首都高に流る鮮青6連星   作:susu-GT

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ついに完成です。


Ep.09 SPL engine(スペシャルエンジン) “ZL1”

《水曜日 8時00分:RGOガレージ内》

 

 

エイジ「リカコ、戻ったでぇー。」

 

リカコ「お疲れー。」

 

島「おはようございます。シゲさんはお元気でしたか?」

 

エイジ「元気もくそもないワ。プリウスの話をしたとたん、『ワシも連れていけ』とか言い出しおる。」

 

貴章「V8用のマフラーとエキマニを積んでますから、僕のインプレッサじゃあ大人3人は乗れなかったんですよね。」

 

 

 

貴章とエイジは、3日前に篠田レイコ経営の『食事処《紅》』を後にしてから、そのままインプレッサでエイジの地元、大阪に移動。エイジのランエボや島の964ポルシェに入っているシゲさん製作のエキゾーストパーツを、V8用に作ってもらいに行ったのだ。

 

 

 

エイジ「残り4日か……せやけど当日の土曜日はテストランに集中したいから、実質後3日……」

 

貴章「あの、ボディの方はどうなりました?」

 

隆介「心配しなくても大丈夫っすよ。今さっき佐々木さんとこからエアロ組んだ状態で出てきたらしいですから。真紀さんに聞いたとこ、後はエンジンなんかを全部積んだ後に、ちゃんと機能するか確かめるだけらしいです。」

 

リカコ「オヤジから連絡。エンジンはもう仕上がったって。後は実走して細かいコンピューターセッティングだけだって。」

 

 

隆介、リカコから頼もしい返答が返ってくる。

 

今回、このプリウス製作において、いくつかの変更点があった。

 

ひとつめは、エアロパーツの変更。冷却性能向上のために、本来装着されていたフロントセクションとリアハッチを、ZVW52型PHV専用のものに取り替えた。

 

そしてもうひとつは、貴章たちが装備した6速シーケンシャルトランスミッションを、リカコの提案でエンジンの提供元であるレクサス ISF に搭載されていた8速オートマチックトランスミッションに換装した。ただし、Mポジションのみを設定したため、実質はクラッチを切る必要はないが、シフトノブだけは操作する必要がある。もちろん、増設によって増えていたクラッチペダルはそのままだし、踏めばちゃんとクラッチが切れるようにはなっている。

 

 

 

リカコ「あ、来たよ、プリウス。」

 

 

RGOの入り口を振り返ってみると、この前高木のところまで運んだ積車に、プリウスが載せられていた。

 

この前は丸いLED2灯式だったのが、今はPHVのフロントマスクに変わって、どこかハンサムになった気がする。

 

エアロも若干変更されていて、ノーマルだったミラーでさえ付け替えられている。

 

 

 

ガッちゃん「ヘヘヘッ、どーよ、プリウスの出来?」

 

貴章「スゴいですね……見た目だけでもスゴい速そうですよ。」

 

島「フロントマスクを変えるだけで、ここまで雰囲気変わるんですね……。」

 

真紀「佐々木さんが準備してくれてたんです。もしかしたらこのPHVのパーツの方がいいんじゃないかって。」

 

ガッちゃん「若干ではあるけど、やっぱりこっちの方が良さそうだったからな。」

 

 

 

これで、ボディ補強、エアロ変更、冷却性能向上、エンジンパワーアップ、各種パーツ取り揃えは終わった。

 

 

エイジ「ほな、後は一気に組み上げていくか。」

 

リカコ「順調に行けば、明日から走り込み出来るかもよ。」

 

貴章「はい、早く作り上げましょう、このプリウス。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《金曜日 23時20分:代々木PA》

 

 

レイコ「アラ、貴章クンじゃない。」

 

 

プリウスが組み上がって2日目、エンジンマッピング、ブレーキバランス確認、空力バランス調整が終わって、今は貴章と島のふたりでサスペンションの最終セッティング。その大詰めの際に止まった代々木PAで、貴章は見知った人物に声をかけられた。

 

篠田レイコ。食事処《紅》の店主であり、とても60代とは思えない風貌の持ち主だ。

 

そして、彼女の後方には、リトラクタブルライトをあげたままの真っ赤なシボレー コルベット C3 スティングレイが停められていた。さりげなく追加されたボディ同色のフロントリップスポイラーやサイドステップ、小さな板っ羽のリアスポイラーが、大人しめなイメージを与えつつ、流線型のコルベットのボディを引き締めている。

 

 

貴章「あ、レイコさん。どうも。今日はコルベットなんですね。」

 

 

 

彼女の愛車、1969年式シボレー コルベットC3スティングレイは、深紅のボディを身にまとった、オールドマッスルカー。そのデザインがコーラの瓶に似ていたことから、“コークボトル”という愛称をつけられたタマだ。

 

 

島「……!! 」

 

レイコ「そちらの方は?」

 

