そんなわけで今回は睡魔と戦いつつ書いたので文章がむちゃくちゃかもしれませんが、ご了承ください。
「…どうやら見た目通り耳がないらしい」
応答がないことによって大して良くもなかったギルガメッシュの機嫌がさらに悪くなった。
「――英雄王ギルガメッシュ。お前は俺の中にいないな」
人型をした『影』は立ち上がる。
立香もその影の姿を視認した。
体は一面黒。顔も同様に黒。顔の細かいパーツがない。目のあたりが薄っすらと光っているだけだ。
「藤丸くん。まだ攻撃させないで」
凛の言葉に立香はうなずく。
「王様、攻撃しないでくださいね」
「――――」
無言ではあるが理解はしているようだ。特に彼が動く様子はない。
それを確認した凛が影へと視線を向けた。
「聞きたいことは色々あるんだけど、まず確認としておくわ。あなたがバーサーカーを召喚したってことでいいのかしら?」
「召喚…召喚か…。まあ、その認識でいいんじゃないか?」
なんとも曖昧な返事だった。
「それじゃあ黒幕はあなた? 藤丸君たちがここに来たのもあなたが理由?」
「そいつらがここに来た理由は俺も知らない。というか俺は偶然穴からここに漏れ出ただけだから黒幕だとか言われても困る」
「穴…?」
「――初対面で質問攻めというのは印象悪いぞ?」
聞き返すも聞きたい答えを聞くことはできずに、誤魔化されて終わった。
「それにな、そんなのはどうでもいいんだよ。お前たちにとって重要なのは…俺がいると間桐桜が死ぬってことだろうな」
「…あなたが桜が倒れた原因なのね」
「そうだな。それは正解だ。今もちょうど倒れてるだろうよ」
「………!」
「怖い顔するなよ。そういう役目だから仕方ないだろ。これでも制御はしてるんだ。あいつがあんな風になるのは夜だけだよ」
凛の瞳は鋭い。殺意すらあるだろう。けれど影は動じない。
「ふざけないで」
「ふざけてないぞ。むしろこっちだってお前ら魔術師に迷惑してるんだ。特に御三家。ふざけんなって言いたいね」
「……なんのこと?」
「お前らが根源の到達なんて意味のないことをやろうとしたせいで、俺がここに吐き出されたんだよ。…だから考えたんだ。お前らが俺に迷惑かけたなら俺がなにやっても別にいいよな?」
「――あなたが確実に私たちの敵だっていうことはわかったわ」
おそらくこの影はまともに会話をする気がない。
「して貴様は何者なのだ?」
「――――」
また無言だ。
これは不味い状況だと立香が思ったころにはすでに遅かった。
「――よほど死にたいらしい」
門が開かれる。その門から一本の剣の宝具が影の頭部に向けて射出された。
空を裂き、剣は進む。それを理解しているというのに影には足を動かす様子がなかった。
代わりに口を開いて、ある人物の名前を口にした。
「――ランスロット」
影から分離するように黒い鎧の騎士が出現した。その騎士は呼応するように雄叫びをあげ、空中でギルガメッシュの放った剣を掴む。
ランスロットの宝具、『
その欠陥のような模様が浮き上がった剣をランスロットはギルガメッシュへと投げつけた。
ランスロットの出現に目を細めるギルガメッシュだが、攻撃に対しての対処は当然行う。新たに武器を射出させ、剣を弾いた。
「ランスロット…」
地面に着地した鎧の騎士を見て立香が口にした。ヘラクレスの時と同様に黒い闇をまとっているが間違いなくバーサーカーのランスロットだ。
「ヘラクレスの時と同じだね。君は本当に何者なのかな? サーヴァントを体から出現させるなんてことをやっているのに何も感じない」
声を発したのはエルキドゥ。
理由は影に違和感を覚えたからだ。
エルキドゥは影から何も感じられなかった。彼の持つ気配感知は、精神を研ぎ澄ますものでなく、世界と一つになって違和感を炙り出すものだ。先ほどから影はそれに感知されない。つまり世界から違和感として捉えられていない。
「どうでもいいことだよ。どうせお前たちは理解できない」
「…確かにそうかもね。なら――『
大地を変形させ、武器を作り出し、射出する。彼が作り出した武器は宝具と同等のものである。
ランスロットは崖下にいる。上にいる主人を助けるのは難しい。
加えてエミヤオルタが発砲した。角度に差があるため、ランスロットがなんとか放たれた数本の剣を防御し切れたとしても、銃弾を防ぐのは不可能だ。
これで影を捉えた…はずだった。
「今ちょうど二人いないからお前が一番の頼りだよ――」
銃弾も剣も弾かれた。
名前を呼ばれずとも影の前に現れたサーヴァントによって。
「――セイバー」
セイバーと影に呼ばれたサーヴァント。
獅子の意匠の兜、白銀の甲冑を身にまとった騎士。
「アル…トリア…?」
立香はあの鎧を知っていた。多少デザインに差異はあるが、ランサーのアルトリアが着ていた鎧と同じものだ。
「確かに…似てるわね。でも…」
