Ask the right weight of the trigger 作:鯛の御頭
オールマイトが教員になったことで、連日学校にはマスコミが押しかけている。
まあそれでちょっとした騒ぎもあったんだけど、とりあえず学校生活はちょっとずつ慣れてきた。
部活には入ってはいないが、最近は学校地下にある特設射撃場でスナイプ先生考案の射撃コースをめぐっている。
全66面。遠距離攻撃系とか飛び道具系の個性の人たちが主に使用できる。ちなみに実弾は使用禁止。主にペイント弾やゴム弾を使用している。
クリアしたらスナイプ先生と射撃勝負できるという噂だがだが、私は今半分クリアした。
先輩に聞くと、随分と攻略速度は速いらしい。
やったね。
あと変わったことと言えば、クラス委員が決まったくらいか。
女子は八百万百ちゃん、男子は飯田君。
妥当な人選だった。
当初は緑谷君が選ばれていたが、なんやかんやあって飯田君に譲った。
ちなみに私は八百万ちゃんに投票したので大いに満足だ。
そして今日のヒーロー基礎学は
コスチュームの着用は自由という事だったが、私は着替えていくことにした。
基本、手持ちがなにもない状況は好ましくない。
救助なら、ワイヤー銃作ったり、閃光弾打ち上げたりすることもできるから、戦闘向きの個性ではあるが、救助も想定してはある。
雄英の敷地は広大なので、移動は小型バスだった。
委員長になった飯田君が無駄に張り切っていたが、バスの前半分は横並びの割と自由な感じの設計だったため、出席順に奥から並べ―と言っていたのが無駄になった。
体格良い生徒もいるから、普通の二人掛けの椅子だと不便だろうから、長椅子タイプが置かれているんだろう。
「私、なんでも思ったこと言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ、はい!!蛙水さん」
「梅雨ちゃんと呼んで」
私の向かいに座った蛙水ちゃんが、緑谷君に話しかけた。
「貴方の個性、オールマイトに似ている」
「そそそそっそ、そ~かな。でも、僕はその」
緑谷君はなんか慌ててる。
そりゃ、オールマイトと似てるなんて言われたら照れるか焦るよな。
「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねえぞ。似て非なるアレだぜ」
切島君、いきなり梅雨ちゃん呼びとか手馴れている。
それより、まあ、言いたいことは分からんでもない。
緑谷君はオールマイトファンだと公言していたので、掛け声が一緒でも気にはしない。
個性は慣れてないと言う感じがしっくりくる。
使うたびに骨折とかとんだ博打個性で、今のままでは実践では長時間の任務は無理だろう。
「しっかし増強型のシンプルな個性はいいな!派手でできることが多い!
俺の“硬化”は対人じゃ強いけど、如何せん地味なんだよなー」
「僕は凄くカッコいいと思うよ。プロでも十分通用する個性だよ」
「プロなー。しかしやっぱプロヒーローは人気商売みたいなところがあるぜ」
確かにヒーローのランキング付けは事件解決数だけじゃなくて、支持率も影響している。
某万年2位のヒーローは事件解決数で言えば、オールマイトを上回っているが、如何せん支持率が低い。
主に顔が怖いのが原因か、塩対応が原因かなんて分析しているヒーローファンもいたが、仕事一貫な姿勢がコアなファンを呼んでいるのも確かだ。
「派手で強ええっつったら爆豪と轟だな」
「種子島ちゃんもよね?入試の0P、倒したんでしょ」
梅雨ちゃん、どこからその話聞いたんだ。
「まあね。壊すだけで良いから困りはしなかったかな」
ついでに試験終盤で出てきたから、材料にも困らなかった。
「マジ?」
「上鳴までなんで驚いているのさ」
同じ会場で試験を受けていたはずの上鳴が驚いていた。
「いや、半分ぐらい夢だったかと」
「確かに電圧掛かりすぎてアホになってからね」
ウエーイ、ウエイ、ウエイ、しかしゃべららないアホになっていたから、記憶があいまいらしい。
上鳴は一気に高出力を放ったり、長時間個性を使いすぎると一時的にアホになるらしい。
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそう」
「それな」
梅雨ちゃんに完全同意だわ。
申告通り思ったことを本当にすぐ口に出しちゃうらしい。
「んだと、出すわコラ!!」
「この付き合いの浅さでクソを下水で煮込んだような性格だって認識されている方がすげーよ」
上鳴、上手い事言った。
「上鳴、座布団」
「あざーす」
上鳴と小さくハイタッチすれば、爆豪君は椅子から立ち上って殴りに来そうな切れっぷりだ。
「てめーのボキャブラリーは何だコラ!!殺すぞ!!」
爆豪君の殺すって、見た目はまあまあ怖いけど殺気を伴わないから何ともチンピラ感が漂う。
殺す、殺すと言う割に訓練以外で暴力には出てこないし、人の弱みを握ってねちっこく人を追い詰めるような恐怖感もない。
うん、どこをどう見てもヒーローじゃなくてヤンキーかチンピラだね。
そうこう話をしているうちに、会場に到着した。
嘘と事故の災害ルーム。通称:USJ
