活動報告にあげさせてもらってた通り、先週末にようやく退院できましたので、久しぶりに投稿させていただきます。
知らぬ間にお気に入りに登録してくださった方もいらっしゃいまして、大変驚いております。はい。
どん亀よりも遅い更新ペースですが、今後ともよろしくお願いします。
「銀色の……964ターボ……」
「そういえば、このインプレッサって、specCかい?」
「え、ええ。specC TypeRA-Rです。リアウィングはノーマル車両から引っ張ってきました。」
「エンジンは極力そのままなんだろ。」
「排気系はワンオフで換装、コンピューターはリセッティングして、後は地味系のポート研磨とバランス取りですね。」
「2.0Lのまんまって言ってたよな。」
「はい、2.0Lのシングルターボです。ターボ係数換算しても排気量は2.7Lです。」
「それでよく湾岸をあそこまでとばせるよな。34Zの方が速そうじゃないか。」
「そうなんですよね、スーパーチャージャー着けたお陰で立ち上がりも速いし、千鳥町ランプから一気に置いていかれました。インプレッサって、やっぱり最高速弱いですもん。……それはそうと、工藤さん、ひとつお伺いしてもいいですか?」
圭介が無言のまま、それまでインプレッサに向けていた視線を貴章の方に向けた。それを承諾ととった貴章は、圭介から目を離して、彼のR35GT-Rに目を落とした。
貴章「このGT-R、4WDじゃないですよね。たぶんFRなんじゃないですか?」
工藤「よくわかったな。そうなんだよ。今、リアのデフからの駆動軸を抜いてFRにしてるんだ。今日いじったところなんだよ。」
貴章「そうですか。……そういえば、R35のFIA-GT3車両って、600馬力FRでしたもんね。ならこっちもバランスがいいわけだ。」
工藤「そうそう。俺は35Rなら、600馬力FRでいけたんじゃないかって思ってるから。実際、この35Rは600馬力仕様だしね。」
貴章「俺の知り合いに、33Rに乗ってる奴がいますけど、結構FRでもいけるっていってましたね。ただバランスが悪いから、GT-Rの売りの速さが消えるってぼやいてましたけど。」
そうなんだよと言って、圭介は自身の経験談を話始める。それはかつて、CRS工藤が作った、R34のコンプリートカー、CRS K0の話だ。貴章はちょうどR34が登場した1999年の生まれだから、実は物心ついた頃のGT-Rは、もうR35だった。
しかし、貴章が第2世代GT-Rに興味を抱いたのは、仲間がR33乗りだったからというだけではなかった。とある雑誌に掲載された、とあるR34GT-Rだったのだ。
貴章「実は、僕が第2世代GT-Rに興味を持ったのって、CRSなんですよ。」
工藤「マ、マジで?」
貴章「マジマジ。大マジです。ある雑誌に載ってた、白のR34。パッと見た感じ普通のGT-Rなのに、諸元表見たら、何か見かけによらずすごいクルマで。その時のチューナーが、工藤さんじゃないんですか?」
工藤「どーだろ。ウチもかなりの台数を見てるからな……」
貴章「CRS K6、高すぎて売れ残った最後のCRS製コンプリートGT-Rでしたっけ?」
工藤「ウルセー、俺は中身で勝負したかったんだヨ!」
貴章「それはわかりますよ。俺のインプレッサもそのコンセプトですし。」
貴章は後ろに佇むインプレッサを振り返る。ブリスターフェンダーのお陰でかなりワイドに見えるが、それでも原型をとどめている。まめに洗車やコーティングも欠かさないから、へんぴな外装改造インプレッサよりは断然きれいに見える。
貴章「そのお陰で、エンジンにめちゃくちゃ高いブーストかかってるんで、どうしても燃費は悪いし、エンジン自体にも良くはないんですけどね。」
工藤「そうか。……ところでさ、君と走ってたあの34Zはどうしたんだ?」