ジャンヌオルタはセイバーのサーヴァントを見て気になる点があった。
「ちょっと小っちゃくない?」
立香も思っていた。
白銀の騎士は身長が少し低い。というよりも体がランサーの彼女よりも全体的に小さい。セイバーのアルトリアとランサーのアルトリアの中間といったところだ。
「…胸が」
「あ、そっちなんだ」
どうやら立香とジャンヌの考えは微妙に食い違っていたらしい。
でも確かによく見てみれば鎧の胸部分が小さいようにも見える。
「――あんたらふざけてる場合じゃないぞ」
エミヤオルタに指摘された通りふざけている場合ではないのだ。
その理由はセイバーの持つ武器だ。
「あれは間違いなく聖剣だ」
エミヤでも投影不可の代物。複製の許されない聖剣。白銀の騎士が手にしているのは紛れもないエクスカリバーだ。
「成長を止めるはずのエクスカリバーを持ってるのに成長してる?」
聖槍を持つ彼女がエクスカリバーを持っているというのはおかしい。立香は本人から聞いたことがある。エクスカリバーの所有者は成長が止まるのだという。ランサーの彼女が成長しているのは聖剣を手放したから。
だが崖の上にいるアルトリアと同じ鎧を身に着けた騎士はセイバーのアルトリアより成長しているというのにエクスカリバーを所持している。
「考えるのは後にしたほうがいいかもね。尋常じゃないよ、あの騎士」
「そんなに?」
「そんなにだよ」
いつも通りに見えるがエルキドゥの様子が先ほどまでと違う。騎士を警戒している。影よりも、あのセイバーの方を危険視している。
「あれは人間が踏み込んでいい領域じゃない」
声音でエルキドゥが本気であることが分かった。
しかし硬直状態だ。誰も動けずにいる。
この状況で勝つのならば最優先は影の撃破。エルキドゥが警戒するほどのセイバーである以上、まともに戦っても時間の無駄だ。それならば原因であり、サーヴァントを支配下に置いている影を倒すのが手っ取り早い…のだが事態はそう単純じゃない。撃破対象である影が未知数すぎるのだ。むやみに手を出すことができない。
「よくよく考えたらお前とランスロットの組み合わせは考えなしすぎたな。ま、いいか」
セイバーに話しかけつつ、一人のんきに影は崖の端に腰を下ろした。
「――目障りだ」
そのすぐ後、ギルガメッシュが攻撃をした。
影ではなく、正面のランスロットに向けて武器を射出する。
それがスタートの合図だった。
エルキドゥは再び地面から宝具を放つ。
「セイバー」
声に応えるようにエルキドゥの攻撃をセイバーは薙ぎ払う。
「――まだあるよ」
別にエルキドゥは足元から以外でも武器を作って射出できる。
気が付けば影を武器が囲んでいた。
この状況でもセイバーのやることに変わりはない。体ごと聖剣を回転させ、武器のすべてを無力させる。
「これで詰みだ」
騎士の視界から外れたのを隙を狙ってエルキドゥは跳躍し影の頭上へと到達していた。
流石の騎士でも今から跳躍しても影を守ることはできない。実際そうだった。騎士一人だけならば攻撃は確実に届いていたのだ。
「――!」
けれど次にその場で起きた出来事は影の消滅でなかった。代わりにエルキドゥが空中でセイバーに弾き飛ばされ、この空洞の壁に衝突していた。
ありえない出来事だ。あの距離でセイバーが間に合うわけがないのだから。
「…I am the bone of my――」
エルキドゥはセイバーによって吹き飛ばされた。どうやったかは不明だが、それによって今セイバーは影のそばから離れた。
そんな好機を逃す殺し屋はいない。
エミヤオルタは詠唱を開始していた。
固有結界を内包した弾丸で確実に殺す…はずだった。
――彼の目の前には白銀の騎士がいた。
「が――っ!」
銃を握る手を掴まれ、聖剣によって胴体を切り裂かれる。
「ナイスだ。セイバー」
なぜか崖にいたはずの影もセイバーの横にいる。
影はセイバーを褒めるとともに、地面に倒れるエミヤオルタの頭部に手をかざす。が、すぐにその手をエミヤオルタから離した。
「――俺が弄るまでもないな」
そう呟いた影は振り向いて立香たちへと視線を向ける。
「所詮はバーサーカーってところか」
冷たく放たれる声。ランスロットが消滅する寸前だった。
ギルガメッシュの攻撃を凌いでいる最中にジャンヌオルタの宝具を完璧に食らっていたのだ。二人からの攻撃をバーサーカーのランスロットがやり過ごせるわけもなかった。
「お前は、本当に――」
何もかもが不明。
何者なんだ。そう立香が問おうとした瞬間に影は彼の視界から消え去る。
「正体か…、正体なぁ…」
声のした方向は崖。目を向けるとつい先ほどと同じように影は座していた。
「――空間転移…」
「正解」
魔法の域にある魔術。
自分の座標を別の座標へと移すことができる。線でつながった移動ではなく、点での移動が可能ということだ。
影が移動に使っているそれを凛が言い当てた。
