Ask the right weight of the trigger 作:鯛の御頭
銃とかミリタリー知識はほぼネットでのにわかなので、雰囲気で読んでください。
ヒーローを目指すのならば、どうすればよいのか。
職業選択の自由のある現代において、ヒーローという職業に就くためにはいくつかのルートと規定が存在する。
少年少女がヒーローを志すのならば、オーソドックスな方法としてはヒーロー科のある高校を受験することだろう。
全国各地にある高校の中で名門と名高いのが、西の士傑高校と東の雄英高校だ。
特に名実ともに長年No.1ヒーローの地位を確固としていたオールマイトの出身校でもある雄英高校ヒーロー科は、毎年偏差値70オーバー、毎年一般入試の倍率は300倍を誇る超難関校だ。
ヒーロー科は2クラス合計40人。
推薦枠4名に加え、一般入試の合格枠は36人。
記念受験の生徒もいるだろうが、単純計算でも一万人を超える人数が全国各地から応募している。
基本的に試験は一年度限り、浪人での再試験は受け付けていない。まさに通るべくして通る狭き門だ。
かくしてその門の先に行くべく、私も全国の夢見る少年少女と同じく雄英高校の一般入試に臨んでいた。
会場は雄英高校。
全二日の日程で行われ、実技試験と筆記試験が待ち構えている。
筆記試験は前日のところで終っており、この日行われる実技試験のために受験生たちは1万人規模の人数が収まるライブ会場さながらの大ホールに集められていた。
合格者の偏差値70超という結果が物語る昨日の筆記の難解さに記念受験の生徒の何人かは既に諦めて実技試験を棄権しているが、受験倍率は大きく変わらないことが予想された。
「今日は俺のライブにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!」
会場にエコーのかかった大音声が響く。
残念ながら壇上の彼の期待したようなキレのあるレスポンスはない。
「こいつはシヴィー!!受験生のリスナー!」
白けたというわけではなく、反応に戸惑っているといるのが大方だろう。
壇上に立っているのはおおよそ受験会場に立つには似つかわしいとはいえない人物だ。スタッズの付いた黒い革ジャン姿、ワックスで重力に逆らうように固めた金髪、耳にはヘッドホン。
どこかのロックシンガーのようだが、目の前にいるのはボイスヒーロー『プレゼントマイク』
雄英高校の講師の一人であり、第一線で活躍するプロヒーローである。
「実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!!
YEAHHH!!」
プレゼントマイクのテンションの高さと反比例するように、受験生は誰一人口を開かない。
誰か一人ぐらいノリのよさそうな人が反応しても可笑しくないと思ったが、受験前の緊張からか、はたまた会場の空気を読んだのか、大方の受験生は真面目に聞いている。
プレゼントマイクの派手な口調とは裏腹に、説明された実技試験の内容はごくごくシンプルなものだった。
・試験は10分間の「模擬市街訓練」
・持ち込み自由、服装規定なし(公共良俗に反しないこと)
・他の受験生への攻撃は禁止
・仮想
・0Pのお邪魔ギミックが登場する。
要点はこんなところだろう。
まるでゲームのようだな、と受験生の誰かが呟いた。
確かに構造だけ見れば、ゲームだ。
しかし、この模擬演習は現実において決して有り得ない話ではない。
仮に何体もの乗り物を同時に自由に操作できるヴィラン、ウイルスにより人に危害を加えるようプログラムを書き換える個性を持つ者がいるとするならば、工事現場や工場の大型重機を街中で暴徒化させるという事態は想像できる。
機械開発系の個性やプログラミングを得意としたヴィランならば、ロボットの大量暴走というのは予想できる。
しかもこの試験、単なる点取り合戦ではない。
受験生同士の競い合い、蹴落とし合いに合わせた裏で自分がヒーローならばこの状況をどう打開するか、そういうところまで見られている前提で動くべきだろう。
第一、倫理観や人柄が問われるヒーローにおいて面接試験がない時点で、行動は全て記録されていると考えるのは杞憂だろうか。
「俺からは以上だ。最後にリスナーに我が校の“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った!
『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者である』と!!