貴章「大丈夫ですよ。そろそろ来るんじゃないですかね。あいつC1は苦手みたいでね。」
ちょうど聞こえてきたエグゾーストノートは、確かに隆介のZ34のものだ。それに混じって、もうひとつのサウンドが聞こえる。隆介のZ34や、工藤のCRS GT-Rとは違った、V型特有のよく響く重厚感ある音だ。貴章の知り合いで、このエンジンサウンドを持つクルマに乗っているのは、1人しかいない。
貴章「おいおい、隆介のやつ真紀まで引っ張ってきたのかよ。」
工藤「なんだい、知り合いかい? 結構いい音させてるじゃないか。」
貴章「工藤さんも、真紀のクルマのエンジン見たら驚きますよ。俺も信じられなかったですもん。」
そろそろと代官町ランプから降りてきたのは、隆介の黒いZ34 nismo。少し控えめなGTウイングが、それはそれでバランスが取れていいアクセントになっている。その後ろからやって来たのは、さっきまでの重い音とは対照的に、意外と軽やかな響きを伴っていた。
小柄なボディは意外とがっちりしているようにも見え、ショートオーバーハング、ロングホイールベースに長いボンネットといった、伝統的なコンバーチブルのデザインの中にバランスの良さや力強さをにじませている。
工藤「おっ、BMWか。Z4だよな。直6ターボなのにこの小柄なボディは、RB系GT-Rを知っている身からすると、ちょっと違和感があるんだよな。」
貴章「ええ、E89 Z4です。けど、ただのZ4じゃないですよ。」
アルピンホワイトというBMW伝統の白いボディに、貴章のインプレッサと同じように、大きく張り出したフェンダー、フロントバンパーからリアディフューザーまで、しっかりと空力パーツを装着した上に、フロントカナードや大型GTウイングなど、もはやレーシングカーではないかと疑いたくなるルックスだ。
工藤「へぇー、だいぶ作り込んであるな。……サイドステップまで整流効果狙ったのか? すごいな。」
???「どーも、自分でも結構なとこまで作れてるんですよ。ヤッホー、タカ。」
貴章「まあ、首都高でここまでやる必要あるのかって気もしないではないけどな。」
???「タハハハ、そこは突っ込まないでよ~。」
工藤「…………」
貴章「(まあ、そうなるよな。)」
見事にフリーズした工藤に少し同情してから、まだまだこんなものではないという意味を込めて、貴章は工藤の方を向いて苦笑いを浮かべた。まあ、工藤が言葉を無くすのは最もなことではあるんだけど。
まず、このZ4のエアロを自分で作ったという発言。中途半端な形だけの空力パーツは、逆に危険なこともあり、普通ならメーカーのエアロを組み合わせる。それをしないで、あえて自作したというなら、このZ4は異次元の完成度を保っていたからだ。
そしてもうひとつ。それはこのZ4から降りてきたドライバーだ。その人物は、わりと黒いロングヘアーを腰の辺りまで流し、小ぶりな子どもっぽい顔に二重の目が印象的な少し小柄な人……女性だったからだ。
工藤「……マジ……かよ。」
貴章「えと、こいつがこのZ4のドライバー兼メカニックの、高野真紀です。」
真紀「どーも、真紀でーす。」
一応軽く工藤に紹介しておく貴章だが、まだ工藤は整理がつかないらしく、まだうなり続けていた。ちょうど
隆介もZのエンジンを止めて、真紀に毒づきながら降りてきた。
隆介「真紀さんひどいっすよ。いきなり出会い頭にバシバシあおらないでくださいよ。俺のZ、スーパーチャージャー付けたばっかりなんすよ!」
真紀「いやぁ、速そうなの見つけるとつい……」
貴章「そのお陰で偉い目に遭う俺らの身にもなってくれよ。」
真紀「てひひひ……」
隆介「てひひひ、じゃないっすよぉ……」
工藤「……あの。」
ようやくフリーズが溶けた工藤が、やっと言葉を発したのは、真紀に向けられたものだった。
真紀「はい?」
工藤「君がこのZ4を全部組み上げたのかい?」
