Ask the right weight of the trigger   作:鯛の御頭

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6.個性とは

「……教師陣がこれだけ集まれるっていうことは学校全体に仕掛けてきたことじゃなさそうだ」

 

轟君が教師の顔ぶれを見ながら、肩の息を抜いた。

チンピラは残っているだろうが、主犯は撤退したとみて私は銃の安全装置をかけた。

そういえば、緑谷君はどうなったのだろうと突っ込んでいった方向をみるといつの間にかセメントの壁ができていた。

 

「緑谷とオールマイトはリカバリーガールの所に先生たちが運ぶらしい」

 

真っ先に緑谷君を助けに行った切島君が教えてくれた。

ネズミ校長が生徒諸君は入り口まで集まるように声を掛けたので移動する。

 

「やれやれだぜ。オールマイトはやっぱりすげえな」

 

切島君は場を和ますというより、無理やり空気を明るい方向へ変えようとしていた。

 

「そうだね。すごかった」

 

あれほどの力。

オールマイトのような人に授けられた個性で良かった。

そうでなければ、こうも平和を享受できていない。

 

「種子島はどこに飛ばされたんだ?」

「尾白君と一緒に火災ゾーンに飛ばされたよ。紐なしバンジーは二度とやりたくないね」

「紐なしバンジー?」

 

切島君は得心が行かないと首を傾げた。

 

「え、空中に放り出されなかった?ビル5階分ぐらいの高さだったけど」

「普通に爆豪と一緒に屋上に落とされたぞ?」

 

なんだその安全な取り扱い。

人数が多くて雑なのと丁寧なのがあったのか、随分扱に差がある。

一歩間違えれば私はあの段階で死んでいた。

 

「轟君は?」

「土砂エリアの上の方に落とされたが、着地で怪我する高さはなかった。あと位置もチンピラ連中からみて俺たちの方が高い位置だったから、細かくは調整できなかったみたいだな」

 

高低差のあるフィールドでは、一般的に高所の方が有利とされる。

しかも土砂エリアなら崩れやすい設計になっているだろうし、下にいる方が土砂崩れに巻き込まれやすい。

人数が人数だからワープさせるにしても、そこまで細かく考える時間もなかったのかもしれない。

 

「黒モヤは一度に20人以上をワープさせる個性だった。けど、私たちの個性までは下調べができてなかった。細かな調整は人数次第って言う所かな」

 

私の落とし方はともかく、水難ゾーンや大雨暴風ゾーンに落とさなかったのがその証拠だ。

爆豪君にしても、同じだろう。

一人に集中すれば、脳みそ野郎をバックドロップの瞬間に上半身だけ起用にワープさせることも可能なようだ。

 

 

そうこう話しながら入り口まで行くと、麗日さんや瀬呂君ほかクラスメイト多数が既に集まっていた。

話を聞くと何人かは飛ばされずにここにいたらしい。

わざわざ出入口近く残しておくとはお粗末と言うべきか、ご丁寧と言うべきか。

それとも20人一気にワープは無理だったのか?

確か黒霧と呼ばれていたが、登録はされた個性なのだろうか。

本名かどうかも怪しいが、捜査は警察預かりだろう。

 

生徒で一番重症なのは緑谷君。

最後、黒モヤとハンドマンの所に突っ込んでいったときに足に力を籠めすぎて両足骨折したらしい。

考えなしなのか、無鉄砲と言うか、力はあるのに使い方が非常に勿体ない。

背中ボロボロの13号は個性を使った瞬間に黒モヤに吸い込み口を転移させられて自分の背中を吸い込んでチリにしかけたらしい。

裂傷はあるが、意識はあって数日もすればヒーローとして活動再開できるようなものらしい。

オールマイトについては、ボロボロだったがリカバリーガールの処置範囲内とのことだ。

そして一番重症なのは、相澤先生。

眼底骨折、右腕も脳みそ野郎に小枝のように握りつぶされていたようで、応急処置ののち病院に搬送された。

 

 

その後、一旦着替えて教室に戻り、順に事情聴取となった。

私が聴取を終えて教室に戻るころには、すでに全員の聴取が終わったようで、その後の指示を待っているところだった。

たぶん、この後の授業は休講で、明日は授業がない可能性もある。

一般生徒にも話が伝わっているのか、廊下を歩いてきた中ではどこの教室も落ち着かない雰囲気だった。

 

「事情聴取長かったな」

 

後ろの席の轟くんに話し掛けられた。

 

「色々気になる発言があったって言ったら長引いたよ」

 