それでは皆、良い受験を」
あくまでここはスタート地点より前の段階。
合格さえ階段の一つでしかないだと言われているような気がした。
受験生たちは動きやすい体操着や運動着に着替えると、試験会場ごと別れ大型バスに乗り込む。
順番バスに乗り込む関係で指定された会場以外の生徒はまだ実技試験の説明会場に待機している。
基本的に待ち時間はトイレ以外自席で待機であり、携帯電話の使用も不可。
受験のハウツー本を読む生徒もいれば、精神統一をしている生徒もいる。
私は手持ち無沙汰に受験者用のハガキに視線を落とす。
受験番号:1911番
受験日:20××年2月●日
筆記会場:M79
実技会場:A
以下注意事項や雄英高校の緊急連絡先などが記載されている。
それにしても受験番号はコルトガバメント、筆記会場はM79グレネードランチャーとは、私にとっては覚えやすいが随分と因縁めいた物を感じる。
さて、ここでこの試験について再考してみる。
仮に現在の一般入試の倍率を300倍ちょうどとしたところで、10, 800人。
会場がAからJまで10会場あるので、1会場当たり1000人を超える人数が点数を奪い合うことになる。
受験生に対し、どの程度の仮想敵が用意されているのか公表されていない以上、点数はかなり低い点数しか取れない生徒で溢れるだろう。
しかも都市部という状況設定上、ビル群の間を駆け抜け、飛び回り敵を探して動き回る機動力、索敵能力は点数を左右する要因である。受験という緊張する場面、しかも周りの受験生がいる状況下で個性に巻き込まないようにする判断力を必要とする。
単純な個性の攻撃力以外にも、ヒーローの基礎的な能力を図るには試験内容としては十分だろう。
サポート系の個性より、実働的な個性が役に立つ試験ではあるが、その辺は私にとっては運がよかった。
A会場は説明会場でも寄りだったため、移動するバス順番は最後だった。
バスの中では緊張からか、顔なじみがいないせいか、隣同士で和やかに談笑という姿は見られない。
ブツブツと念仏を唱えたり、どこの誰ともわからない神様に祈ったり、目を閉じて集中する者がいたり、ぼんやりと窓の外の風景を眺めたり、受験生の過ごし方は様々だった。
私はと言えば、既に持ち込みOKの私物の確認も済んでいる。
頭の中でのシミュレーションもいくつかできた。
身体を温められなかったのは残念だが、ヴィランはそんなものを待ってくれる暇はないし、突発的に敵に遭遇したとして準備運動をしていましたなんて言い訳はできない。
個性の事前準備もしたかったところではあるが、基本的に武器の類は持ち込み自由とあっても私の個性では許可が下りなかったので敵と遭遇する前に準備するしかない。
バスから降りると簡単に腕を伸ばしたり、屈伸をしたり、柔軟をしたりして体を慣らす。
大型バス15台からなる生徒全員が下りると、流石に壮観だ。
しかも各会場均等に敵が配置されているとはいえ、10会場もあればこの会場で1位を取るくらいの点数でなければ、そもそも合格ラインとは言えないだろう。
仮にその会場で1位だとしても、他の会場の点のバラつきと筆記次第では、合格ラインすれすれということもある。
人数と言い、難易度と言い、全くもって規格外な試験だ。
「おお、重装備」
「ん?」
某有名スポーツメーカーのものらしい黒いジャージに金髪の男子が話しかけてきた。
「ミリオタ女子?それとも個性?」
実技試験に服装規定がないとはいっても記念受験のコスプレ姿や女装はまだしも、ジャージや中学の体操服が並ぶなかで私の服装は珍しい部類に入るだろう。
安全靴仕様のショートブーツに黒のカーゴパンツ、ポケットがたくさんついた緑色のタクティカルベスト(防弾仕様なし)となれば、完全にサバゲー会場と間違えたかと問われても不思議ではない格好だ。ミリオタと言われてもまあ仕方ないだろう。
「持ち込み自由だからね」
なにせ事前に装備があるかないかで、私の攻撃力は大きく左右する。
備えあれば患いなしとはいうものの、あまりに持ち物が多いと機動力に影響するため、最低限の
試験内容が知らされるまではもう少し持ち込みを考えていたが、ロボット相手となれば、
「ふーん。なあ、もし試験終わったら『ハイ、スタートー』
カウントダウンなし、何とも気の抜けた合図だと周りはまだ試験開始を理解していない。
「じゃあね!」
金髪に手を上げ、一抜けで走り出すと後ろから他の受験生の慌てた声が上がった。
『どうしたー???実戦じゃあカウントダウンなんざねえぞ。走れ走れ!!賽は投げられてんぞ??!!』
やはり試験開始の合図で間違っていなかったようだ。
しかも合図があるだけでまだ試験としてはマシだろう。
受験生を振るい落とすために開始合図なしの奇襲も警戒していたが、流石にそれほど鬼のような内容ではないことに若干安堵した。
プレゼントマイクの叱咤にようやく受験生の大半は走り出してきたようで、後ろからドタバタと足音と共に気合の入った叫び声も聞こえる。
