首都高に流る鮮青6連星   作:susu-GT

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お久しぶりです。

やっと書き上げられました。待ってくださってた方、すみません。








Ep.26 Maching(帳尻合わせ)

《東京都 某所》

 

 

 

「ハァ!? ワケわかんない!! 」

 

 

 

朝っぱらからいきなり親子喧嘩をおっ始めている。彼女のよく通る声も相まってなかなかよく響いている。

 

 

 

「しょうがねぇだろ。これ以上のトコまで行くなら、いずれやんなきゃいけないんだよ。……それに、勝手に勝負吹っ掛けてきた罰だ。」

 

「だからってGTOに乗らなきゃいけないとはならないでしょ!! 責めてエボⅤでしょ!? 同じランエボなんだし、お父さんなかなか乗んないんだから。」

 

「いーから、ぶつくさ言ってないで行ってこい。仕事遅れるぞ。……あと、GTOは俺ののエボⅤよりクラッチ重いかんな。あんまり雑に扱うなよ!! 」

 

 

 

ぶつくさ文句を言いながらもちゃんとGTOに乗っていく沙織。かつて本気で首都高を走っていた頃は、数少ない正真正銘のスカイラインGT-R殺し(キラー)としてそこそこ知られたクルマで、走り出したのは意外や意外、あのトヨタJZA80スープラよりもほんの少し早かった。ところが、3.0Lという当時ではあまりある排気量のエンジンのお陰で、ただでさえ金欠に陥りやすい若かりし頃には少し痛手。結局2.0Lターボのランサーエボリューションに乗り換え、最前線から引いてしまった。

 

 

 

「へー、久しぶりのMT(マニュアルトランスミッション)車でも上手いこと乗るじゃねぇか。……ツインプレートクラッチなんだけどなぁ……。」

 

 

 

沙織のマシンであるランサーGSRエボリューションⅩは、6速のDCT(デュアルクラッチトランスミッション)をチョイスしているため、当時ではランエボシリーズという括りだけでなく、そもそスポーツ志向の数少ないAT限定免許でも乗れるランエボだ。最大のライバル、スバルインプレッサWRX STiでさえ基本マニュアル仕様で、身内では先々代ⅧまではATの設定はなく、先代ⅨでもワゴンタイプのみATが存在するだけでメジャーな4ドアセダンでは設定されなかった。もちろん彼女自身MT免許を取得してはいるが、普段から乗らないという理由でスリーペダルMT車には馴染みがない。しかもGTOに装着されているのは普通のシングルプレートではなく更なる大容量化を図ったツインプレート。その重たさはノーマルクラッチの比ではない。まさしく「走れば天国、停まれば地獄」なわけだ。

 

 

「ああも簡単に乗られると、何回もクラッチやっつけてた俺の立場ねぇじゃねぇかよ。」

 

 

 

ぼやきながらも、どこか頼もしくつぶやく。そのまま彼はポケットに突っ込んでいた右手にスマホを握りしめて通話し始める。まるでSNS慣れする意思がないようにも見えるが、通話なのはただ近頃の通信・ネットワーク事情に超が三つ付くほど疎いだけなのだが。

 

 

「…………ああ片桐サン、お久しぶりです。じつはすこしばかりお願いしたいことがありましてね。…………ええ、どこかいいトコロを紹介していただきたいなと…………いやぁ僕もこの歳になってから体力も筋力も落ちて、手に負えないと言うか……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○●○●○●○●

 

 

 

「いやまあ確かに持って来いとは言ったがなぁ……。コレは聞いてねぇぞオイ。」

 

 

 

顔を合わせた瞬間、露骨に嫌味ダラダラの顔で出迎えられる。その理由はなにも人間関係がうまくいかないのではない。むしろ腐れ縁の悪友仲間だ。

 

 

「俺はロータリーしかまともにやってこなかったの知ってるだろ、お前。……確かにお前のGTOは俺もメンテしてたことはあるけどよ、コレはちょっと俺もできねぇぞ。」

 

 

 

片桐の言う『コレ』とは、彼のところに持ち込まれた黒いヤツだ。

 

 

