろう。

四月に出会ってからここまで急速に接近出来たのはUSJ事件があってこそだというのは、皮肉のようだ。

 

そんな千雨の事情と心情をよそに、千雨の言葉で八百万の心に火がつく。

普段は爆豪のような男子相手であっても不遜な態度で口喧嘩するような強気さと男気があるというのに、恥ずかしそうに顔を赤らめて言われてはやる気になるもの。

 

「千雨さんの初めてのお泊まり、絶対に最高のものにしてみますわ……!」

「お、おう……特訓もするからな……?」

「はい!」

 

帰宅前からやる気に満ちた八百万。

期末前にできる演習対策の特訓は今日の夕方と明日の午前中だけだ。やる気が無いよりは良いかと千雨は思った。

 

 

 

八百万の家についてから"個性"の特訓と軽い手合わせをして風呂に入り、着替えて夕食の時間となった。

八人掛けの長方形のテーブルに、八百万と並んで彼女の両親と向かい合う形で座る。

どうやら千雨が泊まるということで本日はフレンチのコース料理のようだ。お金持ちというのは凄い。

 

「千雨さん、イギリス式のテーブルマナーを身に付けていらっしゃるんですね」

「ん?ああ……まぁな」

 

ネギの相談役として将来に役立つものはと考えた時に、紅茶の淹れ方とともに学び身に付けたのだ。秘書としては24時間稼働できる茶々丸に敵わないが、せめて彼女が出来ない会食の同伴くらいはネギを手伝えるように。

学生のうちは神楽坂といいんちょ、那波、近衛が居る以上、そうそう表に出るつもりもなければ機会もないだろうが、彼女たちは将来、早くて5年でネギの協力者以外の組織の肩書を背負うこととなる。そういった将来のことを考え、今のうちから学んでいて損はないかと思ったのだ。

 

そんな建前を抜きにしても、テーブルマナーのしっかりした11才がいるのに自分が出来ていないというのは、年上としての矜持が許さないのである。

 

「長谷川さん、そんなに堅苦しくしなくても気にしないわ」

「いえ、その……せっかくの晩餐ですし……」

 

肩の力を抜こうとも、磨かれた銀のカトラリーが並んでいるだけで骨身に染みるように教え込まれたマナー通りの使い方をしてしまうのだ。

指南役をしたロリ吸血鬼のせいで。あれでネギや神楽坂への指導より手ぬるいとか考えたくない。

 

「千雨さん、どうかしましたか?」

「何でもないよ、美味しいなぁと思っただけで。本当に……ナンデモナイカラ……」

「そ、そうですか?」

 

記憶に蓋をしつつ、夕食を終えた千雨。

与えられた客室は他の部屋に遜色ない豪華さであった。室内は広く、ベッドはクイーンサイズだろうか。大人が二人寝ても余裕の大きさ。ベッドの他にもテレビやソファーなどがあり、豪華なホテルの一室だと言われても信じてしまいそうだ。

 

千雨は寝る前にどうぞと用意してもらってあったティーセットで紅茶を淹れた。おそらく食事中に千雨の顔色が悪かったから用意してくれたのだろう。白磁に金色で美しい植物の絵が描かれたティーセット一式は高価だというのが一目でわかる。

慎重に扱いながら、エヴァにかつて教わった通りに手順通り丁寧に注げば上品な花に似た香りが広がる。紅茶を飲みながらのんびりとしていると、八百万がやってきた。

ゆったりとしたTシャツと五分丈のズボンというラフな格好で髪をおろした彼女は普段よりも優しそうな雰囲気だ。あとネグリジェ派ではないらしい。

 

「八百万?」

「千雨さん、今お邪魔してもよろしいでしょうか?」

「ああ、問題ないぞ。

ちょうど紅茶を淹れてたんだ、入ってくれ」

 

部屋に入りソファーに腰かけた八百万に、紅茶を淹れる。

 

「ありがとうございますわ」

「寝る前に用意してもらったのは私の方だから気にしないでくれ」

「お紅茶も淹れるのが上手なんですね」

「テーブルマナーと一緒に教わったんだ。披露する機会が無いし、普段も面倒くさがってインスタントコーヒーばっかり飲んでるから久々に淹れたんだが……お気に召したようで何よりだ」

 

紅茶の淹れ方も、エヴァから教わった。計画で忙しいネギに飲ませる機会はなかったが、エヴァからはギリギリ合格をもらえた腕だ。

長らく淹れていなかったから不安だったが、千雨は普段から紅茶を飲みなれているだろう八百万の言葉に少し安心した。

 

