諸事情でアホみたいにペース落ちてますが、休載にするつもりはないのでよろしくです。
それと、スープラがGTに帰ってくるみたいですね。あの90スープラがクラス1規定で走るのが楽しみです。(^^)
プリウスもPHVで出走だとか。しかもエンジンは5.4L。……偶々ですけど、ここのモンスタープリウスと割とニアっていうw。あっちはFRですけど。
《千葉県船橋市 セカンドガレージ》
ボンネットががらんどうになっているインプレッサ。本来そこに鎮座するはずのエンジンは、その横の作業台に横になっている。もう1台はジャッキアップしてタイヤを外した純白のZ4。
「あれ、隆介も見たの? あのランエボ。」
「見た……というか、抜かれたんです。なんかどうにも危なっかしいんですよ。」
貴章は片手間に作業を続けながら、先日
「クルマはすごく速いし、ドライバーもそれなりには走らせてるんですけど。……なんて言うのかな……。」
「ちょっと経験不足な感じがしない?」
「そう、例えば真紀サンだけじゃなくて他の人もそうですけど、スロットルを抜くときは抜くっていう走り方じゃないんですよね。」
「むやみやたらにいつも全開って感じよネ。」
貴章はインプレッサのセッティングの途中で偶々出くわした富永の言葉を思い出していた。『FDかC1でチギられた……立ち上がりは別にしてGT-Rもカモられる』。確かにクルマは速い。それはあの時の速度域、100km/hオーバーからのとてつもない加速力が証明している。そしてランエボⅩの上位グレードであるGSRなら6速DCT搭載車両もある。シフトアップの時のタイムラグがなくなっている。そしてそのファイナルギアを変更していれば最高速で不利とされてきた所はひとつ解消。もちろんパワーに頼り過ぎれないためそこに達するまでは長いのだろうが。
だが、そんなクルマを振り回せるというよりは割には走り方はどこか初心者めいている。そんな感覚が貴章だけではなく、真紀や隆介にもあったのだろう。
「富永サンは、『抜かれた』みたいなこと言ってたんだけどさ……」
「それって抜かれたんじゃなくて『相手にしなかった』とか?」
「あり得るだろ。……よし、後はトルクレンチで絞めるだけかな。」
油圧ジャッキでジャッキアップしていたZ4を下ろす。作業場の中にトルクレンチのカチンカチンという音が響く。
「で、タカは次出くわしたら相手にするつもりなの?」
「どーだろ。あんまりドンパチやりたかないけどな。」
「とか言う割には、インプのエンジンバラしてるじゃない。今度は何するの?」
「ちょっとタービンをな。ギャレットのを着けた。これまでの純正メタル加工じゃあちょっと限界っぽかったしな。まだセッティング煮詰められてないけど、とりあえず500馬力位は目標。スーパーコアも換えるし。結構奮発したんだぜ。」
ギャレット製タービンは国内大手のHKSのタービン等との互換性もあり、今ではNREと呼ばれるレクサス、ホンダ、日産の各スーパーGTマシン及びトヨタ、ホンダのスーパーフォーミュラで使用する2.0Lターボエンジンの共通パーツとして採用されている。
「でも、インプのEJ20って400馬力超すとすごいナーバスなんだよな。薄っぺらいアルミ製のエンジンブロックが恨めしい。」
「排気量はあげないの?」
「排気量上げるって言ったってエボみたいに2.3Lキットじゃないからな。まあやるとしたら次の機会だな。」
「何よ、なんだかんだ言ったってタカは臨戦態勢なんじゃない。」
「まあ、仕事もちょっと大変なのが入ってるから、その片手間に程度なんだけどな。」