貴章「ああ、島達也さん。ポルシェ964の空冷ターボに乗っていて、湾岸の帝王《ブラックバード》の異名を持つ人です。」

 

レイコ「ふーん、あなたがウワサのブラックバードなのね。なかなかいい顔してるじゃない。まるで歴戦の猛者みたいな。」

 

島「どうも……あの、失礼ですが、このコルベットはどちらで?」

 

 

 

どこか興奮気味な島は、珍しく急くようにレイコに尋ねていく。まるでこのコルベットが気になって仕方がないとでもいうように。

 

 

レイコ「ごめんなさいね、どこでって言われても、元は主人のクルマだったから、どこで手にいれたのかはわからないの。その主人はとっくにあっちにいっちゃったけどね。」

 

 

そういいながらツンツンと空を指差す彼女の言い分を理解した島は、少し申し訳なさそうに、きまり悪そうにしながらも、さらに質問を重ねていく。

 

 

島「そうでしたか。……では、何か特殊なことってありますか? ……特にガソリンとか。」

 

レイコ「ガソリンなら、近くのガソリンスタンドでは給油しないでくれって言ってました。このクルマ用のガソリンをちゃんと買ってくれって。……スゴく高いんですよ。」

 

島「……まさか……あの、ぶしつけで申し訳ないですが、エンジンを見せてもらってもよろしいですか?」

 

レイコ「ええ、お構いなく。」

 

 

 

そう言って開かれたC3コルベットのエンジンフードの中には、C7まで受け継がれた、コルベット伝統の巨大なV8OHVエンジンが顔を覗かせる。

 

島はそのエンジンを見た瞬間、文字通り目を見開いていた。コルベットに詳しくない貴章でも、このエンジンから発せられる並々ならぬ雰囲気は感じることができた。

 

 

レイコ「あの、このエンジンがどうかなさいました?」

 

 

いきなり初対面の全身黒タイツの男が、やらガソリンがどうだとか、エンジン見せろだとか言ってくれば、さすがに定食屋店主でもちょっと不審になる。事実、レイコの顔には不安と疑惑の色が浮かんでいた。

 

しかし、次の瞬間に島が発した言葉は、貴章もレイコも知らないエンジンの型番だった。

 

 

 

 

 

 

 

島「ゼ……ZL1……。まさか本物が日本に……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイコ「ZL1?」

 

貴章「何なんですか?それ……。」

 

島「おふたりは、このコルベットの先代モデル、C2コルベットに搭載された特殊なエンジンをご存知ですか?」

 

 

レイコは何も知らないようで、ただ首を横に振るだけだったが、貴章の方は話についていけそうなのか、うなずく代わりに自身の記憶からその手の話を引っ張り出しながら話に乗っかっていく。

 

 

貴章「確か、L88でしたっけ? レースのホモロゲート用にレース用エンジンをデチューンしたんですよね。ただ、市販のハイオクガソリンのオクタン価がせいぜい100弱だったのに対して、L88の要求オクタン価は103以上。一般公道ではとてもじゃないけど扱えない代物でだったって聞いてます。」

 

島「ええ。その扱いにくさ故に、C2末期の1967年に追加されたと言えど、L88を積んだC2コルベットはたった20台しかなかったと言われています。」

 

貴章「けど、レイコさんのコルベットはC3ですよ。L88は関係ないんじゃ?」

 

島「レイコさん、このコルベットは1969年式でしたよね? 間違いないですか?」

 

レイコ「はい、1969年式ですが……。」

 

島「実は、C3コルベットスティングレイには1969年の1年間だけ、カタログ上で変わったオプションが付けられるようになったことがあるんですよ。そのオプションが、このZL1エンジンなんです。」

 

貴章「……そのZL1とL88に何か関係があるんですか?」

 

島「ZL1は、C2に搭載されたL88の進化型です。ほぼレース用のスペックで、エンジンヘッドおろか、エンジンブロックまでアルミ化したスペシャルエンジンです。……そして、そのZL1を搭載するには、新車1台分の追加料金が発生したらしく、ほとんど設定する人はいなかったと聞いています。」

 

貴章「……ちなみに、そのレアリティって、どのくらいなんでしょう?」

 

 

 

島の答えた内容は、貴章とレイコの想像の域をはるかに越えたスケールの話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島「総生産数は3台、そして、内1台はレーシングカーなので、市販車にZL1を搭載したのはたった2台と言われています。まさに幻のエンジンですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴章「たった2台……そのうちの1台が……」

 

島「おそらく、レイコさんのこのクルマなのでしょう。まさか幻のエンジンを見れるなんて思いもしませんでしたが。」

 

レイコ「そんなにスゴいエンジンだったのね……」

 

貴章「旦那さん、とんでもないクルマ手に入れたんですね……」

 

レイコ「まさかテッちゃんがそんなクルマを買ってたなんてね。」

 

島「新庄さん、試しにレイコさんのコルベットとランデブーでもしてみたらどうですか?」

 

貴章「へあっ?」

 

