首都高に流る鮮青6連星   作:susu-GT

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セリフの前の人物名、あれ消していきます。

今回は前章で出番の少なかった、工藤CRSに活躍してもらいましょうかね。


ロータリーエンジン編
Ep.13 Rotary Engine(ロータリーエンジン)


 

《午前7時 首都高速 都心環状線 内回り 銀座付近》

 

 

「で、何で真紀もインプレッサに乗っていくんだよ。お前はZ4があるだろ。」

 

「いやー、あのあとレイナさんにZ4貸してってお願いされちゃって。昨日の朝イチで渡しに行ったから、あと1週間は帰ってこないよ。」

 

「レイナさんのGT-Rは?」

 

「ああ、タカがアッシー君になってくれるからって言って、今回はお断りしたの。それに、GT-Rもちょうど車検と重なってたらしいし。」

 

「アッシー君って…………。」

 

 

 

あのモンスタープリウスによる走行から2日、自動車屋としては珍しい月曜日定休日とするCRSに向かうことになっている。都合が合わなかった隆介を除いた、貴章と真紀のふたり、インプレッサとZ4で向かうつもりだったのだが…………。

 

確かに、あの一件に関わる前に真紀からインプレッサのナビシートで首都高を走る約束を取りつけられたのは事実。しかし、まさかそのままCRSに行くことになるとは思いもしなかった。

 

 

 

「いいじゃないタカ。あんまり大がかりに押し掛けるのも良くないしさァ。」

 

「何を取って付けたような理由言ってんのさ?」

 

「ホラ、ケチケチしない。せっかく横に美女がいるんだから、もうちょっと楽しみなさいヨ。」

 

「うわー、こいつ自分で美人とか言ってやがる。」

 

 

 

いつも貴章のインプレッサにふたりが乗り会わせるとこんな感じになる。

 

久しぶりのインプレッサで首都高は、意外と新たな感覚の発見が続いている。遥かに大きなボディサイズだったプリウスから一気に小さくなった。手の内に入る感覚はインプレッサの方が濃いが、感覚的に速く走れていたのはプリウスの方だった。やはり北見をはじめとする太田、山本といった大御所チューナーの実力は伊達ではなかった。以前は結構な仕上がりになっている自信があったインプレッサのエンジンだって、今では少し物足りない。

 

 

 

「それにしても、こんなだったっけ、インプレッサって。」

 

 

 

正直、かなりてこずっている。4WDなのにトラクションがかかりにくいし、エンジンの伸びも悪い。これを良しとしていた自分の感覚を少し疑う。

 

 

 

「……なんか、変わっちゃったね。タカの乗り方。」

 

「えっ?」

 

 

 

不意に真紀が呟く。何気なく時々スルドい意見を言ってくる真紀だけに、無視はできない。

 

 

 

「なんだか、前はもっとイケイケだったような気がする。……それが今は……なんだろう……少し落ち着いてるというか……。」

 

「…………」

 

「良くも悪くも、繊細にやってるというのかな…………。ごめんネ、アタシもよくわからないの。」

 

 

 

それが本当の理由なのかはわからない。大なり小なり駆動方式の違い、ボディサイズの違いも絡んではいるのだろうが、それだけではないというのは貴章と真紀に共通した見解だった。

 

もちろん、平日の日中ということであまり踏めていないというのもある。せいぜい100km/hちょっと。C1を走る一般車のなかでも、このペースはまだ速い方だ。

 

色褪せている。あのとてつもない完成度を誇るプリウスに1週間乗っただけで、手塩にかけていじってきたインプレッサが色褪せてしまった。これまでうまく噛み合ってきた歯車が、得意の環状線でもすでに狂い始めている。

 

 

 

「(イラつく…………。)」

 

「!!」

 

「どうした?」

 

「何か来る。後ろ。速いよ。」

 

「こんな朝っぱらから走る奴いたんだな。」

 

「でも、変に夜中より交通量多くなくていいのかもね。」

 

 

 

真後ろにぴったりと張り付かれる。青い大柄なボディではあるが、ハイビームにしているのか、車種はわからない。しかし、その独特なエンジンサウンドは、知る人ぞ知るあの名機だった。

 

 

「これ、ロータリーじゃない?」

 

「ロータリー搭載車でここまでデカい図体してるって言ったら、アイツかな。」

 