ひらりと身を翻した貴章は奥の事務部屋に入っていく。彼のデスクの上にはいくつもホルダーファイルが並んでいるが、その中のひとつを引き抜いて中身を繰る。そこには発注書とその他の車検絡みの書類がぎっしり詰まっている。クルマ単体での値段は8桁になっている。既に振り込まれてはいるが、なかなか順調に事は進まない。もちろん向こうもそれを承知した上での発注だったために先方から文句は全く言われていないのだが。
「こんなの、ナンバー取って乗ったらもうついていけないって。あのインプのままじゃあ。」
《同日夜 首都高速 9号深川線》
「ちょっと、タカ速くない?」
これまで9号、いわゆる新環状エリアで貴章のインプレッサに離される事はなかった真紀。今の時点でいつものペースだと間違いなく置いていかれる速さだ。
「500馬力って、アタシのZ4と同じ位のパワー出しといて4WDって反則でしょ。」
厳密には目標が500馬力というだけなので、実際はまだそこまでパワーを絞り出せてはいない。しかし4WDの超強力なトラクションが手助けして約100馬力の差はないに等しい。そして真紀のZ4はノーマルで1700kg台。もちろん軽量化しているし、電動ハードトップの格納・展開に使うモーター類はすべて撤去しているため、ロールゲージやエアロパーツなどの増量分をすべて含んでも1500kgをわずかに下回る。V8エンジンのなかでは軽量な部類に入るS65B40もその手助けをしているのだろう。このエンジン自体、本来搭載されているE92/90/93型M3の先代モデルに当たるE46型M3の直列6気筒ターボS54B32よりも軽いといわれる。フィールもよく、先代E46のS54B32同様3.0~4.0Lクラスのエンジンオブザイヤーに連続で選ばれた実績さえもある。
しかし、貴章のインプレッサはノーマルで約1500kg。このノーマル同士の時点でインプレッサの方が軽量。そしてリアシート撤去などで更にダイエット。こちらも増量分込みで1300kg台前半。約100kgの重量差が如実に露見していた。
「あーあ、タカんところの芝生が青く見えるワ。」
レイナにZ4を貸してから貴章のインプに乗り、FCにかかりきりで久しくZ4で全開にしていなかった真紀。独特の図太いV8
いつもに増して爆音を吐き散らすインプレッサ。マフラー等のエキゾーストシステムは変えていないはずなのだが、感覚的なものなのか、普段よりも排気音が大きい。
と、いきなりインプレッサのブレーキランプが点灯。フロントがダイブして急制動。それに続いて後ろの真紀のZ4もフルブレーキ。ステアリング左手側のパドルを2回カチカチと引く。5速から4速、3速までシフトダウン。Z4、特に真紀が選んだS-Drive 35isはブリッピングの必要がない7速DCT搭載車両なのでブレーキを踏みながらシフトダウンできる。
速度を落とした貴章のインプレッサに追従する。すると彼の前にあるクルマがいた。
「あ、ランエボ……。もう1台いる。」
黒と白のランエボ。黒いのはさっき話に出ていたランエボⅩ。そしてもう1台の白いのは初めて見る。リアの形状からすると恐らくエボⅤかエボⅥ。第2世代ランエボで車両型式CP9Aと呼ばれ、そのノーマルでも巨大な2段リアウイングが目を引く。近づいてみると、トランクにでかでかとⅤの文字が刻まれている。
「……タカ、様子見ってところかしらね。」
2台の横をじわじわと追い抜いていく貴章。真紀も2台の前に出た時、後ろに陣取っていたエボⅩが飛び出してくる。ピッタリと背後に張り付かれた真紀Z4。
「そんな厳ついフロントフェイスで、そう煽っちゃうとちょっと引くよね……。」
そんなことを言いつつも、売られた喧嘩はきっちり買っちゃうのが真紀。『敵に回したくない』とは貴章、隆介に共通する真紀への見解だ。