大阪にあるテーマパークに怒られそうな名前だが、内臓がひっくり返るようなジェットコースターや派手な映像アトラクションとは違い、マジで燃えているビル群に土砂と瓦礫が散乱する地帯、暴風吹き荒れるドームなど人工的に作り出した災害がこの施設にまとめられている。
規模だけは本家というか、テーマパークにも引けを取らないのではないか。行ったことないけど。
「はじめまして、みなさん」
会場には先に今日相澤先生と共に活動する先生が到着していた。
「スペースヒーロー『13号』災害救助で目覚ましい活動をしているスペースヒーロー」
「わー!!私好きなの、13号!」
緑谷君と麗日さんが目を輝かせていいる。
船外活動用の宇宙服っぽいコスチュームで、素顔不明のプロヒーロー。
とある事情で素顔も知っているので、入学してからは一度挨拶に行ったが、ちゃんと先生しているのにちょっと感動した。
「始まる前に、小言とを一つ、二つ、三つ…」
増えてるよ、おい。
「皆さんご存知だと思いますが、僕の個性は“ブラックホール”
どんなものでも吸い込んでしまいます」
「その個性でどんな災害からも救助していますよね」
緑谷君の説明に麗日さんが首を大きく縦に振っている。
ロックバンドのヘドバン並みの速度に残像が見える。
「しかし、人を簡単に殺せる個性です。皆さんの仲にもそう言った個性がいる人はいるでしょう」
確実に今、13号と視線が合った。
ヘルメット越しで視線は分からないはずだけど、そんな感じがした。
13号の言葉は、何十、何百回と言われてきた言葉だ。
超人社会は個性を資格化し、厳しく制限することで、一件成り立っているように見える。
しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる “いきすぎた個性”を個々が持っている。
「この授業では心機一転!人命のために個性をどう使うか学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」
なんか、ちゃんと13号から個性について聞いたのは初めてだったな。
パチパチとクラスメイトから拍手が広がる。
拍手をしながらちらりともう一人の先生、相澤先生をみると、なぜか中央の噴水を見ている。
釣られるようにそちらをみれば、なんか黒いもやもやが空中に渦巻いていた。
なにあれ?
あれも設備の一つなのか?てか、あんなのあったか?
「一かたまりにになって動くな!!」
相澤先生が大声で叫ぶ。
「13号生徒を守れ!」
黒い靄のなかから現れたのは人だった。
私は、すぐさまジャケットのポケットに手を入れ、鉄板1枚、強化プラスチック板1枚をグロッグ18に【転化】させ、ゴム板を弾に変化させ、弾倉に詰め込む。
「なんだ、アリャ。入試の時みたいに始まっていたパターン?」
切島がこれも訓練の一環と思っているが、相澤先生が一蹴する。
「動くな!!あれは
現れたのは一人、二人ではない。
目視で確認できるだけでも20人はいる。
見た目は小悪党。その辺のチンピラをお金で雇ったのだろう。
背筋が凍るような寒気もしなければ、呼吸が止まりそうな殺気もない。
持っている武器もその辺のホームセンターで出に入りそうなナイフやバットであり、銃器の類は見かけない
「
切島君が叫ぶが残念ながら、単なるアホで済まなそうだ。
大半はチンピラに見えるがあの黒くて、脳みそむき出しの奴はヤバイ。
「先生!侵入者用のセンサーは?」
「もちろんありますが…」
八百万さんが、13号に確認するが、結局鳴っていないとなれば、無効化されているが、なにかだろう。
「現れたのがここだけか、学校全体か。センサーが反応しないなら、無効にそういうことができる個性持ちがいるってことだ。校舎と離れた隔離空間に少人数がいるところを狙ってきた。馬鹿だがアホじゃねえ。なんらかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ。」
轟君が冷静に状況を分析する。
「13号避難開始!学校に連絡試せ。センサー対策も頭にある
「ッス!」
先生はそう言うと、一人
緑谷君がいくら先生でも多人数は!!と声を掛けたが、先生は捕縛布を使って人同士をぶつけたり、個性を消したりして、多数を相手取っている。
相澤先生は抹消ヒーロー:イレイザーヘッド。
瞬きせずに見た
目を酷使するなら、あまり長時間の戦闘には向かないタイプだ。
異形系相手だと無意味な個性だが、そこはキャリアと技術で補っている。
戦闘の状況は気になる所ではあるが、足手まといなのは私たちだ。
逃げることに意識を集中させると、目の前には黒い渦が宙に浮いていた。
「初めまして。我々は
黒い靄の中で目らしきものがにやりと上を向いた。
「僭越ながらヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えていただきたいとおもいまして」
だが、こんなに簡単に目的を話すか?
本来だったら、オールマイトもこの時間は授業に参加しているはずだった。
「その前に俺たちにやられるってことは考えてなかったか!!」
切島君と爆豪君がそれぞれ黒い霧に殴り掛かる。
この黒い霧、喋るってことはこれも個性の一部なのか。
「危ない危ない。そう……生徒とはいえ優秀な金の卵」
「ダメだ。どきなさい二人とも!!」
13号先生の制止も意味なく、私たちは黒い霧に呑まれた。