「エボⅩみたいなデジタルマシンはただアフターパーツ突っ込めばいいってもんじゃない。俺には畑違いだぜ。……しゃーねぇか、アイツに頼むか。……ああ、確かZ4を改造してたはずだ。……なんだよ、Z4を知らねぇ?BMWだよ。ちょっと前の2ドアオープン。……いやボンボンってわけじゃねぇが、なめてかかると度胆抜かれるぜ。あんだけ若いのによくもまああのレベルまで持ってったもんだ。ただでさえ重たいクルマなのにそれが感じにくいようになってる。」

 

 

それはともかく、電子制御系のチューニングは迂闊に手を出さない人も多くはない。例えばそれは国産車で言えば日産のR35 GT-Rなんかがその代表例だ。先代のスカイライン時代のGT-Rではいろんなチューナー、はたまた個人がいろんなチューニングを施してきた歴史があるが、35Rではそこまでハードチューンされた個体が多いかと言われれば少々疑問だ。

 

 

「結局はメーカー基準値ってのが一番バランスが取れてるんだろうな。なにせ開発段階から計測してる訳だから、そこと比べちゃあ俺たちのやるデジタルセッティングなんてたかが知れてんだろうよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○●○●○●○●

 

 

 

貴章は困惑していた。ただただ困惑していた。

 

片桐からの仕事依頼なぞ初めてでどんな厄介ごとかと待ち受けていた訳だが、彼が思っていたのとは全く別の意味で厄介なオーダーが入ってしまった訳だ。

 

 

 

「そうかい、キミが沙織の相手をしてくれるのかい。いやぁ雰囲気あっていいじゃないの。ボクはてっきりどっかの素性のわからんヤンチャ小僧かと思ってたんでね。」

 

「は、はぁ……。」

 

 

 

返す言葉が見当たらないとはまさにこの事なのだろう。なんせ今目の前にいるのは、先日から標的にしていた三菱ランサー エボⅩだったのだから。

 

 

 

「で、どうだろう? 引き受けてくれるかな。」

 

「(この状況でヤです、なんて言えないわなぁ……。)」

 

 

 

開放されたエンジンルームの中を覗き込みながらふと目をやったのは、思った以上に混沌としたエンジンルーム内の配線の数々。そして横置きエンジン特有のエキゾーストレイアウトだった。

 

 

 

「あの、このランサーって、あんまり手を入れられてませんよね。……おそらく排気系はマフラーと触媒の交換位じゃないですか。」

 

「ほう、参考までにどうしてそう思ったのか聞かせてくれるかい?」

 

 

 

貴章はニンマリと笑みを浮かべる親父から視線をそらし、ランサーのエンジンの排気ポート側、運転席よりのマニホールドを指さした。

 

 

 

「このランサー、エキマニがノーマルの鋳製のままなんです。エボⅩは横置きマウントの後方排気ですんで、このまま高回転域の連続使用を続けると熱がこもってエキマニ割れを起こしやすいはずなんです。ふつうあそこまでの全開走行をするならほとんどのオーナーさんは余裕があればチタン製、それが厳しいならステンレス鋼製に置き換えるんですが。」

 

 

 

と、ここまでペラペラと饒舌っぷりを見せた貴章は更にその本領を発揮していく。

 

 

 

「マフラーに(すす)がこびりついてるんですよね。きっとマフラーを変えた位で燃調はそのままなんでしょう。うまく燃やせてない気がするんですがね。」

 

 

 

「あはは、面白いなキミ。じゃあオジサンからこのエボⅩの違和感の理由をもうひとつだけ教えてあげようか。」

 

 

 

そう言って取り出したのは、彼が持ち込んできた整備書などの各種書類の中から引っ張り出された、ひとつの資料。取り扱い説明書ではないが、おおよそその類いのものだろうか。

 

 

 

「娘にいろいろ叩き込む上で、こーゆーの作っちゃうんだよね。意外と苦じゃなくてさ。」

 

 

 

 

そこにはあるメーカーのタービンとそのスペックが端的に示されていた。エキゾースト系統はマフラーのみの交換で後はほとんど手付かず。

 

 

「TO4Z級タービン……ですか。」

 

「そう。それが一番の違和感の原因じゃあないかね。」

 

 

 