あと主犯の会話で気になったところについてかなり掘り下げられた。

主犯の名前だとか、脳無ついて改造された(・・・)だとか、犯行の稚拙さに対してオールマイトに匹敵するパワーを持つ個人を作り上げると言う組織的な犯行のちぐはぐさが浮き彫りになった。

ただ、私の担当さんも一緒だったから、警察もそんなに深くは聞いてこなかったので、思ったより早く解放されたと思ったが、他の人と比べると長かったようだ。

 

「お疲れ。そういえば、種子島、アレなんだったんだ?」

「ん?」

 

ちょい離れた席から尾白君が離れてきた。

そういえば、オールマイト助ける時に忘れていたけど、無事だったみたいだ。

 

「あれでSOS送ったから、校長室に連絡行ってオールマイトが来たんだろ」

「そうだ!狙撃女子!!俺が学校に向かっている途中に遭遇したオールマイトは既に緊急事態だと知っていたが関係あるのか?」

 

どうにか敵の隙を突いて会場から抜け出した飯田君が学校側に報告に走っていたが、血相を変えたオールマイトが走ってきていたという。

 

「あー、アレね。ちょい事情があって持ってるものだよ」

「敵による妨害電波をものとはしないとは、よほど高度な製品なのか。そんなものを携帯していたとは、随分と防犯にしてはレベルが高いが………!!

狙撃女子、君はまさか“指定”を受けているのか!?」

 

飯田君の“指定”の言葉に何人かが反応した。

あれだけの情報でたどり着くのはいかにも勉強もできる優等生な見た目通りだがもう少し考えては欲しかった。

 

「飯田君、君の実直なのは美点だが濁した時点で察してほしかったな」

「あ、いや。すまん」

「まあ、別にどっかで言う機会はほしかったから、話すけど」

 

首に下げていたチェーンを指に引っ掛けて服の上に出す。

担当さんが来ていたので、GPS端末自体は既に新しいものに取り換えは終わっている。

使い捨てじゃなくて、1回信号が出た以上、解析されないように新しい信号にコードを変えるらしい。

これまた安全上の理解はできるが、手間が掛かっている。

 

「指定って、なんの指定だ?」

 

察しが悪いのか、上鳴は首を傾げている。

ちなみに私の左隣に座っている峰田もだ。

 

「おい、ヒーロー科。受験終わったら脳みそにスポンジでも詰めてんのか」

「ウェイ」

 

上鳴はアホのフリをして誤魔化した。

 

「“指定個性”って聞き覚えない?」

 

その言葉でようやく理解したのか、上鳴は居心地の悪そうな顔をした。

他にも神妙な顔つきをしているクラスメイトが多い。

 

「殺傷性が著しい、もしくは広域な被害が甚大と予想される個性のことか」

「個性を持っている人の中でもごく少数、潜在的な個性を含めても100万人に1人の個性ですわ」

 

轟君と八百万ちゃん、推薦組二人が答えてくれた。

 

「正解。認定数は4月現在で89人。1級指定15人、2級指定74人。現状、全人口で見れば100万人に1人より少ないよ。てか、今運用上は個性というより、個人単位だけどね」

 

指定個性とは通称であり、正式には『特定指定個性対策法』という。

 

「二人の言ったとおり指定の定義としては、個性の殺傷性が著しく高く、人命に影響がある個性。もしくは広域に多大なる被害をもたらす可能性が高い個性だね。私の場合は材料さえそろえば証拠も残らないし、あといろいろな事情も加味されて指定されているよ」

 

私の個性『銃&弾』はその指定個性の一つだ。

物体の重さが200g以内のものは銃弾に、それ以上の重さのものならば銃か弾は選んで転化させることができる。

液体であっても容器に入っていれば弾として転化でき、一度転化したものは銃でも弾でも物体を混ぜ合わせないかぎり元に戻すことができる。

例えば鉄材と木材を転化させて1丁の銃を作ったら元に戻せないが、鉄パイプだけで転化させて銃にすれば、元の鉄パイプに戻すこともできる。

そういう意味で証拠は残らない。

一度転化させた材料を調べたところで銃器に変化したという結果は今の科学では計測できない。

 

「例えば爆豪君のような爆発系の個性でも、個性を使ってコンクリートに風穴開ける程度じゃあ指定は受けない。もしこれが仮に、グラウンドβだとかUSJを粉塵に変えるような規模の爆発を1回で起こせるなら指定は免れないだろうね」

「それ、爆弾じゃなくて個性?」

 

峰田が顔を青くしている。

 

「個性だよ。山一つ吹き飛ばすとか、10m級の津波を引き起こすとか、上空1万メートルを飛行するジェット機を地上から小石一つで撃墜させるとか、そういう地図を書き換えるようなデタラメな個性をもつ人は日本だけでも両手じゃ収まらないんだよ」