「あなたは魔法使いなの?」
「違う違う。俺は…そうだな――」
凛の質問に思考すること数秒、影は答えを口にする。
「――ヴァニティ…。ああ、そうだ。これがいいな」
満足したように口にして、もう一度彼は自分の名前を言った。
「――俺は
***
「やあやあ、よく来てくれた」
場所はカルデア。管制室には三体のサーヴァントがいた。
「私はあまり来たくはなかったんですけど…」
ホームズをちらりと見ながらBBが言う。
というのも彼女的には『明かす者』であるホームズとあまり一緒にはいたくなかったのだ。
「ふむ。そんな嫌悪されることがあっただろうか? 私と君が顔を合わせたのはこれでまだ二度目だろう?」
一応カルデアにきて初期のころにホームズとBBは顔を合わせている。すぐBBが去ったので会話はなかったが。
(…この人はおそらく虚数事象すらも掘り起こす)
そのためできるだけ一緒にいたくはないのだが…
「まあ来てくれたんだからいいじゃないか」
「それはマシュさんが必死だったからですけどね」
ため息交じりに口にする。
先輩のためにと必死になっているマシュを見たためわざわざここまでBBは足を運んだ。というのが二つあるうちの一つ目の理由。もう一つは彼女も異常な魔力を感じ取っていたため、それを確認したかったからだ。
「あの、ダヴィンチちゃん。なんだか先程よりもスタッフの方々が慌ただしくしているように見えるのですが」
「実際そうだからね」
「何かあったんですか?」
「…一体のサーヴァントだけ向こうにレイシフトできたんだ」
「! それはよかったです! ではこれで先輩とも連絡が…」
「取れないんだよ。というかなんでレイシフトできたのが一人だけなのかもわからないんだ」
ため息をつきつつダヴィンチは言った。
「小太郎さんの時のように縁があるとかでは?」
「わからない。もしかしたらその可能性はあるかもしれないが、どちらにせよ彼女のレイシフトが成功した理由は不明だ」
「彼女…。あ、そういえばレイシフトに成功した方は?」
「――両儀式だよ」
「式さんが…?」
レイシフトに成功したのは両儀式ただ一人。
そもそも立香たちがどこに飛ばされたのか把握できていないダヴィンチには、その場所と式の間に縁があるのかどうかなんてわからないのだ。
「…状況に関しては今の会話で大方の理解できた。それで我々を呼んだ理由は?」
「わかりきっているだろうに。君には原因の究明以外求めていないよ、名探偵」
ダヴィンチがこの探偵に求めているのは解明するという能力だ。それ以外は正直どうでもいい。
「――なら、私は帰りますね。そこの薬物中毒探偵だけで十分のようですし」
BBはやる気のない声を発すると、振り返ってダヴィンチ達に背を向けた。
「まあ待ちたまえよ。ただ飯食ってるんだからたまには働いても罰は当たらないぜ?」
この今までにない事態には知識が、スペックの高い脳の持ち主が必要だ。たとえ、BBのように得体のしれない存在でも知識があるのなら知恵があるのなら協力してほしい。
「私はそもそも人間の味方ではないわけですし、手助けをする義理はありませんよ」
普段の謎に高いテンションで立香にいたずらを繰り返し行っているBBはどこへ行ってしまったのか、今はいつになく落ち着いた声音でとても冷静だ。
「それに今回に関しては過度な心配はいりませんよ。いつも通りで問題ないです」
「というと?」
興味深そうにホームズが聞き返す。多少嫌そうな顔をしたBBだがすぐに返答した。
「彼女が行ったのなら問題はないってことですよ」
「ほう。その様子だと君は両儀式がレイシフトできた理由を知っているようだね」
「――どうですかね」
方法は知らないが、彼女がそれができる存在であることは知っている。
(まあ正直レイシフトができた理由なんて気にする必要ないですけどね)
やり方はこの際どうでもいい。考えたところで無駄だし、知ったとしても理解できるわけがないのだから。本当に気にするべきはわざわざ『彼女』が向かった理由なのだ。
「……接続者の見えているものも、思考回路も私には理解不能なのでどうでもいいんですが」
呟いたBB。
自分と彼女たちは違う。だから大して興味もない。というよりもなくなった。完全にこの件に関してBBは興味を失っていた。
だって自分が関与する余地もなく、これは終結してしまうから。
「では」
BBは管制室から去っていった。
特にネタバレにもならないので書きますが、セイバーの中身はアルトリアで間違いないです。
そんなこんなで十七話目になりますね。ひとまず評価が5を下回らない限りは完結するまで頑張るつもりです。ちゃんと読んでくださってる方もいるようなので。
次回は僕がキンハーにハマっているので少し遅れるかもしれません。あれ面白いからね、仕方ないね。
おそらく来週ぐらいになると思います。