TO4系タービンは、シルビアなどのいわゆるターボ付きライトウェイトスポーツから、スープラやスカイラインGT-Rといった大排気量マシン、ロータリー車といったまさに幅広い車種、エンジンに使われるタービンの代表格とも言える。そのなかで最大級の風量や出力を誇るのが、TO4Zタービンだ。

 

下位互換モデルのTO4Sタービンでさえエンジン自体がしっかりしていればシルビアのSRエンジンでも500馬力を絞り出す名タービンなのに、こちらは優に600馬力を越す代物。それがランサーについていたところで珍しくはあったとしても手の施しようがない程のモノではない。

 

しかし、ソレは吸排気系をきちんとそれ相応にできれば(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)の話だ。理屈としては無理があるのだ。めいいっぱいまで空気を封入した出口の小さな箱に更に空気を突っ込もうとしているようなものだ。

 

 

 

「『吸気が排気を上回る』、ですか。」

 

「変な話だろう。理論破綻してるんだから。本来入りもしない量の空気を押し込んでいるんだ。そりゃエンジンだって本調子にはならないだろうね。」

 

「……同時に、タービンの一番おいしい(・・・・)スイートスポットを使いきれて……いや、そもそも使ってすらいない(・・・・・・・・)と。エボⅩになって歴代の4G63から4B11にタマ換えしてようやく手に入れた高回転での伸びの良さすらを封じていると。」

 

「うん、まあそんなところだろうね。……そこから先は自分で見てみるといいよ。」

 

「(誰もやるなんて言ってないよな……。)」

 

 

 

 

しかし、ここまで彼らの手札を見せられては断るに断れない。そしてもうひとつ、貴章の個人的興味と悔しさがごちゃ混ぜになっているのも理由だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○●○●○●○●

 

 

 

 

「せっかくソレなりにインプもセッティング出せたのになぁ……振り出しに戻っちまうか。」

 

 

 

あのエボⅩがそのポテンシャルを使いきっていなかったこと、乗り手の吉川沙織が上手かったものの適してはいなかった(・・・・・・・・・)ことを踏まえると、当初のターゲットでは到底歯が立たない。

 

 

あれから1ヶ月、なんとかランエボの組み上げは終わり、実走セッティングも佳境。クランク削り出しによる2.2Lへの排気量アップ、そしてエキゾースト系統の全面的見直しであのTO4Zタービンがうまく機能するようになったのか、はじめの頃と比べて恐ろしい程のパワーを手に入れている。

 

そして、預かっていた残り金で本来後方二本出しマフラーを左フロントタイヤ後方一本出しのサイドマフラーに変更、これは見栄えを重視したわけではない。

 

 

 

「いくら車検でサイド出しが合法になったって言っても、初めて見ますよ俺。」

 

 

 

とは隆介談。サイドステップの一部に埋め込む形で見えるマフラーのお陰で、走行中の排気音はこれまで以上にけたたましいものになっている。

 

 

 

「まあ、ソレがメインではないんだけどな。重量化分のせめてもの軽量化なんだ。」

 

 

 

 

そう言って隆介にエンジンルームの中を覗かせる。すると本来そこに見えないはずのパイプがエンジン後部の上を通っているのが見えた。

 

 

 

「なんすか、これ……。」

 

「見ての通りの上方排気。いくらやってもエキゾースト系の熱害がひどくてさ。だから少しでも熱籠んないところに置こうとしてさ。」

 

 

 

ボンネットフードにもちょうどエキゾーストシステムが通る上のところにメッシュ状の排気孔が設けられていた。

 

更においしい話が、これをするがためにエンジンの重心を下げる必要があったため、否応なしにドライサンプ化を施していることだ。結果として重たいオイルパンがなくなり、軽量化にも成功。加えて4連スロットル化。結果としては重量はプラスマイナス0といったところだが、より低く、真ん中の方に集めてくるコトはできた。

 

 

 

「でもここまでランエボやっちゃって、インプの方は大丈夫なんすか?」

 

「いや、全然。」

 

「この前エンジン壊したでしょう。あれ直せるような物なんですか?」

 

 

 