「煽られてるヨー」と言わんばかりに軽くパッシング。要するに「はよ踏め」というだけなのだが。それを了解ととったか、止めても無駄だと諦め半分なのかは真紀にはわからないが、目前の貴章のインプレッサが数回のハザード点滅。そして勢いよく再加速。いくら真紀のZ4がDCT搭載モデルでインプは旧来のスリーペダルMT車両とは言えど、4WDの強烈なトラクションはやはり目を見張るものがある。
それに続いて真紀Z4、エボⅩ、少し離れてエボⅤと続く。
「確かエボⅩってDCTあったわよね。……4WDにDCTは反則でしょ……。」
国産車両でDCTを搭載する車両は意外と多くない。日産R35GT-R、ホンダNSXやフィットの一部グレード位。タイムラグなしで加速できるそれは、特に低いギアを頻用する街乗りではギクシャクした感じが否めない。ヨーロッパでは売れているとは言えど、国内需要としてはスムースで滑らかな挙動が好まれやすいためにどうしても多段ATに遅れをとる。
しかしスポーツ走行では話は別。BMWでは走りを売りにするMシリーズやE89 Z4の上位グレード、1シリーズなど、スポーツタイプの車両にはこぞってDCTを採用しているしポルシェではPDKの名で世界最速の変速スピードを誇るDCTを持つ。
ただでさえトラクションの鬼の4WD。その制御システムは歴代ランサーで築き上げたAYCやADCに加えてABS等の統括制御等を備えたS-AWC。オールアルミブロックで軽量化を果たした直列4気筒ターボエンジン。それにクラッチ操作を省いての高次元なデジタルモンスター、それがランエボⅩだと言っても過言ではあるまい。
パワーなら本気のメンツ―――それこそブラックバードのポルシェターボ―――は別にして負けないという自負がある真紀。600馬力が最も生きるとされる第2世代GT-Rとほぼ同格のラインまで出力を上げてはいる。しかし、バックミラーに映るランエボⅩの姿は一向に小さくなる気配がない。
ましてや真紀は履き替えたばかりのニュータイヤ。いくら新しいといったって慣らしができていない中、ここで攻めまくる訳にはいかない。釈然としないが、ウインカーを出して2台のランエボを先行させる。結果的に前に出たのはエボⅩだけで、颯爽と青い機影を追跡していく。そのあと真紀は残ったエボⅤと軽くランデブー走行となった。
《首都高速 都心環状線 内回り 銀座エリア》
「別に恨みがあるわけでも何でもないけど……こればっかりは譲れないよね。」
目の前を走るインプレッサのトランクに着いている青い6連星のエンブレム。本当に嫌いという訳ではないが、なぜか胸騒ぎがしている。愛機が三菱ランサーエボⅩである事が余計にそうしているのかもしれない。
「そのエンブレムの後塵だけは拝めない……拝んじゃいけない気がするッ!! 」
7000回転のレブリミットでステアリング右側のパドルを引く。DCT特有のパァンという破裂音じみたシフトアップノイズが木霊する。フロントに搭載された4B11が唸りをあげる。最高速向けにファイナルギアを変更したために、1速や2速の立ち上がりがネックだが、ゼロ加速の必要がほとんどない首都高ではそんなこと関係ない。もうほぼレース用クロスミッションの領域だ。5速とトップの6速はオーバードライブギアとは言え割りとクロスさせたギア比。高回転域での伸びを優先した結果だ。それは貴章のインプレッサも同じ。
3速7000回転、時速170kmで4速に。アクセルペダルを踏む右足は力を弱めることを知らない。ほんの一瞬の軽いショックを伴ってさらに空気の塊を切り裂いていく。
「上手いね、インプの人。これだけバンピーなC1を暴れさせないで走れてる……。でも、コッチのエボだって生きてるよッ!!」
江戸橋JCTでフルブレーキ。ギアレシオだけは超最高速仕様のエボⅩは1速までシフトダウンする。アフターファイヤーがリアの2本出しマフラーから迸る。そのままC1内回り。再度1速から加速していく。