 

 

思わず素っ頓狂な声をあげてしまう貴章。しかし、島とレイコはその気満々のようだ。

 

 

レイコ「いいわねえ。私もこのクルマのこと知っちゃったら、無性に走りたくなっちゃった。」

 

島「今度は僕がナビシートに座りますね。新庄さんのドライブする番ですよ。」

 

レイコ「それじゃ、踏むわヨ。」

 

貴章「タハハ……お手柔らかに。」

 

 

 

プリウスのコックピットに収まる貴章。外観はプリウスPHVのそれに変わったため、若干勇ましくなったが、さらに貴章の後ろに配置されたチューンド2UR-GSEが、特注エキゾーストシステムにより、もはや市販エンジンとは思えない号砲を放つ。

 

しかし、今回ばかりは、レイコのコルベットには負けてしまう。旧型のV8OHVは、なんと7.0Lの超大排気量。それをチューンドしているとはいえ、元からマッスルカーらしいドコドコという地響きのような音は、乾いた2UR-GSEの音など消し去ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、このランデブー走行で、貴章たち12人による超ド級マシン、プリウスのセッティングが全て終了した。

正真正銘、モンスタープリウスが産声をあげた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《土曜日 23時00分:大黒PA 》

 

 

 

ヤンキー①「インプレッサじゃあなけりゃいいって、プリウスとかなめてんのかテメェら。」

 

ヤンキー②「まだインプレッサの方がマシだ。」

 

ヤンキー③「違う違う。きっと燃費勝負でもしに来たんだって。」

 

ヤンキー④「ダッセー、畑違いにも程があるぜ。」

 

 

散々プリウスをけなしまくる連中に、貴章たちはある種の嫌悪感を抱く。珍しく関西弁が混じる貴章。それはテンションが上がりだした証拠だ。

 

 

貴章「走ってから言えや、ドアホ。」

 

ヤンキー①「アアッ? テメェ今何て言った?」

 

貴章「耳遠いんか? 走り出してから文句言えやボケって言うたんや。何べんも言わすなや。」

 

真紀「ちょっと、タカ珍しくキレてるわね。」

 

隆介「まあ、今回は北見さんたちもけなしてることになりますからね。」

 

レイコ「ウチまでイラッときたわ。殴り込んでもエエの?」

 

エイジ「レイコさん落ち着いて。関西弁戻ってますって。……キレたくなる気持ちはわかりますけど。」

 

ヤンキー②「何をごちゃごちゃいってるんだよ!? 」

 

島「走ってみればわかりますよ。僕たちの言っていることが。」

 

レイナ「ありゃ、ブラックバードまで乗り気なのね。アキオ君もいたらどうなったのかしら……」

 

北見「ククク……」

 

山本「レイちゃんも走るんだろ? そろそろ32の準備した方がいいんじゃない?」

 

レイナ「そうですね。」

 

 

なんとか隆介の仲介でこの場は収まり、お互い5台ずつ、湾岸を踏み切ることになった。

 

 

貴章サイドは、

 

新庄貴章:トヨタプリウス(ZVW52改)

島達也:ポルシェ911 turbo3.6(964改)

高野真紀:BMW Z4 35iS (E89改)

篠田レイコ:シボレーコルベットスティングレイ(C3)

秋川レイナ:日産スカイラインGT-R(BNR32)

 

 

対するのは、ランボルギーニ アヴェンタドール、同じくウラカン、フェラーリ488GTBのイタリア製スーパーカー、ポルシェ911GT3(991)、マクラーレンMP4-12Cといった実力派スーパーカー揃い。どれもこれもメーカーのフラッグシップであったり、レーシングカーのベースマシンだったり、とにかくハイスペックの持ち主だ。

 

 

 

北見「ククク……普通に考えたら勝機無いよな。」

 

太田「けど、俺たちが組んだクルマだ。そう簡単に負けてたまるかよ。」

 

貴章「ええ。もちろんそのつもりです。負ける気がしません。」

 

山本「富永から伝言だ。『CPUの学習機能を切ってある。8速レブリミットの8500回転で300km/h出せるマッピングになってる。踏んでこい。』だとよ。」

 

貴章「皆さん……ありがとうございます。…………それじゃ、ちょっとチギってきます。」

 

 

 

夜の大黒PAに、モンスターマシンたちの勇ましい号砲がこだまする。

 

特に異彩を放つのは、言うまでもなくプリウス。ミッドシップに搭載されたV8自然吸気エンジン、2UR-GSEは、北見たちの手により排気量が5.0Lから5.4Lにあげられている。

 

そして、そのプリウスの心臓部が待ちに待ったかのように引き上げられたその本性を覚醒させる。そのありさまは、まるで意志を持つかのように力強かった。

 

それは、戦闘開始ののろしがあげられた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 







ZL1をどうやって手に入れたかって?

細かいことは気にしちゃいけません。((( ;゚Д゚)))


次回、走行シーン書いていきます!
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