「お泊まりした時は、パジャマで遊んだりおしゃべりすると調べましたの!」

「あー……うん。まぁ、そうらしいな」

 

初めてのお泊まりを良いものにと張り切っていた八百万のことだ。おそらくすぐに帰ることはないだろう。

おしゃべりすると言われても何を話すかと考えていた途中で、八百万が先に話し出した。

 

「それでその……千雨さんは、好きな方はいらっしゃるんですか?」

 

八百万の言葉に千雨は思わず口にしていた紅茶を吹きそうになったのをこらえたものの、無理に抑えたためむせてせき込む。

 

「なな、なんでそうなる!?」

「恋バナをするのがお泊まりを楽しくさせるものだとメイドから聞きましたわ」

 

確かに女子のお泊りの定番だ。間違ってはいない。いないが……今、私と八百万で恋バナをするのか。

千雨は目を輝かせている八百万を見ながら仕方がないと考えた。彼女なりに楽しい時間を、と考えてくれているのだ。流石にこんな澄んだ瞳を輝かせているのに断るのは心が痛い。しかし、好きな奴って言われても――。

 

『一番好きです』

 

思いがけず、かつてネギに言われた言葉を思い出して赤くなった千雨。あそこまでまっすぐとした目で好意を伝えられるなど初めてだった。チャット上では多くの人から色々と褒めそやされていたが、それらとは比べ物にならない破壊力があった。

千雨は熱を持った頬を冷まそうと手であおいだ。

 

「芦戸たちもだが、なんだってみんなしてそういう方向の話ばかりするんだ……」

「それは千雨さんが常闇さんや轟さんとよく居ますし、それに最近では飯田さんや緑谷さんも千雨さんに好意的ですし、爆豪さんとはよく言い争いしていますが他のクラスの男子生徒ともよく話していますから」

「いや、八百万もクラスの男子から人気だろ!

CMに出れるくらい美人で、性格も良くて、文武両道、"個性"も強い。食堂でもたまに他科の生徒が見てるし。私から見ても良い女だ」

「い、今は千雨さんの話ですわ!

それで、ど、どうなんですか……?」

 

ポコポコプリプリと顔を赤らめて言う八百万。照れと嬉しさが混ざっているのだろう。

手にしていたティーカップを見ながら千雨はクラスの男子に対してどう思っているか言葉を紡ぐ。

 

「あー……前から言ってる事と同じなんだが……クラスの奴らは良い奴らとは思ってるけど、見てられねぇから手出ししちまうだけだ。

常闇は、まぁ……そういう理由じゃねぇが」

「常闇さんは違うんですの?」

「常闇は……良い奴だよ。私なんかにゃもったいない位に。いつだって冷静だし、周囲をよく見ているし、仲間思いだし、優しい。

私は口も性格も人付き合いも悪いからな。あの時の私相手でも友達になりたいって言ってくれて、本当に嬉しかったんだ。

恋というよりも……私にとってかけがえのない、大切な仲間だよ」

 

あの頃の、人を近付けさせまいとしていた千雨に対しても物怖じせずに話しかけて友になりたいと言ってきた常闇の存在は、千雨にとって大きな存在だ。

八百万は自嘲めいた千雨の言葉を聞き、千雨さん、と名前を呼んで話し始める。

 

「私は出会ってまだ3か月にも満たないですが……千雨さんは性格悪くなんてないです。人付き合いも悪くないですわ。私に親身になって戦い方を教えてくださり、いつだって周囲のことをよく見て考えています。

確かに口は多少悪いかもしれませんが時と場合に合わせておりますし、心を開いてくれていると感じています。

千雨さんが思っているほど酷い人間なんかじゃありません。とても優しい……私の、私たちの、大切でかけがえのない友達で仲間ですわ」

 

八百万の言葉に千雨は視線をさまよわせて顔を赤らめ、か細く小さな声ではあったが確かにありがとうと口にした。

 

「ほ、ほら!私は話したんだ、次は八百万の番だ!」

「えっ!」

「私ばっかり話すのは無しだろ!ほら、クラスの男子に気になってる奴とかいねぇの?」

「いませんわ!今は、ヒーローを目指すのに切磋琢磨するので精一杯ですし……!」

「その解答はズルいぞ。じゃあ恋云々はともかくどう思ってるかとかで」

 

千雨が自分のことから話題を逸らそうと八百万に話題を振れば、八百万は慌てる。

それから恋バナはまだ自分たちには向いていないという結論に持って行き、別の話をすることにした。

 

