首都高に流る鮮青6連星   作:susu-GT

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Ep.04 BLACKBIRD(ブラックバード)

 

貴章「じゃあ、工藤さんのGT-R、隆介の34Z、真紀のZ4、俺のインプの順で行きますか。」

 

工藤「OK。みんな速いんだから、俺も付いていくのが大変だなぁ。」

 

真紀「またまた~。C1でタカのインプレッサを抜いちゃったら、どこ行ってもアタシたちはついていけませんよ。」

 

隆介「工藤さんの35R除いて、俺らの中で一番パワーのあるZ4に乗ってる真紀さんが言っても説得力ありませんけどね。S65B40のチューンドで過給器なしのままで500馬力オーバーでしょ? 」

 

真紀「そんなことどーだっていいじゃん。」

 

貴章「ハハハ……コースは工藤さんにおまかせしても?」

 

工藤「了解だ。」

 

 

 

それぞれの愛車――工藤はGT-R、隆介は34Z、真紀はZ4、貴章はインプレッサ――のコックピットにおさまると、4人揃ってエンジンを始動させる。

 

V型エンジンにしてはやけに重たい音の工藤GT-RのV6ツインターボVR38DETT、対してわりと軽やかな音色の隆介34ZのV6スーパーチャージドVQ37VHR、いちばんず太い音をだす真紀Z4のV8自然吸気S65B40、そして特有の乾いた少し甲高い音の貴章インプの水平対抗4気筒(フラット4)シングルターボEJ20。

 

それぞれのエンジンが、各々の独特なサウンドを響かせて、まだ昼間に比べて静かな代官町に爆音を響かせる。突然工藤がエンジンをふかすものだから、周りの通行人は怪訝な顔でこっちを睨んでくる。

 

この頃の自動車離れのために、貴章のスバルインプレッサはおろか、国産車ではピカイチの性能を誇る日産GT-R、この4台の中では比較的新しい車種のBMW Z4や、日産フェアレディZでさえ、今の多くの若者の中では、単なる動く鉄のカタマリでしかないのだ。いわゆる『邪魔者』がこんなに爆音を響かせていたら、中には非常に不愉快に思う人もいるだろうし、少なくても歓迎されるものではない。

 

しかし、貴章たちにはそんなことはどうだっていいのだ。彼らはただ、首都高というちょっと異常な、それでいて魅力的な場所を、とにかく速く、誰よりも速く走りたいだけなのだから。けれど、今みたいに仲間とつるんでランデブー走行するのだって、楽しみのひとつだ。

たかがチューニングカー、されどチューニングカー。たかが首都高、されど首都高。それの前では皆が平等で、それこそ缶コーヒー片手にずっとダベっていられる、それがクルマというものであり、また首都高というものだから。

 

ゆっくりと動き出したのは、白い工藤35GT-R。交換済みのマフラーのおかげだろうか、いかにも35Rという音がさらに太く聞こえる。

 

次に、貴章の後ろに停まっていた隆介34Zと、真紀Z4も、工藤を追うように発進する。街乗りではあまりうるさい印象を与えない34Zに対して、外観も音もレーシングカーそのもののZ4。これほどまでにアンバランスな組み合わせもなかなかない。

 

 

 

貴章「(それじゃ、俺も出るか。……頼むぜ、インプ。)」

 

 

隆介曰く、マフラーやエキゾーストマニホールド等、ワンオフ自作の排気系のために遠くからでもなんとなく来たのがわかるという、水平対抗エンジン特有の割れるような爆音を響かせて、真紀Z4に続く。

 

 

35GT-R、34Z、Z4、GDBFインプ。ほぼ共通項がない4台だが、この首都高を走る現役ランナーということでは同じ。それぞれのチューニングコンセプトも違うが、本気で走っているというオーラだけは、凄まじいものがある。

 

 

 

 

代官町からC1内回りに入った工藤GT-Rは、600馬力仕様のエンジンをぶん回して、いきなり後続の隆介34Zをちぎりにかかる。幸いスーパーチャージャー搭載の34Zは持ち前のトルクとレスポンスの良さを発揮してついていく。エンジンは自然吸気ながらも、V8 4.0Lの底力を7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)で余すことなくリアタイヤに伝えることで鬼のような加速をする真紀Z4。対して貴章は……