一歩先に走り出したが、機動力は普通としか言えないので速度自慢の個性にはすぐ追いつかれるだろう。
曲がり角には注意しながら、大通りらしき場所へと向かう。
オフィス街のようなビルが立ち並ぶ演習市街地には哨戒行動中であろう1Pの仮想敵が多数待機していた。
1P敵はバイクがウイリーをしたような形状であり、頭部にはカメラ、腕には1Pと派手にペイントされている。
他に敵影は視認できないが、奥やビルの陰の方には2P,3Pの仮想敵が潜んでいるかもしれない。
ポイントとしては1Pだが、手持ちがあまりない今なら丁度よい。
幸いまだ仮想敵はこちらに気が付いていない。
ベストから500gほどの金属の合板を2枚取り出す。
【
金属板はまるで半固形の液体のようにぐにゃりと曲がると見慣れたコルトガバメントに変わる。
ビル影に身を隠すようにして大通りを伺いながら、こちらに接近していた1Pの頭部カメラに狙いを定める。
装甲の厚さと強度が不明である以上、脆いところを狙うのが定石だ。
呼吸を整え、曲がり角から姿を現すと哨戒していた1Pが全てこちらを向く。一番近くにいた1Pの頭部に数発お見舞いするとすぐに煙を吐いて停止した。
停止したそいつを盾に、もう3体近くにいた1Pを破壊したところで弾切れだ。
ハンドガン程度で倒せたという判定になれば防弾仕様は取っていない。1Pの強度は知れている。
しかし2P、3Pはポイントに応じた難易度となってくることを考えれば、ハンドガンだけでは心もとない。
連射性を考えると散弾銃や機関銃を使用したいところではあるが、どこから飛び出してくるかわからない他の受験生がいる以上、簡単に使用できない。
停止した1Pをすぐさまテーザー銃と89式自動小銃とその弾薬に【転化】させ、騒ぎを聞きつけてもう1体近づいてきた1Pに縦薙ぎに小銃の銃弾を浴びせる。
これだけ廃材が出るのであれば、内部バッテリーを流用したテーザー銃を使い捨てたとしても、材料に困ることは無いことは有難い。
意識しなければいけないのは、運悪く流れ弾に当たる受験生を出さないことだ。
腕のいい養護教諭がいるとは聞いているが、死者蘇生の個性は聞いたことがない。
「さてと。射線に出てくれるなよ」
私は銃を肩にかけると、集まりだした仮想敵めがけて走り出した。
――試験官モニタールーム――
「いやー、本当に今年は粒がそろっていますねえ」
「世代を重ねるごとに個性を持つ者は増え、さらに個性はより強力なものに進化している。研究途中の仮説ですが、裏付けられる日も遅くはなさそうですね」
実技は受験会場が多く、さらに人の目だけでは限界があるため、会場に多数設置されたカメラで試験会場の様子はリアルタイムでチェックされていた。
仮想敵を倒したポイントは仮想敵と演習場に設置されたカメラで自動判定されている。
試験規則に他の受験生の妨害行為がないか、重傷を負っている生徒はいないか、それとヒーローとして資質の見極めのために試験官は各会場のモニターを見ていた。
無論、受験生の数もモニターに表示される映像の数は膨大なため当日チェックでの他、後日機械と人によるカメラ映像の見直しも行われ、点数に不備がないか吟味される。
「今のところA会場は1911番の独壇場ですね」
「彼女の個性の場合、むしろ他の受験生に危害を加えないように注力しているのでしょう」
「なにせ彼女は“指定個性”ですから」
モニターに映った人物は名前と受験番号が表示されている。その中でもA会場のモニターは注目度が高かった。
「そうすると、今年はひょっとするとアレを倒す受験生が現れるかもしれないですよ」
試験は残り1分に迫っていた。
――実技試験会場A――
2P敵は四本足のサソリのような見た目で機動力はあまりないが、1Pに比べると装甲は少し厚い。サイズは小型のパワーショベルほど。
しかし積んでいるAIが高性能なのか、1Pより的確に攻撃を避け、また尻尾を鞭のようにして攻撃をしてくるので注意が必要だ。
周囲をなぎ倒すような攻撃に、受験生は一人二人と気絶していた。
「うわあああ!!!」
「目と耳塞げ!!」
そして厄介なのが最もポイントの高い3P。
サイズは2tトラック程度で、2P敵を4体並べても大きさは3P敵の方が大きい。
動きは遅いが装甲は厚くハンドガン程度の弾丸であれば弾いてしまい、さらにミサイルまで搭載している。
ミサイルといっても本物のような威力はなく近距離で爆発してもミンチになるような悲惨な結果は出ないが、当たれば強烈な音と光が炸裂し、平衡感覚をやられ、失神する。
「助かった!」
「よし、立てるね」
私は棒立ちの受験生に向かったミサイルをアサルトライフルで迎撃し、空中で撃墜させた。
へたり込んでいた受験生は見たところ大きな怪我もなく、言いつけ通り目と耳をふさいでいたため、平衡感覚も失っていないので試験は続けられるだろう。
私?