ちょうど2週間前の話だ。結果として500馬力オーバーを叩きだし、トルクもインプレッサ以上に出ているエボⅩに拮抗しようと、燃調を限界まで濃くした結果、高速に乗る前にブローしてしまったのだ。それだけならよかったのだが、何より深刻なのがエンジン廻りの配線がほとんど焦げ付いていたことだ。どれもマトモに使える代物ではなくなっていた。そして大型化したタービンとの相性も悪かったのだろう、見事にピストンは焼き付いてバランスが狂いまくっていた。

 

 

「直せても、400馬力も出せないだろうな。結構重症だったし。」

 

「エンジンズボ換えですか?……インプにあのクルマのエンジン積めません?」

 

 

 

そう言って隆介が指差したのは、ガレージの奥で息を潜めている、リア丸目4灯式の出で立ちの新車。カーディナルレッドのボディは公式カラーではなく、オーナーの要望だった。

 

 

 

「……その、言っちゃなんですけど、レイコさんに内緒で……。一回位ならばれないんじゃな……」

 

「アホか……。レイコさんならすぐにわかっちゃいそうなんだよなぁ。しかもアレのエンジン、V6だからな。一応NAだけど、もしホントに移植するとしても小さいインプレッサのノーズに収まるかな……。」

 

水平対抗4気筒(フラット4)でもカツカツですしね。」

 

「…………」

 

「ん?どーしたんすか?……まさかホントに載せちゃうつもりですか?」

 

「ホントにアホだよなお前、やらねぇって言ったろ。…………実はな、新しいエンジンもうあんのよ。あのクルマと一緒に購入した。」

 

 

 

そう言ってそのクルマの脇に置かれた木箱から顔を覗かせる新エンジン。そこに銘打たれたプレートに、隆介はド肝を抜かした。

 

 

 

「……本物ですか、これ。」

 

「競り落とすの、すげぇ苦労したんだぜ。でもインプ乗りとしちゃあコイツはなにがなんでも欲しくてな。……思ったよりも早く出番が回ってきそうだ。」

 

 

そしてヴェールを脱いだモノには、かつてあるモータースポーツを掌握し続けた彼らのDNAが刷り込まれていた。

 

 

 

「向こうの切り札が『ドライバー』だってんなら、こっちのかくし球はコイツだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《2週間後 首都高速湾岸線 辰巳第一PA》

 

 

 

豊洲方面に立ち並ぶ高層ビル群が、大都市特有のきらびやかさを持つのを一望できる。首都高での夜景ポイントのひとつとも言えなくはない。

 

あの時と同じ2つの機影、それに今回はZ4と34Zも加わっている。だが、あくまでも主役は青と黒の2台。どちらも同じ人物が仕上げている故に、デザイン的な違いはあれど、身に纏う存在感は非常に近しいものがある。

 

 

 

「……エボには慣れた?」

 

「…………」

 

 

 

互いに発する言葉は少ない。そも喋り出したら際限ない貴章ですら、今はその滑らかさを失っている。

 

 

 

「急にパワー上げてるからね。足回りのセッティングもはじめの状態からすればかなりアンダー寄りだし。」

 

 

「オマケにサイドマフラーにしてくれたお陰で街乗りだけでもすごいうるさいし。」

 

 

 

やっと沙織から発せられた言葉に苦笑いで返す貴章。それまで普段の足としても使えていたランサーが1ヶ月近く預けて帰ってきたとたん爆音仕様になって、しかも車内にもより響く。オーディオも外されている。唯一の救いはナビとエアコンはそのままついている事くらい。

 

 

 

「いやほら、ソコは我慢してもらわないと……。あ、いや別に手を抜いたとか言うわけじゃあないんだけど……。」

 

「……クスッ」

 

 

あたふたと言い訳じみたことを口走る貴章に、彼女は初めて笑みを漏らした。

 

 

 

「別にダメだなんて一言も言ってないわよ。むしろ前よりも安心して走らせられる。……そりゃあ、人の話を聞かないでアナタのところにクルマ持っていっちゃったのは想定外だったけど。」

 

「ソレはこっちも同感。そもそも今時首都高をこの型のインプレッサで走ってるのなんかあんまりいないんだから。」

 

「前々から思ってたんだけど、ちょっとヌケてるのよね。…………アナタに手の内がバレてるのは少し癪だけど、どこの誰かわからない人に手を入れられるよりはよかったと思うことにするわ。」