真紀「うーん、厳密に言えば、ここのふたりと、もう1人で設計から組み立てまでやりました。」
貴章「とはいっても、俺たちが作ったパーツで使ってるのって、俺のブリスターフェンダー位だろ。」
隆介「結局自分で作ったパーツ入れるんですよね。」
真紀「まあ、ほら物は試しっていうじゃない?」
隆介「確かに、エンジンの換装は貴章さんが全部やりましたけどね。」
工藤「エンジン換装? 」
真紀「そうなんですよ。なんなら見ますか?」
真紀がそう言って運転席の方まで動き、ちょっとすると、ダクト付きのZ4のボンネットが少し浮き上がった。それを持ち上げ、つっかえ棒で上げたボンネットを支える。
姿を現したZ4のエンジンルームは、これまたきれいに磨きあげられたパーツばかりで、汚いというイメージはこれっぽっちも抱く余地がない。しかし、その中央に居座るエンジンは、本来の直6ツインターボにしては少し大きく、ついているはずのタービン、いわゆるカタツムリがないのだ。
工藤「おい、これノンターボなのか?」
真紀「はい、E92型のM3に搭載されてた4.0LのV8自然吸気エンジンを積んでます。すごいダイレクトでいいですよ。」
貴章「Z4 GT3がモデルなんだろ?」
真紀「そ。やっぱり、ターボは熱持っちゃうから。」
隆介「それにしても、真紀さんのグッドラックってすごいですよね。たまたまリアエンドが大破したM3のエンジンを手に入れられて、しかもそのM3についてた強化ツインプレートクラッチも流用しちゃうなんて。」
真紀「ほら、日頃の行いがいいから、アタシ。」
貴章「どこの口がほざいてんだか。」
またフリーズする工藤を横目に、後から合流したふたりに、彼を紹介する。隆介の方はCRSの存在を知っていて、固まったままの工藤を無理やり引っ張ってR35GT-Rにかぶり付いて、いろいろとふたりで話し込み始めた。さすが日産ユーザー同士、話は合うようで工藤の方も次第に活気を取り戻していった。
真紀「ねぇタカ、CRSってなんなの?」
貴章「GT-R専門のチューナーだよ。業界の中じゃ、結構名の知れたショップらしいな。そこの代表が、あの工藤圭介さん。さっき環状入るときに初めて会ったんだよ。」
真紀「へぇー、じゃあさ、健一郎がGT-Rいじってもらってる……えっと、なんてとこだっけ?」
貴章「なんだっけな……確か、
真紀「そうそう、そことあの人のCRSなら、どっちが有名なのかな?」
貴章「どうだろう?わかんないな。」
真紀「そう言えばね、さっき隆介に遭う前に、すごい珍しいクルマ走ってたんだ。なんだと思う?」
貴章「なんなんだよ、いきなり。」
真紀「ちぇっ、せっかくタカが好きそうな情報だと思ったのに、『なんなんだよ』とか言われちゃうと教えたくなくなっちゃうな~。」
貴章「……じゃあどうしろっていうんだよ?」
真紀「タカのインプレッサで湾岸から環状。久しぶりにタカのインプレッサに乗りたいんだ~。今週の土曜日なら都合いいんだけど。」
貴章「わかったわかった。OK。」
真紀「やった!決まり!」
貴章「で、そのクルマってなんなんだよ?」
真紀「すごいよ。銀色のポルシェ964ターボ3.6。もう1台は、コルベットC3スティングレイ。」
貴章「銀色の……964ターボか。工藤さんも同じクルマのことを言ってたよ。」
真紀「えっ、でも工藤さんってGT-R専門なんでしょ?」
貴章「それくらい速いってことだろ。」
真紀「ふーん、じゃあ、今から上がれば会えるのかな。」
貴章「可能性はあるよな。」
真紀「じゃあさ、今から工藤さんのGT-Rも入れて、4台でランデブー走行しない?そのポルシェの人探しながらさ! 」
貴章「会えるかどうかは別にして、久しぶりにいいかもな。けど真紀、あの工藤さんの35R、恐ろしく速いぜ。」
真紀「望むとこよ!」
貴章「やれやれ。じゃあ、あの人らに声かけるか。」