 

 

 

貴章「ダメだ……パワー無さすぎる。置いていかれる……」

 

 

さすがの4WDでも、排気量がたったの2.0Lのシングルターボでは、立ちあがりの時点ですでに置いていかれる。

 

 

 

貴章「お願い工藤さん、いきなり湾岸線と横羽線っていうのだけはやめてぇー。」

 

 

 

 

工藤の方も、バックミラー越しについてきているのは34ZとZ4だけということは確認していた。

 

 

工藤「(そりゃ、あのインプレッサなんだもんな。あの立ちあがりについてこれるはずもないか……)」

 

 

 

車内に無線機をつけてある隆介と真紀は、バックミラーから見えなくなった貴章インプを気にしながらも、先行の工藤GT-Rについていった。

 

 

隆介「(ガアアア……)貴章さん、いつものパターンですかね?(ゴアアアア……)」

 

真紀「そうなんじゃない?タカのインプレッサは環状特化マシンだもん。工藤さんがいきなり湾岸線とか横羽線に行かなければ追い付いてくるわよ。」

 

隆介「(ゴアアアア)それもそうっすね。あの人、環状の鬼ですからね。(アアアパシュン…ガアアア……)」

 

 

 

すると、GT-Rの特徴的な丸い4灯ブレーキランプが点灯する。おそらくおいてきてしまった貴章インプレッサ待ちだ。しかし、汐留を越えて、浦安すらそのまま直進していく工藤GT-Rは、おそらくこのまま空港西から横羽線に入り、大黒から、もしくはみなとみらい線経由の湾岸線入りのコースをとるつもりだ。

 

 

 

真紀「あらあら、タカ、待ってもらってるのにこれから横羽線と湾岸線なんて、ついてないわね。」

 

貴章「(バアアア……)マジかよ、今なんとか真紀のZ4は見えるところにいるんだけどな。」

 

真紀「あたしの目の前に二人ともいるから、早く来なさいよ。」

 

貴章「(アアアパァン…ゴアアアア……)無理難題言うなよ。こっちはアクセルベタ踏みだってのにさ。コーナーなけりゃ追い付けねぇよ。」

 

 

 

無線機から聞こえてくる貴章の声は、半ば諦めが入っているようにも聞こえた。

 

貴章の声の後ろから聞こえてくるシフトアップ時の過給が止まる音から、貴章のインプレッサの特徴がかいまみえる。

 

今、真紀のZ4の7速DCTで、5速7500回転、メーター読み240km/h。貴章インプはそれ以上の速度で走っているから、おそらく260km/hほど。ノーマルが6速のGDBFインプレッサが6速8500回転で300km/h出せることを考えると、さっきのシフトは、おそらく4速から5速。ファイナルギアを組み換えたからもうひとつ上のギア、6速が残っているとは言えど、貴章インプのトルクの細いEJ20エンジンでは、最高速は絶対的に不利だ。

 

それに対して、真紀Z4は、7速8000回転で300km/h。しかもパワーは貴章インプの400馬力ちょっとに対して500馬力オーバー。トルクはNAエンジンながらも軽く上回る。同じ最高速でもそこに達するまでの時間が明らかにZ4の方が短い。しかも7速DCTとなれば、シフトアップの際のタイムラグはほぼないし、ギアがひとつ多いから、パワーバンドをうまく利用していける強みがある。

 

ショートホイールベースの弱点である安定性は、自作の巨大なエアロパーツによって得られる強力なダウンフォースによって補っている。現状、よっぽどの最高速マシンが来ない限り、真紀とZ4の組み合わせは、最強タッグと言えるものだった。

 

 

 

バックミラーに映った明るいヘッドライトが、一般車の間をスラロームしてくる。甲高い音も相まって、真紀は直感的に、貴章が追い付いてきたことを予感した。

 

 

真紀「おつかれー、タカ。」

 

貴章「(ガアアア……)真紀、本気で踏んでいけ。」

 

