『彼らの第五次聖杯戦争は終わらない』を読んでくれていた方もぜひ楽しんでください。
「さらばだ藤丸立香。マシュ・キリエライト。お前たちの探索は、ここで結末を迎える!」
人間ではない。人類を滅ぼす獣が玉座にて告げる。
「いいえ、お任せください」
少女は自らの主人に向かってそう言い、護る為に前へと進んだ。
「ではお見せしよう。貴様等の旅の終わり。この星をやり直す、人類史の終焉。我が大業成就の瞬間を!第三宝具、展開。 誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの。
――さぁ、芥のように燃え尽きよ!
『
魔神王、ゲーティア。彼はその圧倒的な力を行使する。迎え撃つは盾を持つ少女。
誰が見ても理解できる。あの光には敵わないのだと。
しかし少女は盾を構える。
少女の強い意志がそこにはあった。
「……でも、ちょっと悔しいです。わたしは、守られてばかりだったから――最後に一度ぐらいは、先輩のお役に、立ちたかった」
最後に見せたのは笑顔。かつてフランスの地でとある音楽家に言われた『別れの時は笑顔が一番だと』。だから最後の最後まで彼女は自らの主に笑顔を向けていた。
少年の視界は光に包まれる。
「――――終わりだ。予想通りの結末だったな」
彼女が負けた理由。それは『マシュ・キリエライトはただの女の子だった』。それだけだ。
「――――――マシュ……!!」
残っていたのは盾。持ち主のいなくなった盾のみがその場に残されている。
「守られてばっかりだったのは俺じゃないか………」
「第三宝具、再装填。諸共に死ぬがいい。ああ、最後に殴りかかるくらいは許そう。貴様の気持ちは理解できる。マシュ・キリエライト弔いだ。その貧弱な人の拳で、我が体に触れて死ね」
言われるまでもない。少年はそのつもりだった。
「上等だ――――!」
知っている。無駄だってことは、勝てないってことは。でも抑えられなかった。自らの怒りを抑制できなかった。
ここで誰かが止めてくれたのなら、踏みとどまれたのかもしれない。
だがそんな都合のいいことはない。
少年の拳は魔神王に触れる。全力の一撃。
「――――!」
「無力、実に無力だ。貴様という命はここで潰える。今度こそさらばだ、藤丸立香。人類最後のマスターよ」
人の力で敵うわけもなく、傷一つつけられない。
少年の命はそこで途絶えた。
足りなかったのだ。数々の英霊と縁を結んだ彼にはあと一人、たったあと一人足りなかった。
――――ノイズが走る。
***
「―――なに?」
夜空の色に染まった、広い真球の部屋。その中央に浮かぶ異様な木製の椅子。そこに座る男が一人。 男の前には本が浮いている。手をかざすと本のページはひとりでにめくれ始めた。
とあるページで動きは止まった。
「これは…」
想定外。まずこうなることを男は予想していなかった。
「なぜ変化が起きた? この軸の聖杯戦争は終わり確定したはずだ。それに…他の軸からだと?」
男は考える。
「どうしたものか。この世界には一度干渉しているが、今回のこれは…儂が干渉することもできんな。こちら側にも影響を与えるとはなかなか…」
どうしようもない。男は世界との接触すら許されていない。ただ観測するだけ、部外者でいるしかない。ここで無理やり世界に乱入すれば二つの軸が滅ぶ。男はそれを理解していた。
「それにしても…」
男―――カレイドスコープ、真の名を魔道元師キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。彼はその目で世界の行く末を見守ることにした。
***
理想郷。かの王が死後にたどり着いたとされる夢の場所。
「よりにもよって彼がいるそこか…」
そこにそびえ立つ塔。周辺には美しい花々が咲き誇っている。
「なんで引っ張られたのかはわからないけど、これも運命ってやつなのかな」
魔術師は塔に幽閉されている。そのため誰にも自分の声は聞こえないと知っているが、無意識に独り言をつぶやく。もう癖なのでそれはどうしようもないことだった。
「―――おかしい…。阻害されている?あれはそんなことまで可能なのか。流石は――」
彼はその世界に行くことはできない。見ることはできても辿り着けない。
「これは獣とは違う。成れの果て。あの王の目もあそこじゃ役に立たないな。まあ、元からか。―――さて、どうしたものか。最悪あそこにいる全員が……それは困るな。立香君に死んでもらってはあの世界も私も困る」
魔術師は天井を見上げる。
「…あの少年とあった時、君はどうするのかな。別の道を選んだアルトリア。ボクはそれを見届けるよ」
楽園の端。花の魔術師はその世界の結末を見届ける。
***
なんだここは、どこなんだ。
知らない。こんなところは知らない。
何故光がない。一面が闇に包まれている。
いやだ。うるさい。黙れ。耳元で騒ぐな。干渉してくるな。邪魔だ。
なんでこんなところにいるんだ。いや、待て。そもそも―――、
「俺は誰だ?」
頭痛がした。鈍器で殴られたかのような強い衝撃。それで思い出した。
―――ああ、そうか。そうだった。俺はあそこから…。
「情報量が多すぎるせいか、記憶が飛んでたのか。大分時間がかかったようだな。どれ程時が経ったのか確認しなければ」
彼らは先のことを考えていなかった。向こう側に行きつくことしか考えず、向こうには何がいるのかのことは頭にすらなかった。
故に彼は門を抜けてきた。
英雄でも人間でもない。
そして獣ですらない。
それが彼、何もない場所にいた虚無なる者。