念のために持ち込んだ耳栓が役に立った。
備えあれば患いなしだな。
3P敵は飛び道具を使いさらに、耐久力もあるため、3Pに挑んだ受験生はことごとく尻尾を巻いて逃げるか、運悪くミサイルに巻き込まれて失神に追い込まれていた。
私はミサイルに成すすべなくしている他の受験生を助けつつ、パンツァーファウストなど対戦車装備で確実に破壊していった。
対戦車装備が必要な仮想敵を用意するとは、やはり雄英、常識を超えてくる。
3Pは難しいと判断した受験生は早々に標的を1P、2Pの敵に切り替え、この場にいる3Pはほぼ私が仕留めていた。
一瞬時計を確認すると残り時間はあまりない。
試験も終わりに近づき、新たに出てくる仮想敵の数も少なくなっている。
仮想敵がどれほど出るのか知らされていないが、未だに
てっきり1Pよりも弱い敵がうじゃうじゃと数だけ集まって邪魔してくるかと思ったが、少なくともそうではないようだ。
試験時間が迫る中、お邪魔ギミックが運よくこの場には集まってこなかったと考えるのは楽観的だろう。
私の点数は現在、43P。
かなり点数は取れたと思うが、この広い市街地で他の受験生のところにどれほど仮想敵が集まっているのか把握する手段はない。
残り時間最後まで1Pでも多く稼がなければならないだろう。
「おい、あれ!!」
「逃げろおおお!!!!!!」
「嘘だろ、何だよあのでかさ」
受験生たちは叫び声をあげながらパニック映画さながら一目散に敵が現れた方向とは逆に駆け出す。
市街地の最奥、その地面から地響きと共に現れたのは『0P』だった。
「流石国立。持ってる予算が違うな!!」
悪態を付きながら、私も一旦後退する。
土壇場で登場した『0P』とペイントされた仮想敵は5階建てのビル相当の大きさの巨大なロボットだった。
これを試験会場ごとに用意するなど途方もないお金が掛かっているなと一瞬現実逃避をしてしまうほどだ。
受験生たちは我先にと押しつぶされないよう逃げて行った。
しかし、まだ失神して壁際に寄せられている受験生もいる。
「確かにお邪魔虫だけど、無視はできないよなあ」
倒しても0P。
メリットはない。
むしろ対処を考える間に他の敵を探す方が良いくらいだ。
けど時間と距離を考えるとギリギリだが、あのくらいの大きさで、3P程度の強度であると仮定すればできないことは無い。
幸い、要救助者たる気絶組は私がいる最後尾からまだ0Pより離れている。
私の目の前には足を引きずるように歩く男子生徒に肩を貸す金髪の男子がいるところまで後退する。
「ビリビリ君」
確かこの金髪、放電して仮想敵を倒していたはずだ。
派手な音がしていたから自然と目には入っていた。
「上鳴だ!!」
ビリビリ放電マンは上鳴という名前らしいが、今は二の次だ。
「アレから逃げるより、倒す方が良い。手伝って」
「はあああ???無理無理無理!見て、あの大きさ!!分かる????」
有り得ないと言わんばかりに必死に首を振る。
試験公認のお邪魔ギミックだ。
逃げても良いが、倒す利点はほぼない。
行動点みたいなのをくれればいいが、この実技試験の採点基準は敵ロボットを倒すこと以外に明かされていない。わざわざ点数のない敵を倒すというのはリスクのある選択だ。
「俺は置いて行ってくれ」
肩を貸されていた男子は力なくつぶやいた。
まあ、言うまでもなくこの状況は絶望的だろう。
「大丈夫、ビル一つ倒壊させるより簡単だよ」
私は倒されて転がっていた3P、2Pの残骸に触れて転化させていく。
「先には気絶している受験生がまだいる。全員を抱えて逃げるのは不可能なら倒すしかない」
残念ながら、私はそんなマッチョな力持ちではない。
けれど足止め以上のことはできる個性を持っている。