 

「ひとつだけ、わからねぇこともあるんだぜ。……アンタだよ。こっちからすれば一番わからないとこだ。一番肝心なところでもあるんだけどさ。けど、雰囲気が違う。」

 

 

 

そうとまで言われて流石の沙織も一新動きを止める。するとどうだろう、若干吃りながら言葉を返してくる。

 

 

 

「あ、アナタの方こそ、なんだか不思議なウイング着けたのね。どこかで見たこともあるような気がするんだけど。」

 

 

 

ソレはインプレッサのトランク上に置かれた鳥居型の大型リアウイング。その形自体はノーマルとさして変わらないが、張り出したリアバンパーのギリギリ真上までウイングを後方に引っ張って来ているのと、何より目を引くのが四角いウイングの中に垂直に立てられた4本のスプリッター。ボディと同色ではなく、カーボン調の黒い塗装そのままなのも余計と目立つ。

 

 

 

「ああ、スプリッターウイングな。涙目以降のGD型WRCマシンにも着いてたんだぜ。見た目だけじゃなしに、予想以上に結構効果あったんでな。」

 

 

 

貴章側も手持ちの手札をひとつ見せたコトになる。これでイーブンという訳ではないが、沙織としてもこれ以上聞く気はないのだろう。あの時、以前大井PAで宣戦布告されたときと同じ目付きになって―――けれど決して睨み付けるようなものではなく―――戦の始まりを告げた。

 

 

 

「1ヶ月ちょっとしかなかったし、それにこっちの手の内を知ってるからって、ナメてると痛い目見るわよ。」

 

「言うね。まあナメてかかる気は更々ないんだがな。肝に銘じておくよ。」

 

 

 

そう言って各々のクルマのコックピットに着く。貴章は青のインプレッサに、沙織は漆黒のランサーに。

 

さっきまでのやり取りを端から見ていた隆介と真紀は、どこか不安げな表情で貴章の座るインプレッサの運転席を覗く。

 

 

 

「タカ、ああは言ってたけど勝算? みたいなのはあるの?」

 

「…………」

 

「ちょっと、何か言いなさいよ。余計不安になるじゃない。」

 

「…………ある」

 

「ホントに!?」

 

「………………と、いいなぁ……。」

 

「…………殴るわよ。」

 

 

 

ここまで来てややおちゃらけ風の貴章にイラつきを隠せない真紀、「どうどう」とまるでじゃじゃ馬を諫めるような慌てっぷりの隆介。いつもの三人衆と何ら変わりない光景だ。

 

 

 

「ま、スプリッターウイングも入れて奥の手……というかかくし球は3つあるんだ。隆介はそのひとつを知ってるけどな。後ひとつは言ってねぇ。……けど、湾岸線をずっと走り続けることになったら、そのときは俺の負けだな。」

 

「何よ、勿体ぶってないで言いなさいよ。言わないって言うならアタシも乗るからね。」

 

 

 

ここまで来たら誰にも真紀は止められない。否応なしにナビシートに転がってきた真紀を降ろす術を貴章は持ち得ていなかった。

 

 

 

「俺はZでついていきますね。」

 

「……そーしてくれると助かる。途中でヤバくなったら真紀回送してくれ。」

 

「降りないからねッ。」

 

 

 

ここまで来てもいつも通りのペースを崩さない貴章、真紀、隆介。久しぶりのタイマン勝負、しかも一応は2.0Lターボバトル。見る側も見逃せない一戦だ。

 

それを見計らったかのように、沙織のランサーが動き始める。それを視認した貴章は、インプレッサに積まれた新エンジンに火を入れる。これまでとは比べ物にならない程の爆音でけたたましく唸りをあげる。

 

 

 

「よっしゃ、どっからでもかかってきな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







はい、前回ブラックバード試乗からインプレッサに施したのはリアウイングをスプリッター付きに変更、でございました。

その真相(?)と残る切り札はまた次回。

さて、何でしょうかねぇ(笑)。

感想でも予想でも、バシバシ気楽に何でもどうぞ。

……酷評だけは堪忍。豆腐メンタルなんで(笑)。
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