ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武
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ついに雄英入学!花の新1年生!
エヴィ バディ セイ ヘイ!(YOKOSOー・・・)

毎日更新できる人は精神と時の部屋かダイオラマ魔法球を隠し持っている。きっとそう。


U.A. High School /April
春、入学初日


4月。

春の穏やかな気候は心地よい朝を迎えさせた。

ここ数日続く晴天は例年と比べて安定していると、黒髪エルフ耳の女子アナが嬉しそうに告げている。

朝のテレビニュースが流れるリビングで、千雨は朝早くから真新しい制服に身を包む。

 

シンプルな白いワイシャツ。ライトグレーのジャケットに、クロムグリーンのラインが下衿と袖に2本。肩章は学科ごとに異なるらしく、ヒーロー科は一番内側に金ボタンが1つ。夏服にも同様の肩章がある。スカートは膝より少し上で無地のクロムグリーン。

 

靴や靴下、鞄に規定は無い。装飾品や染髪も自由。国立の難関校にも関わらず校則が緩いのは個性ありきの社会だからだろうか。

右手首に魔法発動体のバングルを嵌め、指輪に傷がつかないように革紐でリングネックレスにしてシャツの中にしまう。

靴はどこにでもある合革のローファーで、靴下は膝下の黒い靴下。

 

鞄はダークブラウンのサッチェルバッグで、背負うことも手提げにすることも出来るものを背負う。

麻帆良でも円扉でも同じ型の鞄を使ってきたため、今のところ変える気は無い。

 

千雨は真新しい赤ネクタイを締めてジャケットを羽織り、姿見を見た。

ブレザー姿が懐かしく、それでいてどこか遠くに来てしまったような。

 

 

―――赤いネクタイが、すこし苦しく感じた。

 

 

 

 

駅のホームで電車を待っていると、同じく雄英の制服を着た常闇を見つけた。

卒業前に2人とも担任に報告や書類提出などがあったため互いに知ってはいたが、こうして制服姿だとより実感がわく。

 

「常闇、おはよう」

「長谷川か。息災で何より」

「クラスは?」

「A組」

「同じだ。今年もよろしく」

「ああ」

 

電車を待ちながら時折話す。

常闇は駅まで自転車に乗ってきたらしい。

 

「その腕輪は…?」

「バングルだよ、自作のシルバー。ラテン語刻印してあるんだ」

「…魔道具の手枷…!」

 

右袖を少し捲って見せたバングルにソワソワする常闇。

装飾が無くシンプルでラテン語が刻印されているため、確かにファンタジーな封印道具に見えなくもない。王道過ぎるが右腕の封印みたいなことを考えていそうだ。

 

実際は封印ではなく発動するためのマジックアイテムだが。

 

シャツの中にしまっていたリングネックレスも見せてみれば、常闇はより一層目を輝かせた。

将来が不安だが本人が楽しそうなので良しとしておく。こういうものに心引かれる時期というものは誰にでもある。それに黒歴史は誰もが持ってるものだ、仕方がない。

 

「常闇もアクセするんだな。それチョーカーだろ?」

「俺の第一装具だ」

 

あごを少し上げて見せる常闇はどこか嬉しそうだ。実際、気付いてもらえて嬉しいのだろう。中二病あるあるだ。

装飾のない赤い革のチョーカーは襟で隠れているが長い1つのチョーカーを何周も巻いているらしい。

 

「これ1本なのか。シンプルだけど似合ってる」

「わかるか、やはり引かれ合う者の宿命…」

 

患っている常闇の口調はフィーリングで理解する。この手の口調はファンや交流相手にもいたため千雨は慣れている。

 

ちなみに先程のは「一番気に入っているアクセサリーだ」と「この趣味がわかるなら、仲良くなれたのも納得」だ。

 

常闇にリングネックレスを首から外して渡せば興味津々といった表情で指輪を様々な角度で見ている。

…やっぱり、光り物が好きなのだろうか。カラスに似ているし。

 

「…そんなにシルバーアクセが気になるなら、入学祝いにリングかペンダントか何か作ろうか?」

「!!!」

 

カラスに似た鳥の顔をしているため、表情が分かりにくい常闇。

その常闇の顔の毛がぶわりと逆立ち、目をキラキラと輝かせながら何度も頷く。

シルバー粘土が余っているので作る分には問題ないので良いが、常闇の反応が面白いくらいに良すぎた。

おそらく欲しいと思っていたがシルバーは高いから諦めていたのだろう。中学生にシルバーは確かに少し高価。

 

反応がちょっと可愛いと思ってしまったのは内緒である。

 

 

 