「タカ、どうするの? 結構煽られてるよ。」

 

「あんまり乗り気じゃないからな。今日は譲るよ。」

 

 

ウインカーを出して相手を先行させようとした。しかし、それでも後ろのクルマは車体を左右に揺さぶって煽ってくる。譲られる気は更々ないという風に。

 

 

 

「しつこいな。」

 

「待って……もう1台。……この音!! 」

 

「……V型?それもかなりのハイチューン仕様ってとこか。」

 

「まさか……」

 

 

 

ロータリー車の後ろから新たな機体が姿を現す。純白のボディに特徴的なフェイス。小柄なボディに似合わない爆音で迫ってくるそのクルマを、貴章はもちろん、真紀が見逃すはずもなかった。

 

 

「Z4!! レイナさん!? 」

 

 

 

真紀が貸したと言っていたZ4。いつもは自分が乗っているそのクルマが今は真後ろにいる。真紀にはその違和感がなんとも新鮮だった。

 

 

「レイナさん、ロータリーの後ろについてるよ。」

 

「ハァ……やっぱ踏むしかねぇか……。」

 

 

2回ハザードランプを点滅させてからミッションを3速まで叩き落とす。ターボが負圧から正圧に変わり、シートに体が張り付く感覚を覚える。そのまま4速にシフトアップ。一瞬だけ途切れた加速感が再び襲ってくる。

 

後ろのロータリー車も煽るだけあり、きちんとついてくる。芝公園の連続コーナーで、後続車の機体を確認する。青いボディはずんぐりしているようで、動きはロータリー特有の軽やかなフットワークだった。

 

 

「RX-8か。あんまり相手にしたくないんだよな。」

 

「RX-7もそうだったけど、ロータリーってすごく速いんだよネ。特にC1とか。」

 

「そんでもって、RX-8は自然吸気(NA)ときた。ただでさえフットワークの軽いロータリーに、アクセルワークのしやすい自然吸気は反則だって。」

 

「……それにしても、結構パワー出てるよ。横に並ばれそう。」

 

 

 

パワーではいくら貴章のインプレッサでもチューンドロータリーにはかなわない。チューニングの方向性次第ではレブリミットを9000回転近くまで設定できるロータリーエンジンは、インプレッサのトルクの細い水平対抗エンジンよりもよっぽど速いエンジンだ。加速に若干もたつくインプレッサをRX-8とZ4はあっさりとオーバーテイクしていく。

 

 

「いつもタカはこんな感じでおいていかれるのネ。」

 

「……いや、いつもならもっと粘ってる。」

 

 

それだけ言っておくと、貴章はアクセルから足を離す。エンジンブレーキで徐々に速度を落としていく。

 

横の真紀は真紀で、自分のZ4の走り去る姿を見送ってからポツリと呟いた。

 

 

 

ロータリーか……。」

 

「……やっぱり、心残りか?」

 

「ううん、そんなんじゃないから。大丈夫だよ。」

 

 

 

そう言って笑顔を見せる真紀。だが、貴章はその後から俯いて言葉数少なくなった真紀の表情に、陰りがあるのを見逃しはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《埼玉県和光市 CRS》

 

 

「すげぇ、マジでGT-Rしかないじゃん。」

 

「35Rが半分弱、残りが第2世代GT-Rネ。」

 

 

 

ガレージにインプレッサを停める。ここまでGT-Rが揃っていると、インプレッサはやはり異色の存在だ。そして貴章のインプレッサの隣に停められていたもう1台のクルマは、インプレッサ程ではないにしろ、この場にはやはり異色……というより居てはいけないクルマだった。

 

 

 

「……FD……FD3S。」

 

 

 

白いボディは最近のクルマにはない程の背の低さ。リトラクタブルのヘッドライトが特徴的なそのクルマを見た真紀が、その型式をポツリと口に出す。

 

 

 

「綺麗じゃん。このFD。」

 

「……そうだネ。」

 

 

 

心なしか答えの歯切れが悪い真紀。そうなってしまう理由を知っているだけに、貴章はどうすることもできなかった。

 

すると、この静寂を打ち破るかのようにオフィスの扉が勢いよく開けられる。中から出てきたのは……まだ寝間着のままで髪の毛がボサボサのCRS代表、工藤圭介。腹をボリボリかきながら出てきた辺り、オヤジ節全開だった。