「期末試験、千雨さんがいてくれたおかげで大丈夫そうですわ。ロボの演習だと聞いていますし」

「……それなんだけどよ、もしかしたら違うかもしれない」

「ち、違うって、どういう事ですの!?」

「ああいや、その可能性があるって話だ!落ち着け」

「ですが、その可能性を示唆する理由があるという事ですよね!?」

 

思わずこぼしてしまった千雨の言葉に、八百万が驚き混じりに不安そうな顔をした。八百万はそのまま千雨のことをじっと見据え黙って言葉を促している。

不安を煽ったままにするよりは良いかと千雨は思い直して口を開いた。

 

「……サポート科の奴から聞いたんだが、毎年サポート科の一年生は入試や体育祭で使ったロボの修理をするんだそうだ。

が、今年はそれがないんだと」

「……つまり、ロボではない……という事ですの?」

「いや、まだわからん。二年生や三年生の期末試験でロボを使わないって理由かもしれない。

それにロボじゃないとしたら何をするのやら……」

 

千雨たちは期末試験の演習について、ほとんどと言っていいほどに情報がない。あるのは相澤先生から言われた一学期の総合的内容だ、ということのみ。

 

「確か相澤先生は、一学期でしたことの総合的内容とだけでしたが……」

「今までしたヒーロー基礎学は、戦闘訓練と救助訓練、あとはほぼ基礎トレだからな。戦闘と救助の両方って事はないと思うが……どちらかと言われれば戦闘とかの類だろう」

「どうしてそうなるんですの?」

「救助に関して必要な知識は沢山あるだろ。救助方法やら応急手当やらトリアージやらなんやら……知識も経験も不十分な私ら一年生の期末で課すにゃ重すぎる。

基礎トレで体力増強をしている訳だし、戦闘の方が現実的だ」

「なるほど……戦闘ですか……」

 

八百万は不安そうにつぶやき、手にしていた紅茶に映る自身の顔を見る。

その様子に千雨はやはり余計な事を言ってしまったと反省した。

 

「不安にさせるつもりはなかったし、ロボじゃないって確定した訳でもないんだが……その、ごめん」

「千雨さんが謝ることではありませんわ。むしろ、今までの試験と同じだと疑わずに信じて、当日に違うと言われたらもっと不安になったと思います。

話していただけて感謝していますわ」

「……ありがとな、八百万。

幸い、明日は午前中にも特訓出来るんだ。午後には勉強会もあるし、疲れない程度に対人戦闘の特訓をしよう」

「はい。

そろそろ遅い時間ですし、お暇致しますね」

「あ、ティーセットも下げないと……」

 

千雨がそう言って立ち上がると同時に八百万が誰か居ますかと声を上げると、ノックの後に執事の内村が部屋に入ってきた。

いつから待機していたんだと言いたくなったが、言ってずっと待っていたと言われても困るため言わないでおく。世の中、知らなくても良い事は山ほどあるのだ。

 

「それではおやすみなさい、千雨さん」

「ああ、おやすみ」

 

内村がティーセットを銀製の四角いトレーに載せて八百万と一緒に退出する。

千雨は一人になった部屋で、ベッドサイドのランプだけつけて部屋の明かりを消す。うっすらと部屋に広がる紅茶の残り香はどこか懐かしさを感じさせた。

そのままこれまた高いのだろうと分かる寝心地の良いベッドに入れば眠気が一気に高まり、千雨は眠りについた。

 

 




女子の会話……それは謎と理想と妄想の宇宙……(投稿が遅くなった最大の理由)
女子の会話が恋バナしかねーじゃんってツッコミはね、作者が一番わかってる。すごくわかってる。メチャクチャ悩んでる。
でも他にいい感じの話題がないし、何について話してるのかわかんねぇんだ……!

あ、拙作の千雨はエヴァにゃんから大人になってからも使える礼儀作法を教わっています。戦闘に関しては教わりませんでした。教わっときゃよかったのに戦わないからって言って断ったという裏設定。

ちょっと脳裏に浮かんだんだが、ちう様in幼女戦記ってどう?
ライン戦線で戦うちう様……デグさんとちびちう様が互いに幼女疑惑を感じて探り合う不毛な議論……こういうのちょっと読みたい。
しかし作者の想像するちう様では戦闘中に殉職偽装してどこかに亡命しそうだし、デグさんヤベー奴って認識してすぐに遠ざかるから書けない。あと作者ミリタリー知識とかそこまでない。
誰か他の人に書いてもらおう!ってことで、あと誰か頼む。

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