それから好きなアクセサリーデザインやモチーフの話と、入学にあたってのあれそれを話しながら校舎にたどり着く。

見上げるそこが今日から3年間通うこととなる学校だ。

 

「やはり広大だな。迷宮になりかねん…」

「常闇、教室はこっちだ」

「わかるのか?」

「個性でな。ほら、置いてくぞ」

 

広い校舎内を歩き慣れた様子で進む千雨に常闇は着いていく。時刻は8時15分、始業の10分前。

1-Aと書かれた大きなドア。個性社会故に建物自体が大きく作られているためだが、不思議な感覚だ。

ドアを開けると既にちらほらとまばらに座っている生徒がいる。教壇のすぐ横に立っていた紺色の髪に四角い眼鏡の男子が話しかけてきた。

 

「おはよう!

俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ、これからよろしく!」

「常闇だ、よろしく」

「ああ、これからよろしく常闇くん!」

 

グイグイくる飯田を気にせずあいさつし返す常闇。

そのせいか、常闇の隣にいる千雨の返事を飯田は待っているのか真っ直ぐと千雨の目を見てくる。

 

「…長谷川です」

「うむ、長谷川くんもこれからよろしくな!

席は出席番号順だ!」

「…どうも」

 

独特な身振り手振りをする飯田をよそに、席に向かう。

千雨は五十音順ならば18番なのだが特別枠だからだろうか、21番だ。窓側一番後ろの1つ飛び出た席である。

常闇とは少しだけ離れているが、話が出来ない程ではない。

 

千雨は指定されていた席に座り、持ってきていたタブレットPCを取り出す。音楽を聴かずともイヤホンをすれば話しかけてくる余計な生徒はいない。

 

校内の無線Wi-Fiに繋ぎ、常闇に渡すためのシルバーアクセサリーのデザインに良さげなものを探していく。

リンゴや鳥、ドクロや翼、ドラゴン、剣、盾などいくつも検索してデザイン案として確認していくも、いまいちピンと来ない。

 

しばらくして、新たに教室へ入ってきた男子と先ほど話しかけてきた飯田がなにやら言い争いをしているが、その程度の騒音は慣れているので無視。

騒音の元と関わる気はない。

 

 

 

チャイムの音に気付いてタブレットを閉じ、ひとまず机の引き出しに仕舞う。

すると、入り口に立っていた癖毛の男子と丸顔の女子の向こう側。廊下からクリームイエローの寝袋に包まれた人物が現れた。

不審者かと思い警戒してしまったのは悪くない。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。

君たちは合理性に欠くね」

 

もぞもぞと寝袋から出てきた男は教室に入るなりそう言った。

黒いツナギ。首元に緩く巻かれた包帯のような布。ボサボサで伸ばしっぱなしの黒髪。無精髭。猫背。

完全不審者ルックなその男に千雨は見覚えがあった。

初めてこの世界にきた時に戦った相手であり、千雨に"個性"が効くのかなど委員会立ち会いでの研究実験した時にいたプロヒーロー、イレイザーヘッドだ。

 

あの時の格好がたまたまではなく、日頃からしているのかよと千雨は呆れてしまった。

 

「担任の相澤消太だ、よろしくね」

 

しかも担任。というか本名。それでいいのかヒーロー。

千雨の能力と相性を考えれば、彼はそのストッパーとしてなのだろう。だが…この、小汚ないくたびれたおっさんが担任。

子供が担任なのも酷かったとは思うが、これはこれで酷い。千雨はそう思わずにはいられなかった。

 

「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」

 

寝袋から取り出したのは体操服。五分袖の体操服で、紺地に白でUとAを組み合わせたようなラインが入り、その白いラインの縁には赤が使われている。

 

相澤が見せたのは見本らしく、各自の名前と体型に合わせた体操服が予備ふくめて教室後ろのロッカーに入っていると言われ、指示された更衣室で着替えるべく更衣室に向かった。

 

 

 

 

女子更衣室に向かう途中、女子同士ということで全員一緒に向かう。

正確には、広い校舎の中、迷うことなく更衣室へ向かう千雨に他の女子たちが着いていっている。

少し早足の千雨に並ぶようにして女子の1人が話し掛けてきた。

 

「長谷川さんですよね?