 

 

 

「アア、悪い悪い。昨日遅くまで作業してて寝坊したワ。」

 

「あ、いえ。すみません、押し掛けて。」

 

「お父さん!! お客さん来るならもっとちゃんと身なり整えてから外出てよね!! 」

 

「いいんだよ、客じゃないから。」

 

 

あっさりと客扱いしないと宣言された貴章と真紀。それよりも、中からひょこっと現れた女の子の一言に驚いていた。

 

 

「「お、お父さん!? 」」

 

「ああ、娘のリカだ。この前34Rに乗せてたのはこいつだ。」

 

「どーも、リカです。この前のZ4の人ですよね?」

 

 

 

これは真紀に向けられた質問。俺はプリウスではなくインプレッサだから、一致しないのも至極当然といえる。

 

 

 

「ええ、高野真紀です。よろしくネ。」

 

「で、こっちがプリウス乗ってた新庄貴章クン。」

 

「ども、新庄です。」

 

「あの青いクルマが貴章クンの?」

 

 

 

RX-7の隣に停めてあったインプレッサを指差して聞いてくる。自分のクルマだと告げると、プリウスのことを聞いてくる。それはそうだ。たった2、3日でクルマが変わる何て普通はない。別に隠すことではなかったので、貴章は事情を一部かいつまんで説明した。

 

一通り説明が終わると、貴章は気になっていたことを工藤に尋ねる。

 

 

「あの、工藤サン。CRSってGT-R専門でしたよね。……あのFDはどちらの?」

 

「あれか。あれは真理子のクルマだ。」

 

「わたしのお母さんのクルマなの。今はお父さんのデミ()と交換して、わたしが乗ってるの。」

 

「「デミ()!? 」」

 

 

どこからともなく出てきた名前に戸惑いながらも、貴章はもうひとつの疑問を浮かべる。彼女……リカの姿が制服姿だったのだ。

 

 

「えっ、ちょっと待って。リカちゃんって高校生だよね。免許とっていきなりRX-7?」

 

「うん。いきなりお母さんに『首都高デビュー』とか言ってRX-7(セブン)に乗せられて。今はバイトの帰りは首都高走ってますよ。」

 

「「……」」

 

 

 

これはもう絶句するしかない。ただでさえ希少車になりつつあるRX-7を免許をとっていきなり乗るなんて、ちょっと珍しすぎる。ましてやそのまま首都高を走ってしまう勢いに驚愕する。

 

 

 

「じゃあ、わたし学校いってくるから。」

 

「ハイハイ。」

 

 

トタトタ走っていくリカを見送る。あのあどけない容姿で夜にはRX-7を振り回すなんて、正直信じられない。インプレッサの横に置かれたままのRX-7を見て、貴章が素直な思いを口にする。

 

 

 

「リカちゃん、学校には乗っていかないんですね、FD。」

 

「乗っていっちゃいけないらしいな。」

 

 

 

すると、ちょうどリカと入れ違いにCRSのガレージに1台のクルマが入ってくる。今日は定休日らしいから、客ということはないはずだ。もし客だとしても、それは冷やかし以外何物でもないはずだ。クルマがGT-Rではなかったからだ。

 

入ってきたのは、硬めのサスペンションを入れているのか段差に乗り上げるとガクガク姿勢を揺らし、車高を落とした、青いRX-8だった。

 

 

「このRX-8(エイト)、さっきの?……速くないか、ここに来るのが。」

 

 

工藤が入庫してきたRX-8に近寄っていく。運転席から降りてきたのは、ひょろりとした青年。ずんぐりしているRX-8とはある意味対照的だった。

 

 

CRS(ウチ)はGT-Rしか扱ってないけど、一体何の要だ?」

 

 

 

すると、ニンマリと笑みを浮かべた青年は、工藤を指差して声高らかに吠えた。

 

 

「工藤圭介、アンタんとこのGT-Rで俺と勝負しろ。」

 

 

 

「悪いが、そう言う注目は受けてない。明彦と走るためにクルマ仕上げないといけないからな。」

 

 

工藤の口から出た「明彦」というのはおそらく人名だろう。貴章は以前どこかで聞いたことのあるような名前だったが、思い出すには至らなかった。

 