破壊した3Pの車体をベースに簡易戦車砲を作り変える。
操縦部分は省略し、砲弾の発射レバーを外付け、さらに元からあったミサイルの発射機構を復活させ、銃弾は私特製の特別仕様弾に切り替えた。
「放電できたよね。できるだけ最大電力でよろしく」
戦車砲に繋がる二本の銅線を渡す。
迫りくる0P。
逃げる先には気絶している受験生。
考える時間はない。
「っしゃおら、よく分からんがやってやらああああああ」
それらを見比べて覚悟を決めた上鳴君が電極を掴むと、放電が始まりみるみる発射に必要な電力が溜まっていく。無事だったバッテリーからも電力は供給されているが、それでも供給量は十分だ。
0Pはもう私の射程圏内に入っている。
的が大きい分、当たり所は多い。
足元は全体を支えるため、二本の巨大なキャタピラとタイヤで頑丈に設計してあるようで、少々ダメージを与えたところでバランスを崩して倒れることはなさそうだ。
狙うは正面、ロボットの胸部。
「目と耳塞いで、口空けて」
「おう!!ぶちかませ!!」
「うぇ~~い」
最寄りの二人が耳と目を塞いでいるのを確認すると、私は片耳を抑えるようにしながらレバーを引いた。
「発射!!」
爆音とともに発射された122㎜の砲弾はまっすぐ0Pまで飛んでいくと、腹部の装甲にめり込んだ。
だが貫通するほどの威力はない。
巨大な体がぐらりとするが、すぐに元の体勢に立ち直る。
「くそっ、ダメか」
「いや、大丈夫だ」
私の言葉のとおり、ロボットはその場で足を止めた。
供給してもらった電力が多かったので、貫通性を下げ、着弾した瞬間に高圧電流が流れるようになっている。
いかに頑丈かつ巨大と言ってもロボット。
回路をショートさせてしまえば動かない。
グラグラと不安定にロボットは揺れている。
「ダメ押しするか」
地面に転がっていた2Pを弾に変える、先ほど位の簡易戦車砲に再装填する。
角度をさきほどよりやや仰角に修正し、胸部を狙う
「ぶちかませ!!」
「ウエイ!!」
二人の声援を受け、レバーを引く。
直後に轟音。
着弾と共に胸部が爆発し、胸部に風穴を空ける。お邪魔ギミックはその場で完全に停止した。
「………マジで倒しやがった」
「うえ~い、うえい!」
マッチョの方は、ハハッ呆然と乾いた笑いを浮かべている。
私は倒せる見込みが十分あると思っていたが、どうやらこの瞬間まで半信半疑どころか無駄な足掻きだと思われていたのだろうか。
ビリビリ君の方はいいね、いいねと言わんばかりに親指を立てた手を私に向かって突き出す。
『試験終了~~~~~!!』
プレゼントマイクの声が響き渡った。
最後に0Pの対応をした分、ポイント稼ぎ損ねたのがどう影響するかが気になるが、手ごたえとしては悪くない。
「あー、耳が変な感じ」
「一時的なものだとは思うけど、念のために診てもらって」
マッチョ君は耳を引っ張ったり、塞いだりして感覚を確かめている。
戦車砲の大音量に一時的に鼓膜が緊張しているのだろう。
二人は単に耳を塞いだだけなので、爆音を完全に防ぎきれたわけではない。
音量は通常の戦車砲と比べれば大したことないが、救護班がいるだろうから、マッチョ君は負傷した足と合わせて診てもらえるだろう。
「ところでさっきから『うえーい』としか言ってないコイツ大丈夫か?」
「さあ?個性使いすぎるとアホになるとか?」
「うえ~い、うえ~い」
………雄英ならば、個性の使い過ぎでアホになった頭も治せるのだろうか。
こうして私の実技試験は終了した。
作品タイトルは『その引鉄の軽重を問う』
『right』と『light』は入れ替え。
グーグル翻訳かけただけたなんちゃってイングリッシュ
主人公については、次で語ります。