 

ちなみに13号の持つ『ブラックホール』も指定個性だ。

そういう意味ではオールマイトも指定されても不思議ではない個性ではあるが、彼の場合は小中学校での一斉個性カウンセリングで見逃されたのか、導入以前だったのか、今までの功績があってからか、指定されているという話は聞いていない。

まあ、指定個性と言っても公表されているのは指定の人数だけで、どのような個性が指定されているのかという事は噂話程度でしかしらない。。

 

「種子島も?」

 

峰田が更に顔を青くした。頭の形もあって、気色の悪いブドウのようだ。

 

「私の場合、作り出すのが銃と銃弾だから、殺傷性持たせて許可なく使えば銃刀法違反で豚箱行きだよ。指定を受けたら数か月に一度の国の担当官との面会と継続的な個性の訓練の義務がある。反面、個性の制御に関して日常生活にかかる負担については国から補助が受けられる。ちなみに個性の発動・制御訓練に関わる材料なんかは国からの補助が出ているし、訓練場の使用も無償」

 

事情聴取に担当官がついたのはそのためでもあった。

指定個性と言うだけで不当な取り扱いはされていないか、個性の使用は適切だったのか、調査の名目もある。

 

「じゃあ外部に連絡できたのは?」

 

今度は緑谷君が質問してきた。

そういえば、両足骨折していたみたいだがリカバリーガールに治して戻ってきたらしい。

 

「10年位前に某国で強力な個性を持つ者を誘拐してテロリストに仕立て上げたっていう事件は覚えてない?」

 

多分まだ小学校ぐらいで、私が指定を受ける前のことだ。

宗教戦争とか国内部の権力争いとか支援する第三国の代理戦争とか複雑な事情が絡まった某国で、触った物体を爆弾に変えると言う個性をもつ少年が某国と敵対する国で大規模テロを起こして世界的なニュースになった。

被害者の数は個性犯罪の中でも飛びぬけており、個性の資格化と使用制限が世界的に一層厳しくなった。

しかもその少年は一般家庭のごく普通の少年だったが、特異的な個性のせいで誘拐され、少年兵として仕立てられたらしい。

そういった背景もあって、各国ではあまりにも強大な個性を持つ場合、一定の措置を取る事も止む無しとされた。

 

「個人が強力な武力を持ことは、国家の脅威と見なされる。日本での法の審議当時、個性関連の法案じゃなくてテロ対策の関連法案に定められるべきだと主張する政治家もいたらしいよ」

 

まあ、テロの危険だけじゃなくて日本で言う所の指定個性を持つ人物を軍人とさせて、戦争の抑止力にしている国だってあるし、戦時特務尉官として戦争時徴用できるように契約している国だってある。

 

「つまりGPSで常に監視されているってこと?」

「これは任意。ただ断る人は少ないそうだよ。実際、指定されていることが外部に分かって、国内外の犯罪組織が誘拐を企てたケースなんていうのも珍しいことじゃない。GPSも常時起動させておいてもいいし、自分でオンオフできるからあくまで保険だね」

 

指定自体されていること自体が危険性を増すし、色々な蔑視もあることにはあるがが、受けられる恩恵も大きい。

影響力が広域的な個性であれば、どうしたって個性の制御や訓練にはある程度の広さと機密性が必要になる。

個人単位でそれを用意することはまず難しく、国指定の訓練所で制御と自分の限界を知ることができる。

調査されているとも同義ではあるが。

 

「怖い?」

 

緑谷君は自分の握りしめた手を見ていた。

超パワーの持ち主なら思うところがあるのかもしれない。

 

「えっと、いや、その……」

 

緑谷君は慌てて首と手を横に振った。

 

「なんか、あんまり種子島さんがそんな風に思えなくて……」

 

まあ、まだ最大火力は見せていないからかな。

 

「そっか。まあ、フレンドリーファイアなんて寝覚めが悪いから、精々射線には入らないでね」

 

私の個性はあくまで作るのは銃と弾だけで、射撃の腕は自前になる。

どの個性も使い方を間違えてはいけないけれど、その中でも私の場合は命に左右する。

緑谷君が最後、オールマイトと敵の間に入り込んだ時に撃つかどうか躊躇ってしまった。

人に対して使うことにもう少し慣れなければいけないと、また担当官への相談事項が増えた。

 

 




以前、あとがきでアンナの個性について300g以下を弾にとしていましたが、200g以下に修正しました。

もう一本書いている作品は、1話あたり1万字が平均なのですが、5000字ぐらいで区切ると沢山書いた気になりますね。
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