更衣室の場所、お分かりになるのですか?」

 

黒髪をポニーテールにしている背の高いキレイな女子。出席番号で千雨の前の女子であるが、名前は知らない。

 

「ええ、まぁ。えっと…」

「自己紹介がまだでしたわ。私は八百万百と申します。前後の席ですし、よろしくお願いいたしますね」

 

丁寧な口調でどこかおっとりとしていて、それでいて高貴な雰囲気を纏っている八百万。千雨は直感的にいいんちょや那波、近衛と同じお嬢様だとわかった。

 

この手の"お嬢様"には3種類いる。

プライドエベレストな影の努力家。ウルスラの脱げ女がこのタイプ。

慈愛と天然100%の秀才。那波と近衛がこのタイプ。

上記二種類の複合型。いいんちょがこのタイプ。

 

八百万は慈愛と天然が多めの複合型お嬢様だろう。

この手のお嬢様は、距離を取ろうにも自身のペースに巻き込んでいくタイプ。そして好意を前面に出してくる。人付き合いをなるべく避けたい千雨としてはとても厄介である。

 

「長谷川千雨です。よろしくお願いします八百万さん」

「前後の席ですし、是非とも仲良くなりたいと思いましたの。

ところで、長谷川さんはどうして私の後ろなのでしょう?五十音順ですのに、どうしてもそれが気になっておりまして…」

「あー…特別枠での入学だと合格通知に書かれてました。おそらくそれでかと」

「特別枠入学って、なんか理由あるってことでしょ!?」

 

誤魔化しても仕方が無いので正直に話す。

千雨と八百万の間に、グイグイと白目部分が黒いピンクの肌とクセのある肌と同じピンクのショートヘアにライトベージュの角がある女子が入ってきた。

 

このピンク女子はムードメーカー気質で常に元気で明るい明石に似ている。パーソナルスペースとか空気とか全部無視してグイグイくる馴れ馴れしい感じが特に。

 

「私は芦戸三奈!よろしくー!」

「特別枠ってあるんだね!あ、私は葉隠透!よろしくね!」

 

会話を聞いていたであろう、全身透明な女子もとい葉隠もピンク女子の芦戸と共に会話に加わり、自己紹介する。

 

葉隠はどちらかといえばまき絵に似ている気がする。

こちらも元気でムードメーカーだが、雰囲気が天真爛漫というか、どこか子供らしさがある。

 

「葉隠さんに芦戸さん」

「堅苦しいってー!三奈でいいよ!長谷川って呼ぶね!」

「私も透ちゃんで良いよぉ!私も千雨ちゃんって呼ぶから!」

 

この手の騒がしいタイプとは距離を取りたいので、わざわざ距離をつめるような呼び名はしない。

 

「葉隠さんに芦戸さん」

「変える気ないでしょ長谷川!」

「思ってたより面白いね千雨ちゃん!」

 

2人の笑い声が廊下に響く。

千雨の放つ人付き合いを拒否したい空気を吹き飛ばす2人のおかげなのか、他の女子も会話に加わってきた。

 

「ウチは麗日お茶子、よろしくね!」

「耳郎響香、よろしく。長谷川って呼ぶわ」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんって呼んで」

 

全員の雰囲気からして、盛り上げ中心が芦戸と葉隠になるだろうことを確信した。

まぁ、クラスに居ないよりは良い。だが近付かないでほしい。

 

「クラスに女子7人しかいないし、仲良くしてこ!」

「仲良しイエーイ!」

「葉隠さん肩組むのやめてください」

「2人とも元気やなぁ。長谷川さん巻き込まれとるけど…あ、更衣室ってここ?」

 

グラウンドに近い女子更衣室。入口横に立ててあるホワイトボードのスタンド型看板には「1-A女子 8:25~使用」と書かれている。

 

「長谷川スゴいね!校舎クソ広いのに!」

「頼りになるー!」

「ケロケロ、迷わないで済んでよかったわ。千雨ちゃんすごいのね」

「いや、別に…。

というか芦戸さん葉隠さん抱きつくのやめてください」

 

左右から挟まれる形でハイテンション女子二人に抱きつかれる千雨。

教室から移動しただけで精神的に疲れている。おかしい、どこで間違えた。

 

「それよりも早く着替えましょう、時間は有限ですわ」

「確かに。なんかあの相澤って担任、時間にうるさそうだったし」

「静かになるまでに8秒かかりました、とか言っとったもんね」

 

ワイワイと騒ぎながら体操服に着替えていく。

 

 

千雨はすこし、嫌な予感にさいなまれつつ。

 

 




女子ーずの呼び方(初日)

芦戸:長谷川   理由:呼びやすいから

蛙吹:千雨ちゃん 理由:お友達には名前にちゃん付けしたい

麗日:長谷川さん 理由:まだ会ったばかりだから

耳郎:長谷川   理由:同じサバサバ系女子と察したから

葉隠:千雨ちゃん 理由:名前がかわいいと思ったから

八百万:長谷川さん 理由:さん付けがクセだから


千雨:全員苗字+さん付け 理由:人付き合いが苦手だから

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