それと、短いです今回。
さーて、新章、張り切って行きましょーw
(終盤、異常に改行が多いです。申し訳ありませんm(*_ _)m)
Ep.30
《セカンドガレージ》
「……あの、貴章サン?……ひとつ聞いてもいいですかネ。」
「……」
隆介の質問に押し黙る貴章。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。沈黙は金、はたまた沈黙は肯定とは誰が言ったか。無論貴章の場合は後者だが、こればっかりは恐らく誰でも返答に困る。
「……沙織サンのランサーがここにあるのならまだ分かりますよ。修理っていうのもありますし。でも…………なんで本人までいるんですか、しかもツナギ着て……。」
「…………聞いてくれるな。こっちが聞きたい。」
彼らの目の前には、自分のランサー……ではなく、隆介の34Zのエンジンルームをまじまじと覗き込む1人の女性。眉の上と肩のラインでスパッと一直線にカットされた髪は今時珍しい青味がかかる程の黒。同じように墨色の眉はキリッと太く、その下のやや勝ち気そうな瞳と相まってどこか少年のような
そんな呆気に取られた隆介達2人組の視線を感じたのか、興味津々で覗き込んでいた隆介34Zのエンジンルームから目を離して後ろに佇む野郎2人組に目線を向ける。
「……何か文句でも?」
「文句もクソも、なんでこうなったんだって思って何が悪い……。」
元はと言えば、これと言った職も無く生活出来ていた彼女―――恐らくは親父がそれなりの稼ぎ頭だったのだろう―――が、「もっと知りたい。色んなコトを知りたい」と言い出した所から始まる。
まず彼女のランサーだが、DCTブローのため、念を押してDCT丸ごと換装することになった。この時点で素人の沙織の出番は無くなる。そして、たまたま貴章の工場『セカンドガレージ』でエンジンの過給器換装をしていた隆介の日産370Zこと34Z nismo。それの2人目のテストドライバーとして、そして貴章の普段の業務のアシスタントとして、何故かここで働くコトになってしまった……というハナシ。
「だって普段のクルマなんて、面白くないじゃん。そりゃ基礎程大事なものなんてないとは思うけど、流石のアタシもそれくらいは知ってますゥ。」
「いやいきなり工場来られた俺の身にもなれって。いくら軽だって言ってもお前に任せられるのは隆介のZで限界だっての。」
「…………一応聞きますけど、なんでボクのはOKなんですか?」
「隆介だから。」
「いやちゃんとした説明して下さいヨ!?」
言葉足らずとはこのこと。彼はただ「隆介のZだからぶっ壊しても尻拭いしやすい」という大事な大事な一節をすっ飛ばしただけだ。
「まぁ、アイツの練習だと思って貸してやってくれよ。なんせ、アイツ自分のランサーと親父サンのクルマしか知らなかったんだからさ。」
貴章も沙織と同じく、愛車は2.0Lターボの4WD。しかし、乗車経験が沙織のそれとは桁違いだ。
まず、大排気量NAエンジン車として、オープンスポーツをハードトップ化してエンジンスワップもした真紀のBMW Z4。今回ターボ化したものの、NA、スーパーチャージャー、ターボととりあえず一通りの過給器を取り付けたことになる隆介の34Z。そして更なる超ド級の大排気量車、幻のエンジンを載せる篠田レイコのC3コルベットZL1。更にはレシプロだけに留まらず、真紀の元相棒の3ローターRX-7。魔改造とはこのこと、島や北見との接点を作ってくれた2URエンジンをミドシップに押し込んだZVW52型プリウス。そして湾岸の帝王こと、
対して沙織の方はと言うと、経験はごく浅い。まず愛車のランサーエボリューションⅩ。そしてそれを貴章が預かっている間に乗っていた父親のランサーエボリューションⅤ、そして同じく三菱GTO。ボディの大きさの違いや排気量の違いはあれど、どれもFFベース4WD。しかもどれもターボ車という。
「まーまたターボ車だけど、FRってのは初めてなんだろ?ぶっ飛ばさなくていいから、少し流してこいヨ。」
「あれ、貴章サンは一緒についてかないんですか?」