ハイギヤードのミッションは特に1速や2速のカバーする速度域が広い。これがトルクの細い小排気量のNAエンジン車両ならたまったものではないが、ランサーのエンジンは2.0Lながらもトルクフル。取り替えしたタービンはTO4Z。2.0Lという排気量ながらも500馬力オーバーを叩き出す脅威のエンジンに変貌していたこのランエボならば、同じくようなギアをチョイスしている貴章のインプレッサが相手であればそんなもの屁でもない。
それまでの鋳鉄製エンジンブロックだった4G63からオールアルミブロックの4B11への変更は、フロントの軽量化には役に立ったし、旋回性能も向上。しかし、その代償としてアルミブロック故の脆さを疑われ、大パワー化が敬遠されてきたところが否めない部分もあったエンジンが4B11だ。
しかし、実際にやってみると流石新型エンジンと言うべきか、しっかり各パーツを強化してやれば排気量が2.0Lのままでも500馬力には耐えられる。ストロークアップによる2.3L化や削り出しクランクによる2.2Lへの排気量アップ等の更なるエンジン強化によりさらに50馬力アップの550馬力辺りまで出力を高められると言われる。
4G63時代のランエボではロングストローク故の低回転からのトルクの太さの代償として高回転域の伸びが少々悪いと言われてきたが、ランエボⅩの4B11ではボア×ストロークを86mm×86mmのスクエアストローク化によってそれを克服している。
先ほど挙げた通り、それプラス電子制御4WDとクラッチレスの6速DCT。まさに鬼に金棒。某走り屋マンガのセリフのニュアンスを借りるが、「公道にレギュレーションがあれば間違いなくレギュ違反」なクルマだ。もちろん、首都高をはじめとする公道にそんなものはないのだが……。
7000回転のレブリミットでシフトアップ。間髪いれず3速に。神田橋周辺はある程度のカントがついているものの、荒れる路面は他の場所と変わらない。左、右、左、右……と2台の青と黒のラリーマシンが同調して狭いC1を舞う。
「ほらほら、イン空いてるよッ!!」
前走するインプレッサがインサイドをしめないで千代田トンネルに突入。そこに脇目も振らずにランエボを放り込む。2ペダル車両の特権、左足ブレーキの使用で鋭い突っ込みを見せる。インベタのラインで2速まで落としてクリア。インプレッサをオーバーテイクする。
「さっきから妙にインを開けて走ってるけど……タイヤが厳しいのかな。」
バックミラーに映る鷹目のインプは少し距離を開けて追走してきている。諦めて失速するかと思えるが、そんな気配はない。
「素で勝負するのはいいけど、タイヤ終わってちゃあ意味ないじゃない……。」
○●○●○●
「へぇ……
今朝真紀らと話していた直感は間違っていなかった。
「
後ろから見ているとソレがよくわかる。路面ギャップの激しいC1で姿勢を乱さずに走っている辺りは流石と言える。だだ、どこか無茶をしているようにも見える。さっきのオーバーテイクだって少しでもイン側のランエボかが姿勢を乱せば即お釈迦。アウト側の貴章もインをしめれば横っ腹にエボの体当たりが炸裂しかねない。
「太田サンとこのFDがそうしたみたいに、ホントは俺も絡みたくはないんだけど……。けどああいう走り方であそこまでやられちゃあ、『はい降参』ってなれないんだよな。……しかもエボだし。」
『エボはエボ、インプはインプ』と言い張っていた割には意外と気にしている貴章。
「勘違いしてるといけないからな。……アンタが特段速い訳じゃなくて、皆はただ
勢いよく左足でクラッチを蹴り飛ばして4速に放り込む。隆介曰く『環状の鬼』とまで言われる貴章とGDB-F型インプレッサが牙を剥いた。
感想など、クルマ談義でも、お気軽にどうぞ。
エボとか詳しい人いろいろ教えてw。(^^)