すると、少し挑発するように青年は話しかけてくる。目線を貴章の方にも向けて。

 

 

「そうですか、それなら仕方ないです。CRSの工藤はバトルには応じないヘタレだって事がわかっただけで十分ですよ。……それにしても、今の首都高にはノリのいい連中はいないんですね。そちらのインプレッサの彼もどうです?やる気ではないのですか。」

 

「……」

 

「何もGT-Rとやりたいなら、ウチ以外もガレージACEさんとかもあるだろ。」

 

「わかってませんね、今一番勢いのあるGT-R専門ショップと言えばCRSじゃないですか。」

 

 

 

是非新たな客に言われたいフレーズをさらりといってくれる。おそらくGT-R最強説を気に入っていないのだろう。昔からGT-Rとロータリーは比較されながら進化してきた関係だ。どこかランエボとインプレッサの関係にも通じるところがある。それゆえ、対抗心はないではないが、ここまで露骨に示すこともない。

 

 

 

「今時GT-Rだなんて、高すぎて誰も手を出せませんよ。それに、RX-7も片落ちでポンコツですし。今乗るなら間違いなくRX……」

 

「ふざけないでよッ!! 」

 

 

目を見開いて驚く貴章と工藤。その先には顔を紅くした真紀の姿があった。明らかにテンションが上がっている。

 

 

「RX-7がポンコツってアナタ本気? 確かに古いけど、それをいえばRX-8も変わらないでしょうが!! 」

 

真紀ちゃん、キレてる?

 

絶好調にキレてますね。……仕方ないですけど。

 

 

真紀がこうなる理由を、言える範囲で工藤に伝える。工藤がなるほどと納得したところで、口論に耳を傾けると……

 

 

 

「それでは、2週間後、走りで決着をつけましょう。借りるなり何なりして、RX-7を持ってきてくださいね。」

 

「「何か勝手に話進んでない!? 」」

 

 

 

貴章と工藤の知らぬ間に、相手と真紀の話は進みまくっていたらしく、いつの間にかバトルを吹っ掛けられ、真紀も承諾していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………

 

 

「ごめんネ、ちょっと抑えきれなくて。」

 

「別にいいけどさ。」

 

 

 

CRSのオフィスに入れてもらった貴章と真紀。自販機で買ってきた紅茶で気分を落ち着かせたのか、ポツリと謝ってきた。正直、そんなことはどうでも良かった。

 

 

「何か、走り方といい、ムカつくワ。」

 

「あ、アイツじゃないぜ。さっきのRX-8。」

 

「えっ!? 」

 

「環状であったRX-8は、たぶん純正の青じゃない。オールペンだろうな。何かボルボみたいな、あそこまで明るい青はRX-8には設定してなかったはずだ。さっき来てた奴のRX-8はメーカー純正の青だな。」

 

「そうなんだ。」

 

「でも真紀、いきなりRX-7準備することになったって、そんな急に見つかるもんか?」

 

「FDなら中古で出回ってるはずだから、程度いい奴をいじって…………。」

 

 

真紀の発想に食いついたのは、意外にも工藤だった。

 

「待てよ、いきなり中古のロータリーを首都高で踏むのは危険だ。レシプロの方がまだ安心だ。ロータリーは扱いも難しいからな。」

 

 

 

貴章は一応落ち着いた雰囲気を出しておいて、真紀に話しかける。

 

 

 

「真紀、お前は今はZ4に乗ってるけど、そんなことは真紀が一番よくわかってるんだろ。…………前にFCに乗ってたんだからさ。」

 

「……!! 」

 

「確かにロータリーは速い。けど、それと同時にややこしいエンジンでもあるだろ。もう生産してないエンジンだし、いい状態のタマがそう都合よく出回っているとは、正直思いにくいな。」

 

「……じゃあ、どうしたらいいの?」

 

 

 

一瞬考え込む貴章。果たして言ってもいいのかどうか、吟味しているようだった。20代前半の貴章たちには半ば父親の年齢層にいる工藤も、彼なりにいろいろ考えているようだった。

 

 

 

「工藤サン、今から船橋まで行きますが、大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ。」

 

 

 

スクッと立ち上がった貴章は、意を決したのか一言ずつ区切るようにハッキリと貴章の解答を述べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バトルまでの2週間以内で、真紀のFCを甦らせる。」

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