「あーあれだ、ちょっとばかしヤボ用が……な。隆介は別にいても構わないけど、どーする?」
そう言って34Zのキーを沙織に預ける貴章。少し悩む風をしてから、隆介は結局沙織について行くと言い、VQ37VHRの快音を響かせながら工場を後にした。
「あんまり乗り気じゃあないんだよなァ。あの人だからサ。」
《首都高速 中央環状線 内回り 銀座エリア》
「まだまだ3速ホールド。シフトは大丈夫だからアクセルに集中して。」
沙織にとっては実は初めての後輪駆動の銀座エリア。これまでグイグイ引っ張っていってくれていたフロントタイヤは舵取りだけ。4WD特有のアンダーは出ないものの、正直全く余裕のない沙織。
「(正直シフトなんか気にする余裕コレっぽっちもないわよ!!)」
別に特段34Zがナーバスなセットだという訳ではない。むしろ彼女のランサーに比べればパワーでは劣るものの素直なハンドリング。しかし、4WDで育ってきた彼女からしたら2WDのそれはクイックすぎる。
これが癖のないVQ37だったから良かったものの、低回転からドカンとトルクを出すタイプのエンジンならもっと手こずるだろう、そう思う隆介。
「パーシャルで……まだ……まだ待って……はい踏んでッ!」
しかし指示をきちんと守っている辺り、余裕がないにしろ予想外によく乗れている。真っ昼間の首都高。コーナー1つ少し踏んでやるのでも一般車の多さ、そして意外と潜む覆面パトのおかげでおっかなびっくりではあるのだが。
「意外と乗れるじゃん。」
「…………ハァ。」
「疲れた?」
「……あの女ら、こんなので追っかけてきてたの……。」
「あー、アレは気にしない方がイイと思うけどなぁ。」
それは先週末の事。まぁはっきり言えば、首都高の環状線に沙織の悲鳴が木霊したのだ。
理由は単純。真紀の乗るZ4のナビシートに沙織を乗せて
4WDのランサーがコーナー出口で前が引っ張るのを後ろが支えるのならば、Z4は正真正銘後ろだけで駆け出す。しかも彼女のZ4に載るのは貴章の手により実馬力としては500馬力を切るが、自然吸気のままで60kgf超えというトルクをたたき出すようにリファインされたV8エンジンのS65B40。そのGのかかり方はランサーとはまた別の次元。それにランサーだとアクセルをオフからパーシャルで走り抜ける神田橋周辺の連続コーナーを真紀はアクセル全開のままあっさりとクリアして行った。勿論他のクルマがたまたまいなかったのもあるのだが、最後の左コーナーでカウンターを当てたままアクセルを緩めない真紀と、まさか女性が操るとは到底思えないようなZ4がとんでもない速度で走り抜けるのを特等席で体験した、という次第。
「真紀サンとZ4の組み合わせはホント頭ぶっ飛んでるから……。」
「……久しぶりに度肝抜かれたわよ……。怖いって訳じゃないんだけど、なんかアタシが走ってた世界ってランサーしか知らなくて。凄い小さかったって思うと……。」
「(けどその真紀サンにもっとピーキーでパワーないRX-7でいっぱいいっぱいでもついて行けるリカちゃんって何者……)」
「そう思うと、アイツはとんでもない数の引き出し持ってるのよね……。そう言えばアイツ、4WDとFRの経験は豊富なのは分かるんだけど、MRってどうなの?……RRはポルシェとかアストンマーチン位じゃないとないでしょ。でもMRなら……」
「それがどうもあんまり経験無いみたいでネ。俺もあんまり聞いた事ないから……。」
《千葉県船橋市 セカンドガレージ》
ガレージの前で仁王立ち(?)する貴章。その視線の先には緋色のシボレー。そこから降りてきたドライバーは、彼にとって身近も身近な人の1人だった。
篠田レイコ。東京三軒茶屋で小さな食堂を切り盛りする女将。そして69年式シボレー、C3コルベットスティングレイZL1を乗り回す熟練ドライバーが1人だ。
「なんだか久しぶりな気もするわね。」
「ですかね。僕もしばらくFCにインプにランサーと結構根詰めてましたから。」
「いいんじゃない。色々若い内に知っておきなさい。……別にアタシの件はたまたまなんだけど。」
「いや、正直初めて尽くしなんで不安しかないですヨ。」