真紀「え? なんで?」

 

貴章「(ガアアア……)後ろになんかヤバそうなヤツがいる。恐ろしく速そうだぜ。工藤さんよりも速いかもしれない。」

 

隆介「(ゴアアアア……)マジっすか?でも工藤さん、結構先にいっちゃいましたけど。」

 

真紀「なら大丈夫でしょ。とりあえず踏むわよ。頭やるから、タカはガリお願い。」

 

 

これまで床踏みしていなかったZ4のアクセルを目一杯踏み込む。これまでの大人しさが嘘のように、逞しい雄叫びをあげるS65B40エンジン。前にいた隆介34Zをあっさりとオーバーテイクして、一気に前におどりでる。スリップストリームを利用した貴章は、今度はあまり離されずについてくる。

 

しかし、そのクルマは真紀の加速など眼中にないかのような加速で一気に距離を詰めてくる。

 

 

貴章「誰だよ?こんなクソ速いクルマ、湾岸にいたか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北見「久しぶりにしては、ずいぶんと調子が良さそうじゃないか。」

 

???「ええ。僕もこれほどまでとは思ってませんでしたね。」

 

北見「……前の3台、どう思う?」

 

???「Z4、34Z、インプレッサですよね。……速いですよ。それもすごく。」

 

北見「ククク……相変わらず、お前は速そうな奴を見つけると、すごく嬉しそうになるよな。」

 

???「そうですね。久しぶりに血が騒いでますよ。……ブランク明けではありますけど、このポルシェなら、いいところまではいけるでしょうし。」

 

北見「お前に任せる。俺は様子を見に来ただけだからな。」

 

???「では、墜させてもらいますね……この最高速エリアでは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島達也「湾岸の帝王、BLACKBIRD(ブラックバード)が今でも一番だと証明して見せますよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴章「くそっ、速い。……しかもこの音、水平対抗エンジンか? 俺の知ってるやつで水平対抗に乗ってる奴はいないぞ。」

 

 

一気に真後ろまで近づいてきたマシンは、丸いヘッドライトに、フロントバンパーの黄色いフォグランプ。ぴったりと後ろに張り付かれた貴章にとっては、もうひとたまりもない。

 

 

貴章「俺は厳しいな……悔しいけど。前に出してついていけるとこまで行ってみるか。」

 

 

 

 

ウインカーを出してラインを開ける。

 

横をすり抜けて行ったマシンに、貴章は驚愕した。それは、この中では一番古い貴章のインプレッサなど、まだ最近のクルマに思えるほどのマシンだった。

 

 

漆黒のボディに、特徴的な小型GT2ウイング。稀少な空冷ボクサーエンジンが吠える。

 

 

 

ポルシェ911 964型3.6ターボ。

 

 

 

今の911シリーズ最新の991型では設定のない空冷エンジンを搭載するモデル。貴章が工藤から聞いていたクルマと同じ車種ではあるが、色が違う。それでも、このクルマから感じるオーラは、これまで見てきたポルシェの連中とは、別物だ。

 

そのまま、隆介34Zもあっさりと攻略し、唯一対抗できるだけのマシンである真紀のZ4でさえ、抗う余地を与えずに抜き去っていく。そのまま走り去ることはない辺り、どこかのパーキングで顔合わせくらいはするのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

北見「なんだ、ずいぶんと呆気なかったな。」

 

島「ですが、これから怖くなりそうですよ。」

 

北見「ほう……」

 

島「後ろのインプレッサなんかは特にそうでしょうね。エイジさんと同じようなクルマですし。走り方もエイジさんそっくりです。」

 

北見「ZとBMWは?」

 

島「34Zはまだマシンが仕上がってない感じですね。でも無理して追いかけてこない辺りは、自分の立ち位置がよくわかってるんでしょう。Z4は今でも十分速いですよ。ただこっちの方がパワーがあったっていうだけですね。」

 

北見「ククク……新しい敵になりそうだな。ちょうどいい、大黒で止めてくれ。エンジンの様子を見ておきたい。」

 

島「わかりました。」

 

 

 

 

 

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