そういう話をしつつガレージの奥へ停められている、C3と同じく緋色のクルマ。それまでの4灯リアゲートは更に鋭利となって特徴を引き継いでいるそのクルマ。
「でもレイコさんがC3からコレに変えるなんて、ちょっと違和感しかないんですけど。だってコレC3とはど反対でしょ?」
「そうでもないんじゃない?昔からの伝統は守りつつ最新にアップグレードしていくってだけじゃない。」
「……それもそうですね。」
「それに、そろそろいい加減C3ともう1台別のクルマがあってもいいと思ってね。勿論C3に乗らなくなるなんてことはないし、手放すなんて以ての外だけど、少し保守に回ってもいいのかなとは思うのよね。」
「超貴重なZL1ですからネ。旦那サンの形見でもあるんですし。」
「ソレに、アタシも少し新しい刺激欲しいし。…………さて、ズバリ聞かせて貰うけれど、アナタ何か隠してるでしょ?」
歳を感じさせない雰囲気ながらも、年長者としての貫禄はある彼女。決して嫌味を含まないにこやかな笑顔のまま、貴章から視線を外そうとしなかった。
「……やっぱ、バレてますかね。」
「少なくても、アタシの情報網はクリア出来なかったわね。……と、言いたい所だけど、アタシは又聞きよ。最初に気付いたのはアイツよアイツ。」
篠田レイコの言う「アイツ」、木更津のロータリー職人だろう。しかし、どこか納得している貴章。
「まーアイツは前に言ってたのよ、『貴章クンはプロでもないのにあそこまでやり上げるのは流石だろ、だけど人の目に着くこともやってみた方がいい、そうすれば色々広がっていくから』って。…………なーんにも考えてないようで、アイツなりに持論はあるんでしょ。…………アタシも、それには同意するけどネ。」
無言でその話に聞き入る貴章。ニヤリと笑みを浮かべて、奥のガレージに引っ込む。「ついてきてください」とレイコを引き連れて。
「考えたんですよ、僕なりに。僕はずっと
そこには完璧なる新参者。しかし、レイコも含め、この手の2ドアクーペを愛する者ならば名前を知らぬ者は恐らく居ないであろうその名車。
「……ふうん、確かに貴章クンぐらいでしょうね。スワップはしないんでしょ?」
「はい、このまま行こうと思います。……スワップして弄るのは僕じゃなくてもやってる人はいるでしょうし。でもこのエンジンのままやるとなると、そう多くないんじゃないかと。……少なくても、コレと同じメーカー製のエンジンにはある程度慣れてはいるつもりですし。」
「……プロとしての第1号……そうなるのかしらネ?」
このご時世に出てきたターボスポーツ、同じ時期に大暴れしていたライバルが先に新しくなって世に出てきたものの、コレだけはなりを潜めていた、言ってしまえば新参者。そして、それを
低い全高、思っている以上に短いホイールベース。
「いいんじゃない、アナタの店がコレの始まりと一緒に始まる。それはたまたまなのかもしれないけど、コレは名車の名前を継いでるんだから、アナタもそれに負けてちゃいけないわよ?」
「タハハ……善処しますヨ。」
この時代に、「何やってんだ」と言われてしまうのは覚悟の上。それでも譲れないモノは譲れない。たとえ社会に、世間に否定されようがそしられようが。それは何一つ譲る気はない。先の緋色のクルマとは別に、今度は純白のボディを持つ2シーター、直列の6発ターボ、FR。止まったハズの時計の針が、今、動き出す。
まだ手を入れていないにも関わらず遺憾無く発揮するその存在感は先代から見事引き継いで見せた。そしてノーマルにも関わらずマフラーからバックファイヤーが上がる。
「いいじゃない。……ここからが、貴章クンの始まりって感じで。」
それは途切れたハズだった伝説。
ラリー、WRCの黄金期をいち早く築き上げた名車をルーツに持ち
純粋に走る為に生まれてきたクルマ
そして、17年の歳月を経て、再び走り出す。
型式名は、「3BA-DB42」。
その名は……
「A90 TOYOTA GR
……はい、改行すみませんm(*_ _)m
でも何となくこうしたかったというか……
え、インプはどこいった?
……どこでしょ?